« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »

2023年3月の2件の記事

2023年3月31日 (金)

2月後半に観た劇場映画

2月後半には3本の劇場映画を観た 桜花の時期を迎え頑張ってキャッチアップ中

シャイロックの子供たち(122分・日・2023)
★★BLUE GIANT(134分・日・2023)
エンパイア・オブ・ライト(115分・英・米・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

2daeab5215582f46シャイロックの子供たち(122分・日・2023) ⇒強欲な銀行員たちが暗躍する経済・ミステリー作品 池井戸潤(1963~・岐阜県出身)の同名原作小説(2006)の劇場映画化 原作小説は10編からなる短編連作であり、本作映画では主役となる西木雅博が途中で行方不明になる 池井戸自身が文藝春秋2023年2月号の対談で明かしているが、劇場映画化は無理だと思ったらしい しかし原作者もシナリオ創りに参加して、西木中心の2時間ものに改編したらしい 監督は池井戸原作の「空飛ぶタイヤ」(120分・日・2018)も担当した本木克英(1963~・富山市出身) 主人公・西木は阿部サダオ(1970~・千葉県松戸市出身)が演じ、やや抑えた演技ながら、頼りなさげだが結局は優秀な銀行員を熱演している 原作にはない謎の老人を登場させ、柄本明(1975~・東京都中央区銀座出身)に演じさせている 撮影は2022年8~10月頃に行われた模様 東京第一銀行長原支店のロケ撮影は茨城県古河市にある足利銀行旧古河支店(移転決定後の跡施設)を利用したとのこと 銀行の本店は東京都千代田区大手町にある大手町プレイス・イーストタワーにあるとした模様 その他ロケ地は、東京都・千代田区・丸の内オアゾ、大田区、府中市、神奈川県川崎市などのようだ

bff86251135e238c★★BLUE GIANT(134分・日・2023) ⇒是非劇場に足を運んで、本作で本物で圧倒的な素晴らしいジャズ音楽を大音量で堪能してほしい そういう意味でなるべく前方の座席を選ぶのがいいと思う 世界に通用するミュージシャンを目指す若者たちの成長アニメ物語であり、成長過程での音の変化も鑑賞できる 演奏しているのは3人の一流ミュージシャン ピアノは上原ひろみ(1979~・静岡県出身)、テナーサックスは馬場智章(1992~・北海道札幌市出身)、そしてドラムは石若駿(1992~・北海道清里町出身)がそれぞれ演奏 上原はご存じ世界的に著名なジャズ・ピアニストで、本作中のすべての音楽を作曲し、監修しているとのこと 馬場は本作に応募があった世界中のプレーヤーからオーディションの結果満場一致で選ばれたという 上原も馬場も米国ボストンのバークリー音楽大学に留学しているのは奇縁か 石若は東京藝大卒で上原から直接指名を受けたようだ この3人が本作ではJASSというジャズ音楽トリオとなり、ここでしか聴けない演奏を展開する 漫画家・石塚真一(1971~・茨城県常総市出身)の同名漫画(2013~2016)が原作 監督は立川譲(たちかわゆずる:1981~)だが、原作者やプロデューサーとともに2017年から映画化の企画をあたため実現に至ったらしい 製作はやはり3人のプロ演奏家のプレイを先に録音してからアニメ映像を制作するという順になったようだ サックスの演奏シーンは一部モーション・キャプチャーも使われたという

ca23a23aacd81989エンパイア・オブ・ライト(115分・英・米・2022) ⇒1980年代初頭、英国南部の静かな街の海に面した映画劇場を舞台に、映画愛と当時の社会世相を反映した物語を紡ぐ 「アメリカン・ビューティー」(122分・米・1999)や「1917 命をかけた伝令」(119分・英・米・2019)のサム・メンデス監督(1965~・英バークシャー州レディング出身)が脚本も兼ね製作 映画劇場の主任役のヒロインには「女王陛下のお気に入り」(120分・英・愛・米・2018)のオリヴィア・コールマン(1974~・英ノーフォーク州ノリッジ出身)を起用 大学進学の夢破れてこの劇場で働くことになり、ヒロインと親密な交流をする黒人青年をマイケル・ウォード(1997~・ジャマイカ・スパニッシュ・タウン出身・幼少期に英ロンドン移住)が演じる 映画愛の象徴として「炎のランナー」(124分・英・米・1981)や「チャンス」(130分・米・1979)などが登場する 当時はマーガレット・サッチャー(1925~2013・英リンカシャー州グランサム出身)が首相の頃で、高失業率、人種・移民差別、暴動などの大きな社会問題もあり、それらも本作に反映されている パワハラ、セクハラ、LGBTQなどはまだまだ一般的に認識されていなかっただろう 撮影は恐らく2021~2022年の寒い時季に、主に英国ケント州マーゲイトとその近郊にて行われたと想定される エンパイア劇場としてはマーゲイトの海辺にある元映画館・ダンスホールのドリームランドという施設を利用 1930年代に建設された建物は時代考証に合わせて大規模な改装工事を実施したという 原題は"Empire of Light"で邦題もそのままだが、映画の話でもあるので「上映の光に満ちた夢の世界」的な意味もあると思う

| | コメント (0)

2023年3月21日 (火)

2月前半に観た劇場映画

2月前半には4本の劇場映画を観た WBCで大忙し

イニシェリン島の精霊(114分・英・2022)
仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023)
茶飲友達(135分・日・2022)
バビロン(189分・米・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

1ae51df14a35cd7cイニシェリン島の精霊(114分・英・2022) ⇒アイルランドの歴史やケルト文化に少し知識がないと、かなり分かりにくい作品のようだ アイルランドの孤島での物語だが、時代設定が1923年というのが話の背景として重要な意味を持つようだ 原題は"The Banshees of Inisherin"で邦題に間違いはないと思うが、"Inisherin"とは実はアイルランド島のことで、"Banshee"=「バンシー」とはアイルランドやスコットランドに伝わる、人の死を叫び声で予告する妖精のことらしい アイルランドでは妖精とはいえ老婆の姿で現れるという 1921年に英国と戦ったアイルランド独立戦争が終わった後、アイルランド国内で英国に残留したい者たちとの間で内戦(1922~1923)が発生 本作はちょうどこの内戦を時代背景としており、ルーツや宗教の違いにより知人・隣人という同じ国の人々が憎み合い争うという悲劇を一つのテーマとしていると考えられる アイルランドからの移民が多い米国ではこの辺の事情はよく理解されているものと思う 監督・脚本は「スリー・ビルボード」(115分・米・英・2017)のマーティン・マクドナー(1970~・ロンドン出身・国籍は英・愛) 2人の主要人物をコリン・ファレル(1976~・愛ダブリン出身)とブレンダン・グリーソン(1955~・愛ダブリン出身)のアイルランド人俳優が演じる 撮影は2021年に行われたと想定される ロケ地はアイルランドの中部大西洋側にあるアラン諸島最大の島・イニシュモア島と、北西部の本土と橋でつながるアキル島で行われたとのこと 主要舞台となる2軒の石造りの家はセットとして建設されたそうだ 世界遺産として指定されており、観光地でもあるイニシュモア島では、持ち込んだ石材はすべて撤去し移動した石なども元の場所に復元されたとのこと

51aba0d9c4983472仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023) ⇒時代小説家・池波正太郎(1923~1900)の生誕100周年を記念して製作された作品 「仕掛人・藤枝梅安」(1973~1990)は「鬼平犯科帳」(1968~1990)「剣客商売」(1973~1989)とともに池波の時代小説3大シリーズといわれているそうだ 本作の監督は河毛俊作(1952~・東京都出身)で、主演梅安を豊川悦司(1962~・大阪府八尾市出身)が、そしてバディ彦次郎を片岡愛之助(1972~・大阪府堺市出身)がそれぞれ演じている 時代劇なので物語展開を安心してフォローできるという利点がある 豊悦の坊主頭はよく似合っているし、梅安の雰囲気・たたずまい・不気味さをよく表現していると思う 撮影は2022年1~3月に主に東映京都撮影所(京都市右京区太秦)で行われたようだ ロケ地は他に滋賀県大津市・近江八幡市そして京都府京丹後市五十河(いかが)の里などか 4月7日からは続編「仕掛人・藤枝梅安2」(119分・日・2023)が公開される

dc901840d3d840ec茶飲友達(135分・日・2022) ⇒単館上映から全国53館へ拡大上映されることになった、今話題の作品 東京のENBUゼミナールが製作したもので、同ゼミナールが2017年に製作し翌年全国的・世界的に大ヒットした「カメラを止めるな」(96分・日・2017)の再来になるかもしれない 本作製作のきっかけとなったのは2013年10月に摘発された高齢者向け売春クラブの一件 茶飲み友達紹介として「茶飲みコース」と「割り切りコース」を提供していたという 筆者はこの事件のことはよく知らなかったが、すぐに思い出したのは1983年12月に摘発された「愛人バンク・夕ぐれ族」の一件 この時はメディアも巻き込み大騒動になったと記憶している 本作では独居男性・女性老人の孤独と絶望、そして現代に生きる若者たちの孤立とやるせなさを同時に描いている 多くのティー・ガールズが登録しており、出張で「煎茶コース」と「玉露コース」を提供する 反社会的なビジネスをしているのだが、ティー・ガールズたちと若者たちには家族的な一体感が醸成されているのが不思議 監督・脚本は外山文治(1980~・福岡県出身)が務め、茶飲友達ビジネス全体を運営管理する責任者の若いヒロインを岡本玲(1991~・和歌山市出身)が演じる 撮影は2022年の冬に行われた模様で、ロケ地は東京都台東区、墨田区、江戸川区、埼玉県戸田市などか

cedd11aae209c34bバビロン(189分・米・2022) ⇒3時間を越える長編だが、話の展開や場面切替がとてもスピーディなので、あきることなく最後まで鑑賞できた 無声映画からトーキー映画に変わる大変革の時代に、ハリウッド映画界の繁栄・退廃・狂乱を描いている したがって、ややエログロのシーンも多い 本当かどうか分からないが、日本でR15+指定にするための修正が間に合わず、日本での上映開始後1週間くらいはR18+の内容が流されたという 米国ハーバード大学の同級生だったジャスティン・ハーウィッツ(1985~・米加州ロサンゼルス郡出身)を音楽担当として映画製作を始めたデイミアン・チャゼル監督(1985~・米ロードアイランド州プロビデンス出身)が15年間も構想を練って本作を製作したそうだ チャゼルは自作の「セッションズ」(106分・米・2014)や「ラ・ラ・ランド」(128分・米・2016)の成功を受けて獲得した資金を本作に一気につぎ込んだようだ 公式サイトのコラムでは「1920年代、テレビもインターネットもなかった時代、ハリウッドが作り出したサイレント映画はエンターテインメントの王様だった まだ、ほとんど荒野だったハリウッドに、世界中から富と夢と野望を求める男女が押し寄せた 当時のロサンジェルスは人口も少なく、警察権力も小さく、映画の内容にも今のような倫理的な規制(コード)は何もなかった ハリウッドは映画の中も外も、完全に野放しだった」という このハリウッドの狂乱を再現するためにケネス・アンガー(1927~・米加州サンタモニカ出身)著の「ハリウッド・バビロン」(米・1959)を参考にしたらしい 主役陣はマーゴット・ロビー(1990・豪クイーンズランド州ゴールドコースト出身)、ディエゴ・カルバ(1992~・墨メキシコシティ出身)、ブラッド・ピット(1969~・米オクラホマ州シャウニー出身)の3人だが、それぞれ実在のモデルがいるという CGを使わない昔風の方法で撮影されており、トーキー映画への移行期のドタバタ撮影現場も現在のパラマウント・ピクチャーズのスタジオで撮影されたようだ ロケ地は加州ロサンゼルス市ダウンタウン、サンタクラリタ、ピルーなどらしい

| | コメント (1)

« 2023年2月 | トップページ | 2023年4月 »