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2013年4月の5件の記事

2013年4月29日 (月)

最近観た映画(2013年4月#21:藁の楯 わらのたて)

 三池崇史監督の最新作です。映画「悪の経典」でそのリアルで冷静な狂気の描写に驚かされましたが、今回もロケやセット、そしてVFXに相当金をかけていそうで、リアルでダイナミックな作品になっておりました。開通前の高速道路を借り切っての撮影、日本の新幹線技術が土台になっている台湾高速鉄道実物を使ってのロケ等、見応えのある場面が続きます。

 その殺害に10億円の賞金がかかった犯人清丸(藤原竜也)を、二人の警視庁SP、銘苅一基(大沢たかお)と白岩篤子(松嶋菜々子)らが、福岡から東京まで護送するという驚天動地の設定です。超高額賞金の故に警察内部からいろいろな反応、反乱、そして陰謀が巻き起こります。

 最近は警察内部の問題を扱う作品が多いのですが、本作はこういう異常事態においても警察組織が機能するのか、あるいは警察官はその職務を全うできるのかという疑問を投げかけて参ります。ただ、ラストシーンでは、「悪の経典」でもそうでしたが、少しホッとさせるような配慮がなされています。

 本作は、漫画家、木内一裕の同名処女小説を映画化したものですが、配役も良く、配給が最初からワーナー・ブラザーズ映画ということで、本作に対する期待の大きさが分かります。また、今年5月に開催される第66回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に公式選出されているそうです。もう一つ嬉しいのは、氷室京介が主題歌「NORTH OF EDEN」を創り歌っていることです。私もカラオケで時々彼の唄に挑戦しています。

  • 非常時の 戦いの中に 使命感

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2013年4月25日 (木)

最近観た映画(2013年4月#18:舟を編む)

 言葉の海を渡るためのツール(舟=辞書)を編む(編纂する)というのがタイトルの意味だと思います。実に見事な命名です。同名原作小説の著者三浦しをんさんが旨いのだと思います。彼女の原作(2012年本屋大賞第1位)は読んでおりませんが、この映画は15年間にわたる辞書編纂の喜びと苦しみ、そして15年間という長い時間がもたらす世の中、人々の変化を見事に描いています。特に、最近は馬鹿真面目なことは笑いの対象にもなるのですが、本作ではそれが好ましく、求められる時もあるのだということを改めて感じさせてくれました。

 長期間にわたる辞書編纂が物語の縦糸だとすれば、ヒーロー馬締(まじめ)光也(松田龍平)とヒロイン林香具矢(宮崎あおい)との不器用で新鮮なロマンスが横糸になっていると思います。脇を先輩社員の西岡正志(オダギリジョー)、下宿のおばさんのタケ(渡辺美佐子)、編集の先生の松本朋佑(加藤剛)、編集アシスタントの佐々木薫(伊佐山ひろ子)らが固めていて、ユーモアがあり楽しい映画になっていました。

 石井裕也監督の作品は、気になってはいましたが、観るのは初めてでした。まだ携帯電話が余り使われていなかった90年代の生活描写も懐かしく、沢山ノスタルジアも感じさせてくれました。筆者も勉強のために用例採集をやりましょうか。

  • 真面目さに 潜む 楽しさ 美しさ

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2013年4月15日 (月)

最近観た映画(2013年4月#9:ホーリー・モーターズ)

 この映画は観る人を選ぶと思います。4月5日付の日経夕刊のシネマ万華鏡では、映画評論家の中条省平さんが5つ星を付けていました。そのとおり分かる人には分かるのでしょうが、余りに天才的、芸術的、隠喩的な作品なので、一般的、表層的にはなかなか理解できません。しかし、後でよく考えると多面的、多層的、哲学的な解釈ができそうな気がしてくるので不思議です。そういえば、昨年観た「ニーチェの馬」も鑑賞後しばらくするといろいろな解釈が湧き出て参りました。

 映画は、冒頭某所劇場の映写室から始まり、裕福な銀行家として主人公のムッシュ・オスカー(ドニ・ラヴァン)が豪邸から白いリムジンで出勤する場面が続きます。運転手は、セリーヌ(エディト・スコブ)という妙齢の女性でした。それからが目まぐるしい展開となり、ムッシュ・オスカーはリムジン車内で様々な人物にメイク・扮装で化け、一日のアポに従って出動していきます。どこかに書いてありましたが、11種類の役を演じるそうで、そういう意味ではドニ・ラヴァンの超人的な演技力、体力に感心するしかありません。

 人生とは一生いろいろな役を演ずることかもしれません。人生をキュビズムの手法で再構成しているのかもしれません。最後に沢山の白と黒のリムジンが登場することは、そういう沢山の人生が存在していることを暗示しているのかもしれません。寡作の仏鬼才レオン・カラックス監督が脚本も担当しております。仏独の合作で、原題も"Holy Motors"です。

  • 人生は 演技の森か 底知れず

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2013年4月12日 (金)

最近観た映画(2013年4月#8:ヒッチコック)

 名優アンソニー・ホプキンスが主役アルフレッド・ヒッチコック監督役を静かに、深く、しかし熱く演じていました。メイクが物凄く、腹にも相当詰め物をして、難儀な演技だったのではないかと想像しました。映画会社の資金援助を受けられず、自己資金で取り組むことになった、厄介な映画「サイコ」製作の舞台裏を中心に描いています。最終的にはこの「サイコ」が大ヒットすることになったのですから、ヒッチ(愛称)の才能と執念、そして運の強さを感じました。

 ヒッチ監督の活躍の陰には、常に夫人アルマ・レヴィル(ヘレン・ミレン)の献身的な支援があったようです。脚本にも手を加え、監督が高熱で倒れた時には監督代行までしたようです。アルマは、ブロンド美人女優が好きだったヒッチの浮気にも耐え、生涯尽くしたのでした。夫婦の危機もあったようですが、最後にはヒッチもアルマの貢献を認め、二人の作品と言うのでした。

 「サイコ」のヒロイン、ジャネット・リー役をスカーレット・ヨハンソンが演じています。マット・デイモンと共演した「幸へのキセキ」で扮した、美人動物飼育員を思い出しました。「サイコ」の殺人鬼エド・ゲイン(マイケル・ウィンコット)もバーチャル的に時々登場し、ヒッチ劇場の趣きを感じさせました。さらに、ヒッチがすべての作品にカメオ出演することも紹介され、ドキュメンタリー映画風でもありました。

  • 内助の功 天才監督 裏にあり

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2013年4月 5日 (金)

最近観た映画(2013年4月#4:横道世之介)

 昨年10月の第25回東京国際映画祭でも話題になっていた本作「横道世之介」をやっと観て参りました。筆者の学生時代とは10年は離れていますが、学生時代の甘くやるせなく、粋がっているが恥ずかしく、真直ぐですが道草も食う、無限のようで限られた日々を思い出しました。これは誰にでもある青春群像であり、懐かしくノスタルジックな思い出でしょう。

 ヒーロー、高良健吾(横道世之介)とヒロイン、吉高由里子(与謝野祥子)の組合せも良く、息の合ったコメディ映画を完成させていました。「千年の愉楽」の高良健吾とは別人のようなところが彼の実力なのでしょう。本作と同名の吉田修一著の原作小説もヒットしたらしいのですが、沖田修一監督の脚本と演出も素晴らしいと思いました。2時間40分という長尺ですが、長回しと台詞の面白さで飽きさせませんでした。

 後半、JR山手線の新大久保駅であった悲劇とその中に見い出した人の好さをに焦点を当てながら、10数年の時間を往きつ戻りつ皆が世之介を懐かしく思い出すところが、本作の神髄だと思いました。

  • 懐かしい 学生時代 やるせなく

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