12月22日~12月25日の4日間に観た劇場映画
12月22日(日曜)~12月25日(水曜)の4日間は、7本の劇場映画を観ました。年末なので、変則期間でレポートします。
▼カツベン! ⇒映画は映画の話を語る時が一番力強く、リアリティに富んでいると思う 「Shall we ダンス?」(1996)、「舞子はレディ」(2014)など緻密な作品を紡ぐ周防正行(東京都目黒区出身・1956~)監督が、大正時代の無声映画活動弁士(カツベン)の活躍を描く しかし、基本はコメディで、ハプニングや騙りやコソ泥などのいろいろな場面を面白可笑しく挿入している 特に、ラストの約半時間は息つく暇もないドタバタ喜劇の連続 主演の成田凌(埼玉県出身・1993~)の弁士演技は結構見事で、「愛がなんだ」(2019)に引き続き今年の注目株 ロケ撮影は2018年9~12月の長期間行われ、東映京都撮影所(太秦映画村)から始まり、福島市(芝居小屋)、岐阜県下呂市、茨城県常総市、栃木県日光市、千葉県(房総のむら・小湊鉄道上総鶴舞駅)などに次々と転戦した模様 またエンディング曲は奥田民生(広島市出身・1965~)が唄う「カツベン節」
・シュバルの理想宮 ある郵便配達員の夢(仏) ⇒欧米では結構知られているようだが、今さらながらフランスにはこんな名所もあったのかという感じ フランスでは有名なようだが、日本では全く知られていないのではないか 郵便配達員のジョゼフ=フェルディナン・シュヴァル(仏・1936~1924)がフランス南東部ドローム県オートリーブに、たった一人、手作業で33年間(1879~1912)、9万3千時間を費やして、彼独特の宮殿・理想宮を構築した経緯を描く 寡黙で超真面目な主人公は妻、娘、息子そして後妻の死にもめげず、理想宮そして自分達の廟(墓)まで完成させた 原題は"L'Incroyable histoire du Facteur Cheval"(仏)="The incredible story of the Postman Cheval"=「郵便配達員シュバルの信じがたい話」か
▼ブレッドウィナー(アイルランド・加・ルクセンブルク) ⇒カナダ人児童文学作家のデボラ・エリス(オンタリオ州出身・1960~)の同名原作小説(2000・邦訳:「生きのびるために」2002)を、ノラ・トゥーミー(アイルランド・1971~)監督がアニメ映画化 慈善活動に熱心なアンジェリーナ・ジョリー(ロサンゼルス出身・1975~)も製作に参加 アフガニスタンがイスラム原理主義のタリバン政権に支配されていた時代(1996~2001)の首都カブールの情況をよく伝えている タリバン政権の圧制下では、学校教育が廃止され、特に男尊女卑が著しく、女性は家から外出することすら許されなかったようだ 戦争で片足を失った父親を収監されたため一家の担い手がいなくなり、ついには次女の少女が少年に扮装して外に働きに出る 彼女らの命をかけた毎日が身に染みる 少女がパシュート語とダリー語の文章を読めることを売り物にしていたことから見て、当時識字率が相当に低かったと想定される 最近アフガニスタンで暗殺された中村哲(福岡市博多区出身・1946~2019)先生はタリバン政権時代から現地で活動していたが、先生の灌漑の努力により現状はかなり改善されているものと想像したい 中村先生が一緒に活動していたパトゥシュン人たちは、武士道を尊重する日本人と共通点が多いとも聴いている 原題も"The Breadwinner"だが、「(一家・家計を支える)働き手、稼ぎ手」のことらしい
・私のちいさなお葬式(露) ⇒まずザ・ピーナッツ(姉:伊藤エミ・1941~2012・妹:伊藤ユミ・1941~2016)のヒット曲「恋のバカンス」(1963)のロシア語カバー曲が主題歌なのに驚く ロシアの田舎に住む、元教師で73歳の老婦人は夫を先に亡くし一人暮し 病院で余命宣告を受けた彼女は、繁忙のために5年に1度しか帰らない息子に迷惑はかけられないとして、自分で葬儀の準備を始める 彼女が死亡診断書を捏造して、埋葬許可証を入手し、棺桶や料理を用意し、墓地も決め、埋葬場所を掘る しかし、息子が帰郷し話は大団円に こんな話を誰がなぜ考えたのだろうか なぜか画面には緑色のものがあふれ、木壁の家・大きな台車が登場し、彼女は台車とともにバスに乗る 一体今のロシアのどこにこのようなところがあるのだろうか 原題は"Карп отмороженный"(露)="Karp otmorozhennyy"(露)="Carp frostbitten"=「鯉の凍傷」 川の釣り人が無理やりくれた大きな鯉が冷蔵庫の中で冷凍されても生き返るのは、鯉の命と老婦人の命を対比か
・午前0時、キスしに来てよ ⇒時間の都合で図らずも鑑賞 橋本環奈(福岡県出身・1999~)が相変わらずJK役を演じている 小柄だから意外に違和感が少ないのだろうか 売れっ子芸能人との秘密の交際を描く 物語の中に入り込めばそれなりに面白いし、楽しい 強面の遠藤憲一(東京都品川区出身・1961~)がマネージャー役でいい味を出している 漫画家・みきもと凛の原作同名連載漫画(2015~)の映画化 作中では高校の所在場所などを鎌倉市としているが、ロケ撮影は今年(2019年)5月に関東等各地で行われた模様 ロケ地は千葉県(多古高校)、東京都渋谷区・練馬区(豊島園)、神奈川県鎌倉市(七里ヶ浜・極楽寺など)・藤沢市、栃木県宇都宮市(ヒカリ座)、愛知県名古屋市(市政資料館)・豊明市(フジタホール2000)など
・冬時間のパリ(仏) ⇒原題は"Doubles vies"(仏)="Double lives"=「二重生活」か パリに暮らす1組の夫婦と1組のカップル 全員知り合いだが、不倫関係、浮気など表には見えない裏の関係も同時進行中 ディジタル化の波に巻き込まれた出版業界、実際の不倫関係を小説にする作家、国民を幸せにできない政治家など、様々な問題が登場 パリ生活の裏側にはこんなに自由な男女関係が成り立っているのか 監督・脚本はオリヴィエ・アサイアス(パリ出身・1955~)、「真実」(仏・日・2019)にも出演していたジュリエット・ビノシュ(パリ出身・1964~)が妻役
・パリの恋人たち(仏) ⇒原題は"L'homme fidèle"(仏)="The faithful man"=「忠実な男」で、実は2人の女に振り回される男を描く ある意味では幸せな男であるが、全く意気地ないヒモのような男でもある これが事実に近いものだとすると、2本続けてパリの本当に自由な恋愛環境を観たことになる パリでは女が二股をかけるるのが普通なのか 子供がどちらの男の子か分からないので、それをコイン・トスで決めるなんて… 監督・共同脚本・主演はルイ・ガレル(出身・1983~)、2人の女性をレティシア・カスタ(仏・1978~)とリリー=ローズ・デップ(パリ出身・1999~)が演じる カスタはガレルの現在の妻であり、デップは名前のとおりジョニー・デップ(米国ケンタッキー州出身・1963~)の娘
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品
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