最近観た映画(2012年4月#8:KOTOKO)
本作は斬新な映像で知られる塚本晋也監督と沖縄の歌姫、シンガーソングライターのCoccoが共同で企画した映画です。昨年の第68回ベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門最高賞(グランプリ)を受賞しています。オリゾンティ部門とは、コンペティション部門に比べ斬新性・先鋭性のある作品を集めた部門とのことです。製作・脚本・監督・撮影・編集を塚本が担当し、原案・音楽・美術をCoccoが担当し、主要出演者は二人ということで、本当に二人で作り上げた映画です。
メディアの評価も高かったので、押っ取り刀で観に参りました。しかし、正直を言うと、私にはすぐには理解できない作品でした。悲鳴と血ばかりが気になって、自分の考えがなかなかまとまりませんでした。全体を通して、狂気・インセインの世界だと感じました。「愛する息子を守ろうとするあまり、現実と虚構のバランスを崩していく女性の慟哭と再生」を表現したと言われれば、そんな気がするという感じです。何度か観ないとよく理解できないと思いました。
幼い息子・大二郎を育てる琴子(Cocco)は、子供を愛し守らなければいけないという強迫観念からか、世界が二つに観え、子供を攻撃から守らるために奇行を繰り返します。そのために幼児虐待の疑いを抱かれ息子を引き離されてしまいます。ただし、彼女は歌っている時だけは、世界が一つになるのだそうです。でも、彼女は生きていることを確かめるために、腕を切り血を流します。そんな歌声に惚れた作家・田中(塚本)が現れ、琴子に虐待されるのですが、プロポーズし一緒に暮すことになります。その後も田中は琴子にボコボコにされます。田中の無限な無償の愛が描かれますが、いつの間にか田中は消えてしまいます。映画後半は、琴子の熱唱、自動小銃の乱射を描くことによる戦争反対表明、千羽鶴等が登場する狂気を越えた美しい世界、息子がすくすくと成長していること、等々が表現されていきます。
なお、塚本監督は、NHKの「ゲゲゲの女房」、「坂の上の雲」、「カーネーション」等に出演している本格俳優でもあります。
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