最近観た映画(2012年5月#11:ムサン日記~白い犬)
深刻な食料難から北朝鮮を脱出(脱北)する人が増加しており、韓国に暮らす脱北者は今や2万数千人に達していているといわれています。本作韓国映画では、やっとの思いで脱北してきた青年スンチョルが、厳しい差別に遭いながらもソウル(京城)で倹しく生きている様を緻密に描いています。一緒に脱北した友人や監視役の刑事との交流、薄給のポスター貼りの仕事、チンピラに絡まれること、教会での出会い、カラオケボックスでのアルバイト、白い犬ペックとの生活、詩情豊かに演出されております。
韓国の若手有望監督のパク・ジョンボムが、製作・監督・脚本・主演の一人四役をこなしています。ムサン(茂山)とは北朝鮮東北部・威鏡北道(ハムギョンブㇰド)にある中国国境の街です。豆満江(トマンガン)に面しており、北側対岸は中国吉林省になります。川幅が狭く冬は凍結するため、脱北者は川を渡って中国に入り、そして韓国を目指します。
映画終盤では、スンチョルは、教会で北朝鮮における自分の暗い過去を告白し、詐欺まがいのビジネスをしている友人を見限り、ついに韓国社会に融合していくように観えます。しかし、白い犬ペックの運命と同様に、彼の運命も翻弄されていくように思えます。本作は、パク監督の学生時代の後輩だった、実際の脱北青年チョン・スンチョルから発想を得ており、若くして亡くなったチョン・スンチョルに捧げられています。
- 南北の 垣根に翻弄 脱北者
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