カテゴリー「映画(2019年)」の51件の記事

2019年12月30日 (月)

12月26日~12月29日の4日間に観た劇場映画

12月26日(木曜)~12月29日(日曜)の4日間は、5本の劇場映画を観ました。年末なので、変則期間でレポートします。今年の劇場映画鑑賞はこれで修了です。

380bfb9b3fc84fabテッド・バンディ ⇒テッド・バンディ(米国バーモント州バーリントン生まれ・1946~1989)とは、1970年代に全米で30人以上の若い白人女性を殺害・死体損壊・遺棄したという、超有名な連続殺人犯 その名を聞いたことがある人も多いと思う 1969年にワシントン州シアトルで知り合い、1979年にフロリダ州タラハシーの裁判所で死刑判決が出されるまで恋愛関係にあったエリザベス(リズ)・クレプファーの回想録"The Phantom Prince: My Life with Ted Bundy"(1981)=「仮面・幻の王子:テッド・バンディと一緒に過ごした私の人生」に基づく作品 バンディは頭脳明晰でとてもハンサムだが精神病的であり、自分を全能の(悪)神と考えていたのではないか また、変装の達人でもあり、表情も多様に変化させることができるカメレオン俳優のようだったらしい 連続殺人犯には時々あることだが、自分で自分の弁護をした裁判のTV中継や報道を見て、直接・間接にバンディに心酔した女性も多い 元警察官で恋人でもあった女性は裁判の証人として彼を弁護している最中に求婚され、裁判官の前で受け入れ婚姻が成立 当時は賄賂を監守に渡せば2人きりになることもでき、この女性は後にバンディの娘を産んでいる バンディが死刑執行直前に告白した内容によれば、殺人はシアトル州で始まり、ユタ州、コロラド州と続き、最後にフロリダ州にまで及ぶ フロリダ州の裁判では女性死体の太腿に残っていた噛み傷の歯形が決定的な証拠の一つになったようだが、DNA鑑定や監視カメラ映像が一般的な現在ならばもっと速く容易に解決できたものと思われる バンディがフロリダ州で死刑判決を受けた頃は、筆者も米国に滞在中だったが、在イラン米国大使館人質事件(1979.11~1980.1)の報道にかき消されていた 本作では、バンディをザック・エフロン(カリフォルニア州出身・1987~)が鬼気迫る様子で熱演し、クレプファーをリリー・コリンズ(英国出身・1989~)が演じている 原題は"Extremely Wicked, Shockingly Evil and Vile"=「極めて邪悪、衝撃的に凶悪で卑劣」で、フロリダ州の判事が死刑判決を言い渡す時に使った判決理由の一節とのこと
ジュマンジ ネクスト・レベル ⇒「ジュマンジ」(1995)、「ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル」(2017)に続くシリーズ3作目 前作の高校生たちが大学生となり、偶然から再びゲームの中に入り込みゲーム・クリアを目指す 前作よりは面白さはアップしており、ゲームのアイコン(キャラクター)が入れ替わるなどのトリックも使用 ゲーム中に残るキャラクターもいて、さらなる続編を考えているのだろうか 当然ながら、スタントやポスプロ・VFXは多い 原題も"Jumanji: The Next Level"
THE UPSIDE 最強のふたり ⇒日・仏で大ヒットしたフランス映画作品「最強のふたり」(2011・原題:"Intouchables"(仏)="Untouchables"=「アンタッチャブルズ」)を米国ハリウッドでリメイクしたもの 米国では大ヒットしたようだが、筆者には内容が分かっているだけに、なかなか緊張が続かないきらいがあった リメイクはやはり本家を超えられないか 原題は単に"The Upside"
みぽりん ⇒松本大樹(神戸市灘区出身・1983~)監督が300万円の低予算で製作したB級インディーズ作品 したがって、監督が製作・脚本も兼ねている また、主に関西で活躍している俳優たちを起用し、2018年11月~2019年1月の間のわずか10日間で、全編地元神戸市の市街と六甲山でロケ撮影 歌が超絶下手な地下タレント歌手に、6日間山荘でボイス・トレーニングの猛特訓を受けさせるというパニック・ホラー作品 終映後の出演俳優たちのトークショーを聴いていると、監督・俳優・スタッフが和気あいあい、アイデアを出しながら、協力して作り上げたもののようだ オープニングに流れる、六甲山から観た朝焼け映像は美しい
b7747f362b0a8ad7男はつらいよ お帰り 寅さん ⇒「男はつらいよ」(1969~1997)シリーズの第1作公開50周年を記念する第50作目として、山田洋次(大阪府豊中市出身・1931~)監督が製作 4Kデジタル・リマスター版の映像を使用して、シリーズの総集編のようになっているのが少々残念か 主人公の車寅次郎:渥美清(東京都台東区出身・1928~1996)が当然不在なので、主題はその妹・諏訪さくら:倍賞千恵子(豊島区出身・1941~)の息子・満男:吉岡秀隆(埼玉県蕨市出身・1970~)のマドンナ話にシフト 監督や一部の俳優が50年間変わらずに活躍していることに驚く 本シリーズを撮影していた松竹大船撮影所(鎌倉市)は2000年に閉鎖されているため、本作では東宝スタジオ(東京都世田谷区)を使用したようだ

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2019年12月26日 (木)

12月22日~12月25日の4日間に観た劇場映画

12月22日(日曜)~12月25日(水曜)の4日間は、7本の劇場映画を観ました。年末なので、変則期間でレポートします。

b194124a05378762カツベン! ⇒映画は映画の話を語る時が一番力強く、リアリティに富んでいると思う 「Shall we ダンス?」(1996)、「舞子はレディ」(2014)など緻密な作品を紡ぐ周防正行(東京都目黒区出身・1956~)監督が、大正時代の無声映画活動弁士(カツベン)の活躍を描く しかし、基本はコメディで、ハプニングや騙りやコソ泥などのいろいろな場面を面白可笑しく挿入している 特に、ラストの約半時間は息つく暇もないドタバタ喜劇の連続 主演の成田凌(埼玉県出身・1993~)の弁士演技は結構見事で、「愛がなんだ」(2019)に引き続き今年の注目株 ロケ撮影は2018年9~12月の長期間行われ、東映京都撮影所(太秦映画村)から始まり、福島市(芝居小屋)、岐阜県下呂市、茨城県常総市、栃木県日光市、千葉県(房総のむら・小湊鉄道上総鶴舞駅)などに次々と転戦した模様 またエンディング曲は奥田民生(広島市出身・1965~)が唄う「カツベン節」
シュバルの理想宮 ある郵便配達員の夢(仏) ⇒欧米では結構知られているようだが、今さらながらフランスにはこんな名所もあったのかという感じ フランスでは有名なようだが、日本では全く知られていないのではないか 郵便配達員のジョゼフ=フェルディナン・シュヴァル(仏・1936~1924)がフランス南東部ドローム県オートリーブに、たった一人、手作業で33年間(1879~1912)、9万3千時間を費やして、彼独特の宮殿・理想宮を構築した経緯を描く 寡黙で超真面目な主人公は妻、娘、息子そして後妻の死にもめげず、理想宮そして自分達の廟(墓)まで完成させた 原題は"L'Incroyable histoire du Facteur Cheval"(仏)="The incredible story of the Postman Cheval"=「郵便配達員シュバルの信じがたい話」か
8e55819f9940ad7cブレッドウィナー(アイルランド・加・ルクセンブルク) ⇒カナダ人児童文学作家のデボラ・エリス(オンタリオ州出身・1960~)の同名原作小説(2000・邦訳:「生きのびるために」2002)を、ノラ・トゥーミー(アイルランド・1971~)監督がアニメ映画化 慈善活動に熱心なアンジェリーナ・ジョリー(ロサンゼルス出身・1975~)も製作に参加 アフガニスタンがイスラム原理主義のタリバン政権に支配されていた時代(1996~2001)の首都カブールの情況をよく伝えている タリバン政権の圧制下では、学校教育が廃止され、特に男尊女卑が著しく、女性は家から外出することすら許されなかったようだ 戦争で片足を失った父親を収監されたため一家の担い手がいなくなり、ついには次女の少女が少年に扮装して外に働きに出る 彼女らの命をかけた毎日が身に染みる 少女がパシュート語とダリー語の文章を読めることを売り物にしていたことから見て、当時識字率が相当に低かったと想定される 最近アフガニスタンで暗殺された中村哲(福岡市博多区出身・1946~2019)先生はタリバン政権時代から現地で活動していたが、先生の灌漑の努力により現状はかなり改善されているものと想像したい 中村先生が一緒に活動していたパトゥシュン人たちは、武士道を尊重する日本人と共通点が多いとも聴いている 原題も"The Breadwinner"だが、「(一家・家計を支える)働き手、稼ぎ手」のことらしい
私のちいさなお葬式(露) ⇒まずザ・ピーナッツ(姉:伊藤エミ・1941~2012・妹:伊藤ユミ・1941~2016)のヒット曲「恋のバカンス」(1963)のロシア語カバー曲が主題歌なのに驚く ロシアの田舎に住む、元教師で73歳の老婦人は夫を先に亡くし一人暮し 病院で余命宣告を受けた彼女は、繁忙のために5年に1度しか帰らない息子に迷惑はかけられないとして、自分で葬儀の準備を始める 彼女が死亡診断書を捏造して、埋葬許可証を入手し、棺桶や料理を用意し、墓地も決め、埋葬場所を掘る しかし、息子が帰郷し話は大団円に こんな話を誰がなぜ考えたのだろうか なぜか画面には緑色のものがあふれ、木壁の家・大きな台車が登場し、彼女は台車とともにバスに乗る 一体今のロシアのどこにこのようなところがあるのだろうか 原題は"Карп отмороженный"(露)="Karp otmorozhennyy"(露)="Carp frostbitten"=「鯉の凍傷」 川の釣り人が無理やりくれた大きな鯉が冷蔵庫の中で冷凍されても生き返るのは、鯉の命と老婦人の命を対比か
午前0時、キスしに来てよ ⇒時間の都合で図らずも鑑賞 橋本環奈(福岡県出身・1999~)が相変わらずJK役を演じている 小柄だから意外に違和感が少ないのだろうか 売れっ子芸能人との秘密の交際を描く 物語の中に入り込めばそれなりに面白いし、楽しい 強面の遠藤憲一(東京都品川区出身・1961~)がマネージャー役でいい味を出している 漫画家・みきもと凛の原作同名連載漫画(2015~)の映画化 作中では高校の所在場所などを鎌倉市としているが、ロケ撮影は今年(2019年)5月に関東等各地で行われた模様 ロケ地は千葉県(多古高校)、東京都渋谷区・練馬区(豊島園)、神奈川県鎌倉市(七里ヶ浜・極楽寺など)・藤沢市、栃木県宇都宮市(ヒカリ座)、愛知県名古屋市(市政資料館)・豊明市(フジタホール2000)など

冬時間のパリ(仏) ⇒原題は"Doubles vies"(仏)="Double lives"=「二重生活」か パリに暮らす1組の夫婦と1組のカップル 全員知り合いだが、不倫関係、浮気など表には見えない裏の関係も同時進行中 ディジタル化の波に巻き込まれた出版業界、実際の不倫関係を小説にする作家、国民を幸せにできない政治家など、様々な問題が登場 パリ生活の裏側にはこんなに自由な男女関係が成り立っているのか 監督・脚本はオリヴィエ・アサイアス(パリ出身・1955~)、「真実」(仏・日・2019)にも出演していたジュリエット・ビノシュ(パリ出身・1964~)が妻役
パリの恋人たち(仏) ⇒原題は"L'homme fidèle"(仏)="The faithful man"=「忠実な男」で、実は2人の女に振り回される男を描く ある意味では幸せな男であるが、全く意気地ないヒモのような男でもある これが事実に近いものだとすると、2本続けてパリの本当に自由な恋愛環境を観たことになる パリでは女が二股をかけるるのが普通なのか 子供がどちらの男の子か分からないので、それをコイン・トスで決めるなんて… 監督・共同脚本・主演はルイ・ガレル(出身・1983~)、2人の女性をレティシア・カスタ(仏・1978~)とリリー=ローズ・デップ(パリ出身・1999~)が演じる カスタはガレルの現在の妻であり、デップは名前のとおりジョニー・デップ(米国ケンタッキー州出身・1963~)の娘

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2019年12月22日 (日)

12月15日~12月21日の週に観た劇場映画

12月15日(日曜)~12月21日(土曜)の週は、5本の劇場映画を観ました。結果的にゾンビ・怪物関連作品が過半数になりました。

a694635c87259331屍人荘の殺人 ⇒長崎県出身・兵庫県在住の小説家今村昌弘(1985~)の同名原作小説(2017)の映画化 デビュー作でありながら、新しい発想の分野を拓いたと高評価を得た推理小説 TVドラマ「TRICK」シリーズ(2000~2003)や映画「任侠学園」(2019)の木村ひさし監督(東京都出身・1967~)が製作 少しネタバレになり申し訳ないが、ゾンビ発生事件と密室殺人事件を組合せた新しい発想は見事 神木隆之介(埼玉県出身・1993~)と浜辺美波(石川県出身・2000~)が主演 浜辺は「君の膵臓をたべたい」(2017)で一気に知られるようになったが、だんだん魅力的になってきているようだ また、芸名のような本名を持つタレントとしても有名 ロケ撮影は、今年(2019年)1~2月に行われたようで、千葉県君津市(長崎キャンプ場)・市原市(ロックフェス会場)、神奈川県茅ケ崎市(文教大学)、東京都台東区(浅草喫茶店)、静岡県熱海市(紫湛荘の外部・階段モデルとした公共宿泊施設)などが使われた模様 紫湛荘内部での撮影には東宝スタジオ(東京都世田谷区)内に大型セットを造ったとのこと
再会の夏(仏・ベルギー) ⇒フランスの医師・歴史家・小説家・外交官のジャン=クリストフ・リュファン(ブールジュ出身・1952~)による小説"Le collier rouge"(仏)="The red collar"=「赤い(勲章を首にかけるための)リボン」を、ジャン・ベッケル(パリ出身・1933~)監督が映画化 リュファンは国境なき医師団の創設者の一人らしい 主演は「最強のふたり」(2011)のフランソワ・クリュゼ(パリ出身・1955~) 第一次世界大戦(1914~1918)の英雄ながら、大戦終了後1919年夏にフランスの田舎で投獄されている兵士を軍の検事が調べる ボースロン犬(フランス原産・ドーベルマンの原種)が主要な役割 原題も原作小説と同じだが、邦題はかなりの意訳
ゾンビランド ダブルタップ ⇒2009年の米国ゾンビ・コメディ作品「ゾンビランド」の続編 相変わらずのハチャメチャ・ドタバタ・コメディ作品だが、ゾンビはなぜか人気があるようだ 原題も"Zombieland: Double Tap"だが、「ダブルタップ」とは「ゾンビの世界で生き残るための32のルール」の第2ルールで「2度撃ちして止めを刺せ」という意味らしい 監督、脚本、そして主役4人は前作と一緒 10年の間にルーベン・フライシャー(ワシントンD.C.出身・1974~)監督は「ヴェノム」(2018)に係わり、共同脚本のレット・リース(米)とポール・ウェルニック(加)は「デッドプール」2作(2016・2018)に係わっており、それぞれ著名に また主役4人はなぜかタラハシー(フロリダ州)、ウィチタ(カンザス州)、コロンバス(オハイオ州)そしてリトルロック(アーカンソー州)と皆米国の都市名で呼ばれている 作品の性格上スタント、ポスプロ、VFXのスタッフは多数
0867c47ee39a0c04ゴーストマスター ⇒劇中劇のような、映画撮影現場と怪物の組合せというのは、結構相性がいいようだ 映画撮影現場では、監督指導による何度もの撮り直し、監督と俳優との意見の相違、助監督などの準備不足、長時間の撮影等々、あらゆるトラブルが起きる その中で怪物(ゴーストマスター)が突然発生し、俳優やスタッフを襲う 撮影現場でドタバタ・ハチャメチャ・コメディが繰り広げられる ヤング・ポール(1985~)監督が、TCP(ツタヤ・クリエーターズ・プログラム)2016の準グランプリを獲得した、自身の企画を映画化 走り回る助監督を三浦貴大(東京都出身・1985~)が、助監督との交流がある劇中劇中の助演女優を成海璃子(横浜市神奈川区出身・1992~)が演じる 元柔道家の篠原信一(青森県生まれ・神戸市育ち・1973~)が結構いい味を出している 特殊メイクは百武スタジオが担当しており、ロケ撮影は静岡県熱海市あたりで行われた模様
タッカー ⇒フランシス・フォード・コッポラ(米国ミシガン州デトロイト出身・1939~)監督が1988年に製作した米国作品だが、今回コッポラ監督自身が4Kデジタルリマスター版を監修製作 1988年当時はジョージ・ルーカス(カリフォルニア州出身・1944~)が製作総指揮で参画 米国に実在した人物プレストン・トマス・タッカー(ミシガン州出身・1903~1956)が、第二次世界大戦(1939~1945)後、自身が理想とする車を製造するために米国の巨大自動車メーカーと闘う姿を描く 彼が乗車安全のために考え出した、安全ガラスやシートベルトはその後標準安全仕様となった 今さらながらこんな実話があったのかという感じ 作中にある「新しいアイデアで新規参入しようとするスタート・アップ企業を潰すならば、そのうち敗戦国から工業製品を買うようになる」との警句は、製作当時米国車が日本車に押されていた情況を反映しているようだ 原題は"Tucker: The Man and His Dream"=「タッカー:その男(人物)と夢」か

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2019年12月15日 (日)

12月8日~12月14日の週に観た劇場映画

12月8日(日曜)~12月14日(土曜)の週は、6本の劇場映画を観ました。社会問題に切り込んだ素晴らしい作品と米国のマフィア暗黒史を扱った超長編・超大作に出合いました。

ひとよ ⇒「孤狼の血」(2018)の白石和彌(北海道旭川市出身・1974~)監督が桑原裕子(東京都出身・1976~)の原作を映画化 主演に佐藤健(さいたま市岩槻区出身・1989~)、その兄に鈴木亮平(兵庫県西宮市出身・1983~)、妹に松岡茉優(東京都出身・1995~)、母親に田中裕子(大阪府池田市出身・1955~)、他に筒井真理子(山梨県甲府市出身・1960~)、佐々木蔵之介(京都市上京区出身・1968~)など、錚々たる俳優陣を揃えた 残念ながら、設定が少し旧式過ぎ、時代錯誤的ではないだろうか 父親の家庭内暴力(DV)は現在すでに社会的に対応していること、正当防衛に関する扱い、有罪で収監された母親が釈放後ほとぼりを冷ますために放浪し15年間帰宅しなかったこと、DVの被害者である母親が15年経っても近所・地域のコミュニティで批判・非難されることなど、今のセンスには合わないところが散見 ロケ撮影は今年(2019年)5~6月に、茨城県神栖市(浜松タクシー)・大洗市(大洗港)・鹿嶋市、千葉県香取市・酒々井町などで行われた模様
わたしは光をにぎっている ⇒若手有望監督の中川龍太郎(神奈川県川崎市出身・1990~)が製作(監督兼脚本) 主演に松本穂香(大阪府堺市出身・1997~)を起用し、田舎から上京したヒロインが徐々に東京下町に馴染んでいく様子を描く 東京下町に残る銭湯やひしめき合う商店街・飲食店街のイメージは美しい ロケ撮影は昨年(2018年)10~11月に、長野県信濃町(野尻湖)、東京都清瀬市(銭湯伸光湯)・葛飾区、神奈川県横浜市などで行われた模様
25c032962f4b0fd5アイリッシュマン ⇒マーティン・スコセッシ(ニューヨーク市出身・1942~)監督が、ロバート・デ・ニーロ(ニューヨーク市出身・1943~)を主演に迎え製作した、第二次世界大戦(1939~1945)後の米国東海岸マフィアの実態・暗黒史を描く作品 2人の組合せは実に9回目という ネットフリックスの自主製作で、3時間半と超長編の上、ネット配信が主体で公開劇場が限られているために劇場鑑賞しずらかった 元検事で作家のチャールズ・ブラントが書いたノンフィクション小説「I Heard You Paint Houses: Frank "The Irishman" Sheeran and Closing the Case on Jimmy Hoffa(家を塗るのを聞いた《銃撃して家に血が飛び散ること》:フランク・”アイリッシュマン”・シーランとジミー・ホッファ事件の解明)」(2004)が原作 邦訳版は「アイリッシュマン」(2019) 本書はマフィアの運転手兼ヒットマンだったフランク・シーラン(ペンシルベニア州出身・1920~2003)の告白による未解決殺人事件の解明に挑んでいる シーランはペンシルべニア州マフィアのボスだったラッセル・バファリーノ(伊シチリア島生まれ・1903~1994)に仕え、数々の殺人を代行し、ついには米・加運送業界の労働組合(トラック組合)委員長だったジミー・ホッファ(インディアナ州出身・1913~1975《失踪》)の失踪に偽装した殺害に至る シーランはアイルランド系であるが、第二次世界大戦中に北アフリカ・イタリア戦線に参戦しており、その時にイタリア語を学び、また戦争犯罪ともいえる非情冷酷な殺人に慣れたものと思われる 本作中には、アイリッシュの誇りであったジョン・F・ケネディ大統領(1917~1963)の暗殺にマフィアが係わったような話も登場 シーランをロバート・デ・ニーロが、ホッファをアル・パチーノ(ニューヨーク市出身・1940~)が、そしてバファリーノをジョー・ペシ(ニュージャージー州出身・1943~)がそれぞれ演じている
MANRIKI ⇒俳優で映画監督でもある斎藤工(監督名義は本名の齊藤使用・東京都港区出身・1981~)を軸に集まった創作集団「チーム万力」が製作 主に、斎藤が企画・プロデュース、ピン芸人の永野(一樹・宮崎市出身・1974~)が原案・脚本、そして映像ディレクターの清水康彦(福井県坂井市出身・1981~)が監督と分担し、さらに斎藤と永野は出演も モデルの世界では小顔が持てはやされるので、小顔を望む女性が多いことに違和感を持ったことが企画・発想の原点らしい 小顔にするために万力を使った美容整形手術という奇想天外のアイデアを導入したブラック・コメディ タイトルは「顔デカ」でもいいかと思った
cbb90e74a836ae55家族を想うとき(英・仏・ベルギー) ⇒英国の巨匠ケン・ローチ(ウォリックシャー州出身・1936~)監督の最新作 ローチ監督は「麦の穂をゆらす風」(アイルランド・英・2006)と「わたしはダニエル・ブレイク」(英・仏・2016)で2度もカンヌ国際映画祭パルムドールを獲得 彼は一度は引退を決意したようだが、英国で労働環境がますます悪化・過酷化し、社会格差が拡大する現実に驚き、社会問題を扱わなければという一種の使命感から映画製作現場に戻ったとのこと 英国作品らしいしっかりとした創りで、労働条件・環境を生々しく再現するとともに、長時間勤務により家族の絆が破壊される様子を丁寧に描写 英国にはゼロ時間契約というものがあることを今回初めて知った ゼロ時間契約では下請けの配送自営業者は労働時間がゼロ、つまり収入がゼロということもあるという前提のものらしい 本作のニューカッスル・アポン・タインに住む主人公が結んだフランチャイズ宅配業務の契約では、委託された配送量をこなすためには長時間労働をしなければならないのに、自己都合の休業の場合は自分で代替人を探す必要があること、遅延・紛失などの配送事故の場合は厳しいペナルティが課されることなど、一方的に配送委託事業者側が有利・優位なものとなっている 何か日本のコンビニ事業会社とコンビニ店を運営するフランチャイズ自営業者との間の契約に似ていなくもない 主人公の妻は福祉介護士としてパートタイムの訪問介護業務に従事しているが、自分の車を売って夫の配送用バンを購入したためにバス移動となり長時間労働化 両親が余り家にいないことで、家族関係の崩壊が進むが、家族の絆をわずかに確かめながらも、生活のために仕事に出る 原題は"Sorry We Missed You"=「お会いできなくて申し訳ありません」で、日本の不在配達票に相当する伝票に書かれている表題だが、伝票には敷地内の倉庫に納めたことや近所に預けたことなどの書込みもできる 本作が配送業の話であることを示している

M/村西とおる狂熱の日々 完全版 ⇒基本的には、AV監督の村西とおる(福島県いわき市出身・1948~)が1996年7月20日から8月3日まで2週間、夏の北海道で行ったAV撮影現場を追ったドキュメンタリー作品 筆者の故郷なので懐かしい映像が多く、函館大沼公園、札幌、支笏湖、稚内、網走、知床五湖、カムイワッカの滝などらしき光景が 知床五湖やカムイワッカの滝はヒグマがよく出没するので要注意だと思う 時々波乱万丈の村西とおるの半生が紹介されるが、本人の話しっぷりは綾小路きみまろ(鹿児島県志布志市出身・1950~)のそれによく似ていると感じた

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2019年12月 8日 (日)

12月1日~12月7日の週に観た劇場映画

12月1日(日曜)~12月7日(土曜)の週は、5本の劇場映画を観ました。最近は超長編の作品が増えているように思います。

読まれなかった小説(土・仏・独・ブルガリア・マケドニア・ボスニア・スウェーデン・カタール) ⇒3時間を超える長編なので、観に行くタイミングが難しかった 「雪の轍」(土・2014・本作も3時間超)で第67回カンヌ国際映画祭(2014)のパルム・ドールを受賞したヌリ・ビルゲ・ジェイラン(土・1959~)監督の作品 ジェイランはこれ以前にカンヌのグランプリを2回、監督賞を1回獲得しており、トルコを代表する俊英監督のようだ 一言でいうと、本作は父と息子との断絶と和解を描く ただし、3時間を超える作品なので、台詞は膨大で父と息子の思考の相違、小説創作に関する延々とした議論、イスラム教の解釈に関する長い議論などにたっぷり時間を費やす 原題は"Ahlat Agaci"(土)="The Wild Pear Tree"=「野生の梨の木」 これは主人公の息子が大学卒業後に執筆した小説のタイトル 出版に漕ぎ付けるが、売れず誰も読んでくれない ネタバレだが、兵役後父親だけが読んでくれたことを知り、兵役の過酷な経験と併せて父子の相互理解が進む 舞台は古代からの歴史に富んだところで、ギリシア神話のトロイ戦争で有名なトロイの木馬や第一次世界大戦(1914~1918)中にガリポリの戦い(1915~1916)のあった辺り ガリポリの戦いではイスタンブールを目指したイギリス連合軍をオスマン帝国軍が防いだもので、オスマン帝国軍がイギリス軍に勝利した唯一の戦争ではないか この結果、当時のウィンストン・チャーチル(英・1874~1965)海軍大臣が下野することになり、オスマン帝国軍のムスタファ・ケマル・アタチュルク(土・1881~1938)司令官は後のトルコ共和国(1923~)大統領につながる地歩を築いた ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(独・1685~1750)のフーガ曲が終始使われており、本作の重厚さを増している
ラスト・クリスマス ⇒ロンドン出身のシンガー・ソング・ライターだったジョージ・マイケル(1963~2016)が歌う2人組「ワム!」の大ヒット・クリスマス・ソング「ラスト・クリスマス」(1984)をバックに物語が紡がれる 1999年にユーゴスラビア内戦から逃れロンドンに移住したヒロインは明るく元気に暮らすが、2017年の年末に謎の男性と恋に陥るミステリー・ラブ・コメディ テーマはかなり違うが、日本でも大ヒットした「ゴースト ニューヨークの幻」(1990)を思い出した 監督は女性版「ゴースタバスターズ」(2016)や「ブライズメイズ 史上最悪のウェディング」(2011)のポール・フェイグ(米国ミシガン州出身・1962~) 共同原案・共同脚本にエマ・トンプソン(英・1959~)が加わっており、ヒロインの母親役で出演も 英国女優のエミリア・クラーク(ロンドン出身・1986~)が主演し、顔の表情が多彩 原題も"Last Christmas"=「去年のクリスマス」
4b620f4ecdc6c9f3LORO 欲望のイタリア(伊) ⇒「グランドフィナーレ」(伊・仏・英・スイス・2015)や「グレート・ビューティー 追憶のローマ」(伊・仏・2013)で知られるイタリアの映画監督・脚本家のパオロ・ソレンティーノ(ナポリ出身・1970~)が製作(監督・脚本) 4期計9年間にわたりイタリアのいわゆる首相職を務めたシルヴィオ・ベルルスコーニ(ミラノ出身・1936~)を題材に、実話半分・創作半分で、汚職や女性スキャンダルにまみれた政治家の半生を描く サルデーニャ島の超豪華ヴィラでのロケやセットに相当な費用がかかっていると思われる 恐ろしい数のイタリア・欧州美女も登場し、話はとんでもなく退廃し突き抜けているので、ある意味清々しい 原題は"Loro"(伊)="Their, Theirs”=「彼らの、彼らのもの」で、「彼らの別世界の話」を意味しているのかも…
スペインは呼んでいる(英) ⇒前作「イタリアは呼んでいる」(英・2014)に続き、今回はスペインをランド・ローバーで北から南へ縦断 月曜日にイギリスからフェリーでスペインのマラガ州に渡り、ラ・リオハ州とカスティーリャ・ラ・マンチャ州を通り、土曜日にアンダルシア州にまで至るロード・ムービーでもある 各地で本題の食のレポートをしながら、スペイン国内を観光 車中・レストランでは、英米有名タレントのものまねと軽口・ダジャレで一杯 前作と同様に、マイケル・ウィンターボトム(英・1961~)監督が製作し、英国の現職俳優・コメディアンのスティーヴ・クーガン(マンチェスター出身・1965~)とロブ・ブライドン(ウェールズ出身・1965~)が実名で出演 スティーヴは、ついにはジブラルタル海峡をフェリーで渡ってモロッコにまで上陸 原題は"The Trip to Spain"=「スペインへの旅」
115a2cd3bea97d15ファイティング・ファミリー ⇒英国イングランド東部ノーフォーク州ノリッジにある、小さな家族経営のレスリング・ジムWAWの出身で、米国に進出しついにはWWEディーヴァズの最年少チャンピオンにまでなった実在の女子プロレスラー・ペイジ(本名:サラヤ・ジェイド・ベヴィス・1992~)についての実話を映画化 ペイジの話を知った元WWEチャンピオンで俳優のドウェイン・ジョンソン(米国カリフォルニア州出身・1972~)が本作企画に加わり、プロレスラーとしてのリングネーム「ザ・ロック」本人役で本作に出演も 英国作品らしく普通の家族の愛と絆の描写に溢れている WWEのトライアウトに兄と一緒に参加したかったのにそうはならなかった妹ペイジの苦悩、両親と兄からの愛のこもった激励と支援、トライアウトに一緒に参加している女子プロレスラーとの交流など感動シーンも多い トライアウトでの過酷な選別トレーニングと冷酷な不合格の通告、さらには試合デビューするまでのさらに激しい鍛練などにも驚く 監督・脚本はスティーブン・マーチャント(英国ブリストル出身・1974~)で主演はフローレンス・ピュー(英国オックスフォード出身・1996~) 原題は"Fighting with My Family"=「家族とともに闘う」か

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2019年12月 1日 (日)

11月24日~11月30日の週に観た劇場映画

11月24日(日曜)~11月30日(土曜)の週は、7本の劇場映画を観ました。日本の漫画・アニメがフランスで実写映画化されたのには驚きました。

決算!忠臣蔵 ⇒歴史学者・山本博文(岡山県津山市出身・1957~)の著書「『忠臣蔵』の決算書」(2012)の映画化 山本は東大史料編纂所の教授でもあり、江戸時代の政治・経済・社会に関する著書が多数 江戸時代は、藩や武家の経理・財務情況について正確に記録された資料が沢山残っているといわれる 埋もれているものを発掘して解読すれば、まだまだ金の面から新しい物語が生まれそうだ 本作では300年余り前の江戸元禄時代に起きた赤穂事件について、吉良邸討入りまでの赤穂藩の資産・費用の限界などを、現在の貨幣価値に換算しながら、面白可笑しく描く 監督は「忍びの国」(2017)の中村義洋(茨城県出身・1970~)で、堤真一(兵庫県西宮市出身・1964~)や岡村隆史(大阪市東淀川区出身・1970~)が出演 製作には松竹と吉本が入っている ロケ撮影は、今年(2019年)冬に滋賀県彦根市(彦根城)・近江八幡市(八幡堀)、京都府京都市(松竹撮影所・随心院)・亀岡市、大阪府守口市、兵庫県赤穂市(赤穂城)などで行われた模様
ライフ・イットセルフ 未来に続く物語 ⇒「Dearダニー 君へのうた」(2015)で初監督デビューしたダン・フォーゲルマン(米国ニュージャージー州出身・1976~)が監督製作(兼脚本) 全体を5章構成にし、ニューヨークとスペインを舞台に、2家族の運命と宿命を大きく描く 時系列がかなり前後しており、登場人物も多いので、1回の鑑賞では分かりずらいところがあるかもしれない ボブ・ディランの唄が主題歌に 原題も"Life Itself"だが、直訳すると「人生そのもの」か
地獄少女 ⇒「貞子vs伽椰子」(2016)、「不能犯」(2018)などホラー作品を多く手がけている、白石晃志(こうじ・福岡県出身・1973)監督が、アニメーターのわたなべひろし(熊本市出身)の原案を映画化(兼脚本) 主演は玉城ティナ(沖縄県出身・1997~) 正直に言って、ホラー感覚は理解できるが、話は少し何が何だか分からなかった ロケ撮影は、昨年(2018年)9~10月に東京都渋谷区、千葉県柏市、神奈川県藤沢市・横浜市などで行われた模様
f166d8e92bc5f2d2エンド・オブ・ステイツ ⇒ジェラルド・バトラー(英国スコットランド・グラスゴー出身・1969~)の「エンド・オブ・~("~Has Fallen")」シリーズ(2013・2016)の3作目 したがって、本作原題も"Agel Has Fallen"=「堕ちた天使」なので、邦題「米国の終わり」は少し誇張しすぎでは… 今回は米国大統領の暗殺未遂犯と仕組まれた、大統領直属のシークレット・サービス・エージェントがFBIの捜査から逃走し、ついにはホワイトハウス政権の中枢の真犯人を炙り出すまでを描く 無数のドローンを使った爆撃シーンから始まって、山間部での無数の仕掛け爆弾、カーチェイス、病院の爆破など、目が離せないアクション・シーンが連続 本作の凝った派手な爆破シーンは特に見物 家族への愛、離別していた父親との再会・関係修復など、ハリウッド作品らしいところもある 周知のとおり、バトラーはミュージカル映画「オペラ座の怪人」(2004)の難役の主役を好演してブレーク
0c7bc6bd0cd33f1cシティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション(仏) ⇒「シティーハンター」といえば、漫画家・北条司(北九州市小倉区出身・1959~)の連載漫画作品(1985~1991) 非常に数多くTVアニメ化され、また確か計4本の劇場映画アニメ作品も製作された(最新版は今年2019年公開) 実写映画化作品としては1993年の香港版があったが、今回欧州フランスで初めて実写映画化 フランスでも本漫画作品が広く受け入れられていることが分かった 本作も実にハチャメチャで、下ネタ満載 しかしながら、アクションも本格的で物凄く面白かった 「もっこり」というテロップの台詞が度々登場するが、フランス語では何と言っていたのだろう 原題は"Nicky Larson et le parfum de Cupidon"(仏)="Nicky Larson and Cupid's scent"=「ニッキー・ラーソンとキューピッドの香り」 フランスのアニメでは主役のリョウ(冴羽獠)はニッキー・ラーソンと呼ばれており、原作漫画をこよなく愛するフィリップ・ラショー(仏・1980~)監督がこの主役も熱演

ドクター・スリープ ⇒米国のホラー小説家スティーヴン・キング(メイン州ポートランド出身・1947~)の同名原作小説(2013、邦訳:2015)の映画化 本作は「シャイニング」(1977、映画:1980)の続編で、40年後を描いている 前作の惨劇を生き残り、ニュージャージー州で暮らす主人公が、同じ超能力(サイキック)を有する少女を見出し、ニュー・イングランド地方、オハイオ州を抜けて、ついにはコロラド州山中の惨劇のホテルに向かう 正直に言うと、何が何だか分からないままに終わったような気がする 監督・脚本はマイク・フラナガン(マサチューセッツ州出身・1978~)、主演はユアン・マクレガー(英国スコットランド出身・1971~) 原題も"Doctor Sleep"だが、あえて和訳すると「眠っていた博士」か
8f3bfc7583fb2866テルアビブ・オン・ファイア(ルクセンブルク・仏・イスラエル・ベルギー) ⇒イスラエル・エルサレムの撮影所で働くパレスチナ人の主人公 毎日面倒な検問所を通る時に、イスラエル軍の司令官と知合いに 現代のイスラエル・パレスチナでユダヤ人とパレスチナ人の交流を描く 戦いの合間のコメディとも言える 現地料理のフムスが主要な小道具として使われる フムスとは、ゆでたヒヨコマメに、ニンニク、練り胡麻、オリーブオイル、レモン汁などを加えてすりつぶし、塩で調味したペースト状の料理らしい 監督(兼脚本)はサフメ・ゾアビ(イスラエル・1975~) 原題も"Tel Aviv on Fire"=「戦火のテル・アヴィヴ」か これは本作中の撮影所で製作している作品名のようだ

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2019年11月24日 (日)

11月10日~11月23日の2週間に観た劇場映画

11月10日(日曜)~11月23日(土曜)の2週間は、7本の劇場映画を観ました。関西へ紅葉狩りに参りましたので鑑賞数が少なく、2週間分をまとめてレポートします。

ターミネーター ニュー・フェイト ⇒「ターミネーター」シリーズの6作目だが、1・2作目(1984・1991)を監督(兼脚本)したジェームズ・キャメロン(カナダ・オンタリオ州出身・1954~)が製作に復帰 監督は「デッドプール」(2016)のティム・ミラー(米国メリーランド州出身・1964~) その後「タイタニック」(1997)そして「アバター」(2009)ど超大ヒットを飛ばした監督が製作に戻ったので期待が大きかったが、1991年の続編としたため新規性・先進性が弱かったようだ 今回は水中のスタントも多く、VFXのスタッフもエンド・クレジットに千数百人 リンダ・ハミルトン(メリーランド州出身・1956~)とアーノルド・シュワルツェネッガー(オーストリア出身・1947~)が帰ってきたが、次はあるのか 原題は"Terminator: Dark Fate"=「ターミネーター:ダーク・フェイト(暗い・暗黒の運命)」
3d51d1ff1b46e7f0最初の晩餐 ⇒父親の死を迎え集まった家族、その複雑な内情がフラッシュバックを多用しながら次第に明かされる 通夜ぶるまいの料理のトラブルから始まって、子連れ同士の再婚、継母の料理の違い、登山・岩登り・雪山登山、継母の入院とその時の父の料理、不倫と自殺、長男の自立等々、結構大きなイベントが次々と連続 杉山麻衣(愛知県出身)プロデューサーの企画を常盤司朗(福岡県出身)監督(兼脚本)らが7年間をかけて映画化したそうだ 染谷将太(東京都江戸川区出身・1992~)、戸田恵梨香(神戸市出身・1988~)、窪塚洋介(神奈川県横須賀市出身・1979~)、斉藤由貴(横浜市出身・1966~)、永瀬正敏(宮崎県都城市出身・1966~)など豪華俳優陣が揃っている ロケ地はほぼ長野県上田市で、一部青木村 撮影は昨年(2018年)冬(2~3月)と夏(6~7月)の2期間に分けて行われた模様
永遠の門 ゴッホの見た未来(英・仏・米) ⇒画家から映画監督に転身したジュリアン・シュナーベル(ニューヨーク市出身・1951~)が製作 画家の監督だけあって、フィンセント・ファン・ゴッホ(オランダ出身・1853~1890)が光や色をどう捉え、いかにキャンバス上に展開していったかという、ファン・ゴッホの製作姿勢・技術・技法などを分かりやすく解説 主演はウィレム・デフォー(米国ウィスコンシン州出身・1955~)で、本作により第75回ベネチア国際映画祭(2018)の最優秀男優賞を受賞 撮影はファン・ゴッホが実際に生活し絵画制作に励んだ、南フランスのアルルで主に行われたようだ 現代風のピアノ音楽もよくマッチしていた 台詞が仏語と英語のミックスなのが面白い 原題は"At Eternity's Gate"=「永遠の門で」
D90dd5369647a7b0国家が破産する日(韓) ⇒1997年に韓国が通貨危機によりIMF(国際通貨基金)管理下に置かれた史実に基づいたフィクションではあるが、とてもリアリティに満ちている 他山の石として我々日本人にも教訓に満ちている 1996年に韓国は先進国クラブのOECDに加盟し、韓国国民が自国の発展に酔いしれていた時に、1997年アジア通貨危機の端を発した通貨危機に襲われる 韓国政府の無策により企業倒産が相次ぎ、ついにはIMFの管理下に置かれる IMFの指示は、不良債権一杯の金融機関を閉鎖し、金利を2倍にし、そして外資参入を自由化すること その結果街には300万人もの失業者が溢れる これらの事情を中央銀行幹部、財政局幹部、敏腕・辣腕投資家、そして中小企業経営者の目線から描く どこかの国も、自ら発動したことではあるが、通って来た道によく似ている 現在の韓国でも下手をすると再度このような経済情況になるのかもしれないという危機意識があるようだ 英語原題は単に"Default"=「デフォルト、破産、破綻、不履行」か
i 新聞記者ドキュメント ⇒「FAKE」(2016)などのドキュメンタリー映画作品を製作した森達也(広島県呉市出身・1956~)監督が本作を製作 映画「新聞記者」(2019)の同名原作小説(2017)の著者で、現役の中日新聞社会部記者の望月衣塑子(東京都出身・1975~)の取材現場と苦悩を追った 沖縄・辺野古への赤土埋立、森友学園・加計学園、前川喜平(奈良県御所市出身・1955~)元文科省事務次官、TBS記者によるジャーナリスト伊藤詩織(神奈川県出身・1989~)氏準強姦事件、そして首相官邸で行われる菅義偉(よしひで・秋田県湯沢市出身・神奈川県選出衆議院議員・1948~)内閣官房長官の記者会見での丁々発止のやり取りなどの問題が次々と提示される 権力を監視し闘う記者の勇気と姿勢を観てか、終映後に劇場観客から拍手が

187a5fd8c7a7fc35盲目のメロディ インド式殺人狂騒曲(印) ⇒盲目のピアノ調律師から着想された、ボリウッド(ムンバイ)製の犯罪サスペンス・ブラック・コメディ作品 インド映画に特有のダンス・シーンはないが、かなり凝った作り 主人公アーカーシュは、ピアノ演奏芸術の質向上のために盲目の状態(目隠し)を維持しながら、ピアノ演奏の鍛練・実演をするインド男子青年 アーユシュマーン・クラーナー(インド北部チャンディガール市出身・1984~)が主人公を演じるが、ギターの弾語り歌手でもある彼は今回ピアノ演奏にも挑み、ついには目隠しでも吹替えなしで名演奏を聴かせる アーカーシュは街で偶然恋人に出会い、彼女の父親の店でピアノを弾き、そして店で出会った往年の大男優の住宅で、若い後妻の誕生日のためにピアノを演奏することに そこから不運にも次々と事件に巻き込まれ、主人公も本当に盲目になり、腎臓移植ビジネスの怪しい医者グループに狙われるなど、予測不能・捧腹絶倒の展開 近所の子供が主要な役割を果たし、警察署長も巻き込んだサスペンスに 原題は"Andhadhun"(ヒンディー)="Precipitately"=「急に、突然」で、意訳すると「急変」か 邦題は相当な意訳だが、分かりやすい
EXIT イクジット(韓) ⇒高層ビル群が聳える、韓国の某都会で突然毒ガスが発生 ガスは上へ上へ上昇するので、母親の喜寿祝いを開いていた一族はビルの屋上へ 屋上へのドアを開けるために、また元山岳部の主人公2人が最後まで取り残され高層クレーンまで逃げるために、ロック・クライミングとボルダリングの技術を全開 危険な跳躍やロープを使ったビルからビルへの綱渡りもあり、このあたりが本作後半のアクションの見所 また無数のドローンも登場 母親の喜寿のお祝いには皆がカラオケで唄って踊り騒ぎまくり、娘婿(女婿)も含めて息子たち一人ひとりが母親をおんぶしなければならない風習が興味深い 主題歌はまるで日本のポップスのよう 英語原題も"Exit"

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2019年11月10日 (日)

11月3日~11月9日の週に観た劇場映画

11月3日(日曜)~11月9日(土曜)の週は、6本の劇場映画を観ました。音楽が重要な役割を担っている作品が多かったと思います。

5402f19f88eca7e6閉鎖病棟 それぞれの朝 ⇒原作は精神科医でもある小説家帚木蓬生(ははきぎほうせい・福岡県小郡市出身・1947~)の小説「閉鎖病棟」(1994) 1999年に続き2度目の映画化 監督は「学校の怪談」シリーズ(1995~1999)の平山秀幸(福岡県北九州市出身・1950~) 今回は主役を死刑執行の失敗で生き残ったが車椅子生活になり、結局精神科病院に送られた殺人犯とし、笑福亭鶴瓶(大阪市平野区出身・1951~)が演じた いろいろな理由で精神科病院に入院している人々の群像劇でもある 鶴瓶の好演に呼応して助演の綾野剛(岐阜市出身・1982~)と小松菜奈(山梨県出身・1996~)の演技も光った 綾野も小松もあまり綺麗ではない役に挑戦 暴れん坊役の渋川清彦(群馬県渋川市出身・1974~)の演技も香辛料 ロケ撮影は今年(2019年)1月~2月に長野県小諸市の小諸高原病院を中心に、松本市・上田市、そして神奈川県平塚市・秦野市などで行われた模様 東映東京撮影所(練馬区)も使われたようだ
e88c3c51877af3aeパリに見出されたピアニスト(仏・ベルギー) ⇒ロング・ランになっていたので遅まきながら鑑賞 パリ北駅でピアノを弾いていた半やさぐれ少年が音楽教師の目に留まり、本格的にクラシック・ピアノを学ぶ クライマックスのラスト30分間の展開は見事で感動を誘う 貧困、家族、犯罪、音楽教師、特訓、コンクール、そしてコンクールに駆け込むと筋立てが揃えばほぼ完璧 ラスト・シーンではセルゲイ・ラフマニノフ(露出身・1873~1943)の難しいピアノ協奏曲が演奏される 原題は"Au bout des doigts"(仏)="At fingertips"=「指先で」か
マイ・ビューティフル・デイズ ⇒原題は"Miss Stevens"=「ミス・スティーヴンス」で、母子家庭に育った29歳の女性高校英語教師レイチェル・スティーヴンスの話だった ある夏彼女は生徒たちに頼まれて、男子2人・女子1人の3人を引率して遠方の街で行われる演劇大会に参加 やや内気な男子ビリーが直接思いをぶつけて来る フォーク・ロック・バンド「アメリカ」の「金色の髪の少女」(1975)が効果的に使われる 25歳から8年間高校教師だった本作監督(兼脚本)のジュリア・ハートの自伝的作品(2016)のようで、本作で注目を浴びた 邦題はビリーの方に重点を置いたものか… ミス・スティーヴンス役をリリー・レーブ(ニューヨーク市出身・1982~)が、ビリー役を「君の名前で僕を呼んで」(2017)のティモシー・シャラメ(ニューヨーク市出身・1995~)が演じる
IT イット THE END ”それ”が見えたら、終わり。 ⇒モダン・ホラーの開拓者にして第一人者である米国の小説家スティーヴン・キング(メイン州ポートランド出身・1947~)の作品は実に多数映像化されている 彼の小説「IT イット」(1986)をアンディ・ムスキエティ(アルゼンチン・ブエノスアイレス出身・1973~)監督が「IT イット “それ”が見えたら、終わり。」(2017)として映画化 同監督がその時代設定だった1989年の27年後(2016年)を描いたのが本作 米国北東部の田舎町デリー(ニュー・ハンプシャー州か)に殺人ピエロ(クラウン)が再び現れたので、各地に散らばっていた負け犬7人が集結 時々フラッシュバックするが、女性と黒人以外は、すぐにはどの子供がどの大人になったのか分かりにくく、それを想像するのが面白い ピエロのペニーワイズだけが同じ配役で、当然ながら他のすべての配役は年長に 結局2人が死んで、7人が5人になったが、少し無用に長いような気もする 蜘蛛のラスボスのようなピエロと対戦するため、スタント・ダブルも多い ロケ撮影はカナダのトロントで行われた模様
人生、ただいま修行中(仏) ⇒職業婦人のような女性観客を多数見かけた それもそのはず、本作はフランス・パリ郊外の看護学校で看護師を目指して学ぶ若者たちを追ったドキュメンタリー作品 フランスらしく多様な人種の若者たちが、熱心に看護師技術の習得に励む様子を映す 1年後には本物の患者に対して実習に入る インタビューでは彼女ら・彼らの真剣な態度、無償の情熱、そして出自の悩みが感じられる フランスのドキュメンタリー製作の第一人者二コラ・フィリベール(ナンシー出身・1951~)が監督・撮影・編集 原題は"De chaque instant"(仏)="From each moment"=「一瞬一瞬を」か

2394c56f3744a573グレタ GRETA ⇒冒頭の美しいピアノ曲、フランツ・リスト(ハンガリー・1811~1886)の「愛の夢」が印象的 全編ピアノ曲が重要な役割 ニューヨーク市で親友の家に同居し、高級レストランのウェイトレスとして働く若く美しい女性がヒロイン 地下鉄の車内で発見した置き忘れの高級ハンドバッグを届けるために、持ち主と思われる1人暮しの老婦人の家に訪れたことからすべてが始まる 中盤からホラー・サスペンスの様相を強めていく 終盤はやや現実離れしているように思えるがが、割と静かに進む犯罪行為は結構怖かった エンディングも気が利いている ヒロイン役はクロエ・グレース・モレッツ(ジョージア州アトランタ出身・1997~)が、老婦人役はイザベル・ユペール(パリ出身・1953~)が演じる 監督(兼脚本)は「クライング・ゲーム」(1992)のニール・ジョーダン(アイルランド出身・1950~) 時々ニューヨーク市の風景を挿入しているが、ロケ撮影はカナダ・トロントで行われた模様 原題も"Greta"

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2019年11月 3日 (日)

10月27日~11月2日の週に観た劇場映画

10月27日(日曜)~11月2日(土曜)の週は、7本の劇場映画を観ました。独特で、個性的な作品が多いようです。

ロボット2.0(印) ⇒2012年に日本でもヒットしたロボット(印・2010)の続編 主演ラジニカーント(インド・バンガロール出身・1950~)と監督・脚本シャンカル(印・1963~)は同じ 舞台はチェンナイ(マドラス)で、相変わらず次々と登場する、無限に多いとも思える新種のキャラクターに驚かされる 時代に合わせて今回はスマホが飛び去り、何者かに強奪されることから物語は始まる したがって、次々と登場する小さなキャラクターが結構主要な役割を果たしている エンド・クレジットで歌と踊りが披露されるが、本編では含まれず新しいインド映画の潮流を示しているのかもしれない ポスプロ・VFXの量は膨大で、エンド・クレジットには1,000人規模の名前を表示 原題は単に"2.0"
ジェミニマン ⇒「ブロークバック・マウンテン」(2005)と「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(2012)でアカデミー賞監督賞を2度受賞したアン・リー(台・1954~)監督が、主演にウィル・スミス(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア出身・1968~)を起用して製作 スミスが一人二役を演じるが、若いスミスはCGで創り出したものとのこと モーション・キャプチャーでスミス実物の動きをCGに取り込んで制作したようだ 実物のギャラよりCGの製作費の方が高額だったという話もある したがって、スミス同士のバトル・アクションは見物 原題は"Gemini Man"で邦題どおりだが、あえて直訳すると「双子の、瓜二つの男」か
c94d5cc634ffa9efT-34 レジェンド・オブ・ウォー(露) ⇒ロシア製の戦車対戦アクションは見所が多かった 小型カメラを装着した本物の戦車を走らせたそうだ 徹甲弾では戦車正面の装甲を破れないらしく、したがって徹甲弾がはね返ったり、かすったり時には戦車内ではキーンというとても高い大きな金属音がするようで、本作ではそれを再現しているのが大変リアル また、砲弾には徹甲弾と榴弾の2種類があって、対戦車での使用方法を示してくれる 第二次世界大戦(1939~1945)中の1941年11月27日モスクワ西方郊外のネフェドヴォで1台のT-34ロシア戦車がティーガー(タイガー)戦車からなるドイツ戦車隊を迎え撃った 1944年にその時のドイツ戦車隊長と捕虜になったロシア戦車長が収容所で再会し、ドイツ戦車隊の訓練に捕獲ロシア戦車を動かすように司令することから後半のスリリングな展開に ロシアそして世界のVFX技術が結集されている 原題は単に"T-34"
フッド ザ・ビギニング ⇒ご存じのとおり、ロビン・フッドとは中世イングランドの伝説上の人物 13世紀頃に活躍したとされており、フッド(フード、頭巾)被った義賊であり、日本なら鼠小僧のようなものか… 本作の舞台は英国ノッティンガムで、ストーリーはよく練られているように思う 小領主の主人公が十字軍に徴兵されアラビア半島で戦うシーンもある 故郷に帰還した後、富の偏在と重税に反旗を翻すが、住民が支援し住宅の壁にフッド(頭巾)を飾る 弓を駆使した戦闘アクションは新鮮 原題は単に"Robin Hood"=「ロビン・フッド」
ea19a4b43a70ce0fアダムズ・アップル(デンマーク・独) ⇒宗教と人間性について考えさせられる不思議な作品 舞台は仮釈放された受刑者を更生させる施設を兼ねたある田舎の教会 そこではとても風変わりだが、元気一杯の聖職者が保護司・身元引受人)が活躍 ネオナチのスキンヘッド男が新たに到着するところから話は始まる 教会にはすでに元過激派のようなパキスタン移民の男とアル中でメタボの元テニス選手がいる 教会には大きな林檎の木があり、ネオナチはアップル・パイを作ることが当面の目標となる 旧約聖書のヨブ記と「アダムのりんご」の寓話を土台にして創出されたとのことで、悪魔という言葉が頻出 神と悪魔、善と悪が入り乱れ、なるようにしかならないような気がする やはり最後には奇蹟らしき事々が起こり… ソフト・ロック・グループのビージーズ(英・豪・米)のシングル"How Deep Is Your Love"(1977・邦題「愛はきらめきの中に」)が作中に何度も流れる(歌はカバーかもしれない) 主役の聖職者を演じるのはマッツ・ミケルセン(デンマーク・コペンハーゲン出身・1965~) 監督・脚本はアナス・トーマス・イェンセン(デンマーク・1972~) 原題も"Adam's Apples"

真実(仏・日) ⇒昨年「万引き家族」(2018)で第71回カンヌ国際映画祭(2018)の最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和(東京都練馬区生まれ・清瀬市育ち・1962~)監督が仏・日合作で製作(兼脚本) フランスの名女優カトリーヌ・ドヌーブ(パリ出身・1943~)とジュリエット・ビノシュ(パリ出身・1964~)、そして米国からイーサン・ホーク(テキサス州オースティン出身・1970~)を起用 多分に当て書きが多く、大女優である主人公の映画製作に係わる物語としており、ドヌーブに敬意を表した作りか すべてをパリでロケ撮影したそうで、晩秋~初冬のパリの風景は美しい 原題は"La vérité"(仏)="The truth"で邦題どおり
CLIMAX クライマックス(仏・ベルギー) ⇒形にとらわれないダンス・オーディションの作品のように始まる ワン・カット長回しのシーンが続き、強烈なダンス音楽に合わせ踊っているのはハイ・レベルのダンサーたちだと気付く 用意されたサングリアの中に薬物が入っているのか、飲んだ者たちは徐々に異常な行動に カメラも真上からなど自由な位置から撮影するが、最後には上下逆様になり狂気で混乱する様子を表わすのか… 1996年に恐らくフランスの雪深い山奥の古いホールで実際に起きた事件に基づいているという 監督・脚本は独特で強烈で衝撃的な作品を連発するギャスパー・ノエ(1963~) ノエはアルゼンチンのブエノスアイレスで生まれるが、子供時代数年間を米国ニューヨーク市で過ごし、最終的には1976年にフランスに移住 彼の多様な文化的背景がこういう、やや意味不明だが先鋭的・芸術的な作品を生み出すのだろうか 評価が割れる問題作のせいか観客は結構多い 原題も"Climax"(仏・英)

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2019年10月27日 (日)

10月20日~10月26日の週に観た劇場映画

10月20日(日曜)~10月26日(土曜)の週は、6本の劇場映画を観ました。ずいぶん風変わりな作品が多かったような気がします。

イエスタデイ(英) ⇒ビートルズが大好きな監督と脚本家が考え出した作品らしい 設定は面白いが、現実味が余り感じられないのが少し難点か ファンタジーとして観れば、ビートルズの楽曲が心地いいが、緊張が続かない 監督は「スラムドッグ$ミリオネア」(2008)や「トレイン・スポッティング」(1996)のダニー・ボイル(英・1956~) 脚本は「戦火の馬」(2011)や「ノッティング・ヒルの恋人」(1999)のリチャード・カーティス(ニュージーランド出身・英国国籍・1956~)が担当 原題も"Yesterday"
e1c10b0cc9e0d9bb楽園 ⇒「悪人」(2007)「さよなら渓谷」(2008)「横道世之介」(2009)「怒り」(2014)など映画化された作品が多い人気小説家・吉田修一(長崎市出身・1968~)の短編集「犯罪小説集」(2016)が原作 それを読んだ瀬々敬久(せぜたかひさ・大分県豊後高田市出身・1960~)監督が、そのうちの2編を基に映画化 「64 ロクヨン」(2016)や「菊とギロチン」(2018)のように丁寧な映像製作 長野県山間部の限界集落を舞台にして、田舎の旧態依然とした人間関係の中で発生した複数の事件について、その謎と顛末を描く 「罪」「罰」「人」の3章構成になっており、時間軸は飛びながらも観客の目を引き付け続けるのは流石 ただし、もうこんな田舎は残っていないのではないかと思う ロケ撮影は昨年(2018年)9~10月に、長野県飯山市を中心に、長野市、松本市、駒ケ根市など各地で行われた模様
スペシャルアクターズ ⇒「カメラを止めるな!」(2017・2018)で興行収入31億円以上という大ヒットを飛ばした上田慎一郎監督(京都府生まれ・滋賀県長浜市出身・1984~)の満を持した長編第2作目 松竹ブロードキャスティングの企画で製作がスタートしたが、前作大ヒット後は超多忙でスランプに陥り大変だったようだ しかし、1,500人超のオーディション応募者から15人を選択し、スタッフ・キャスト総出でアイデアを絞り出したようだ クランク・インの2ヶ月前に脚本すべてを書き直したとのこと 今年(2019年)5月14日にクランク・インし、撮影期間はわずか19日間で、6月1日にクランク・アップ ロケ地は東京都や神奈川県の某所か やはりノー・カット撮影が多い ただし、最初から仕掛けがあると思って観ているから、ドンデン返しが続いても、申し訳ないが、やや物足りない感じがする それから効果音がやや耳に付いた
ガリーボーイ(印) ⇒インドのヒップホップ界も熱気を帯びているようだ 本作は、ムンバイ(ボンベイ)のスラムで育った青年がラッパーとしてのし上がる様を描く 幼馴染みで医者の娘との不釣り合いな恋愛も登場するが、この娘が異常にヤキモチ焼き 女性ミュージシャンや先輩ラッパーとの出会いを経て、コンテストに挑むところがクライマックス 原題も"Gully Boy"だが、直訳すると「溝の少年」か
ab93e77f0850c13fボーダー 二つの世界(スウェーデン・デンマーク) ⇒嗅覚が驚異的に鋭く、悪事についても検知できる、スウェーデンの港に勤務する入国・税関審査官 そこに同類らしき人間が現れ、より野生的・動物的な風貌、男女の性徴や食物の違い、尻尾があったのではないかという疑問、雷への原始的な恐怖などなど、不思議なイメージであふれる ホモ・サピエンス以外の人類、例えば欧州に存在していたネアンデルタール人的なものを想像しているのかもしれない 現在地球上に存在している唯一のヒト(人類)の種であるホモ・サピエンスとネアンデルタール人はヒトという属は同じだが、種が違うとされている 彼らの交雑により子孫はできない、あるいはできてもその子孫は不妊だと考えられている ウマとロバは同属だが異種なので、ラバという子供はできてもラバの子孫はできない ヒトは1種だと思っている現代人には理解しにくい作品だが、ウマというヒトとロバというヒトが存在すると考えれば少しはわかるのではないか 原題は"Gräns"(スウェーデン)="Border"=「境界」か 原作者はヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト(スウェーデン・1968~)で、筆者が好きな作品「ぼくのエリ 200歳の少女」(スウェーデン・2008、日本公開:2010)の原作小説「MORSE モールス」(スウェーデン・2004、邦訳:2009)の著者でもある 監督はイラン・テヘラン生まれでデンマークに住むアリ・アッバシ(1981~) 両者は本作では脚本も兼ねている

108 海馬五郎の復讐と冒険 ⇒福岡県出身のマルチタレント、俳優・劇作家・演出家・脚本家・映画監督・コラムニストの松尾スズキ(北九州市生まれ・1962~)がパワー全開した作品のようだ 本作でも監督・脚本を兼ね、主役の海馬五郎を演じる 妻役に元アイドルの中山美穂(長野県佐久市生まれ・東京都小金井市出身・1970) R18+指定で裸身が沢山登場するが、なぜか心から抱きたいと思うことはなかった ロケ地は詳細不明だが、エンド・クレジットには埼玉県の富士見市や入間市の名が挙がっていた

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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