8月11日~8月17日の週に観た劇場映画
8月11日(日曜)~8月17日(土曜)の週は、9本の劇場映画を観ました。社会の課題を突き付ける力作があり、考えさせられました。
・パラダイス・ネクスト(日・台) ⇒妻夫木聡(福岡県柳川市出身・1980~)と豊川悦司(大阪府八尾市出身・1962~)が共演したフィルム・ノワールだが、筆者は緊張が続かなかった オール台湾ロケで撮影されたようで、メインは台湾東部の花蓮縣花蓮市や太魯閣国家公園あたりか 中国語題は「亡命之途」で、和訳すると「死への道」らしい
・東京喰種 トーキョーグール【S】 ⇒福岡県出身の漫画家・石田スイ(1986~)の同名原作連載漫画(2011~2014、Re:2014~2018)の映画化第2弾 特に教訓や発想は何も得られないが、純粋にシュールでファンタジックなストーリーとVFXを楽しんだ 主演は第1作目と同じ窪田正孝(神奈川県出身・1988~)だが、共演女優が清水富美加(現千眼美子・東京都出身・1994~)から山本舞香(鳥取県米子市出身・1997~)に代わった 冒頭にあった、東京のビル群の外壁に映像を映写するシーンは結構斬新 ロケ撮影は2018年10月に神奈川県横須賀市の喫茶店、地下遊水巨大トンネル、埼玉県など、主に首都圏で行われた模様
・出国 造られた工作員(韓) ⇒1986年に韓国人経済家族が起こした実話事件に基づいた作品ということに驚く 現在はどうか分からないが、全斗煥韓国大統領(1931~・任期:1980~1988)時代の、南北に分断された朝鮮半島では、こんなにも過酷で非人道的なスパイ合戦の世界があったことが分かる 訳あって西ドイツ・ベルリンに亡命していた韓国人経済学者家族4人が北朝鮮のエージェントに騙されて北朝鮮に亡命するが、結局はスパイにされてしまう デンマークの空港で西側へ亡命・復帰を図るが、父(主人公)・娘と母(妻)・息子に分断される 家族を奪還するために、無謀にも北朝鮮エージェントと家族との人質交換を東ドイツ領内で実行するが、最後は在ベルリン韓国領事館員や米国CIAまで参戦するスパイ大作戦に 英語原題は"Unfinished"=「未完、未達」か
・世界の涯ての鼓動(独・仏・西・米) ⇒原題は"Submergence"=「潜水、水没」 英国スコットランド・シェトランド諸島出身のJ・M・レッドガード(1968~)の同名原作小説(2011)をヴィム・ヴェンダース監督(独デュッセルドルフ出身・1945~)が映画化 フランス・ノルマンディー海岸のホテルで出会った英国MI-6諜報員と生物学者が5日間で恋に落ちるが、その後それぞれの目的地、ソマリアの内戦地帯とグリーンランド沖の深海に向かい、危険なミッションに従事 映像は美しいが、時々詳しい説明を省略し、断片的に芸術的に構成されているので、分かりづらいところもある▼守護教師(韓) ⇒「新感染 ファイナル・エクスプレス」(韓・2016)の出演で日本でも有名になり、今年日本公開された「神と共に 第二章:因と縁」(韓・2018)や「無双の鉄拳」でも存在感を示したマ・ドンソク(ソウル出身・米国在住・1971~)が主演 マは「弱きを助け、強きを挫(くじ)く」役によくフィットしており、今回は腐敗にまみれた田舎村の女子高体育教師を演じる 村では女子高理事長、警察、ヤクザが癒着しており、理事長が首長選挙に立候補 貧乏な家庭の少女が行方不明になった事件を、学校の方針に反して追求していくと、とんでもない闇が浮かび上がる 南北問題・スパイ問題、国内の政治的対立、貧富の格差問題、国内政治の腐敗など、問題に事欠かない韓国ではのサスペンス物語仕立てだと思う アクション・シーンも見物だが、皆やや不死身さが過ぎるかも… 原題は"The Villagers"=「村人たち」
・ワイルド・スピード スーパーコンボ ⇒「ワイルド・スピード」シリーズ(2001~)の第11作目のようだ 監督は「ジョン・ウィック」(2014)、「アトミック・ブロンド」(2017)、「デッドプール2」(2018)のデヴィッド・リーチ(ウィスコンシン州出身・1969~) ドウェイン・ジョンソン(カリフォルニア州出身・1972~)とジェイソン・ステイサム(英・1967~)の2大アクション俳優が共演 今回はロサンゼルス、ロンドン、ロシア、サモアなどを疾走 サモアの映像用にはハワイ州のカウアイ島でロケした模様 次作も当然製作されそうだ 原題は"Fast & Furious: Hobbs & Shaw"=「疾走・劇烈:ホブスとショウ」▼存在のない子供たち(レバノン) ⇒観終わって、とても存在感のある「存在のない子供たち」だった ★評価でもよかったが、余りに過酷な場面の連続だったので… レバノンの首都ベイルート出身の女性監督ナディーン・ラバキー(1974~)が3年間の現状リサーチを経て、本人以外はすべて素人をキャスティングして製作したドキュメンタリーのような作品 ラバキーが監督、脚本、そして弁護士役としての出演の3役を兼ねた 第71回カンヌ国際映画祭(2018)で審査員賞を受賞 全編に流れる大きな生活音が登場する子供たちの過酷な生活を暗示しているように感じた 内戦からの混乱がまだ続くベイルートでは、シリアやアフリカなどからの難民や不法移民、またその子供たちが多数存在 出生証明書などの身分証のない子供も多く、毎日働きながら教育も受けられず、貧民窟から抜け出す方法がない 親による強制婚姻、人身売買、身分証の偽造などが横行する社会に12歳と思われる主人公少年が抵抗 冒頭の「本人を生んだ罪」で両親を訴える裁判所シーンにつながる 確かに子供を産むのは権利ではあるが、満足に育てられないのは罪(義務違反)だろう レバノン内戦(1975~1990)について少し勉強したが、余りに複雑すぎて頭が混乱 1941年にフランスから独立したレバノンは第二次世界大戦(1939~1945)後には中東のパリとして栄えたが、アッシャフ(PLO:パレスチナ解放機構)の流入により内政が流動化し内戦に至ったようだ 国内にはキリスト教系とイスラム教系の宗派計18もあり、バランスをとる政治体制になっており普通選挙は実施されていない また、ヒズボラ(イスラム教シーア派の対イスラエル戦闘集団)とイスラエルの小競り合いは完全には終結していない 欧米諸国、シリア、イスラエル、イランなどからの影響・介入を常に受けているようだ 原題は"Capharnaum"=「カペナウム」 カペナウムとはイスラエルのガリラヤ湖(ティベリアス湖)の北西岸にあった古代都市で、新約聖書にイエス・キリストが活動した場として登場し、キリストの第2の故郷といわれる フランス語ではこの故事から転じて「混沌、修羅場」の意味もあるらしい
▼五億円のじんせい ⇒こういう観点から物事を見たことはなかった 美談の裏には苦悩もあるということか 重い心臓病により、世の中・周囲から5億円の善意の寄付を集め、米国で心臓移植手術を受け、いい子として成長した高校生が主人公 彼は幼い頃から周囲からの期待に応えるようと、将来は世の中の役に立つため医者を目指すと公言 しかし、周囲の期待が重荷になり5億円を返済して自殺しようと考える 夏休みに家出し、ホームレスの川岸の家に居候しながら、日雇い仕事(1万円)から、女性用添い寝ハウス(3万円)などこんな仕事が実在するのかというものを経験 SNS社会の現代にマッチした、自殺願望女子学生との交流そして5億円に悩む主人公を貶(けな)し励ます謎の人物も描かれる 5億円の価値を理解させるため「人一人が一生涯生きるのに必要な費用は2憶100万円で、人一人が一生涯に稼ぐ収入は2億300万円」という統計も語られる また終盤には「世の中には優しい人と優しくない人がいる訳ではなく、優しくしたい奴とそうでない奴がいる」という迷格言も登場 本作はGYAOとアミューズによるオリジナル映画製作プロジェクト「NEW CINEMA PROJECT」第1回グランプリを受賞した企画の映画化で、監督は広島県出身の文晟豪(むんそんほ・1981~)、脚本は東京都品川区出身の蛭田直美 ロケ撮影は、エキストラ募集情報からは、昨年5~6月に栃木県栃木市、神奈川県横浜市、埼玉県所沢市などで行われた模様
・トム・オブ・フィンランド(フィンランド・スウェーデン・デンマーク・独・米) ⇒トム・オブ・フィンランドとは、鉛筆で逞しい男たちを描いたゲイ・アートで世界的に有名になったトウコ・ラークソネン(フィンランド・ 1920~1991)のこと 彼は戦時中にフィンランド軍従軍中に同性愛に目覚め、退役後広告会社でデザイン画を描きながら余暇にゲイ・アートを作成 当時欧州では同性愛は違法だったが、同性愛に寛容だった米国から火が点いた カリフォルニア州やニューヨーク市のゲイ・ハウスが登場し、こんなものがあるのかと驚く 最近は男同士が堂々とキスし、ベッド・シーンを演ずる映像が多くなっているが、少々気持ち悪いけど受け入れるしかないのか… 原題も"Tom of Finland"
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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