2月17日~2月23日の週に観た劇場映画
2月17日(日曜)~2月23日(土曜)の週は、8本の劇場映画を観ました。とても面白く、いい作品が多かったように思います。
★▼★女王陛下のお気に入り(アイルランド・英・米) ⇒英国スチュアート朝最後の君主であるアン女王(1665~1714)と彼女のまつわる2人の女官女性の実話に基づいた作品 アンはイングランド・スコットランド女王(1702~1707)を兼ね、そして最初のグレート・ブリテン(大英帝国)女王に戴冠 2人の女性はサラ・ジェニングス(サラ・チャーチル・1660~1744)とアビゲイル・ヒル(アビゲイル・メイシャム・1670~1734)で従姉妹同士 アンの側近にはもう1人エリザベス・シーモア(1667~1722)という女官女性がいたようだが登場せず 作品の主題はサラからアビゲイルへの女王の寵愛つまり権力がどう移動したかに焦点を当てる スピードと変化のある8部構成で、面白可笑しく、豪華華麗な衣装をまとい、ロウソクばかりの照明のセピア色の美しい映像、そしてパイプ・オルガンも多用した音楽で魅せる 当時の英国は第一次産業革命前夜であるが退廃した雰囲気の中で政治が行われていたことに驚く アンは実に17回妊娠したが、1人も成人していないし、代わりにウサギを飼っていたようだ また王室・貴族を含め実に多くの人々が天然痘により亡くなっている アンは常に足を揉ませており、女官たちとのレズビアンも想像させる サラの夫のジョン・チャーチル(初代マールバラ公・1650~1722)の属するホイッグ党とアビゲイルに近いロバート・ハーリー(1661~1724)のトーリー党の政争も描かれるジョン・チャーチルはフランス・スペインとの戦争を戦っていたが、トーリー党は戦争を終結させる ジョン・チャーチルつまりサラ・ジェニングスの子孫には、第二次世界大戦終了の首相ウィンストン・チャーチルや現チャールズ英国皇太子の前妻ダイアナがいる 監督は「ロブスター」(アイルランド・英・ギリシャ・仏・蘭・米・2015)のヨルゴス・ランティモス(ギリシャ・1973~) アンをオリヴィア・コールマン(英・1974~)、アビゲイルをエマ・ストーン(米・1988~)、そしてサラをレイチェル・ワイズ(英・1970~)の実力派女優がそれぞれ演じている オリヴィア・コールマンは直近の第91回アカデミー賞(2019)で主演女優賞を見事射止めた 原題は単に"The
Favourite"=「お気に入り」
・フォルトゥナの瞳 ⇒「永遠の0」(2006)や「海賊と呼ばれた男」(2012)の小説家・百田尚樹(大阪市・1956~)の同名原作小説(2014)を映画化したファンタジー作品 「坂道のアポロン」(2018)や「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」(2016)の三木孝浩(徳島県出身・1974~)が監督し、神木隆之介(埼玉県出身・1993~)と有村架純(兵庫県出身・1993~)が主演 いろいろ伏線が張られているが、最後に明らかになる真実に驚かされる 携帯ショップはauであり、登場する車はレクサスなので、提携するKDDIとトヨタのプロダクト・プレイスメントか また、人が死に過ぎるような気もするが… 昨年2018年5月~6月のロケ地は主に関西圏で、神戸市を中心とした兵庫県、そして大阪府、奈良県(奈良盆地南部)などか
・アクアマン ⇒米国DCコミックのアクアマンを主役にした実写ファンタジー作品 海底に沈んだアトランティス帝国を巡る戦いを描く 海底世界の美しい世界をVFXで描く ポスプロ・VFXにはエンド・クレジットでは1,000人以上が参加 コスチュームとメイクアップの担当が多いのに注目
★バジュランギおじさんと、小さな迷子(印) ⇒見逃したと思っていた本作を遅ればせながら劇場鑑賞 現在もインドとパキスタンがその領有権を巡って争いを続けている、高山が美しいカシミール地方が最初と最後の舞台 そこに暮らす口の利けない少女が母親と一緒にインドのイスラム寺院にお詣りに行き口が利けるように祈る 少女は帰途に母親からはぐれ迷子になるが、それを救ったのが主人公のパワン(バジュランギおじさん) 彼は保護した少女がパキスタン人だと発見し、デリーからパキスタンのカシミール地方まで700kmの道のりを2人で旅し、パキスタンの家族に送り届けようとする 終盤はその気がないのに感涙 各地でロケ撮影をし、インド映画らしく唄と踊りにあふれる ヒンディー教とイスラム教の相違と反発、売春窟での人身売買、インド・パキスタン国境の実態、またSNS時代のニュース・報道の実態なども描かれる インドの人気俳優サルマン・カーン(1965~)がパワンを演じ、途中にパワンの半生が挿入されるがやや冗長 パワンの彼女ラスィカーを俳優一家のカリーナ・カブール(1980~)が演じるが、目の上下の黒々としたアイラインがやや不自然 彼女は最後のお涙頂戴のシーンでアイラインのない顔で登場するが、こちらの方がとても自然 原題は"Bajrangi
Bhaijaan"(ヒンディー)=「バジュランギおじさん」か
▼盆唄 ⇒2011年3月の東日本大震災、大津波そして福島第1原発事故により最大の被害を受けた福島県双葉町 その双葉町に脈々と引き継がれてきたお盆の盆唄と盆踊りを、京都市出身で沖縄県在住の中江裕司監督(1960~)が追ったドキュメンタリー作品 映像は2015年8月から始まり、2017年8月にいわき市の避難所での各地区の盆唄競演で終わる 最後の盆唄フィナーレは実に感動的 途中で100年前に福島県からハワイに移住した人々がフクシマ・オンドを歌い継いでいること、福島の盆唄のルーツは富山県南砺市にあることなどが語られる 富士山の宝永大噴火(1707)後の飢饉で相馬(福島県)の人口が9万人から3万人と3分の1になったため、相馬の藩主が加賀越中(富山県)から移民を呼んだことは全く知らなかった その時に盆唄も一緒に伝えられたきたのだろう 双葉町の盆唄にまつわる文化・芸能は確かなものであり、双葉町に帰還できる日はいつかまだまだ判然としないが、是非継続してもらいたいものだと思った
・アリータ バトル・エンジェル ⇒原作は東京都出身で現在は茨城県つくば市在住の木城ゆきと(1967~)のSF漫画「銃夢(ガンム)」(1991~1995) 「アバター」(2009)と「タイタニック」(1997)で世界興行収入第1位と第2位を有するジェームズ・キャメロン監督(加出身・1954~)が脚本・製作を担当し、「シン・シティ」(2005)のメキシコ系米国人・ロバート・ロドリゲス(1968~)が監督 昨年2018年第90回アカデミー賞作品賞を獲得した「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)のギレルモ・デル・トロ監督(墨・1964~)は日本アニメのファンであり、彼がキャメロン監督に「銃夢」のアニメを紹介したというのは有名な話らしい 本作品は高度で完璧な映像を駆使したSFファンタジー・エンターテインメント作品として観ればいいと思う 筆者の好きな役者クリストフ・ヴァルツ(オーストリア出身・1956~)が助演で出演している エンド・クレジットを観ると、ポスプロ・VFXに千数百人の名前が挙がっているのには驚く 何となく続編がありそうな感じでは終わっている 原題も"Alita:
Battle Angel"
・サムライマラソン ⇒原作は、映画にもなった「超高速!参勤交代」(2013)を書いた脚本家・小説家の土橋章宏(大阪府出身・1969~)の小説「幕末まらそん侍」(2014) 江戸時代・幕末の1855年に上野(こうずけ)安中藩(今の群馬県安中市周辺)藩主の板倉勝明(1809~1857)が藩士の鍛練のために行った徒競走・安政遠足(とおあし)の史実に基づく 安政遠足とは安中城内から碓氷峠の熊野権現まで7里余りの中山道をと徒歩競争させたもので、日本史上初のマラソンといわれる 企画・プロデュースの中沢敏明(1947~)とジェレミー・トーマス(英・1949~)が組んで原作を一大国際プロジェクトに組み上げた ジェレミー・トーマスは1987年第60回アカデミー賞で作品賞以下9部門を獲得した「ラスト・エンペラー」(1987)の製作者 主役は佐藤健(埼玉県出身・1989~)でヒロインに小松菜奈(山梨県出身・1996~) 佐藤健は主演した「るろうに剣心」シリーズ(2012~2014)のように走りまくった 小松菜奈の日本髪姿はやや似合わないか ロケ撮影は2017年9月~7月に山形県鶴岡市で行われた模様 主にスタジオセディック庄内オープンセットが使用され、遠足シーンでは羽黒山と三瀬(さんぜ)海岸でも撮影されたようだ
・君が君で君だ ⇒「アズミ・ハルコは行方不明」(2016)や「アイスと雨音」(2018)などの意欲作を発表したいる松井大悟(福岡県出身・1985~)監督が本作の監督・原作・脚本を担当 昨年2018年7月に公開された作品だが、何となく見逃しており、半年振りに出会って鑑賞 大人になれない、いい年をした男3人の真面目に、そして真剣に狂った生活を描く 手持ちカメラを多用して撮影 主題歌は尾崎豊(1965~1992)の「僕が僕であるために」(1983) ロケ撮影は2017年7月に神奈川県横浜市・相模原市、東京都台東区・港区などで行われた模様
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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