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2019年3月31日 (日)

3月24日~3月30日の週に観た劇場映画

3月24日(日曜)~3月30日(土曜)の週は、7本の劇場映画を観ました。議論百出のテーマが多かったような気がします。

まく子 ⇒直木賞小説家・西加奈子(1977~)の児童向け同名原作小説を長野県上田市出身の若手女流監督の鶴岡慧子(1988~)が映画化(兼脚本) 西はイランの首都テヘラン生れで、エジプト・カイロそして大阪府和泉市育ち 温泉旅館の息子である11歳の少年が思春期を迎え、そこに謎の美少女が転入してくる 彼女との係わりの中で、次第に大人になっていく様をファンタジー的に描く タイトルの「まく子」は子供たちが落葉を空に向かって撒くことからか… ロケ地は主として群馬県中之条市であり、北方向の道路の行止りにある四万(しま)温泉の旅館・温泉街、廃小学校、加えて渋川市内も使われたようだ
320-20190407t095457677新宿タイガ ⇒新宿で劇場映画を鑑賞していると、たまにタイガーマスクのお面を被って、ピンク色中心のド派手な衣装をした人物に出会う それが新宿タイガーで、本作はそのドキュメンタリー 新宿タイガーの本名は原田吉郎(1948~)で、長野県出身 上京後大学2年で中退し、40年間以上新宿で朝日新聞の新聞配達員をしながら、美女と映画とロマン(夢)を求めて自由に暮らす 実家は弟に任せて、新宿ゴールデン街で女優達と飲み、劇場映画を年間数100本観るそうだ 一つ質問があるのは、新宿タイガーはなぜいつも生ビールばかり飲んでいるだろうか…
ふたりの女王 メアリーとエリザベス(英) ⇒原題は"Mary Queen of Scots"=「スコットランド女王メアリー」であり、"Queen of Scots"は親しみを込めた呼び方らしい 原題にあるように、本作は史実に基づいたスコットランドのメアリー女王(メアリー・ステュアート:1542~1587、在位:1542~1567)を中心とした話 1561年にメアリーが夫のフランス国王が死去したため、フランスからスコットランドに帰国したところから話が始まる イングランドでは自身の離婚のためにカトリックを捨てプロテスタント(英国国教会)となった国王ヘンリー8世(1491~1547、在位:1507~1547)の次女が弟と姉の死により王位を継いでいた これがイングランド女王エリザベス1世(1533~1603、在位:1558~1603) エリザベス1世は父ヘンリー8世が再婚した侍女アン・ブーリン(1501頃~1536)の子(庶子)だったため、ヘンリー8世の姉の直系の孫であったメアリーが王位継承権を主張することから、常に両女王は緊張関係にあった 政略結婚、政権奪取のための殺人などの権謀術数に加えて、プロテスタントとカトリックの争いもありスコットランドは混沌となる 1568年にメアリーは結局エリザベスの庇護の下に走るが、1587年に処刑される エリザベス1世は生涯独身だったため、その死後スコットランド国王であったメアリーの嫡子がイングランド国王ジェームズ1世(1566~1625、在位:1603~1625)となった これ以降イングランドとスコットランドは国王を同一とする連合体制となった ジェームズ1世の子孫が現在の英国王室まで続いている 英国王室の歴史は欧州大陸の各国とも密接に関係しており複雑 また当時は天然痘など不治の病が流行っていたため、国王も含めて人々は概して早世 エリザベスは天然痘に罹ったが奇跡的に治癒したらしい
320-20190407t095221089金子文子と朴烈(パクヨル)(韓) ⇒実在の日本人・金子文子(1903~1926)と朝鮮人・朴烈(パクヨル・1902~1974)の史実に基づいた作品 文子は神奈川県横浜市生まれだが、両親に見捨てられ9歳から16歳まで母方祖父母の養子として朝鮮半島で惨めに暮らす 彼女は帰国後1920年に上京し、1922年に朴烈に出会う 朴烈は本名が朴準植(ジュンシュク)で、大韓帝国慶尚北道で生まれ、1919年の三・一運動(日本からの朝鮮半島独立運動)後来日し、社会主義・無政府主義(アナーキズム)を信奉 両人は意気投合、契約結婚し、大正時代の言論統制が厳しい時代に無政府主義の不遜社(ふていしゃ)を結社 しかし、1923年9月1日に関東大震災が発生し情況が一変 皇居に押し寄せる民衆の不満をそらすため、日本政府、水野練太郎内務大臣(1968~1949)は在日朝鮮人が井戸に毒を混入していると吹聴 故に1年間で自警団が日本全国で数千人以上の朝鮮人を殺害したとされる またさらにこれを目くらますために、治安警察法により朴烈らの仲間を逮捕 文子も自ら逮捕され、2人は皇太子(後の昭和天皇・1901~1989)を爆弾で暗殺する計画があったとし、大逆事件となった 1926年3月に裁判では2人はともに死刑となるが、公判では日本人は自分で考えて自分で選択・決断していないと天皇制を批判 しかし、結局皇室からは恩赦の要請があり同年4月に2人は無期懲役に減刑 文子は獄中で原因不明のまま同年7月に獄死 2人を弁護した人権派弁護士・布施辰治(宮城県出身・1880~1953)がいたことにも言及したい 文子には後に出版された歌集と自伝があり、文子と布施には大韓民国建国勲章が叙勲された 朴烈は戦後1945年に釈放され朝鮮半島に戻った(彼には転向に次ぐ転向の批判あり) 史実では、1894~1895年の日清戦争で日本が清国に勝利したため、李氏朝鮮は清国から独立し1897年に大韓帝国となる 1910から1945年まで朝鮮半島は日本の植民地(日韓併合)となったが、その間に朝鮮半島の三・一運動や日本の関東大震災後の混乱などで、多くの朝鮮人が迫害・虐待され殺害されたのではないだろうか 朝鮮半島の人々がこれらに対し日本を恨むのは理解できなくもないが、1636~1637年の丙子の乱以降1895年まで清国の冊封国として250年以上酷い扱いを受けてきたことには無関心なのは理解しがたい この間李氏朝鮮の国王が毎年清国の使者に対し三跪九叩頭の礼(さんききゅうこうとうのれい:土下座し3回地面に額を打ち付ける礼を3度行う儀礼)を行い、朝鮮は清国に毎年多額の朝貢や女性の姓奴隷を贈っていたとされる 太平洋戦争(1941~1945)末期の1945年8月に米国が広島と長崎に核爆弾攻撃をして、両者合わせて20万人前後の人々(日本国民と朝鮮人民)が虐殺されたことについて、日本及び日本人が真剣に継続的に米国批判・攻撃しないことと同じかもしれない それにしても北朝鮮は大正時代から戦前の日本によく似ていると思う 言論統制がよく効いているし、優生保護法も完璧に施行されているのではないか…
ウトヤ島、7月22日(ノルウェー) ⇒2011年7月22日に治安が安定した北欧の福祉国家として知られるノルウェーで卑劣で悲惨なテロ事件が発生 午後3時7分にオスロ中心部の政府庁舎前で白いワゴン車積載の爆弾が炸裂し8人が死亡 同一犯人が午後5時6分にオスロから約40km離れた小島・ウトヤ島に上陸し銃乱射 ノルウェー労働党青年部のサマー・キャンプに参加していた10代の若者たちなど69人を射殺 本作ではウトヤ島での乱射シーンを72分間のワン・カットで描く 島の森林の中を逃げ回る若者たちの視点で撮影されており、銃撃者の姿が一切見えないのが恐怖を増幅する それにしてもこの混乱の中でなぜこんなにも携帯電話に頼るのか… 原題は"Utoya 22. juli"(ノルウェー)で邦題どおり

サンセット(ハンガリー・仏) ⇒「サウルの息子」(2015)で一躍有名になった、ハンガリー首都ブタペスト出身のネメシュ・ラースロー監督(1977~)の長編第2作(兼脚本) 第一次世界大戦前夜の1913年に両親の残した高級帽子店で働くためブタベストに来たヒロインが、実兄もからんだ、対貴族の殺人事件、テロ、暴動に巻き込まれる 春眠のため緊張が続かず 原題は"Napszallta"(ハンガリー)="Eventide, Evening"=「夕方、夕暮れ」
ROMA ローマ(墨・米) ⇒原題も"Roma"だが、メキシコの首都メキシコシティのコロニア・ローマというらしい地区に住む白人一家と家政婦(メイド)たちの1年間(冒頭と終盤に同じ楽団が道路を行進するので1年が経過したと想定)を描写 話題を呼んだ作品「ゼロ・グラビティ」(2013)のアルフォンソ・キュアロン監督(メキシコ・メキシコシティ出身・1961~)が監督・製作・脚本・撮影・編集の5役 今年2019年の第91回アカデミー賞作品賞候補 全編白黒(モノクロ)で、先住民系メイドの一人が主人公のよう 年代は1970年から1971年らしく、英国の歌手メリー・ホプキン(1950~)が歌う「悲しき天使」(1968)が流れていた メイドがプレイボーイの男に妊娠させられたり、街中のテロ・暴動に巻き込まれたり(カラーだと目を背けただろう)、メイドが死産したり、一家の女の子が海岸で溺れかけたり、一家の主人が家を出たり等々、いろいろなことが起きる しかし、メイドも含め母親を中心とした一家はしぶとく再出発

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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