最近観た映画(2012年9月#9:ソハの地下水道)
ポーランドの小さな町に実在した、下水道のシンドラーについての物語でした。第二次世界大戦中にナチスに迫害されたユダヤ人に関する映画は種々創られており、もう話題は尽きたのではないかと思われていましたが、まだまだ種は残っていたようです。この作品に登場する地下空間に逃れた女の子(クーニャと呼ばれていたでしょうか)が、2009年にこの実話を本にして出版したので、世に知られることとなったそうです。
セットとはいえ、暗く、悪臭と糞尿にまみれているはずの下水道内のシーンが連続し、さすがに観続けるのが辛い時もありました。この時ばかりは、におい付き映画が実用化されていなくて良かったと思いました。ポーランド出身の女流監督アグニュシュカ・ホランドが、リアリズムを徹底して製作しております。ユダヤ人でもある彼女の執念が、2時間半近い作品から目を離すことを許してはくれませんでした。
ポーランドの小さな町で下水道のメンテナンスを仕事としているソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)が、ナチスの迫害から下水道空間に逃れてきているユダヤ人達を発見します。ソハは最初は金儲けのためだけに支援を提案しますが、彼らの生きていく姿を観ていてその本来持っている人間性を呼び覚まされます。下水道空間の中でも、炊事は行われ、子供達は遊び、男女は愛し合うという日常生活が送られるようになります。ついには、赤ちゃんも誕生することになります。
映画の中では、ゲットーから下水道に潜る人の選択、ソハが支援する人数の限定、ソハと気の弱い若い仲間との葛藤、ポーランド軍将校との駆引き、ドイツ兵との接触、途中で逃げ出した恋人の妹捜し、等々危機一髪のシーンも見物です。大雨が降り下水道が水浸しになった時に、娘のために教会にいたソハの決意は…。14ヶ月に及ぶ地下下水道空間の生活から生還した人々は、ソハ一家とともに生き延びたことを祝い合います。
後に、ソハとその関係者はイスラエルとユダヤ人会から表彰を受けたそうです。本作は独とポーランドの合作であります。原題は映画のイメージどおり"In Darkness"ですが、邦題はなぜか相当な意訳になっています。
- 暗闇で 生きる人々 忘れまじ
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