12月24日~12月30日の週に観た劇場映画
12月24日(金曜)~12月30日(木曜)の週は4本の劇場映画を観た オミクロン株によるコロナ感染が再拡大しつつあるので、しばらくは劇場映画鑑賞はお休みにならざるをえないかもしれない
★ヴォイス・オブ・ラブ(126分・仏・加・2020)
・キングスマン ファースト・エージェント(131分・英・米・2021)
★★ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(126分・米・2019)
★ドント・ルック・アップ(138分・米・2021)
(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品
★ヴォイス・オブ・ラブ(126分・仏・加・2020) ⇒世界的な歌姫セリーヌ・ディオン(1968~・加国ケベック州シャルルマーニュ出身)の半生をフィクションとして映画化 シャルルマーニュはモントリオール北西郊外の街でセント・ローレンス川の少し下流 セリーヌの歌手としての活躍は、映画「タイタニック」(194分・米・1997)の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン(タイタニック愛のテーマ)」とともに知っている人が多いと思う 本作では両親の出会い・婚姻そして彼女の幼少期から始まり、両親と14人兄弟姉妹が音楽を愛しながら一緒に暮らすという超大家族生活、デビューそしてその後の音楽活動、英語と米国カルチャーの勉強、彼女を売り出したマネジャーのルネ・アンジェリル(1942~2016・モントリオール出身)との大恋愛・結婚、喉・声帯の不調と治療、過酷な不妊治療と男子出産そして双子男子誕生、自宅とラスベガス等のショー劇場を往復する生活、彼女の大成功により一族が裕福になること等々が、すべて仮名人物を登場させて語られる 良く出来た音楽エンタメ作品であるとともに、歳の差婚の大恋愛を扱ったものでもある 本作ではヒロインはアリーヌ・デュー、24歳年上のマネージャーをギィ=クロードとして登場させている フランスの有名女優・監督であるヴァレリー・ルメルシェ(1964~・仏国ノルマンディー地方出身)が監督・脚本・主演を務めた 身長177cmの彼女が12歳のアリーヌも演じていることから、映像合成技術を駆使か 筆者もケベック州は2度訪れているが田舎では英語が全く通じなかったので、アリーヌが世界的歌手になるために英語を猛勉強したのは充分理解できる また、アリーナが父親がくれたコインのお守りをずっと大事にしていたこと、母親の言いつけを守りいろいろな場所で砂糖の小袋を集めていたことなどは微笑ましいエピソード 子育てとショー出演を両立させるため14年間街への外出をしなかったことには大いに驚いた 丸く大きな母親が全くのステージ・ママで、長兄がマネージャーの役割もこなし、姉たちがアリーナの家庭を支えるなど家族一丸となった支援と本人の我慢と頑張りにより、一族が成り上がるのはアメリカン・ドリーム(カナディアン・ドリーム)か 撮影は2019年3月~7月にフランス、スペイン、カナダ及び米国ラスベガスで行われたようだが、コロナ禍のため公開が遅れ、日本では2021年12月末に公開となった 原題は本作ヒロイン名の"Aline" 邦題はセリーヌの大ヒット・カバー曲「パワー・オブ・ラブ」(米・1993)のもじりか
・キングスマン ファースト・エージェント(131分・英・米・2021) ⇒原作漫画家マーク・ミラー(1969~・英国スコットランド出身) と製作・脚本・監督を兼ねるマシュー・ヴォーン(1971~・英国ロンドン出身)がタッグを組んだ「キングスマン」シリーズの第3作目 1作目は「キングスマン」(129分・英・米・2015)、2作目は「キングスマン:ゴールデン・サークル」(141分・英・米・2017) 過去2作は全くのフィクションであったが、本作はボーア戦争(第二次:1899~1902)から第一次世界大戦(1914~1918)までの史実を踏まえたパロディ作品になっている 前2作同様、紳士たちが変身し華麗でど派手なアクションを展開し、観客を堪能させるところは変わらない 歴史上の人物が多数登場するが、新解釈によりユーモアと皮肉を充分に込めている ロンドンのサヴィル・ロウ街にある高級紳士服仕立店「キングスマン」が世界の戦争を防止するための私設スパイ組織の本拠になぜなったか、そしてどう貢献したかをフィクションとして描く 撮影は2019年1月に英国ロンドンやその郊外のルータム・パーク(公爵邸として利用)で始まり、同年4月からはトリノのヴェナリア宮殿でセルビア王国のシーンの撮影が行われたようだ 派手なアクション・シーンが多いため、VFXやスタントに多数のスタッフが動員されており、15,000人の雇用を生んだとしている コロナ禍に直撃されたため、公開は遅れに遅れ2021年12月下旬になった 原題は、これが最初のストーリーであるためか、単に"The King's Man"
★★ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(126分・米・2019) ⇒フライパンの焦付き防止のために、現在も広く活用されているテフロン(フッ素樹脂塗布)加工は誰しも知っているだろう テフロンは米国デュポン社(本社:デラウェア州ウィルミントン)が1938年に発見し1941年に特許取得 同社は19世紀に火薬やダイナマイトで巨利を得た会社で、1935年にはナイロンの合成にも成功 テフロンは化学的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と呼ばれ、テトラフルオロエチレン(TFE:炭素原子2個とフッ素原子4個からなる分子)の重合体で、フッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂(フッ化炭素樹脂) TFEはエチレン(炭素原子2個と水素原子4個からなる分子)の水素原子をフッ素原子に置き換えたもの エチレンを重合(炭素原子同士がつながっている2本の手を1本ずつにばらして横に連結させること)させるとポリエチレン(化学繊維、フィルムなど身近に存在)になる PTFEは耐熱性、耐薬品性に優れ、最も摩擦係数が小さい物質として知られており、調理器具のコーティングのほか絶縁材、断熱材、潤滑剤などに広く活用されている PTFEは350℃以上に加熱し揮発させない限り毒性はなく問題ないようだが、問題はデュポンがPTFE製造時に添加するペルフルオロオクタン酸(PFOA:炭素原子8個、フッ素原子15個、酸素原子2個そして水素原子1個からなる分子)の毒性だった デュポンの工場があるウエスト・バージニア州パーカーズバーグ周辺でこのPFOAやC8(炭素原子8個からなるPFOA塩)が大量に廃棄されていた これらの物質は非常に安定しているため、一度動物の体内に入ると排出されず、ゆえに強い毒性を有し、多くの牛などの家畜が奇病で死に、また多くの住民及び従業員にもガンが発生していた 鼻の穴が一つの奇形児も誕生しており、その子供の時の写真や大人になった本人が画面に登場している 1998年に祖母が住んでいるパーカーズバーグの農場主からの訴えを聴いた、オハイオ州シンシナチの法律事務所でデュポンのために働いていた弁護士ロブ・ピロットが主人公 一度は依頼を断った彼が、後に現地の酷さを実際に観て、顧客であったデュポンを相手に闘い始めるというのが、この事実に基づいた物語の始まり 金儲けなら大企業側に付いた方が簡単だが、ロブは住民・被害者側に敢然と立ち、また事務所のボスもそれを許したところにこの話の真骨頂がある 企業の法廷闘争戦術に負けず、すべての資料公開に漕ぎ着け、ついには住民69万人の血液検査実施を実現する デュポン社は地元の大雇用主であり、学校、公共施設など地域社会に多大な貢献をしていたにもかかわらず、ほとんどの住民が血液検査に同意したことにこの問題の深刻さがうかがえる 日本の水俣病と同じ構図だが、それよりも深刻かもしれない 2年間の歳月を経て、C8と67種類の病気の関連がやっと明らかになり、2015年にオハイオ州の州都コロンバスの法廷で完全勝利 デュポン社はPFOA・C8の排出を止めることを表明したが、工場での使用は継続しているらしい 2016年にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された本件公害に関する記事に感銘を受けた俳優マーク・ラファロ(1967~・米国ウィスコンシン州出身)が映画化を決意し、トッド・ヘインズ監督(1961~・米国ロサンゼルス出身)を担ぎ出したようだ 当然マークが主人公を演じている ロケ撮影は2019年にシンシナティ、パーカーズバーグなど、事実・事案が発生し進行した場所で行われた模様 米国公開は2019年11月だったが日本公開は2021年12月まで遅れた 原題は地味だが単に"Dark Waters"
★ドント・ルック・アップ(138分・米・2021) ⇒米国コメディ界で著名なアダム・マッケイ(1968~・ペンシルベニア州フィラデルフィア出身)が脚本・監督・共同製作を担当 彼は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(130分・米・2015)の脚本・監督を務め、TVコメディ・バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」を1995~2001年に担当していただけあって、本作もハチャメチャなブラック・コメディ レオナルド・ディカプリオ(1974~・米国ロサンゼルス出身)、ジェニファー・ローレンス(1990~・米国ケンタッキー州ルイビル出身)、ケイト・ブランシェット(1969~・豪州メルボルン出身)、メリル・ストリープ(1949~・米国ニュージャージー州出身)そしてマーク・ライランス(1960~・英国ケント州出身)の5人のオスカー俳優という豪華キャストを起用しており、物語はグランドホテル方式(群集劇、群像劇、アンサンブル・プレイ:英語ではアンサンブル・キャストというらしい)としている ストーリーは地球に直撃衝突する軌道を進む彗星を発見した天文学者と助手が米国及び世界に危機を知らせようとするが、分断された世界でリーダー的な人物たちがそれぞれの部分的・限定的な関心・利益に拘るため、なかなか思うように進まない様子を描く 再選だけに異常に興味を示す米国大統領、先送りを得意とする行政府の役人たち、偏向した報道をするメディア、技術開発・宇宙開発に邁進する大金持ち等々、どこかで見かけたような人物たちが次々に登場 最後のオチも見物 ロケ撮影は2020年11月~2021年2月に、米国マサチューセッツ州のボストン、ブロックトン、フレイミングハム、ウェストボローなどの各都市で行われたようだ 作品中ではボストンの街並をニューヨークの街並としている 2020年2月にネットフリックスが本作の配給権を買い取ったが、コロナ禍のため撮影が遅れ、2021年12月末に配信開始予定となり、一部劇場では12月上旬に先行して公開 これもネットフリックスのマーケティング戦術と思われる 原題も"Don't Look Up"で、直訳すると「見上げるべからず」か
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