★劇場映画「劇場」(日・2020・136分)を観て
7月17日公開の劇場映画「劇場」を観た 残念ながら劇場での鑑賞ではなく、アマゾン・プライム・ビデオでのオンライン・ネット鑑賞となった(追加料金なし) 本作は本来ならば4月17日に松竹系の全国280館での公開予定だった コロナ禍により日本政府が緊急事態宣言を4月7日に発令しれたため公開延期となっていた 公開延期となった大作も目白押しの中、本作については配給辞退の松竹に代わり製作幹事社の吉本興業が自主配給することとし、いろいろと公開方法・時期を探っていたようだ 結果、先週17日に渋谷のユーロスペースなど全国20館のミニシアターで劇場公開されるとともに、アマゾン・プライム・ビデオでの同時世界独占配信が実現した
劇場公開にも拘った行定勲監督(1968~・熊本県出身)など製作側と製作費用をリクープ(recoup・回収)したい製作委員会側、両者の意向を上手く両立させた解決策と考えられる 劇場映画作品を劇場公開と同時にオンライン配信を行うのは日本では初めての試み アマゾン・ジャパン社が独占配信権にいくら支払ったかは分からないが、筆者の想像ではこの種の作品の製作費用を回収するためには5~10億円ではないかと想像する アマゾン・プライムの広告宣伝も兼ねていると考えれば結構イケてるかもしれない また行定監督も、字幕(サブタイトル)を付加すれば、鮮度が高いうちにすぐに世界市場に配信できるというオンライン・ネット配信の利点に気付いたそうだ これは本のネット通販でロング・テール(リアル市場では手が届かない物品・サービスと市場・消費者をつなげるマーケティング)のビジネス・モデルを成功させたアマゾンの手法そのものかもしれない
本作の原作は、吉本興業所属のお笑い芸人で、2015年発表の中編処女小説「火花」で同年の芥川賞を受賞した、ご存じ又吉直樹(1980~・大阪府寝屋川市出身)の第2作目小説「劇場」 「火花」では売れないお笑い芸人をモデルにしたが、本作では売れない演劇人(劇作家・演出家・舞台俳優)をモデルにしている 「火花」ではコンビの男同士の友情がテーマだったが、本作では主人公を無償の愛で支える聖女との恋愛がテーマ 行定監督は主人公に山﨑賢人(1994~・東京都出身)をヒロインに松岡茉優(1995~・東京都出身)を起用 松岡の雰囲気は初主演作「勝手にふるえてろ」(日・2017)のヒロインに似ていると思った どうでもいいことだが、松岡は左利きのようだ
行定監督が助監督として仕えたこともある岩井俊二監督(1963~・仙台市出身)のコメント「創作に取り憑かれた男の〝おろか“と、その男と同棲してしまった不運な女が余すところなく描かれる 当事者の自分には痛みなくして観れない映画であった 創作の道とは魔道であり、〝魅道“である」が、短くして本作の本質を言い当ててると感じる 本作の主舞台である東京・世田谷区下北沢あたりで活動する演劇人たちは、これは自分たちのことを描いた作品だという者たちが多いそうだ コロナ禍に見舞われた今年、彼らの生活はどうなっているのだろうか 本作では東京23区での生活は、まだまだ当然のように密だし、誰もマスクを着けていない
前述したが、本作の舞台は又吉も住んでいたらしい下北沢が中心 ここは多くの売れない舞台俳優が、アルバイトをしながら暮らす街として知られている もう1ヶ所杉並区高円寺が登場するが、ここは売れないミュージシャンが多数アルバイトをしながら暮らす街だ 劇中劇も数回登場するが、学校の演劇以外は下北沢の劇場を実際に使用してロケ撮影したとのこと 筆者も訪れたことのある劇場の映像が登場 最後の「ロケ⇒セット⇒劇場」と撮影場所が移り変わり、主体が客体に変化するような撮影のテクニックには感心した また季節の移り変わりは夏から秋・冬・春を経て1年間となっているようだが、いつどうロケ撮影したのかには興味ある その他のロケ地は、東京都・渋谷区・新宿区・台東区・三鷹市、茨城県など
(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品
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