今、なぜ人獣共通感染症が問題なのか?
北大人獣共通感染症リサーチセンター・センター長で、北大大学院獣医学研究科・教授の喜田 宏博士の標記講演を聴いて参りました。なじみのない名前のものもありますが、エイズウィルス、ニパウィルス、ハンタウィルス、SARSコロナウィルス、新型インフルエンザウィルス、ウエストナイル熱、エボラ出血熱、マールブルグ出血熱、出血性大腸菌症(O157)、肺ペスト、レプトスピラ病等の感染症は、すべて人獣共通感染症だそうです。
皆さんもご存知のとおり、ペニシリン等の抗生物質が有効なのは、病原菌つまり細菌までで、ウィルスには効きません。病原菌で一番小さいのはスピロヘータという梅毒の菌であることは、皆さんも学校で勉強しましたよね。ウィルスは、RNAかDNAという遺伝子情報しか持たない存在で、常に他の細胞に寄生して生きています。ウィルスによる病気の天然痘は、ジェンナーが牛痘(ワクチン)を接種すれば人体に免疫ができ病気予防になることを発見し、1980年に世界保健機構(WHO)が天然痘の根絶を宣言するまでに至りました。これは、天然痘がたまたま(1)人間にしか感染しないこと、(2)感染すれば必ず発病すること、及び(3)種痘により強い免疫を誘導できたことによるもので、とても幸運なことのようです。
現代医学はすべての病気をコントロールできたように見えた一瞬があったようにも思いますが、実は上記の新興・再興感染症は治療法もないものも多いのです。これらは人獣共通感染症ですから、人類による地球環境の破壊により野生動物と人間社会の境界消失が起き、その結果流行が拡大したものが多いそうです。地球上の限られた場所でで野生動物を自然宿主として寄生し、静かに安定に存続してきた微生物が、突然家畜・家禽そして人間に病原性を獲得することがあるのだそうです(ウィルス間での遺伝子組換えが起きるらしい)。
したがって、喜田先生の結論は、「人獣共通感染症を根絶することは当面不可能であることを認め、人獣共通感染症を克服するためには、その原因微生物の起源と自然界における存続のメカニズム、進入経路並びに感染、発症と流行に関与する諸要因を明らかにして、発生予測と流行防止の戦略をたてる必要がある」とのことでした。先生は、緊密な国際連携の下、地球規模で綿密かつ有機的な疫学調査研究を展開するよう、世界を股に掛けた活動を続けていらっしゃるのです。
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海外のあぶない病気―世界中に蔓延するウィルス細菌・寄生虫の恐怖
著者:海外危険地帯調査班 |
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