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2012年5月の17件の記事

2012年5月31日 (木)

最近観た映画(2012年5月#17:相馬看花-第一部、奪われた土地の記憶-)

 東日本大震災と大津波、そしてとりわけ福島第一原発の事故に見舞われた南相馬市原町区江井(えねい)地区の被災者達を追った、渾身の力を込めたドキュメンタリー映画です。若手の松林要樹監督が、避難所で一緒に寝食を共にしながら撮影しました。

 映画は、昨年3月11日に監督が三畳間のアパートで地震の大きな揺れに遭うところから始まります。3週間後の4月3日に支援物資を運ぶ友人のトラックに乗って、監督は南相馬市に向かいそこで市議会議員の田中京子さんと出会います。田中さんとの出会いが本作を完成させるためには絶対的な条件であり、幸運でもありました。

 田中さんの自宅は第一原発から20km以内の警戒区域内にあり、田中さんに同行することにより監督は警戒区域内に立ち入ることができました。田中さんが仲間達と経営する直売所の様子、自宅周辺の家が空巣に入られていること、また妻の脚が悪いことから避難せずに警戒区域内で暮らす夫婦がいること等、ありのままの姿を伝えています。

 避難所に暮す被災者達は、決して悲しみに明け暮れている訳ではなく、地域住民同士が明るく仲良く生活し、原発に対する自分たちのこれまでの姿勢に反省の弁も述べながらも、前向きに生きていたことが分かりました。TVや新聞の報道は官製であり、いつも一方向的ですが、本作には真実の姿が描かれているように思えました。

 映画のタイトル「相馬看花」は、中国の故事「走馬看花」からとられているそうです。本作にも、警戒区域内の相馬小高神社ではできなかった、相馬野馬追の仮神事の模様が映されています。次作の第二部はこの馬をテーマにしたものらしいですが、期待しています。

  • 本当の 姿を映す ドキュメント

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2012年5月29日 (火)

最近観た映画(2012年5月#16:ミッドナイト・イン・パリ)

 冒頭のパリの有名な情景の数々、改めてパリは本当に美しいと思いました。しばらく往っていませんが、また訪れたいと強く感じました。仏語は昔少し習いましたが、さらに勉強しなければと思いました。昨年は思うところがあって、中国語会話を学びましたが…。

 皮肉たっぷりのコメディ映画を得意とする米国のウディ・アレン監督(兼脚本)の映画らしく、台詞が長く多い作品でした。台詞もやや捻ってあり、時々屁理屈のようにも聴こえます。原題もずばり"Midnight in Paris"で、今年の第84回アカデミー賞では作品賞は逃したものの、見事脚本賞を獲得しました。

 2010年のパリに旅しているハリウッドの売れっ子脚本家ギル・ベンダー(オーウェン・ウィルソン)は、殻を破るために小説の創作に挑戦しています。実は、婚約者イネズ(レイチェル・マクアダムズ)の父親の出張に便乗してパリに来ていました。ギルはパリに住んで創作に没頭したいと考えているため、イネズともその両親とも何となく気まずくなります。さらに、イネズの男友達の学者ポール(マイケル・シーン)も現れ、胡散臭い蘊蓄に辟易します。

 ある晩ギルは皆と別れて深夜のパリを一人で散歩していて、道に迷います。真夜中12時の鐘が鳴ると、旧式のプジョーが走ってきて、誘われるまま乗り込みます。着いた先は、ジャン・コクトー主催のパーティ会場で、スコット&ゼルダ・フィッツジェラルドやコール・ポーターに出会います。次のバーでは、アーネスト・ヘミングウェイと話をします。1920年代のパリに迷い込んでいたのです。

 翌晩そして翌々晩も真夜中に昔のパリに迷い込み、ヘミングウェイからガートルード・スタイン(キャシー・ベイツ)に紹介され、スタインにギルの処女作を読んでもらうことになります。スタインの事務所にはパブロ・ピカソがたまたまおり、その愛人のアドリアナ(マリオン・コティヤール)に恋心を抱いてしまいます。そうこうする中で、5回目のトリップを終えた後、ギルは重大な決断を下すことになります。

  • 不思議だな パリの魔法は ありそうだ

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2012年5月25日 (金)

最近観た映画(2012年5月#15:サニー 永遠の仲間たち)

 満足度の高い韓国映画でした。一言でいえば、ソウルの女子高7人組の同窓会のようなストーリーです。アラフォーになった現在の彼女達と、25年前の青春時代真っ盛りの彼女達の対比が素晴らしいと思いました。1980年代のポップスの名曲が上手く使われています。ドイツのディスコバンド、ボニー・Mによる「サニー」は、映画のタイトル(原題は"Sunny")にもなり、仲良しグループの名前としても使用されています。仏映画『ラ・ブーム』(1980)で使われ有名になったリチャード・サンダーソンの「愛のファンタジー(リアリティ)」は、主人公イム・ナミ(ユ・ホジョン、シム・ウンギョン)の恋物語のテーマになっていました。「サニー」は映画の後、いつものカラオケ・スナックで思わず歌ってみてしまいました。

 現在のナミが母親の入院した病院で、25年前の高校7人組のリーダーだったハ・チュナ(ジン・ヒギョン、カン・ソラ)に出会うことから大きな流れが始まります。チュナは痛みに耐える余命2ヶ月の患者で、ナミに残りの5人を捜してほしいと依頼します。田舎から転校してきたナミをチュナが仲間に受け入れたこと、喧嘩や淡いロマンス、反軍事政権デモ等、高校時代の思い出が色鮮やかに描かれるとともに、今のそれぞれの現実が対比されます。最後にチュナの葬儀のシーンになりますが、そこでの弁護士によるチュナの遺言朗読がとても面白いと思いました。ある事件のため高校時代の文化祭で踊れなかった、「サニー」に合わせてのダンスを祭壇の前で皆で踊ります。そこへ最後まで行方が分からなかった一人が…。

 現在と25年前を対比しているので、すべての配役に2人ずつの俳優が充てられていて、またそれがさもありなんと思わせるところが凄いと感じました。高校の同窓会に出席すると、昔の話題が沢山出てきて、甘酸っぱい想いが込み上げてきませんでしょうか。これはすべての人々に共通していることで、だから本作は観客の共感を呼ぶのだと思います。本作は韓国ではロングランとなり750万人を動員したといいます。カン・ヒョンチョル監督(兼脚本)の楽しく緻密な映画創りに敬意を表します。

  • 青春を 甘酸っぱくも 振り返る

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2012年5月22日 (火)

最近観た映画(2012年5月#14:この空の花 長岡花火物語)

 大林宣彦監督の最新作です。長岡花火と反戦・平和を結び付けた不思議な映画でした。長岡はご存じのとおり、幕末の河合継之助、米百俵の小林虎三郎、そして海軍大将・山本五十六の故郷です。戊辰戦争では、河合の戦争回避の努力にも係わらず長岡が戦場になりました。そして、太平洋戦争では昭和20年(1945年)8月1日夜に米軍B29による大空襲を受けました。長岡は二度廃墟になっています。この8月1日から3日間、長岡花火は復興、追悼、祈りの花火として打ち上げられるのだそうです。

 長岡は長崎に落とされたプルトニウム型原子爆弾ファットマンの模擬爆弾の実験場にもされました。平成16年(2004年)の中越地震でも被害を受け、長岡市と合併した山古志村の被害は甚大でしたが、闘牛と錦鯉とともに復興しております。また、昨年の東日本大震災では南相馬市の被災者を早々に受け入れました。

 これらの事実を基に、長崎の記者・遠藤玲子(松雪泰子)が山古志に住む高校教師で昔の恋人の片山健一(高島政宏)を訪ねるというストーリーが展開されます。大空襲被害者の語りや中越地震の被害等ドキュメンタリー風な味付けもされています。そして、一輪車の女子高生・元木花(猪股南)が創作した劇中劇「まだ戦争には間に合う」の上演に至ります。そこでは、本物の長岡花火の打上げの映像も流されます(VFXによる重ね撮りの映像もあります)。

 長岡花火に込められた反戦・平和の意思はよく理解できましたが、2時間40分というのは少し長すぎるように感じました。いろいろなことが関連付けられていて、少々詰め込み過ぎのきらいもあるように思えました。

  • 一輪車 妙に釣り合う 反戦に

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2012年5月21日 (月)

最近観た映画(2012年5月#13:孤島の王)

 1915年にノルウェーのバストイ島で起きた少年達の反乱をドキュメンタリー風に描いた作品です。バストイ島には、問題少年を更生させるための施設、いわば矯正少年院があり、島全体が隔離されていました。ノルウェーのマリウス・ホルスト監督が10年にわたり取材した実際の事件を基に製作しました。ノルウェー・仏・スウェーデン・ポーランドの4ヶ国合作です。原題は"Kongen av Bast?y"、英題は"King of Devil's Island"です。

 1915年に元漁船員の非行少年エーリング(ベンヤミン・ヘールスター)がノルウェー本土からバストイ島に送り込まれてきます。彼は、キリスト教に基づく施設であるのに、過酷な重労働、理不尽な懲罰・暴力、教育者による性的暴行等が横行しているのを目の当たりにします。彼は一度は脱走に成功しますが、また連れ戻されてしまいます。しかし次第に少年達の心は一体となり、王のように振舞う院長や冷徹で卑怯な寮長に反抗し、最後には大きな反乱となり一度は島を征服します。

  • ノルウェーの 厳しい矯正 今はなし
  • 北欧も 暗い過去持ち 民主化へ

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2012年5月19日 (土)

最近観た映画(2012年5月#12:ファミリー・ツリー)

 カウイ・ハート・ヘミングスのデビュー小説"The Descendants"を原作とする映画です。ヒューマン・ドラマ制作の名手アレクサンダー・ペインが監督・脚本・製作を務めています。今年の第84回アカデミー賞では脚色賞を受賞しております。映画の原題も小説と同じ"The Descendants"で、直訳すれば「子孫達・末裔達」ですが、邦題は「ファミリー・ツリー」となっています。

 映画は、原題が示唆するとおりハワイ王族の末裔である、ハワイのオアフ島に暮らす弁護士マット・キング(ジョージ・クルーニー)が先祖から受け継いだ広大な土地をどうするのかということが全体のテーマになっています。仕事漬けのマットが、妻がボート事故で意識不明になり入院したことから家族に目を向けざるをえなくなります。二人の娘との関係、妻の不倫の発覚、不倫相手との対決等々が描かれていきます。彼は家族のまとまりを取り戻せるのでしょうか。

  • 前触れも なく 訪れる 家の危機

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2012年5月17日 (木)

最近観た映画(2012年5月#11:ムサン日記~白い犬)

 深刻な食料難から北朝鮮を脱出(脱北)する人が増加しており、韓国に暮らす脱北者は今や2万数千人に達していているといわれています。本作韓国映画では、やっとの思いで脱北してきた青年スンチョルが、厳しい差別に遭いながらもソウル(京城)で倹しく生きている様を緻密に描いています。一緒に脱北した友人や監視役の刑事との交流、薄給のポスター貼りの仕事、チンピラに絡まれること、教会での出会い、カラオケボックスでのアルバイト、白い犬ペックとの生活、詩情豊かに演出されております。

 韓国の若手有望監督のパク・ジョンボムが、製作・監督・脚本・主演の一人四役をこなしています。ムサン(茂山)とは北朝鮮東北部・威鏡北道(ハムギョンブㇰド)にある中国国境の街です。豆満江(トマンガン)に面しており、北側対岸は中国吉林省になります。川幅が狭く冬は凍結するため、脱北者は川を渡って中国に入り、そして韓国を目指します。

 映画終盤では、スンチョルは、教会で北朝鮮における自分の暗い過去を告白し、詐欺まがいのビジネスをしている友人を見限り、ついに韓国社会に融合していくように観えます。しかし、白い犬ペックの運命と同様に、彼の運命も翻弄されていくように思えます。本作は、パク監督の学生時代の後輩だった、実際の脱北青年チョン・スンチョルから発想を得ており、若くして亡くなったチョン・スンチョルに捧げられています。

  • 南北の 垣根に翻弄 脱北者

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2012年5月16日 (水)

最近観た映画(2012年5月#10:さあ帰ろう、べダルをこいで)

 ブルガリアの新鋭監督ステファン・コマンダレフが脚本も兼ねて創った映画です。原題は"Svetat e golyam i spasenie debne otvsyakade"で、Googleで英語に翻訳すると"The World is Big and Salvation Lurks Around the Corner"でした。直訳すると「世界は広く、魂の救済はすぐその角に潜む」という感じでしょうか。邦題よりは、少しは哲学的ですね。2008年にブルガリア・独・ハンガリー・スロベニア・セルビアの5ヶ国で合作されました。

 バックギャモンとタンデム自転車が本作のテーマになっています。主人公は自動車事故で記憶喪失になったアレックス(カルロ・リューベック)の祖父バイ・ダン(ミキ・マノイロヴィッチ)です。なぜアレックスは両親とともに祖国ブルガリアを出てドイツに亡命しなければならなかったか、祖父とタンデム自転車で祖国に帰る道中でアレックスに起きる変化等々が描かれていきます。現代と30年前のフラッシュバックにより、映画は構成されています。

  • 自転車と バックギャモンが 東欧か

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2012年5月15日 (火)

最近観た映画(2012年5月#9:ロボット)

 確かに何でもありのインド映画でした。「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」のように、最後まで目を離すことができませんでした。結構遅いレイトショー時間帯で、食事もアルコールも入っているのに、一睡もしませんでした。最近経済成長が顕著で、素晴らしい映画がどんどん創り出されているインドの力強さを感じない訳にはいきませんでした。

 人口がひときわ多く、大卒も大量生産されているインドでは、優秀なコンピューター・アーティストやスタントマンも沢山いるものと思います。無限にも感じる大量のVFXやワイヤー・アクションが使われていて、本当に目が回りました。もちろんインド映画らしく、大集団によるダンス・シーンも何回かあり、ダンス好きの観客も楽しめるようになっていました。ただし、ロボットが踊っている設定になっているためか、同じ容姿をした何十人ものダンサーが同時に踊っているのには閉口しました。

 ストーリーは割と単純で、ロボット工学のバシー博士(インドを代表する男優ラジニカーント)はついに画期的なロボット・アンドロイドを完成させます。ロボットはチッティ(ラジニカーントの二役)と名付けられます。列車よりも早く、カンフーも無敵のスーパーヒーローの誕生です。善悪の判断をするために感情を与えられたチッティは、バシー博士の恋人サナ(元ミス・ワールドのアイシュワリヤー・ラーイ)に横恋慕してしまいます。その後、悪の感情も注入されたために、サナを誘拐し、自分の複製を大量に製作し集団で警察・軍隊と戦います。ロボットの集団がいろいろな形や物に変形していくのは、トランスフォーマー的でもあり、結構な見所です。でも、すべてはなぜか愛嬌があり、笑って観られるところが救いでした。

  • ハリウッド 越えてしまうか インド流

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2012年5月14日 (月)

最近観た映画(2012年5月#8:テルマエ・ロマエ)

 2週連続で観客動員数トップの映画「テルマエ・ロマエ」を観て参りました。原作はヤマザキ・マリの同名の漫画です。書店員の選ぶマンガ大賞2010と手塚治文化賞短編賞(2010年)をダブル受賞しています。「テルマエ・ロマエ (Thermae Romae)」とは、ラテン語で「ローマの浴場」という意味だそうです。ヤマザキ・マリは17歳で単身イタリアに渡り、フィレンツェの美術学校で絵画の勉強を始めたとのことで、なるほどそれで古代イタリア事情に詳しい理由がわかりました。

 映画の半分はイタリア最大の、欧州でも最大級の映画撮影所であるチネチッタで撮影されたようです。過去に数々の映画撮影に使われた壮大・華麗なセットがあるところのようです。そして、音楽は、イタリアの二人の偉大なオペラ作曲家、ヴェルディとプッチーニの歌曲がふんだんに使われていました。テーマ曲は英国人歌手ラッセル・ワトソンが歌う「誰も寝てはならぬ」でした。ということで、ローマの壮大な景色を背景に、素晴らしい歌声と音楽が鳴り響くという、まるで豪華オペラの世界の中にいるようでした。

 ストーリーはそれほど複雑なものではなく、2世紀の古代ローマの浴場設計技師ルシウス(阿倍寛)が、現代の日本にタイムスリップし日本の浴場文化・技術を学び、それを古代ローマの浴場設計・建設に活かすという内容です。その中で、ローマではハドリアヌス皇帝(市村正親)との親交があり、現代日本では漫画家志望で、温泉旅館出身の山越真実(上戸彩)との出会いがあります。また、お風呂好きの古代イタリア人達、そして温泉好きの現代日本人達との交流も描かれています。もちろん本作はコメディ映画ですので、過去と現代やイタリアと日本の違いなどを使った笑いがここかしこにあふれています。

  • 日と伊の お風呂同盟 温(ぬる)むなり

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2012年5月11日 (金)

最近観た映画(2012年5月#7:SR サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者)

 妙に胸に迫るものがある映画でした。確かに面白く、いろいろ考えられさせられました。本作に描かれている埼玉・北関東の若者達のように、誰しも若くして半分落ちこぼれ、向こう見ずで親不孝になり、ラップ・ミュージック(ヒップホップ・ミュージック)にはまればこうなるのではないかという恐怖を覚えました。

 ラップ・ミュージックは、社会への批判、自分への反省、未来への夢等を語るのに適した音楽のようです。一種のアジ(アジテーション:扇動)演説みたいなものかもしれません。そういえば山梨の多国籍の若者達を描いて、昨秋話題になった映画「サウダージ」でも、ラップ・ミュージックが重要な役割を果たしていました。

 東京で本作を上映しているのは1館だけで、すでに超レイトショーになっているのに結構沢山の観客が集まっていました。筆者は夕食をしっかりとり、お酒も楽しんだ後なので少し心配しましたが、一瞬も目を閉じることなく最後まで堪能することができました。観客を飽きさせない、本作の出来が分かると思います。

 シリーズ3作目となる本作でも、入江悠監督が監督・脚本・編集の三役を兼ねています。自主製作のインディペンデント映画で、多分製作費用も限られていると思われますが、ここまでの映画が作れるのだと感心しました。前出「サウダージ」の富田克也監督についてと同様です。入江監督は日本大学芸術学部卒業で、主演のSHO-GUNGの3人も同窓(中退2人)らしいので、息の合った制作ができるのかもしれません。

  • ラッパーは 社会の批判 縦横に

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2012年5月10日 (木)

最近観た映画(2012年5月#6:決闘の大地で)

 どこの国が分からない場所で、剣戟戦と銃撃戦が入り混じった、何とも不思議な雰囲気の西部劇でした。「マイウェイ 12,000キロの真実」にオダギリジョーとともに主演した韓国の名優チャン・ドンゴンが初主演するハリウッド映画です。ハリウッド映画らしくVFXを駆使したアクション場面は、台詞がなくても映像だけでストーリーを追うことができます。長編映画初挑戦のイ・スンムが監督と脚本の両方を務めました。原題は"The Warrior's Way"(武人の道)で、米国、韓国そしてニュージーランドの3ヶ国合作です。

 殺し屋集団「悲しい笛」に属する無敵の剣士ヤン(チャン・ドンゴン)は、冒頭の殺陣で敵対する一族を皆殺しにしますが、乳母車に乗った赤児の姫だけは殺せず助けてしまいます。掟に背き、乳児を連れて旅に出ることになります。たどり着いたのは、西部の寂れた小さな田舎町ロード、友人はすでになくなっていましたが、とりあえずそこに住むことにし、友人のやっていたクリーニング店を継ぎます。

 家族を殺され、自身も瀕死の重傷を負った過去を持つ、リン(ケイト・ボスワース)とのロマンスも生まれます。「英国王のスピーチ」で昨年の第83回アカデミー賞助演男優賞にノミネートされたジェフリー・ラッシュも酔いどれ男ロンとして登場します。リンの家族の命を奪った非常なコロネル大佐(ダニー・ヒューストン)との戦いが始まりますが、ヤンは無敵の剣士として復活し、街中が団結して銃撃戦・剣戟戦のに挑みます。ついには「悲しい笛」のボス(ティ・ロン)がやって来て、最後の戦いになります。

  • いよいよか キムチウエスタン 現れる

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2012年5月 9日 (水)

最近観た映画(2012年5月#5:誰も知らない基地のこと)

 今世界には米軍基地はいくつあるのでしょうか。なぜ基地の数は減らずに、増え続けているのでしょうか。これらの疑問に答えようとしているのが、イタリアの若手監督2人が創った本ドキュメンタリー(伊国映画)です。ビチェンツァ(イタリア)、ディエゴ・ガルシア(インド洋)、そして普天間(沖縄)で主な取材をしています。

 現在役130ヶ国に700を超える米軍基地があるそうです。そして、約25万人の米軍兵士が派遣されているそうです。沖縄には38の米軍基地があり、およそ35,000人の兵士が駐在しているとのことです。これらの基地はそれぞれの戦争終結に伴って設置されたものですが、いつの間にか米軍常駐の常備軍になっています。ところで、本作の原題は"Standing Army"(常備軍)です。

 では、なぜ米国常備軍の基地が増え続けるのでしょうか。それは米国の軍産複合体に原因があるようです。つまり、米軍の軍備費が米国経済と深く結び付いているのです。軍需産業は米国の主要産業であり、軍隊が米国の若者を沢山雇用しており、さらに最近は兵站等が民間企業のビジネスになりました。米ソ冷戦が終了した時に世界中の米軍基地は不要になったはずでしたが、軍産複合体つまり米国経済の都合から仮想敵国が考え出され、米軍基地は常備軍化したと本作は解説しています。そして、いまや戦争をしたから基地ができるのではなく、基地を造るために戦争をするようになったと、何とも恐ろしいことに言及しています。

  • 戦争の ビジネス化には 恐怖あり

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2012年5月 8日 (火)

最近観た映画(2012年5月#4:わが母の記)

 昭和の文豪・井上靖がほぼ半世紀前に綴った自伝的小説「わが母の記」三部作(花の下・月の光・雪の面)を映画化したものとのことです。監督と脚本を原田眞人が兼任しました。昭和30年代後半(1960年代前半)の裕福な家族の肖像や生活がよく描かれていました。

 撮影は井上靖が家族とともに暮らした東京・世田谷区の自宅を実際に使ったそうです。故郷である伊豆・湯ヶ島や別荘のある軽井沢でもロケが行われたとのことです。沼津からの富士山の眺望も含め、日本の懐かしい風景がふんだんに登場していました。

 作家・伊戸洪作(役所広司)は幼い頃、母親・八重(樹木希林)に捨てられたと思っていました。父親が死んだ後、八重が、今でいうところの、認知症気味になっていきます。そのことから、湯ヶ島の実家、そして世田谷の自宅で いろいろな喜劇的なトラブルが巻き起こります。作家の三女・琴子(宮崎あおい)が、反抗しながらも徐々に祖母の面倒を見るようになり、父親の協力者になっていきます。最後には、八重と洪作親子の誤解も解け、親子の絆を確かめ合うことになります。

 宮崎あおいが、当初高校生として登場しますが、本当にそう観えたのには驚きました。最近離婚騒動が起きていたのにですね…。樹木希林の演技はまさに凄いの一言です。役所広司も安定した役作りをしていました。

  • 古き良き 時代に戻り 一献を

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2012年5月 7日 (月)

最近観た映画(2012年5月#3:裏切りのサーカス)

 原作は、20世紀半ばの米ソ冷戦時代に英国諜報部のMI5及びMI6で実際に諜報活動に従事していたジョン・ル・カレが、1974年に書き上げた「ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ」というスパイ小説です。監督は、「僕のエリ 200歳の少女」(昨年「モールス」として米国でリメークされました)で世界的に注目されたスウェーデン人のトマス・アルフレッドソンが務めました。原題は原作と同じ"Tinker Tailor Soldier Spy"で、英・仏・独の三ヶ国合作の作品でした。

 ストーリーは、サーカス(英国諜報部)に潜むソ連の二重スパイ(もぐら)を突き止めるという、実際のあった事件を基にしたものです。もぐらかもしれないのが、幹部でティンカー(鋳掛け屋)、テイラー(仕立屋)、ソルジャー(兵隊) そしてプアマン(貧乏人)とコードネームを付けられたの4人です。次官からの極秘命令によりもぐらをさがすのが、ジョージ・スマイリー(ゲイリー・オールドマン)です。オールドマンは、本作により今年の第84回アカデミー賞主演男優賞にノミネートされました。

 カーチェイスや銃撃戦のアクションがなく、全編が余りに静かに、緻密に流れて行きます。諜報部ですから、元々全員がスパイです。スパイをするためには、何らかの裏取引が常に必要とされると思います。つまり全員多かれ少なかれ二重スパイの色彩を帯びている訳です。その中から本物の二重スパイ(もぐら)を探すのは至難技になります。レイトショーでしたので、食事をお酒を楽しんだ後の頭脳はとても話に付いていけませんでした。原作も読み、もう一度映画も観る必要がありそうです。

  • スパイ物 静かに流れ 追い付けず

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2012年5月 3日 (木)

最近観た映画(2012年5月#2:ル・アーブルの靴みがき)

 古き良き時代の、隣人同士の助合いを観せてくれるような映画でした。鑑賞後の気分はすがすがしいものがありました。「ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン」の直後に観たため、余計そう思ったのかもしれません。

 フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキが製作・脚本・監督のすべてを担当した、フィンランド・仏・独合作の作品です。昨年の第64回カンヌ国際映画祭で国際映画批評家協会賞を受賞しています。また、出演したカウリスマキ監督の愛犬ライカにパルム・ドッグ賞の審査員特別賞が与えられています。原題は、単に"Le Havre"(ル・アーブル)です。

 93分と今や割と短い映画の分類にはなりますが、内容は緻密に設計されています。靴みがきのマルセル(アンドレ・ウィルム)は、その妻アルレッティ(カティ・オウティネン)そして愛犬ライカと、港町ル・アーブルの裏町でつましい生活をしています。ベトナム人の靴みがきの同僚、パン屋の女主人、八百屋夫婦、酒場のマダム等、普通の市井の人々との交流が主です。

 ある日突然アフリカ・ガボンからコンテナに入った不法難民が港に到着します。追手から逃れた少年が偶然マルセルのもとに参ります。ちょうどその頃アルレッティが不治の病に侵されます。地域の皆が少年を母が住むロンドンへ脱出させようと協力します。密航資金作りのため、地域出身のロック歌手の公演も企画されます。善意が善意を呼び、最後に奇跡を導きます。そして、桜の花が満開になっています。

  • 人助け 巡り巡って 助けられ

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最近観た映画(2012年5月#1:ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン)

 女性達でもここまでできるかという、エロ・グロ・ナンセンスでハチャメチャ・ドタバタのコメディ映画でした。女性には必ず共通し、共感を呼ぶ、友達の結婚という話題を使って、シャワー(独身お別れのパーティのことらしい)や結婚式とその準備にまつわる究極のドタバタを観せてくれます。昨年観た「ハングオーバー!!史上最悪の二日酔い、国境を越える」の女性版ともいえる作品でした。女性向けに創られた作品らしく、女性に結構人気があり、沢山の女性観客が来場していたのは驚きでした。実に男性観客はごく少数でした。

 ブライズメイズとは、花嫁の親友、親族が集まってチームを作り、式当日まで花嫁のお世話をする女性(結婚介添え人)達のことらしいです。ミルウォーキー在住でアラフォー・独身のアニー(クリステン・ウィグ)は、親友リリアン(マーヤ・ルドルフ)の婚約にあたり、そのメイド・オブ・オナー(ブライズメイズのとりまとめ)を頼まれてしまいます。シカゴでの盛大な婚約披露パーティで、他の4人のブライズメイズを紹介されます。しかし、その一人である、花婿の上司の美人妻ヘレン(ローズ・バーン)と最初から張り合ってしまいます。

 並行してアニーと金持ちセフレとの関係、またパトカーに乗ったローズ巡査(クリス・オダウド)とのロマンスも語られています。花婿の超太めの妹メーガン(メリッサ・マッカーシー)の存在も絶妙で、何やら国家機密にかかわる仕事をしているようで、エンドロールでの再登場には驚きました。超エッチな下ネタ、下品この上もない言動も沢山あるのですが、ユーモアも人情もあり、涙を誘う場面もあります。米国映画らしくハッピーエンドで終わり、鑑賞後の後味の悪さは余りありませんでした。

 今年観た映画「宇宙人ポール」のちょっと変な娘ルース役でも出演していた、本作の主演クリステン・ウィグが共同で脚本も担当しました。本作は今年の第84回アカデミー賞脚本賞にノミネートされました。また、メリッサ・マッカーシーも助演女優賞にノミネートされています。ポール・フェイグが監督しましたが、出演者ほとんどがTVにも出演しているコメディアンとのことで、全編アドリブOKという方針でリハーサルしたそうです。原題は単に"Bridesmaids"です。

  • ハチャメチャも 米国文化の いいところ

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