奪われて棄てられた土地~北海道と沖縄(2007.10.19付け札幌タイムス・コラム記事)
北海道には固有の言語と文化を有する先住民、アイヌ民族がおりました。しかし、明治維新後政府は北海道の警備と開拓のために、屯田兵などの移民を送り込み、アイヌ民族の土地を奪いました。沖縄にはやはり固有の言語と文化を有する琉球民族がおりました。15世紀には琉球統一が進み、首里城を王都とした琉球国が創立されました。しかし、17世紀に江戸幕府の命を受けた薩摩藩が琉球国を攻撃し、属国としました。
日本が無条件降伏をした第二次世界大戦では、沖縄は日米の戦場とされ戦後米軍の管理下に置かれました。1952年に締結された平和条約の協議では、日本は天皇制を守るために、千島列島と南樺太と共に北海道の主権も放棄しようとしたといわれます。結果的にソ連(現ロシア)が北海道にまでも進出することに危惧を抱いたマッカーサー元帥により、北海道は守られたそうです。北海道も沖縄もまさに奪われて棄てられた土地と考えざるを得ません。
米軍が沖縄を管理していた間に、東アジアの拠点として沖縄各地には多くの米軍基地が建設されました。現在もそのほとんどが存続し、日本の米軍基地の75%(面積比)が沖縄に存在するといわれております。米軍基地関係の沖縄県の所得は約2,000億円と推定され、沖縄県のGDPの5%以上を占めます。また、開拓の経緯からか北海道には陸上自衛隊の駐屯地が数多く存在し、全国130ヶ所の内の約2割、28ヶ所を数えます。自衛隊関係の北海道の所得は推計するしかありませんが、防衛省の人件・糧食費の約2割が使われていると考えると約4,000億円になります。これは北海道のGDPの約2%を占めます。いずれも地域経済的には一定の重みのある話ではあります。
奪われて棄てられた、辺境だが地政学的に重要な地に、国防の役割が多く課されるのは自然なことかもしれません。しかし、沖縄県民は常に米軍基地を何とかしてほしいと声を上げております。北海道民は自衛隊基地については何も発言していないように感じられます。自衛隊を好みそうな都会の知事達に、このことをもっとアピールした方がいいのではないでしょうか。
(注1)第二次世界大戦後の日本との平和条約は、1951年にサンフランシスコで署名され、翌1952年日本で批准され発効しました。
(注2)本記事は、筆者が2007年10月19日付け週刊札幌タイムスのコラム「がんばれ北海道」#123に寄稿したものです。
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