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2008年1月17日 (木)

キッザニア東京を訪ねて内田樹著「下流志向」を考える

 ある勉強会の企画で、キッザニア東京を訪ねて参りました。キッザニア東京は一昨年秋にオープンしましたが、その時にはテレビを中心にメディアが大きく取り上げたので、私も含め名前と内容は相当知っている人が多いものと思います。しかし、今回実際に訪ねることになって、場所が豊洲だったことを発見しとても驚きました。アーバンドックららぽーと豊洲ノースポートの3階にあるのです。この場所は、最近会社業績に関し話題になったIHI(旧社名:石川島播磨重工業)の造船ドックの後です。再開発されているのは知っておりましたが、観るのは今回が初めてで米国のモールをそのまま持って来たような3階建の、中央に巨大な吹抜け空間のある施設にまたビックリしました。

 キッザニア東京はとてもはやっていて、週末は何と4ヶ月先まで予約で一杯なのだそうです。ただし、当日券も若干はあるようです。またまた驚いたのは、このコンセプトの発祥の地がメキシコだったことです。メキシコにはすでに2ヶ所あり、東京が3番目で、インドネシアに4番目の施設があるそうです。来年には西宮にも日本で2つ目のキッザニアがオープンするようです。キッザニア東京のご案内の資料には、そのコンセプトを次のように説明しております。

 キッザニアは、メキシコのKZM社(本社:メキシコシティ CEO:ハビエル・ロペス)によって開発された屋内施設です。実在する起業がスポンサーとなったこどもサイズ(現実社会のほぼ2/3のサイズ)の50以上のパビリオンがリアルな街並みを形成しており、その中で80種類以上のお仕事やサービスを受けるなどのアクティビティを体験することができます。
 こども達はお仕事を体験することでキッザニア内で流通している独自の通貨「キッゾ」を手に入れることができ、このキッゾを使い、キッザニア内で習い事をしたり、買い物等をすることができるほか、銀行に預金したり、ATMで引き出せるなど、リアルな経済活動を体験することができます。

 次の2枚の写真は、携帯で撮影したキッザニア東京の街並みです。

Nec_1204

Nec_1208

 子供達が何度もリピーターとしてキッザニア東京を訪れ、通貨「キッゾ」による報酬を受け取れる仕事体験を好んで選び、キッゾを銀行口座に貯めて増やしているというお話を伺って昨年読んだある本のことを思い出しました。その本とは、内田樹(たつる)氏の著書「下流志向:学ばない子どもたち 働かない若者たち」です。実は半年前位に読了していたのですが、正直を言って内容がとても重く、読み終わった後とても複雑な気持になったため、この本だけについての感想文を書けないままになっておりました。

 現代日本では、家庭内のお手伝い(家事労働)などというものがなく、両親が子供に消費活動から始めてそれのみを教えています。消費とは消費主体が価値がわかっていると思い込んでいるモノやサービスとお金を即時的に等価交換することです。ところが教育や労働は、努力してもその成果を得られるのは相当後になってからが普通です。教育では特にお金を払って努力するとも多いのですが、その成果は10年後にならないと分からないことが通常です。労働についても、その短期的な報酬・対価を通常約1ヶ月後に得られるとしても、社会的にも認知されるような本質的な成果は10年後や20年後のずいぶん後になってからでないと獲得できません。現代の子供達や若者達は、すべてを即時的な等価交換による消費活動を唯一の原理・原則として判断するため、長期的な努力の末本当の成果が得られるような教育や労働については理解できず、その結果それらから逃げてしまう。これは言い換えると、分かっている範囲内で自分のことは自分で決める、つまりすべてを自己決定するということです。しかし、同時に昨年流行った「KY」などという言葉にも共通するところがあるように、この自己決定論をみんなのルールのしようというとても矛盾し、ねじれた論理になっています(自分と他人は違うはずです)。私の理解では、内田氏の主張はこのようなものだと受け取りました。

 エデュテイメント(エデュケイション+エンターテイメント)をモットーにしているキッザニア東京に来る子供達が、そこでの労働体験を基にして教育・労働の本質に少しでも近付き、長期的な努力を重視するようになってくれることを切に期待するものです。しかしながら、最近話題になっているねじれ国会でも、この「自己決定するがみんな同じに」という感覚が支配的であるがために、なかなか本質的な議論がなされずに国民のための施策が立案・実行されない情況にあるような気もします。日本人一人ひとりがこの日本的な感覚を捨てて、本質に迫らなけれならないように思います。

  • 教育と 労働を主に 国造り

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