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2012年6月の8件の記事

2012年6月30日 (土)

最近観た映画(2012年6月#12:きっと ここが帰る場所)

 2008年の第61回カンヌ国際映画祭で審査員長を務めたショーン・ペンが、審査員賞を獲得したパオロ・ソレンティーノ監督に惚れ込んだことがきっかけとなって、創られた映画です。イタリア人監督が米国で制作した作品となりました。

 アイラインを引き、口紅を塗った異形の元ロックスター・シャイアン(ショーン・ペン)が主人公です。力の抜けた、飄々とした行動と語り口で、終始不思議な雰囲気を醸し出します。シャイアンはアイルランドのダブリンにある豪邸で妻ジェーン(フランシス・マクドーマント)とのんびり暮らしています。30年も合っていない父親が危篤という報せを受けて、船でニューヨークに向かいます。父親の死際には間に合いませんでしたが、ユダヤ人の父がアウシュビッツにいたナチSS隊員を追跡していたことを知り、それを引き継ぐことにします。舞台はニューメキシコ州からユタ州へと移り、一種のロード・ムービーになります。いろいろな米国人との関わり合いがユーモラスに描かれ、各所で笑いを誘います。

 本作では音楽がとても重要な役割をしており、デイヴィッド・バーンとウィル・オールダムが担当しています。実際、元トーキング・ヘッズのデイヴィッド・バーンは本人役で出演しており、彼が創った歌"This Must Be The Place"が作品中で使われており、何と映画の原題にもなっています。なお、本作は米国映画(アカデミー賞対象)ですが、製作国は伊・仏・アイルランドの3ヶ国合作です。

  • アメリカの ロードサイドにも 人生が

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2012年6月19日 (火)

最近観た映画(2012年6月#7:ベルフラワー)

 確かに問題作でした。男たちの心の奥底に秘めている、暴力、恋愛・性欲そして妄想の映像化に挑戦しており、その新鮮な映像が観客の何かを引きずり出すのだと思います。

 映画「マッドマックス2」(1981年豪)の悪の首領ヒューマンガスにあこがれる2人、ウッドロー(エヴァン・クローデル)とエイデン(タイラー・ドーソン)は、いわゆるフリーター的存在ですが、火炎放射器とマッスルカーの製造に明け暮れています。ある晩ナンパに出かけて、バーでのコオロギ食べ合戦の対戦相手としてミリー(ジェシー・ワイズマン)に出会います。ウッドローは恋に落ち、二人で車でテキサスまで食事に往きます。この辺は真に米国の田舎の風景です。テキサスから帰った後、ついに二人は愛し合います。しかし、ミリーの裏切りに遭い、少年のままの不安定な心を持つウッドローは乱れます。現実か妄想か分からない世界に陥り、現実が妄想が分からない暴走が始まります。そして一気に結末へ…。

 本作は30歳台になったばかりの若手米国監督エヴァン・クローデルが制作した最初の長編インディーズ映画であり、これ一作で全米に衝撃を与えたそうです。もうお分かりでしょうが、彼は主演もしており、さらに脚本・製作・編集も兼ねています。自分自身の失恋の経験を基に脚本を書き、全財産を使って本作を製作したとのことです。何とエヴァンの失恋の相手はミリー役のジェシーだそうで、映画でもリアルな組合せになっていました。ただし、現在エヴァンには新たな彼女がいるそうです。原題はやはり"Bellflower"で、これは彼ら・彼女らが住んでいる街の通りの名称でした。

  • 炎と恋 不安な心 夢うつつ

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2012年6月15日 (金)

最近観た映画(2012年6月#6:キリマンジャロの雪)

 フランスの港町マルセイユでのみ撮影された仏映画です。現代の世相を鋭くえぐり出した秀逸な作品でした。フランスのケン・ローチとも呼ばれ、また山田洋次監督がわが友と呼ぶ、ロベール・ケディギャン監督の作品です。本作は仏文豪ヴィクトル・ユゴーの長篇詩「哀れな人々」から着想されたそうです。

 マルセイユで造船会社の労働組合の委員長として働くミシェル・マルトロン(ジャン=ピエール・ダルッサン)とその妻マリ=クレール(アリアンヌ・アスカリッド、ケディギャン監督の妻)の回りで起きる出来事を描いています。不景気により、ミシェルがクジ引きでリストラされる社員を選ぶジーンから映画は始まります。ミシェルは自分のクジも引き当て自分自身もリストラしてしまいます。それでも、兄弟と子供と孫に囲まれ、造船所でリストラされた同僚も誘われて、結婚30周年のお祝いが催されます。そこで、夫婦がお祝いにもらったのがキリマンジャロの観えるアフリカへの旅、そして孫たちが歌うのがパスカル・ダネルのシャンソン「キリマンジャロの雪」です。映画の原題"Les neiges du Kilimandjaro"はこの歌の題名からとられとのことです。シャンソンのヒット曲を知らない我々には、その驚きと喜びが少々ピンとこないところもありました。

 マルトロン夫妻が弟夫婦と自宅でカードゲームをしながらくつろいでいたところに強盗が押し入ります。強盗たちはアフリカへの旅行のことも知っていました。ここから本作の重要な展開部に入ります。労働組合の意義、労働組合の欺瞞、失業率の高止まり、世代間の断絶と闘争、親の離婚、親や保護者のいない子供達、等々日本でも問題となっている事柄が次々と提示されます。それでも最後には、社会が本来持つべき意義・機能、助け合いの精神が見事に表現されることになります。それにより、観終わった後の気持ちはとても清々しいのでした。

  • 世代越え 助け合いから 幸せを

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2012年6月14日 (木)

最近観た映画(2012年6月#5:11.25自決の日 三島由紀夫と若者たち)

 1970年(昭和45年)11月25日のあの日、三島由紀夫(本名:平岡公威(きみたけ))が防衛庁市ヶ谷駐屯地(現在は防衛省)のバルコニーで何を訴えていたのでしょうか。それがやっと分かりました。

 自衛隊は憲法違反の存在なのに、憲法改正をしようとせず憲法を守っている。10.21世界反戦デーの時に治安出動すれば改憲のチャンスもあったのだが、警察がそれらをすべて抑えてしまった。武士、モノノフなのに、このことに気付いていない。武士なら立ち上がれ。天皇陛下、万歳。

こんなところでしょうか。

 この頃は、日米安保条約反対、ベトナム戦争反対、全国的な学園紛争等で、世の中は騒然としていました。しかし、当時筆者は全くのノンポリの新入大学生、呑気なものでした。

 三島は自衛隊に体験入隊して訓練を受け、早稲田の学生を引き取り、やはり自衛隊にて訓練を行い、ついには楯の会を創ります。最初は三島が若者たちを教育していく訳ですが、だんだん若者たちの情熱に引っ張られていき、身動きしにくくなっていったようにも思えました。

 社会派の鬼才・若松孝二監督(製作・企画も兼務)の作品ですが、先月(今年5月)の第65回カンヌ国際映画祭のある視点部門でオフィシャル上映されました。

  • 腹切りの 裏に潜むは 覚悟かな

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2012年6月11日 (月)

最近観た映画(2012年6月#4:幸せへのキセキ)

 正統派ハリウッドらしい映画でした。一家を襲う悲劇、息子の非行、仕事を辞め移住を決意、新しい世界への順応と大いなる挑戦、兄や動物園の仲間達との葛藤と和解、若者のロマンス、思わぬ幸運と動物園再開、そしてハッピーエンドへと、何もかもがハリウッド的で、最後まで楽しむことができました。

 主人公のベンジャミン・ミー役に最近人気のあるマット・デイモンを配し、チーフ飼育員のケリー・フォスターとしてスカーレット・ヨハンソンを共演させています。2人とも気合の入った自然な演技をしていました。ベンジャミンの息子と娘、そしてケリーの従姉妹の3人の子役が華を副えていました。また、本物の動物達も上手い演技をしていました。それにしても、なぜ動物園の飼育員達は美女と野獣なのでしょうか。動物園にこんな美女が2人もいるなんて、やはり映画ですよね。

 監督はキャメロン・クロウ(製作と脚本も兼任)で、原作は英国の新聞コラムニスト、ベンジャミン・ミー(映画でも実名です)の自伝"We Bought a Zoo"(私は動物園を買いました)です。邦題は考え過ぎかもしれませんね。

  • 美人なら どう転んでも いい話

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2012年6月 8日 (金)

最近観た映画(2012年6月#3:ジェーン・エア)

 何度も映画化されている作品ですが、やはり最後のシーンは涙なくして観ることはできませんでした。これまでに18本の劇場版映画と9本のTV版映画が製作されているそうです。本作のジェーン・エア(ミア・ワシコウスカ)が一番若く、原作小説の設定にも最も近いようです。1847年に刊行された英国姉妹作家による小説「ジェーン・エア」(姉・シャーロット・ブロンテ著)と「嵐が丘」(妹・エミリー・ブロンテ著)を、若かりし頃胸躍らせながら読んだのを思い出しました。

 ジェーン・エア役のミア・ワシコウスカは、一目観て素晴らしい美人ではありませんが、物語が進むにつれてだんだん素敵な女性になっていきます。逆境や不遇にも負けず、勉学も積み、女性差別がまだあった時代に一人の自立した人間として生きようとする姿に、美しさを観たのかもしれません。相手役の貴族エドワード・フェアファックス・ロチェスター役に、映画「SHAME-シェイム-」で主演したマイケル・ファスベンダーが起用されています。映画での役柄は全く違いますが、両作品における悩める男としての演技はなかなかのものでした。

 ストーリー的には、主人公ジェーン・エアが幼少期から、やや不自然な程に、不遇で逆境に置かれる訳ですが、苦しみ、悲しみ、もがきながらも、それらを敢然と乗り越えて参ります。このジェーン・エアの強さには、思わず感動を覚えます。19世紀前半、電気もなくランプの明かりで暮らす、丘の上にある石造りのお城のような邸宅で起きる、階級社会における田舎のさまざまな出来事は夢の中のことのようにも思えました。

 監督は、父親が日本人である日系米国人のキャリー・ジョージ・フクナガです。英米2ヶ国による合作作品で、原題はもちろん"Jane Eyre"です。

  • 悲しみが 募るほどにも 喜びも

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2012年6月 7日 (木)

最近観た映画(2012年6月#2:ファウスト)

 ゲーテの戯曲「ファウスト」から翻案して創られた映画です。ロシアの巨匠アレクサンドル・ソクーロフが監督(兼脚本)を務めました。昨年の第68回ベネチア国際映画祭では、審査員の満場一致でグランプリ(金獅子賞)を受賞しました。ロシア映画で、原題も"Faust"です。

 元々の戯曲が分かりやすいものではないですから、本作も言葉(台詞)は非常に多く踊るのですが、禅問答のように難解で、意味不明のまま場面が移動していくことがよく起きました。魂を探すハインリッヒ・ファウスト (ヨハネス・ツァイラー)と高利貸マウリツィウス・ミュラー(アントン・アダシンスキー)との駆引きを中心にストーリーが進みます。

 人間の存在、欲望、そして魂の救済を求めるファウストに、悪魔役のミュラーがかける技が見物です。ラストシーンでは、すべての魂が自由に飛翔できそうな感じになるのが救いでしょうか。哲学の故郷、欧州ではやはりこういう映画が評価されるのですね。今年3月に観た映画「ニーチェの馬」を思い出しました。

  • 欧州の 哲学好きには 脱帽す

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2012年6月 1日 (金)

最近観た映画(2012年6月#1:私が、生きる肌)

 英語だとセンシャル(sensual)とでもいうのでしょうか、とても官能的な映画でした。しかも、医学を絡めた、サスペンス・ホラー・バイオレンスムービーにもなっています。しかしながら、決してエロ・グロ的に下品ではなく、映像は充分に美しいと思いました。

 スペインの巨匠ペドロ・アルモドバル監督(兼脚本)が、ティエリ・ジョンケの小説「蜘蛛の微笑」を基に製作した作品だそうです。どうしたらこのように人間の深層の感情を表に引き出しながら、それでいてストーリーはスムーズに展開していくのか、不思議に思いました。原題は"La piel que habito"、英題では"The Skin I Live"で、英題と邦題は直訳のようです。

 皮膚移植に関しては天才形成外科医のロベル・レガル(アントニオ・バンデラス)の家には、謎の美女ベラ・クルス(エレナ・アヤナ)が幽閉されています。彼女はだれなのか、なぜ彼女はここに閉じ込められているのか、何の目的で皮膚移植を研究しているのか、謎が謎を呼びますが、回想シーンも含めて段々と真相が明らかになっていきます。エレナの美しい体を張った演技は見物でした。

  • 美しい 女の肌は 生きる糧

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