11月4日~11月10日の週に観た劇場映画
11月4日(日曜)~11月10日(土曜)の週は、10本の劇場映画を観ました。特色のある作品が多かったように思います。
・バグダッド・スキャンダル(デンマーク・加・米) ⇒元国連職員のマイケル・スーサンが自身の体験を基に書いた小説"Backstabbing for Beginners"(2008・未和訳)が原作 "Backstabbing for Beginners"とは「初心者・新入職員に対し、友好関係を維持しながらも誰かを狡猾に批判すること」と思われるが、本作は国連史上最悪のスキャンダルを描いている 1996年から国連は、イラク制裁によりイラク国民が困窮し食料が不足するのを解決するため、人道支援プログラム「石油食糧交換プログラム」を立案・実施するが、その裏で事務次長も係わる賄賂・不正が横行していた 2003年のイラク戦争後にあこがれの国連職員(次長補佐)になった主人公はそれに気が付くが…
・心魔師(日・中) ⇒日中合作のクライム・サスペンス・ホラー作品 一種の不条理劇のような感じもあり、何が現実なのか、何が事実なのかがよく分からなくなる ロケ地は主に静岡県小山町で、他に御殿場市や東京都内など
・ステータス・アップデート ⇒両親が離婚したため、米国西海岸のカリフォルニア州から東海岸のコネチカット州に、母と一緒に引っ越してきた主人公の男子高校生 スケボーは元々得意だったが、希望を叶えてくれるスマホ・アプリを偶然入手し、歌唱もダンスもアイスホッケーも得意になる デートのために出現させた夜間の観覧車を印象的なシーンで活用 観覧車は、米国ではフェリス(1859~1896)が1893年に最初に構築したので「フェリス・ホイール」と呼ばれる 原題も"Status Update"だが、意訳すると「希望情報の更新」か
・十年 Ten Years Japan ⇒香港の作品「十年 Ten Years」(2015)に触発されて是枝裕和監督(1962~)が企画 若手監督5人が、それぞれのテーマで十年後の日本を描いたオムニバス作品 それぞれありそうな感じの話になっている ロケ地は千葉県流山市、茨城県高萩市、いわき市などか
・ザ・アウトロー ⇒1日平均9件の銀行強盗事件があるという米国カリフォルニア州ロサンゼルスにおける、FRBを襲う超組織的強盗団と保安局重犯罪特捜班との闘いを描く 実際の撮影はジョージア州アトランタで行われたそうで、特に終盤の自動小銃を使った過激な銃撃戦では、600mの道路を封鎖し、250台の車を使いその内50台を破壊し、約1万発の空砲を撃ったらしい
・嘘はフィクサーのはじまり(米・イスラエル) ⇒145万人のユダヤ人が住むという米国ニューヨーク市が舞台 ユダヤ人富裕層の間を泳ぎながら金儲けを図るノーマン・オッペンハイマーを「プリティ・ウーマン」(1990)や「愛と青春の旅だち」(1982)のリチャード・ギア(1949~)が演じる イスラエルの有力政治家にうまく取り入り、彼が3年後にイスラエル首相になった時には、ノーマンは一獲千金を考えるが… 原題は"Norman"=「ノーマン」で、主人公の名前
・ウスケボーイズ ⇒ノンフィクション作家・河合香織(1974~)の小説「ウスケボーイズ 日本ワインの革命児たち」(2010)の映画化 桔梗ヶ原(ききょうがはら)メルローの父・浅井宇介(あさいうすけ・1930~2002)の功績に感銘を受けた若者たち(ウスケボーイズ)がワイン造りに挑む姿を描く 桔梗ヶ原とは長野県塩尻市のことらしいが、ロケ地は主に山梨県山梨市、北杜市などだった模様
★生きてるだけで、愛。 ⇒鑑賞後の感想はいろいろだろう よく分からないという人もいれば、まるで自分のことだと感じる人もいるのではないか 芥川賞作家にもなった石川県出身の本谷有希子(1979~)の同名小説(2006)が原作 彼女はまさにマルチ・タレントで、劇作家、小説家、演出家、女優、声優などを掛持ち 監督・脚本は今年公開されたドキュメンタリー「太陽の塔」(2018)の関根光才(1976~) 本谷は小説執筆中は小説の登場人物に成り切っているようだが、主演の趣里(1990~)もそういう役に成り切る憑依型の女優のようだ 大女優になりえる資質かもしれない 趣里は水谷豊(1952~)と伊藤蘭(1955~)の一人娘で、バレエ・ダンサーを目指し英国留学までしたが怪我のため挫折したという、苦しいが貴重な経験を有するらしい 実生活ではやや引きこもり気味か 本作でも彼女は過眠症、ウツで引きこもりのぶっ飛んだ主役を演じ、内面は熱いが表面は静かな恋人を演じる菅田将暉(1993~)と好共演 ヒロインが金もないのに結構よさそうなコートをなぜ何着も持っているのかとか、恋人はなぜいつも2種類のコンビニ弁当(一つは必ず焼きそば系)を買ってくるのかとか疑問を持つのは野暮か ロケ撮影は今年(2018年)の真冬に神奈川県横浜市の関内駅伊勢佐木町口側の吉田町と福富町で行われた模様 他に群馬県高崎市なども使われたらしい
・ビリオネア・ボーイズ・クラブ ⇒投資詐欺(出資金詐欺)は米国でも頻発しているようだ 本作は1980年代にカリフォルニア州ロサンゼルスで若者たちがビジネスとして始めたが、結果的に投資詐欺そして殺人事件になった実話を基にしたもの 本作には中国資本も参加 米国で最大の投資詐欺は2008年に発覚したバーナード・L・マドフ(1938~)による5兆円規模のもの マドフは数十年にわたり裕福な顧客を騙し、顧客の投資資金を実際に運用せず配当に回すという古典的なポンジ・スキームという詐欺を実行していた 原題も"Billionaire Boys Club"だが、「ビリオネア」はあえて訳すと「千億円長者」か
▼ポルトの恋人たち 時の記憶(日・葡・米) ⇒欧米で実績のある舩橋淳監督(1974~)がポルトガル側からの誘いを受けて、完全オリジナルで日葡両国を舞台にした愛と復讐劇を製作 2作分あるので2時間20分程度と長尺 18世紀後半大地震と大津波で壊滅したポルトガルを舞台にした前半では、奴隷としてインドから連れてこられた2人の日本人と現地領主・メイドの愛憎を描く 東日本大震災(2011)の復興の証しともなる2020東京五輪後の日本を舞台にした後半では、減速経済の下自動車部品工場での解雇労働争議にまつわり、ポルトガル・ブラジル系労働者と日本人管理者との愛憎を描く 2作ともラストシーンは同じ場所(多分ポルトガルのペニシェか)が舞台でありヒロインは真赤な衣装 18世紀のポルトガルの場面(前半)はセットか絵か分からないがいい出来 ロウソク、木のスリッパ、椿(カメリア)などが印象的な小物 後半ではファドやインド楽器シタールのような音色を出すポルトガル・ギターが登場 ロケ地は、ポルトガルではギマランイス(世界遺産)、プラガ、ペニシェ、ポルトなどで、日本では主に静岡県浜松市 英題は"Lovers on Bordery"=「境界の恋人たち」か
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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