12月1日~12月7日の週に観た劇場映画
12月1日(日曜)~12月7日(土曜)の週は、5本の劇場映画を観ました。最近は超長編の作品が増えているように思います。
・読まれなかった小説(土・仏・独・ブルガリア・マケドニア・ボスニア・スウェーデン・カタール) ⇒3時間を超える長編なので、観に行くタイミングが難しかった 「雪の轍」(土・2014・本作も3時間超)で第67回カンヌ国際映画祭(2014)のパルム・ドールを受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイラン(土・1959~)監督の作品 ジェイランはこれ以前にカンヌのグランプリを2回、監督賞を1回獲得しており、トルコを代表する俊英監督のようだ 一言でいうと、本作は父と息子との断絶と和解を描く ただし、3時間を超える作品なので、台詞は膨大で父と息子の思考の相違、小説創作に関する延々とした議論、イスラム教の解釈に関する長い議論などにたっぷり時間を費やす 原題は"Ahlat Agaci"(土)="The Wild Pear Tree"=「野生の梨の木」 これは主人公の息子が大学卒業後に執筆した小説のタイトル 出版に漕ぎ付けるが、売れず誰も読んでくれない ネタバレだが、兵役後父親だけが読んでくれたことを知り、兵役の過酷な経験と併せて父子の相互理解が進む 舞台は古代からの歴史に富んだところで、ギリシア神話のトロイ戦争で有名なトロイの木馬や第一次世界大戦(1914~1918)中にガリポリの戦い(1915~1916)のあった辺り ガリポリの戦いではイスタンブールを目指したイギリス連合軍をオスマン帝国軍が防いだもので、オスマン帝国軍がイギリス軍に勝利した唯一の戦争ではないか この結果、当時のウィンストン・チャーチル(英・1874~1965)海軍大臣が下野することになり、オスマン帝国軍のムスタファ・ケマル・アタチュルク(土・1881~1938)司令官は後のトルコ共和国(1923~)大統領につながる地歩を築いた ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(独・1685~1750)のフーガ曲が終始使われており、本作の重厚さを増している
・ラスト・クリスマス ⇒ロンドン出身のシンガー・ソング・ライターだったジョージ・マイケル(1963~2016)が歌う2人組「ワム!」の大ヒット・クリスマス・ソング「ラスト・クリスマス」(1984)をバックに物語が紡がれる 1999年にユーゴスラビア内戦から逃れロンドンに移住したヒロインは明るく元気に暮らすが、2017年の年末に謎の男性と恋に陥るミステリー・ラブ・コメディ テーマはかなり違うが、日本でも大ヒットした「ゴースト ニューヨークの幻」(1990)を思い出した 監督は女性版「ゴースタバスターズ」(2016)や「ブライズメイズ 史上最悪のウェディング」(2011)のポール・フェイグ(米国ミシガン州出身・1962~) 共同原案・共同脚本にエマ・トンプソン(英・1959~)が加わっており、ヒロインの母親役で出演も 英国女優のエミリア・クラーク(ロンドン出身・1986~)が主演し、顔の表情が多彩 原題も"Last Christmas"=「去年のクリスマス」
▼LORO 欲望のイタリア(伊) ⇒「グランドフィナーレ」(伊・仏・英・スイス・2015)や「グレート・ビューティー 追憶のローマ」(伊・仏・2013)で知られるイタリアの映画監督・脚本家のパオロ・ソレンティーノ(ナポリ出身・1970~)が製作(監督・脚本) 4期計9年間にわたりイタリアのいわゆる首相職を務めたシルヴィオ・ベルルスコーニ(ミラノ出身・1936~)を題材に、実話半分・創作半分で、汚職や女性スキャンダルにまみれた政治家の半生を描く サルデーニャ島の超豪華ヴィラでのロケやセットに相当な費用がかかっていると思われる 恐ろしい数のイタリア・欧州美女も登場し、話はとんでもなく退廃し突き抜けているので、ある意味清々しい 原題は"Loro"(伊)="Their, Theirs”=「彼らの、彼らのもの」で、「彼らの別世界の話」を意味しているのかも…
・スペインは呼んでいる(英) ⇒前作「イタリアは呼んでいる」(英・2014)に続き、今回はスペインをランド・ローバーで北から南へ縦断 月曜日にイギリスからフェリーでスペインのマラガ州に渡り、ラ・リオハ州とカスティーリャ・ラ・マンチャ州を通り、土曜日にアンダルシア州にまで至るロード・ムービーでもある 各地で本題の食のレポートをしながら、スペイン国内を観光 車中・レストランでは、英米有名タレントのものまねと軽口・ダジャレで一杯 前作と同様に、マイケル・ウィンターボトム(英・1961~)監督が製作し、英国の現職俳優・コメディアンのスティーヴ・クーガン(マンチェスター出身・1965~)とロブ・ブライドン(ウェールズ出身・1965~)が実名で出演 スティーヴは、ついにはジブラルタル海峡をフェリーで渡ってモロッコにまで上陸 原題は"The Trip to Spain"=「スペインへの旅」
▼ファイティング・ファミリー ⇒英国イングランド東部ノーフォーク州ノリッジにある、小さな家族経営のレスリング・ジムWAWの出身で、米国に進出しついにはWWEディーヴァズの最年少チャンピオンにまでなった実在の女子プロレスラー・ペイジ(本名:サラヤ・ジェイド・ベヴィス・1992~)についての実話を映画化 ペイジの話を知った元WWEチャンピオンで俳優のドウェイン・ジョンソン(米国カリフォルニア州出身・1972~)が本作企画に加わり、プロレスラーとしてのリングネーム「ザ・ロック」本人役で本作に出演も 英国作品らしく普通の家族の愛と絆の描写に溢れている WWEのトライアウトに兄と一緒に参加したかったのにそうはならなかった妹ペイジの苦悩、両親と兄からの愛のこもった激励と支援、トライアウトに一緒に参加している女子プロレスラーとの交流など感動シーンも多い トライアウトでの過酷な選別トレーニングと冷酷な不合格の通告、さらには試合デビューするまでのさらに激しい鍛練などにも驚く 監督・脚本はスティーブン・マーチャント(英国ブリストル出身・1974~)で主演はフローレンス・ピュー(英国オックスフォード出身・1996~) 原題は"Fighting with My Family"=「家族とともに闘う」か
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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