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2012年9月の3件の記事

2012年9月28日 (金)

最近観た映画(2012年9月#9:ソハの地下水道)

 ポーランドの小さな町に実在した、下水道のシンドラーについての物語でした。第二次世界大戦中にナチスに迫害されたユダヤ人に関する映画は種々創られており、もう話題は尽きたのではないかと思われていましたが、まだまだ種は残っていたようです。この作品に登場する地下空間に逃れた女の子(クーニャと呼ばれていたでしょうか)が、2009年にこの実話を本にして出版したので、世に知られることとなったそうです。

 セットとはいえ、暗く、悪臭と糞尿にまみれているはずの下水道内のシーンが連続し、さすがに観続けるのが辛い時もありました。この時ばかりは、におい付き映画が実用化されていなくて良かったと思いました。ポーランド出身の女流監督アグニュシュカ・ホランドが、リアリズムを徹底して製作しております。ユダヤ人でもある彼女の執念が、2時間半近い作品から目を離すことを許してはくれませんでした。

 ポーランドの小さな町で下水道のメンテナンスを仕事としているソハ(ロベルト・ヴィェンツキェヴィチ)が、ナチスの迫害から下水道空間に逃れてきているユダヤ人達を発見します。ソハは最初は金儲けのためだけに支援を提案しますが、彼らの生きていく姿を観ていてその本来持っている人間性を呼び覚まされます。下水道空間の中でも、炊事は行われ、子供達は遊び、男女は愛し合うという日常生活が送られるようになります。ついには、赤ちゃんも誕生することになります。

 映画の中では、ゲットーから下水道に潜る人の選択、ソハが支援する人数の限定、ソハと気の弱い若い仲間との葛藤、ポーランド軍将校との駆引き、ドイツ兵との接触、途中で逃げ出した恋人の妹捜し、等々危機一髪のシーンも見物です。大雨が降り下水道が水浸しになった時に、娘のために教会にいたソハの決意は…。14ヶ月に及ぶ地下下水道空間の生活から生還した人々は、ソハ一家とともに生き延びたことを祝い合います。

 後に、ソハとその関係者はイスラエルとユダヤ人会から表彰を受けたそうです。本作は独とポーランドの合作であります。原題は映画のイメージどおり"In Darkness"ですが、邦題はなぜか相当な意訳になっています。

  • 暗闇で 生きる人々 忘れまじ

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2012年9月20日 (木)

最近観た映画(2012年9月#4:カルロス)

 欧州・北アフリカ・中東では伝説のテロリストとなった、カルロスの半生をドキュメンタリータッチで描いた仏作品でした。3部作で合計326分(5時間26分)の長編ですが、物語の展開はスピーディでスクリーンから目を離せませんでした。カルロスはコードネームで、本名はイリッチ・ラミレス・サンチェスでベネズエラ出身です。俳優エドガー・ラミレスが主役カルロスを演じており、彼もベネズエラ出身で西、英、伊、独、仏語を自由に操る語学の達人だそうです。仏映画の実力派監督オリヴィエ・アサイアスが脚本と監督を兼ねています。原題も"Carlos"です。

 物語(第1部)は1972年のパリから始まります。PFLP(パレスチナ解放人民戦線)の欧州のリーダーがモサドに暗殺され、その後任を務めさせろとPFLPのボスに要求することから、カルロスの活躍が一気にスタートします。フランスで逮捕された仲間を救おうと日本赤軍が企てたオランダ・ハーグの仏大使館占拠事件にも、カルロスが係わっていたらしいのです。彼らは大使と大使館員の人質と引換えに、仏政府からの仲間の釈放、30万ドルの現金、そして逃亡用の飛行機を用意してもらって逃亡しました。

 第1部には、どう全体のストーリーに関係するのか分かりませんが、シャワーを浴びた後のカルロスの全裸シーンがあります。とても大きい一物が…。革命やテロには女が付き物ですが、セックスが異常に強くなければ、革命もテロもする気力がないのでしょうか。

 第2部は、1974年2月にウィーンで開かれたOPECの会議の襲撃から始まります。サウジのヤマニ石油相を始めとした各国閣僚を人質に拘束しました。リビアの随行員を射殺したために、逃亡用のDC9はトリポリに降りられず、アルジェへ向かいました。妥協を重ね、結局2千万ドルの現金と引換えに、人質を解放し、イランに向かうことになりました。

 第3部では、ハンガリーのブタペストを拠点に、東ドイツやシリア等にネットワークを作り上げました。リビアとシリアがテロの資金援助をし、各国で暗躍するこになります。カダフィ大佐の命でエジプトのサダト大統領の暗殺を狙いますが、ムスリム同胞団に先を越されてしまいます。ハンガリーから追われ、シリアに潜伏します。その間に娘が誕生します。

 いよいよ1989年にベルリンの壁が崩壊し、東西冷戦が終了したため、シリアはテロリストが不要になり国外退去させます。結局は、イランの仲介でスーダンのハルツームに潜伏することになります。その前に、睾丸の病気による痛み、妻の子育ての不満、妻の離反等々、すっかりテロリストから普通の人間に戻ってしまいます。1994年に仏政府に確保され仏へ移送され、裁きを受けることになります。第1部で仏国から逃れる時に仏の役人を2人殺害しております。

 東西冷戦は相当過去の話ですし、テロを支援したような各国のリーダーもすでにこの世にいないような人が多いので、やや不思議な感じもします。ここ10年間問題になっているアルカイダは、カルロスの後米国のCIAが作り上げた(結果的には支援した)テロリスト集団ということになるのでしょうか。

  • 闘争も テロもセックスも 体力か

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2012年9月 3日 (月)

最近観た映画(2012年9月#1:最強のふたり)

 ユーモアとペーソスが満載の仏映画らしい作品でした。アクションは程々にして、やや下品ですが楽しい会話を散りばめています。特に、下ネタ一杯の突込みが面白いと思いました。欧州各国では大ヒットした映画です。

 障害者を扱っている作品なので、もちろん観ていて悲しく、痛みを感じる部分もあります。しかし、それ以上に前向きで喜劇的な場面が全体をカバーしているので、観客の心をつかんで放しません。

 実話に基づく作品で、エンドロールによれば、主人公フィリップはその後モロッコで再婚し2子がいるそうです。また、介護人ドリスは成功して会社社長となり、3子をもうけているそうです。今もふたりの絆は固く結ばれているとのことです。エンドロールの映像では、ドリスは北アフリカ系の移民だったようです。

 仏語原題は"Intouchables"で、英題では多分"Untouchables"になるはずで、意訳すると「誰にも触れられない関係」的な感じでしょうか。

  • 苦しくも 笑いを忘れず 前向きに

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