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2012年3月の16件の記事

2012年3月29日 (木)

最近観た映画(2012年3月#15:僕達急行 A列車で行こう)

 昨年2011年12月20日に61歳で亡くなった森田芳光監督の遺作になってしまった映画です。エンドロールの最後には「脚本・監督 森田芳光」とあるのですが、次のカットでは手書きで「ありがとう 森田芳光」となりました。何かを予感させるような終り方でした。森田監督は、「の・ようなもの」(1981年)でデビューし、「家族ゲーム」(1983年)や「失楽園」(1997年)等の話題作を手掛け、昨年は「武士の家計簿」(2010年)がヒットしました。

 本作は鉄道マニア3人を中心に据え、ユーモアとペーソスにあふれる展開で、ほのぼのとした後味を遺してくれる、娯楽性の高いコメディだと思いました。若い鉄道オタクで不動産会社社員の小町圭にNHK大河ドラマ「平清盛」の清盛役の松山ケンイチ(小雪の旦那さんの方が有名か)を、もう一人の若い鉄道オタクで鉄工所の跡取息子・小玉健太にNHKドラマ「篤姫」の小松帯刀(たてわき)役の瑛太を、それぞれ配しております。

 この2人の若手人気俳優に加えて、3人目の鉄道オタクとして、九州地元の食品会社社長の筑後雅也役をピエール瀧が好演していました。他の脇役として、笹野高史、伊武雅刀、西岡德馬、松坂慶子、貫地谷しおり、村川絵梨等がしっかりと固めていました。映画のスピード感は余り感じられないのですが、ストーリーには隙がなく、随所に込み上げてくる笑いも事欠かず、全編最後まで楽しめること請合いです。

 ところで、タイトル「僕達急行 A列車で行こう」の「急行」の真意は何なのでしょうか。映画の中では、冒頭のわたらせ渓谷鐵道を始めとして、2人が乗っているのは鈍行各駅停車が多いのです。せいぜい物語展開が急行並みということかとしか考えられません。「A列車で行こう」はデューク・エリントン楽団が演奏するジャズのスタンダード・ナンバーのことだと思います。A列車はニューヨーク市地下鉄のA 8番街急行線のことだそうです(そうだ、ここに「急行」の2文字がありますね)。小町は鉄道に乗りながら音楽を聴くのが趣味という設定でした。

  • 鉄道に 日々癒される ことも善し

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2012年3月28日 (水)

最近観た映画(2012年3月#14:マリリン 7日間の恋)

 この映画の主役マリリン・モンロー(1926-1962)役を演じている女優ミシェル・ウィリアムズの演技は素晴らしいと思いました。彼女は本物のマリリンに酷似している訳ではありませんが、本物はさもありなんと思えてくるのが不思議です。最後には、ミシェルのマリリンの方が本物のように感じ始めるほどでした。1956年に自身がプロデュースする映画「王子と踊り子(The Prince and the Showgirl)」を撮影するためにロンドンに降り立ったマリリンは30歳でした。ミシェルも本作撮影時はちょうど30歳だったそうです。しかし、芸歴は何と20年近いとは驚きでした。ハリウッドでも期待されている女優の一人とのことです。

 「王子と踊り子」の監督で、共演もしたのが、ローレンス・オリビエ(1907-1989)(ケネス・ブラナー)でした。当時、その夫人はあのビビアン・リー(1913-1967)(ジュリア・オーモンド)です。大物俳優達が実名で登場しています。名家の出身でイートン校・オックスフォード大学を卒業した23歳のコリン・クラーク(1932-2002)(エディ・レッドメイン)が、オリビエ監督のサード(第3助監督、実は小間使い)になったことが、マリリンの死後50年間知られなかった事実が明るみに出るきっかけになっています。映画では語られませんが、コリン・クラークは晩年にマリリンとの思い出を2冊の回顧録、"The Prince, The Showgirl and Me"と"My Week With Marilyn"(「マリリン・モンロー 7日間の恋」(新潮文庫 2012年)、これが映画の原題)として出版しています。英米合作の本作はこの2冊の回想録を基にして創られたとのことです。

 米国から英国に乗り込み、コーチとともに新しい演技を目指すマリリンは、英国の伝統的な演技にこだわるオリビエ監督と対立します。その中で、芸術ではよくある話ですが、マリリンは自分をどんどん追い込んでいってしまいます。情緒不安定や酒と処方薬の問題もあり、撮影に常時遅刻するようになります。また、一緒に来ていた新婚の夫アーサー・ミラー(1915-2005)(ダグレイ・スコット)も文学創作ができないとして帰国してしまいます。次第にマリリンはコリンに頼るようになり、彼女の発案で1週間だけロンドン郊外へ旅に出ることになります。ウインザー城、イートン校、テムズ河畔等でのロケは素敵でした。マリリンも一人の純粋な女性として、建築、美術品、風景等の美に素直に感動し、人間性を取り戻します。マリリンは知的な女性として描かれています。本当はそうだったのかもしれません。

 皇太后シビル・ソーンダイク役のジュディ・デンチもマリリンの理解者として良かったし、衣装係でコリンの恋人になるルーシー(エマ・ワトソン)も可愛かったです。映画「王子と踊り子」は結局大した評判にはならなかったようですが、マリリンがその次に出演した映画「お熱いのがお好き(Some Like It Hot")」(1959年)は評価されました。しかし、その撮影時も情緒不安定は変わらなかったようです。

 ミシェル・ウイリアムズは本作で今年のアカデミー賞主演女優賞にノミネートされました。また、2011年の第69回ゴールデングローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ部門)を受賞しました。マリリン・モンローも1959年に「お熱いのがお好き」で第17回の同賞を受賞しているのは何かの偶然でしょうか。

  • マリリンは 自由奔放 無敵かな

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2012年3月26日 (月)

最近観た映画(2012年3月#13:ヤング≒アダルト)

 アカデミー賞主演女優賞を受賞しているシャーリーズ・セロンが、タカビーでイタいヒロイン・メイビス・ゲイリーを熱演しています。彼女は37歳で美人の設定になっていますが、筆者は余り美しいとは思いませんでした。彼女の思考や行動から判断しているのかもしれません。彼女の高校時代の恋人バディ・スレイト(パトリック・ウィルソン)の妻べス・スレイト(エリザベス・リーサー)の方が、内面も含めて美しいと思いました。

 メイビスはミニアップルといわれるミネアポリス(米国ミネソタ州州都)でヤング・アダルト(Young Adult、これが原題)小説(日本での中高生向けか)のゴーストライターをしています。ミニアップルとは、ビッグアップル(ニューヨーク市)に対比する表現とミネアポリスのもじりを兼ねていると考えられます。彼女は、ある時田舎マーキュリーに帰って、高校時代に話題の中心だった自分に戻るとともに、昔の恋人バディとよりを戻そうとします。そこに現れるのが、同級生でいじめられっ子だったマット・フリーハウフ(パットン・オズワルド)です。マットの存在は癒されるし、コメディの要素を引き立ててくれます。

 この作品を面白いと思ったのは、遅れてきたちょっとエッチな青春恋愛ドタバタコメディだったからです。筆者は米国流のちょいエロ学園恋愛ドタバタコメディを好みますが、アラフォーになった連中が巻き起こす疑似青春恋愛騒動も何とも哀しく、懐かしいものがありました。

  • 人生は いつまで経っても 青春だ

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2012年3月21日 (水)

最近観た映画(2012年3月#12:英雄の証明)

 ウィリアム・シェイクスピアの晩年の作品で、最後の悲劇といわれている「コリオレイナス」を現代風に翻案して作られた英国映画だそうです。したがって、原題は単に"Coriolanus"です。邦題は相当に意訳しておりますが、確かにシェイクスピアの「コリオレイナス」という作品は余り知られていませんね。

 ローマ軍の司令官コリオレイナス将軍(レイフ・ファインズ、「シンドラーのリスト」出演)と敵国ヴォルサイ軍のリーダー・タラス・オーフィディアス(ジェラルド・バトラー、「マシンガン・プリーチャー」主演)の間の熾烈な戦い、心の葛藤、不思議な友情等を描いております。

 ローマの常勝将軍は、地位が上がるにつれ独裁的になり、護民官やローマ市民の反発にあい、ついにはローマを追放されます。彼はその後敵国と組んでローマを攻撃しますが、実母や妻子の執拗な請願に負けてしまいます。非情な戦いと親子・配偶者との愛情という矛盾した命題を正面から扱っています。

 「マシンガン・プリーチャー」で描かれている、ウガンダとスーダン南部における現在の内戦では、人情のかけらもありませんでした。ゲリラに捕われた子供達は親を殺すように命令されていました。さもなくば子供自身が殺されてしまうのです。これがアフリカの残酷な現代とシェイクスピアの時代の違いでしょうか。

  • 人間味 ないようである 英国劇

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2012年3月19日 (月)

最近観た映画(2012年3月#11:セイジ 陸の魚)

 伊勢谷友介は映画「カイジ2 人生奪回ゲーム」に出演していたので、てっきり俳優だとばかり思っていました。彼は東京藝大の修士課程を修了しており、映画監督としても活躍していることが分かりました。本作品は彼の監督で制作されており、辻内智貴(つじうちともき)著の小説「セイジ」(2001年)を原作としています。辻内は元々はシンガーソングライターを目指していて(今も掛持ち)、途中で小説も書いたという変わった経歴の持主です。

 主役のセイジに、映画「CUT」でも主役を演じた西島秀俊を充てています。実際本作と「CUT」は撮影が重なってしまったそうで、掛持ちする俳優は大変ですね。それだけ才能があるということでしょうか。もう一人のサブの主役「僕」(20歳で名前がない、作中では旅人などと呼ばれています)に、映画「モテキ」で一大ブームを巻き起こした森山未來を配しています。森山は作中の人物に成り切るために、実際に東京からロケ地の栃木県の山奥まで自転車で走破したそうです。

 物語は、バブル期最後の1990年頃に、山奥の小さな村のドライブインを中心として起きるいろいろな出来事を描いています。話が進むにつれ、西島らしい寡黙なセイジの過去がだんだんと明らかになってきます。そんな平和な村で凶行が起き、ドライブインの常連ゲン爺(津川雅彦)の可愛い孫娘りつ子が左腕を失います。皆がりつ子を励まそうとする中で、セイジの取った行動が…。「僕」が20年後のドライブインを再訪しますが、そこで観客は明日への希望を見い出すでしょう。

 1990年頃は、田舎にもこんなに若者がいたのだなという感想を持ちました。現在はどうなのでしょうか。限界集落も増えていると聴いております。

  • 重い過去 みんな背負って 生きていく

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2012年3月18日 (日)

テレビで「シャーロック・ホームズ」(2009年)を観て

 ただ今劇場では「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」(2011年米国)が大ヒットしているようです。これは2009年に英国で制作された「シャーロック・ホームズ」の続編とのことです。この第一作目がテレビ朝日で放送されたので観ることにしました。

 続編同様にシャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)とジョン・ワトソン博士(ジュード・ロウ)の息はぴったりと合っていました。英国で創られたせいか、続編に比べ、やや推理の方に重点を置きながら、スローモーションを駆使したアクションも観せるという感じの映画でした。英国流のブラック・ユーモアも忘れずにちりばめられていました。また、続編へのつなぎも充分考慮されたものでした。

 両作品とも監督はガイ・リッチーが務めておりますので、アクション・シーンのVFXの使い方などは共通しております。1890年代のロンドンの様子が、セットとVFXにより見事に再現されておりとても感心しました。アーサー・コナン・ドイルの古典をヒントに、ライオネル・ウィグラムが創造したオリジナル・コミックが原作になっているようです。

  • 型破り ホームズの推理 アクションか

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2012年3月17日 (土)

最近観た映画(2012年3月#10:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙)

 今年の第84回アカデミー賞主演女優賞を獲得したメリル・ストリープが、元英国首相のマーガレット・サッチャー役を熱演していました。首相になる直前から辞任するまで、また少々認知症を患っているという老いて一人暮らしの現在の姿を、見事に演じ切っていました。メリルは相当にマーガレット・サッチャーを研究したらしく、話し方、声のトーン、立居振舞はまさに元首相本人がそこにいるようでした。メリルは、過去にダスティン・ホフマンと共演した「クレイマー、クレイマー」で第52回アカデミー賞助演女優賞(第52回、1980年)を、「ソフィーの選択」で主演女優賞(第55回、1983年)をそれぞれ受賞しております。また本作は今年のアカデミー賞メイクアップ賞も得ております。

 英国の元首相ですから、よく知っているようですが、映画の中には知らないことが沢山ありました。マーガレットが雑貨商の娘だったこと、デニス・サッチャー(ジム・ブロードベント、「家族の庭」で主演)が彼女を政治家にするために結婚し生涯支え続けたこと、彼女はあえて上流階級の話し方を真似ていたこと、男と女の双子がいたこと(だから出産は一回だけ、政治家には重要なことかもしれません)、フォークランド紛争(戦争)で死亡した256人の英国軍将兵の家族に首相直筆で感謝と哀悼の手紙を贈ったこと、この紛争に勝利することで首相支持率が急回復したこと、首相辞任直前にはあれ程閣僚をいびっていたこと、等々です。

 それにしても、マーガレットが政治家を志した時の初心を絶対に忘れなかったことは、物凄いことだと思いました。誰でも思想転向がありえるし、考え方は変わるものです。特に政治家は自分が次に落選しないように、つまり大衆に迎合するように変わりやすいものです。「人は自分の足で立たなけければいけない」というのが、彼女の信念だったように捉えました。ケネディ元米国大統領もその就任演説で、「国が何をしてくれるかと考えるより、自分が国に何をできるかを考えてほしい」と言っていたのを思い出しました。

 翻って我国の情況はいかがでしょうか。自分の足で立っていない人が結構いるように感じます。それは、満員電車の中で他人に寄りかかっている人達のことだけではありません。自分を国が助けるのが当たり前だと思ってはいませんでしょうか。主権在民という言葉を履き違えていませんでしょうか。主権在民とは、「国家の在り方、つまりどの国と仲良くするのかという外交の問題や自国を防衛するための安全保障の問題については、国民の意思で決定する」ということを意味しています。国が国民を助けるのではなく、決めた主権を守るために国民が国を助けなければならないのです。具体的には、納税や兵役等の話になります。

 原作はマーガレットの娘のキャロルが書いた回想録とのことです。もちろんキャロルも映画に登場しております。映画の原題はただの"The Iron Lady"ですが、邦題は随分長くしたものですね。「鉄の女」=「マーガレット・サッチャー」という具合には、日本ではならないのでしょうか。監督は、前作「マンマ・ミーア」でもメリルと組んだフィリダ・ロイド(女性監督)だそうです。現在と回想を上手く織り交ぜながら、マーガレットの人生を浮き彫りにしております。特別な驚きはない映画ですが、手堅くまとめた、なかなか構成のいい作品だと思いました。

 細部の話になりますが、ユル・ブリンナの舞台「王様と私」がマーガレットとデニスの思い出として貴重な役割を果たします。特に二人が結婚を決めた時には、「シャル・ウィ・ダンス」の曲で一緒に踊ります。それから映画「おとなのけんか」でコメントした言葉"despicable"が、マーガレットの口から突然出て参りました。英国では相手を徹底して遣り込める時に使う一言なのではないでしょうか。

  • マーガレット 初心を忘れず サッチャーに

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2012年3月14日 (水)

最近観た映画(2012年3月#9:キツツキと雨)

 たまには日本映画を観なければと思い、本作を選びました。役所広司と小栗 旬という面白い組合せでした。しかも初共演らしいです。役所が主役の木こり・岸 克彦訳で、小栗が自信のない新人監督・田辺幸一役でした。それぞれ、役柄の雰囲気をよく醸し出していました。

 本作では、沖田修一が監督と脚本を両方担当しました。したがって、沖田監督の全くのオリジナル作品とのことです。映画の中の監督は、沖田監督自身の分身のようにも思えました。タイトルの「キツツキ」とは何でしょうか。樹木を扱う木こりとカチンコを鳴らす監督を暗示しているのでしょうか。またロケは岐阜県恵那市と中津川市を中心とした地域で行われたようです。

 25歳の新人監督は現場を逃げ出しそうになりますが、木こりや村の人達、助監督等のスタッフ、また俳優らに励まされ、だんだんと一人前になっていく様子を描いています。コメディ風ではありますが、人と人との交流を上手く描写しており人情物にもなっています。いろいろ学んではいても、若くして一つのチームを率いるのは大変です。筆者も大昔霞が関に一時期いた頃を思い出しました。自信があってもなくても、リーダーは泰然として方針を決めていかなければならないのです。

 本作は第24回東京国際映画祭(2011年)で審査員特別賞を獲得しました。役所はやはりモテモテで、本作の前に「聯合艦隊司令長官 山本五十六」を撮影しており、本作のすぐ後に「わが母の記」(4月28日公開)の撮影に入ったそうです。小栗は「岳 -ガク-」でのなかなかの演技を観て以来でした。筆者が現在住んでいる小平市出身の小栗君、是非頑張って下さい。

  • 田舎こそ 日本の良さを 実感し

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2012年3月13日 (火)

最近観た映画(2012年3月#8:シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム)

 アーサー・コナン・ドイル原作のシャーロック・ホームズというので、英国の映画かと思いましたが、登場人物だけを活用した全く別物の米国ハリウッド映画でした。名探偵シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニー・Jr)が医学博士のジョン・ワトソン(ジュード・ロウ)君と会話しながら静かに謎解きをする場面などは余りなく、全編にわたりスローモーションのVFXを駆使したフルアクション映画になっていました。ストーリーも探偵物というよりスパイ物に近く、どうしても昨年末に公開された「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」を思い出さざるをえませんでした。いろんな意味で、昨日観た「ニーチェの馬」とは対極にある作品のような気がします。

 原題は"Sherlock Holmes: A Game of Shadows"で、目に見えない者同士の戦い(ゲーム)のような意味でしょうか。舞台が英国→仏国→独国→スイスと目まぐるしく移動し、どこでも格闘、爆発、銃撃戦、追跡、しまいに大砲発射の厭きさせないアクションが続きます。1981年の想定ですから、移動は汽車か汽船で、もちろんカーチェイスはありませんでした。パリではオペラ「ドン・ジョバンニ」の舞台を使った壮麗豪華なシーンがあり、音楽も含めてとても気に入りました。

  • 銃弾が スローに飛び交い 危機一髪

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2012年3月12日 (月)

最近観た映画(2012年3月#7:ニーチェの馬)

 不思議に心惹かれる映画でした。まずはモノクロ(白黒)映画で、独特の長回しでワンシーンが延々と続きます。いつも強風がビュウビュウと吹いていて、最初から何か異様な雰囲気がありました。

 発狂する前にニーチェがトリノで首をかき抱いた馬がどうなったかというのが主題らしいです。その馬の荷役を収入源とする父と娘の6日間の生活を描いています。真に淡々とストーリーは進んでいきますが、言葉少ない映像は観客の目を惹き付けて厭きさせません。一体どうしてなのでしょうか。映像はだんだん終末観に満ちてきます。最後には人類が最初に手にした文明の鍵が…。

 ハンガリーの鬼才といわれるタル・ベーラが最後の作品として作ったものだそうです。原題は"A torinoi lo"で、どうやら「トリノの家」という意味らしいです。第61回ベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ、2011年)等を受賞しております。ハンガリー・フランス・スイス・ドイツの合作でした。

  • 長くても なぜか気になる ワンシーン

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2012年3月 9日 (金)

最近観た映画(2012年3月#6:昼下がり、ローマの恋)

 3部構成のオムニバス・イタリア映画でした。イタリア流の恋愛をコメディ・タッチで描いています。ラブ・コメディの好きな筆者としては、充分に楽しむことができました。原題は"Manuale d'am3re"だったと思いますが、イタリア語に詳しくない筆者には何のことか分かりません。他のサイトを見ると"Manuale d'amore 3"とも表示してありました。前者は"3"の位置を動かしたデザインかと勝手に想像しました。後者ならばGoogleで翻訳することができ、英語で"Manual of Love 3"ということらしいです。これならば「恋愛マニュアル#3」という感じですね。「イタリア的、恋愛マニュアル」(2005年)を創ったジョヴァンニ・ヴェロネージ監督(伊)が取り組んだ3作目だそうですので、ちょうど符合します。2作目は「モニカ・ベルッチの 恋愛マニュアル」(2007年)とのことです。

 ローマのとあるアパートに住む3組の住人に関する、3つの恋愛をオムニバス・ドラマにしています。婚約者のいる弁護士は、トスカーナに出張して謎の美女に会います。美しい海岸で情事になりますが、いろいろ事情が…。有名ニュースキャスターは妻子がいるが、あるパーティで美女に会います。彼女に振り回されてしまいますが、やることはやります。この話が一番滑稽でした。最後がイタリア映画初出演のロバート・デ・ニーロの出番になります。イタリアに滞在してイタリア語を学んだらしく、流暢にしゃべっていました。アメリカから移住してきた元大学教授(ロバート・デ・ニーロ)が、パリから帰ってきたアパートの管理人の娘(モニカ・ベルッチ、イタリアの宝石ともいわれる人気イタリア女優)に会います。元教授は心臓移植の大手術から立ち直り、新たな一歩を踏み出そうとします。若年、中年、熟年の3世代の、ありえそうなラブ・アフェアーを楽しく、上手く描いています。

  • 人生は イタリア流で 楽しもう
  • 経済は 日本流で 頑張ろう

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2012年3月 8日 (木)

最近観た映画(2012年3月#5:ザ・レッジ 12時の死刑台)

 わざわざ渋谷まで観に参りましたが、正直に申し上げるとこれをなぜ映画にしなければいけないのか分からないという感想でした。ストーリーとしては面白いし、見応えのあるシーンも多かったのですが、TVドラマにした方がよかったのではないかと思いました。このところアカデミー賞作品賞クラスの映画を見続けていたため、余計そう思うのでしょうか。

 原題は"The Ledge"で、「(壁から突き出た)棚、岩棚」を意味します。まさにレッジから飛び降りようとしている男の告白が物語の柱になります。

  • 死ぬ奴は 誰か 推理の サスペンス

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2012年3月 7日 (水)

最近観た映画(2012年3月#4:麒麟の翼 ~劇場版・新参者~)

 翼を有した麒麟像が日本橋の欄干の中央にあることは知らなかったです。しかも、日本の道路の基点のここから全国に飛んで行くことを象徴しているなんて…。この映画で東京の名物を一つ発見しました。それにしても「麒麟」という漢字はややこしいですね。「鹿」偏ですから、鹿に関係あるのでしょうか。辞典によれば、「麒麟」は中国の想像上の動物ですが、「麒」が雄で「麟」が雌だそうです。アフリカにいる動物、ジラフまたはキリンにもこの字を当てています。中国には「馬」偏の「騏驎(きりん)」もあるようで、よく走る優れた馬でまだらの馬のことらしいです。

 さて、本作のことですが、残念ながらしっかり構成・演出されたTV刑事ドラマの域を超えないものと思われます。外国映画と比べて筋が分かりやすいのは、良いところでもありますが、やや魅力に欠けるところでもあります。だからといって面白くないとか楽しくないとかいうことではありません。充分に娯楽として楽しむことができました。学校でのいじめという、陰湿だが余り大きく取り上げられない出来事を中心にすえて、企業、家庭、地域社会そして教育に関するいろいろなテーマを扱っています。東野圭吾の原作らしく、広がりのある構想の中で人情味あふれる話が展開されております。やや説教じみているところがあるのがいただけませんが…。

 主役を演じられる人が何人もいそうな、豪華俳優陣を起用して、楽しめるまた心に残る映画になっていると思います。

  • 真実に 向き合うことの 大切さ

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2012年3月 6日 (火)

最近観た映画(2012年3月#3:ものすごくうるさくて、ありえないほど近い)

 9・11で最愛の父(トム・ハンクス)を失った息子オスカー・シェル(新人子役トーマス・ホーン)が、母(サンドラ・ブロック)とともに喪失感・悲しみを乗り越える作品です。不幸なことに、父はたまたま打合せのためワールド・トレード・センターの106階にいたのでした。父の部屋から出てきた鍵の秘密を探るため、オスカーはニューヨーク中のブラックさんを訪ねて回ることになります。向かいのビルに住む祖母とその同居人との交流が面白く描かれています。最終的には母の偉大な愛と街のブラックさん達の温かい思いやりにより、オスカーは平穏へと導かれます。

 本作品は、2005年に出版されたジョナサン・サフラン・フォアによる小説「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(Extremely Loud & Incredibly Close)」を原作としているそうです。アカデミー賞受賞者の俳優達を脇役として沢山起用しており、本作は今年の第84回アカデミー賞作品賞にノミネートされました。筆者は、結果的にアカデミー賞作品賞にノミネートされた映画を3本続けて観ることになりましたが、本作が一番普通の作品だと感じました。

 2001年にニューヨークで発生した9・11テロ事件については、きっと米国の人達はそれの影響を克服するのに10年間位かけているのだろうと考えました。ちょうどその頃に本作が創られたのではないでしょうか。昨年日本で発生した、3・11東日本大震災も我々日本の人達が完全に立ち直るまでに10年程度かかるのではないかと思います。この映画のように何かを必死に追い求めることも必要なのかもしれません。

  • 喪失感 癒すためには 時が要る

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2012年3月 5日 (月)

最近観た映画(2012年3月#2:ヒューゴの不思議な発明)

 マーティン・スコセッシ監督が12歳の愛娘のために創った3D映画らしいです。したがって、バイオレンス・アクション路線から転換し、児童文学風の作品になっています。正直に言って、3D映画というものはこういう風に創ればいいのかと感心いたしました。奇をてらわず、普通の物語を、1930年代のパリの雰囲気をよく再現した美しい3D作品としています。パリの街並、駅の内部、時計塔の内部構造、塔の最上部から望むエッフェル塔の夜景等、精密で緻密な、素晴らしいものでした。一方で、超大規模な屋外セットを使ったロケや派手なアクションは使っておらず、これが若干評価が分かれるゆえんになっているのかもしれません。本作は、今年の第84回アカデミー賞作品賞は逃したものの、技術系の撮影賞、美術賞、視覚効果賞、音響編集賞そして録音賞の5部門を獲得しました。

 原作は、世界的なベストセラーになったブライアン・セルズニックの小説「ユゴーの不思議な発明(The Invention of Hugo Cabret)」とのことです。"Hugo"は仏語読みをすると「ユゴー」、英語読みをすると「ヒューゴ」なのでしょう。映画の原題は「ヒューゴ(Hugo)」に縮められたそうです。ところで、「戦火の馬」も児童小説が原作でしたが、これはただの偶然でしょうか。

 パリのリヨン駅の時計塔に住む孤児ヒューゴ(エイサ・バターフィールド)と駅構内の玩具屋の主人ジョルジュ(ベン・キングズレー)との関係が、作品全編のキーになります。後半に、実はジョルジュは仏国の大映画監督のジョルジュ・メリエスだったことが分かります。メリエスは、パリ出身で、特撮(SFX)の創始者であり、最初の職業映画監督といわれているそうです。本作は無声映画の草創期に活躍したメリエスへのオマージュにもなっているようです。当時の特撮の現場と完成した映画が再現されており、とても面白く感じました。

 筆者の視力は、左が0.3程度、右が0.7程度で、左右不均衡ですが、遠くのスライドを見る時意外は、普段は余り眼鏡を必要としません。したがって、2D映画を前列の方で鑑賞するのには何の問題もありません。しかし、3D眼鏡をかけて3D映画を観ると左右のピントが合わないため、全体の画像がとてもぼけてしまいます。仕方なく余り使わない眼鏡を取り出して、3D眼鏡とともに、二つの眼鏡をかけて鑑賞することになります。これがとても煩わしいのです。

  • 3Dの 意義を教える ヒューゴかな

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2012年3月 3日 (土)

最近観た映画(2012年3月#1:戦火の馬)

 さすがスピルバーグ監督とうならせる作品でした。愛と勇気と夢を与えてくれる映画だと思います。終盤は涙なしでは観られませんでした。涙腺を刺激する仕掛けがいくつか仕込んであるのです。今年の第84回アカデミー賞作品賞にノミネートされただけあって、今年のベストの一本だと思います。それにしても馬の演技に、馬が演技するのかどうかも分かりませんが、素晴らしいものがありました。目の表情など、まるで分っているようでした。多分鉄条網を突破するシーンなどの危険な場面ではVFXを使ったらしいのですが、それ以外はほとんど実写らしいのです。

 英国のうねる丘が続く草原での、とても美しい夜明けのシーンで始まり、また同じようなシーンで終わります。そう、本作は1982年に出版されたマイケル・モーバーゴによる児童小説「戦火の馬(War Horse)」を原作としているのです。英国に生まれた馬達が、第一次世界大戦で軍馬として仏国に送り込まれましたが、その際の馬と人間との係わりを馬の視点から物語化したものらしいです。ロンドンでは、すでに「軍馬ジョーイ」という舞台になっていて、評判になっていたそうです。

 英国の草原の牧場で生まれたサラブレッドの子馬ジョーイが、馬を見る目は確かな、元英国騎兵の農夫に買われることから物語は始まります。農夫の息子アルバートが調教しますが、農夫は小作料を払うために結局英国軍に騎馬として売ってしまいます。ここからジョーイの放浪が始まります。第一次世界大戦のために仏国に渡り、独軍に捕われますが、一時フランスの少女の馬となります。再度独軍に徴用され、大砲を引いたりしますが、逃亡を図り英独両軍がにらみ合う戦場で立ち往生します。

 馬の話が中心なのですが、英国の地主と小作、地主の子と小作の子、英独両軍内部の人間関係、独軍にいろいろ徴用される仏国の農夫等、緻密に描かれています。特に、軍の機動力が馬から車、そして飛行機に代わるタイミングだった第一次世界大戦の様子を面白く鑑賞しました。半分位は仏国での場面でしたが、撮影はすべて英国で行われたそうです。

  • 馬が主役 新しい発想に 喝采を

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