1月1日~1月5日の週に観た劇場映画
1月1日(火曜)~1月5日(土曜)の週は、4本の劇場映画を観ました。新年早々は、隣国韓国との係わりを理解するのに役立つ2作品を拝見しました。
・シシリアン・ゴースト・ストーリー(伊・仏・スイス) ⇒イタリア・シシリア(島)の美しい自然と少年少女の切ない愛が、台詞が少ない映像中心で描かれる 1993年にイタリアのシチリアで実際に起きた「ジュセッペ・ディ・マッテオ少年誘拐監禁事件」を基に、イタリア人作家マルコ・マンカッソーラ(1973~)が書いた短編を、やはりシチリア出身の2人の監督が映画化 作品中の最後のテロップにあるが、結局少年は殺害されて酸で溶かされたらしい 原題は"Sicilian Ghost Story"で、邦題どおりだが、あえて意訳すると「シシリア幽霊物語」か
・ワイルド・ストーム ⇒タイトルから嵐と闘う人々を描く作品かと思ったら、ハリケーンを利用して米国FRB(連邦準備制度:中央銀行)の使用済みドル紙幣粉砕処理工場から現金6億ドル(約600億円)を強奪しようとする話であった 実在の施設かどうか分からないが、確か米国アラバマ州にあるとしている、使用済みドル紙幣をシュレッダーにかけて粉砕する工場を、ハッキング・潜入して強奪する強盗犯を描く 生き延びたFRB職員と気象学者らがあらゆる方法を駆使して戦う ハリケーンそのものやハリケーンの被害を表現するVFX映像は凄い 原題は"The Hurricane Heist"=「ハリケーン強盗」でこの方がずっと分かりやすい
・共犯者たち(韓) ⇒本作と次の「スパイネーション 自白」(韓・2016)、これら2つの韓国ドキュメンタリー作品を観て、いかに筆者が韓国の社会・政治について無知だったかを思い知らされた 本作「共犯者たち」では、保守派のイ・ミョンバク(李明博・1941~)第17代大統領(任期:2008~2013)とパク・クネ(朴槿恵・1952~)第18代大統領(任期:2013~2017)が行った、約9年間にわたる言論弾圧・報道支配が描き出される 韓国全土をカバーする2大放送ネットワークがいずれも政府系の公営放送・MBC(設立:1961)と公共放送・KBS(設立:1973)だというのも驚き (株)MBC(韓国文化放送)は公益財団の放送文化振興会が7割の株式を所有し、KBC(韓国放送公社)は政府100%出資 イ・ミョンバク政権は2008年の発足直後にBSE問題で輸入禁止していた米国産牛肉を輸入再開したが、メディアの疑問報道などにより国民の支持を失いかけたことにより、MBCとKBSに政治介入・人事介入し言論弾圧 一連の弾圧で2012年にMBCを解雇されたチェ・スンホ記者らが調査報道を行うニュース打破を設立し、チェ本人が監督し本ドキュメンタリーを製作 日本の報道姿勢に対する警鐘にもなっている 昨年2017年政権交代しリベラル派・左派のムン・ジェイン(文在寅・1953~)が第19代大統領(任期:2017~5年間予定)が誕生したためか、チェ・スンホがMBCの社長に選任されている 原題は"Criminal
Conspiracy"=「刑事陰謀」か
▼スパイネーション 自白(韓) ⇒本ドキュメンタリー作品を観て、韓国では考え方の優先順位が『個人自分自身の成果・利益>家族の利益>属する団体・派閥の成果・利益>国益>正義』であるということがよく分かった 本作は前出の「共犯者たち」(韓・2017)と同様にニュース打破のチェ・スンホが監督し、妹の自白だけで韓国在住の脱北者をスパイとして起訴する国家情報院の欺瞞・証拠捏造を炙り出す 韓国の警察機関や検察機関いかに恣意的で、自分たちの成果を上げるためには平気で嘘をつき、自白強要し、仕舞いには証拠捏造・偽造するかを明らかにする 国家情報院は前身が韓国中央情報部(KCIA)であり、パク・チョンヒ(朴正熙・1917~1979)第5~9代大統領(任期:1963~1979)時代の1975年から拷問も含め手段を選ばずスパイ捏造を平気で行っていたようだ 本作では中国、タイや日本など外国でも取材を行い、中国・地方政府公文書の偽造問題などの裏付け取材を敢行 筆者が冒頭に示した優先式(不等式)をよく見れば「韓国海軍駆逐艦による日本哨戒機(海上自衛隊)へのロック・オン事件」などに対する、韓国政府・社会の反応の仕方がよく理解できると思う 原題は"Spy Nation"で邦題はそのままだが、意訳すると「スパイだらけの国」か
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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