伊藤たかみ著「八月の路上に捨てる」を読んで
今年の第135回芥川賞受賞作の伊藤たかみ著「八月の路上に捨てる」を、雑誌文藝春秋9月特別号で読みました。
簡単に言うと、大久保、新大久保、歌舞伎町、新宿あたりの自動販売機に、缶飲料を補充する仕事を一緒にやっている女性正社員と男性アルバイトが、女性がこの仕事を止める日にそれぞれの結婚、離婚、再婚について、回想も含めて語り合うという話です。30代の男女の話し方、考え方、距離の取り方など、こんなものなのかなと、世代の違う私には参考になりました。
しかし、この世代の結婚、生活、離婚に関する考え方については、もしここに書いてあることが本当だとしたら、私にはなかなか理解できるものではありませんでした。一緒に生活していながら、お互いを理解しようとしない、つまりお互いに歩み寄らないため、話は通じず、またお互いやや病的であるという情況は一般的なものなのでしょうか。
ただ、この世代は単に仕事をして、糧を稼ぎ、生きていくことに、こんなに苦労しているのか、ということは理解できました。今日どこかの新聞で、OECD諸国のなかで日本が2番目に所得格差の大きい国になったと書いてありましたが、それが反映されているのかもしれません。
いずれにしても、世代が異なるとこんなにもお互いを理解しあい、歩み寄るのも難しいのかと、正直感じました。
- 幸せは ゆとりが第一 人の生
文藝春秋9月特別号は、他の記事も満載で特別定価760円ですが、「八月の路上に捨てる」の単行本は1,050円であるようなのは不思議です。多分後者には他の何作品かも収録されているはずですが。
八月の路上に捨てる
著者:伊藤 たかみ |
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コメント
TBさせていただきました。
もっと読みにくいかと思いきや、普通に抵抗なく楽しめました。
次回作も楽しみです。
投稿: タウム | 2007年3月22日 (木) 午前 02時58分
翠山亭さん、コメントありがとうございました。おっしゃるとおり、この小説では読者に向けてのはっきりした主張を読み取ることはできませんでした。人生の道標、生きる理由、日々の暮らしの糧等を探し出すこともできませんでした。しかし、大多数の若者にとって、毎日の目標がはっきりしない、飽食の時代にあって、どちらかと言うと日々淡々と余り金銭的には豊かではない生活をしていくというのは、何となくよく理解できることなのでしょうか。それを臆することなく小説にしたということが、存外芥川賞に選ばれた意味なのかもしれません。
すべての人にフロンティアがあって、その開拓のためには精神的な力も必要とし、開拓の結果精神的な幸福も得られた時代はもう来ないのでしょうか。
投稿: Kirk | 2006年11月17日 (金) 午後 12時50分
時期はずれの「八月の路上に捨てる」寸評
芥川賞は文学の方法なり何なり何か文学界を切り開いていく新しさのあるものに贈られると思っていた。だから職場の新しい男女関係でも描かれるのかと初めは読めた。しかしそうでもない。何が言いたいのかはっきりしない。心情表現に巧みなところはあるが、それは文学する著者の主張を支えるものの筈。が、主張がはっきりしないのだから生きてこない。同僚との関係を描く方に目新しさの可能性があった。読者も路上に捨てられた。評者もタイミングを逸している。どこかで言いたかったのでこの場をお借りできて感謝している。
投稿: 翠山亭 | 2006年11月17日 (金) 午前 07時58分
「八月の路上に捨てられたボク」さん
このブログは人生相談ブログでしょうか。男と女の関係は難しいですよね。押せば引くし、引けば押してくるし、ままなりません。付き合って行きたいと思うのなら、お互いにペースを合せる努力をして下さい。よく話し合って下さい。一度喧嘩して仲直りするのもいいかもしれません。
投稿: Kirk | 2006年9月13日 (水) 午後 10時12分
彼女はじぶんからはメールくれないしボクがメールしても時々しか返事くれないし、一応付き合ってるけどこれって、やっぱ、ボクのことあんまし愛してないよね。
投稿: 八月の路上に捨てられたボク | 2006年9月13日 (水) 午前 05時32分