4月7日~4月13日の週に観た劇場映画
4月7日(日曜)~4月13日(土曜)の週は、7本の劇場映画を観ました。事実に基づいた作品が多く、またそれらが素晴らしいものでした。従前の常識、概念、壁、しきたり、差別などを打ち破ることは、人間の理性でしかできない崇高なことだと感じます。
▼ビリーブ 未来への大逆転 ⇒米国連邦最高裁判所の判事9人の内3人の女性判事がいるが、その1人で史上2人目の女性判事(1993年ビル・クリントン大統領(1946~)により任命)であるルース・ベイダー・ギンズバーグ(RBGと3文字でも呼ばれる・1933~)がガラスの天井と闘うキャリアを描く 彼女はニューヨーク市ブルックリン区でユダヤ系の子孫として誕生 コーネル大からハーバード大ロー・スクール(マサチューセッツ州)へ進学(筆者もコーネル大にいたことがあるので同窓後輩、ユダヤ系の学生が多かった) 1956年のハーバード大ロー・スクール入学者500人の内女性はわずか9人 コーネル大で出会って結婚し、同じハーバード大ロー・スクール同窓の、やはりユダヤ系の夫マーティン・ギンズバーグ(1932~2010)がニューヨーク市の法律事務所(税法専門)に就職したため、コロンビア大ロー・スクール(ニューヨーク市)に移籍 ハーバード大時代には夫が精巣ガンで闘病すると代わりに夫の授業に出席したりしながらも最優秀な成績で法学位を取得 大学卒業後早速女性差別に遭遇し、判事にもなれず法律事務所にも就職できなかった 大学教員を続けながら夫から紹介された「独身男性が母親を介護した費用が所得控除にならない」という案件を男性差別として提訴することにより、逆に女性差別撤廃への突破口を見付けた ギンズバーグ夫妻には娘が1人いるが、その中で家事を分担しあい、仕事でも励まし合い、お互いの目標・理念を追求していったのは家族の理想像だと思う ルースの甥のダニエル・スティープルマンが脚本を書き、ミミ・レダー(1952~)が監督 ルースを「博士と彼女のセオリー」(英・2014)のフェリシティ・ジョーンズ(英・1983~)が、マーティンを「君の名前で僕を呼んで」(伊・仏・伯・米・2017)のアーミー・ハマー(1986~)がそれぞれ演じている 作品中の舞台はニューヨーク市であることが多いが、撮影はもっぱらカナダのモントリオール市で行われた模様 原題は"On the Basis of Sex"で、意訳すると「性別に基づいて」または「性別に基づく社会」か
▼ブラック・クランズマン ⇒イリノイ州シカゴ市出身で元黒人警察官のロン・ストールワース(1953~)が、1970年代半ばに自身がコロラド州コロラドスプリングス市の警察署に黒人警察官として初めて採用され、KKK(クー・クラックス・クラン)への潜入捜査の任務を遂行する経験を書いた回想録"BlacKkKlansman"(本作の原題どおり)を映画化 監督はジョージア州アトランタ市出身の、差別を糾弾する問題作を多く手掛けてきた黒人のスパイク・リー(1957~) KKKへの潜入を企画したのが黒人警官のストールワースだったのに、実際に潜入したのは白人警官のフリップ・ジマーマンという奇抜な計画を、当初の企画どおり半コメディ風サスペンスとして描く ストールワースを演じたのは、デンゼル・ワシントン(ニューヨーク州出身・1954~)の息子で元アメリカンフットボール選手のジョン・デヴィッド・ワシントン(ロサンゼルス市出身・1984~) またジマーマンを演じたのは、「スター・ウォーズ」シリーズのカイロ・レン役を務めているアダム・ドライバー(カリフォルニア州出身・1983~) 昨年2018年の第71回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールの「万引き家族」(2018)に次ぐ賞のグランプリを受賞 1970年代半ばのKKKリーダーの発言「アメリカ・ファースト」や「アメリカを再び偉大に」が最近またよく聞かれるのは悪夢か…
★マックイーン モードの反逆児(英) ⇒2017年に日本で公開された米国作品「メットガラ ドレスをまとった美術館」(2016)で、本ドキュメンタリー作品の主人公であるファッション・デザイナーのリー・アレキサンダー・マックイーン(英・1969~2010)がデザイン・制作したいろいろなドレスが芸術品・美術品として米国ニューヨーク市のメトロポリタン美術館に保存・展示されていることを初めて知った マックイーンは英国ロンドンの労働者階級の街イーストエンドに生まれたが、服の仕立てに目覚めイタリアでの修行・英国大学での教育を経て23歳でファッション・デザイナーとしてデビュー その後27歳で仏国パリのジバンシーのデザイナーに抜擢され、マックイーンとジバンシーの2つのブランドを持ってそれぞれ年に数回のショーを開催 材料、形状、大道具・小道具など従来のファッション・ショーの常識を完全に覆すショーで、モードの反逆児とされた さらに、ジバンシーと離れてグッチjと契約するに至るが、実母の葬儀の前日に自殺 マックイーンを見出した女性、同性愛のパートナー(仕事上のパートナーでもある)、下働きの同僚たち、その他ファッション関係者からの驚くべきコメントが続く マックイーンはスリムで繊細なファッション・デザイナーのイメージとは異なり、ラグビー選手のようなずんぐりした体形で、後にHIV陽性にもなった 原題は単に"McQueen"
▼バイス ⇒2001年1月20日から2009年1月20日までの8年間、ジョージ・W・ブッシュ(ジュニア)米国第42代大統領(1946~)の下で副大統領を務めたディック・チェイニー(1941~)の勝手自伝的・半コメディ作品 「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(2015)のアダム・マッケイ監督(1968~)が製作(兼脚本) 物語はチェイニーの地元ワイオミング州キャスパーから始まり、妻リン(1941~)の叱咤激励もあり紆余曲折を経て1973年にワシントンD.C.にたどり着き、ドナルド・ラムズフェルド(1932~)の薫陶を受けながら出世 1975年にラムズフェルドの次の大統領首席補佐官、1979年にワイオミング州選出下院議員、1989年に国防長官(この頃筆者はニューヨーク市に駐在)、1995年から一時民間会社ハリバートン社CEOを経て、ついに2001年に副大統領に就任 ブッシュ(ジュニア)大統領との暗黙の了解で外交・安全保障の実質的な責任者(陰の大統領)となり、"Unitary Executive Theory"(統一行政権理論)という憲法解釈を持ち出し、イラクには大量破壊兵器が実在するとしてイラク戦争などに邁進・暴走した チェイニー、ラムズフェルド、ブッシュ(ジュニア)それぞれに扮したクリスチャン・ベール(英・1974~)、スティーヴ・カレル(1962~)、サム・ロックウェル(1968~)などは本物に実によく似ていた 本年の第91回アカデミー賞(2019)メイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したのもうなづける ただし、英国ウェールズ系米国人(ケルト人)なので体形はずんぐりむっくりしており、ブッシュ(ジュニア)大統領よりかなり背が低かったと思う 原題も"Vice"、あえて和訳すると接頭辞として「副、次席、代行」などだが、名詞とすると「罪悪、邪悪、悪徳、不徳」などの意味もある チェイニーの地元ワイオミング州について豆知識を 同州は全米50州の内で一番人口が少なく約56万人 米国連邦議会下院議員の定数435人(任期2年間)は各州の人口に比例して割り当てられるので、ワイオミング州は1人 現在チェイニーの長女エリザベス(リズ)・チェイニー(1966~)が選出されている 上院議員100人は各州を国と見て国を代表する定数2人(任期6年間で2年毎に1/3を改選) ワイオミング州議会の定数は下院60人・上院30人の計90人 日本で人口が最少の県は鳥取県で約56万人 衆議院定数465人(任期4年間・解散あり)の小選挙区分289人の内鳥取県には2人を割当て 参議院定数242人(任期6年間・3年毎に1/2を改選)の大選挙区分146人の内鳥取・島根両県に1人 鳥取県議会の定数は35人(任期4年間) 米国の人口は日本のそれの2.5倍だが、どちらの議員定数を多いと見るか ただし、各州議会は州内の憲法、民法、刑法などを区々に立法 米国連邦議会は連邦国家の憲法、外交、安全保障、州にまたがる案件についての立法を担当
・ショーン・オブ・ザ・デッド(英・仏) ⇒英国製のゾンビ・ホラー・コメディB級作品 英米では2004年の公開だから、日本では15年目で初公開 エドガー・ライト(英・1974~)が監督(兼脚本)し、サイモン・ペッグ(英・1970~)とニック・フロスト(英・1972~)が主演(ペッグは脚本も兼務) この3人の組合せの最初の作品で、後に「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」(英・2013)も製作 ライト監督はB級作品を得意としていたが、米国ハリウッドで「アントマン」(2015)や「ベイビー・ドライバー」(2017)も監督(兼脚本) 2009~2013年頃米国女優のアナ・ケンドリック(1985~)と交際していたそうだ ペッグは「ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション」(2015)、「スター・ウォーズ フォースの覚醒」(2015)、「スター・トレック BEYOND」(2016)、「レディ・プレイヤー1」(2018)そして「ミッション・インポッシブル フォール・アウト」(2018)のVFX大作に次々と脇役出演する売れっ子となっている ペッグとフロストが脚本を担当し主演したSFコメディ作品「宇宙人ポール」(米・仏・英・2011)も記憶に残る 原題も"Shaun of the Dead"で邦題どおりだが、あえて和訳すると「死人・死者の(一人の)ショーン」か
・荒野にて(英) ⇒原題は"Lean on Pete"で、脇役の競走馬の名前のようだが、あえて和訳すると「ピートに乗って傾けて」か… 米国ネヴァダ州出身の作家・音楽家のウィリー・ヴィローティン(1967~)の同名原作小説(2010・和訳は2019)を「さざなみ」(英・2015)のアンドリュー・ヘイ監督(英・1973~)が映画化 米国オレゴン州ポートランドに暮らす孤独な少年が孤児となり、途中からは世話をしていた競走馬と一緒に叔母のいるワイオミング州ララミーを目指すロード・ムービーになる
・美人が婚活してみたら ⇒最近は吉本興業やその子会社のKATSU-doの製作作品が増えているような気がする 本作も吉本製作でKATSU-do配給 詳細不明の漫画家・とあるアラ子(東京都出身・1983~)の多分同名原作漫画を、「勝手にふるえてろ」(2017)の大九(おおく)明子監督(横浜市出身・1968~)が映画化 当然コメディ作品だが、(怒られるかもしれないが)主人公が美人中の美人とも観えないところも意表を突いているのかも… 名前は出さないが共演の親友役の女優の方が、やや色黒だが筆者好み ロケ地は主に東京都(一部千葉県)で墨田区、台東区、新宿区、千代田区、杉並区、江東区、港区、北区と多方面にわたる
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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