2月前半に観た劇場映画
2月前半には4本の劇場映画を観た WBCで大忙し
・イニシェリン島の精霊(114分・英・2022)
・仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023)
・茶飲友達(135分・日・2022)
・バビロン(189分・米・2022)
(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品
・イニシェリン島の精霊(114分・英・2022) ⇒アイルランドの歴史やケルト文化に少し知識がないと、かなり分かりにくい作品のようだ アイルランドの孤島での物語だが、時代設定が1923年というのが話の背景として重要な意味を持つようだ 原題は"The Banshees of Inisherin"で邦題に間違いはないと思うが、"Inisherin"とは実はアイルランド島のことで、"Banshee"=「バンシー」とはアイルランドやスコットランドに伝わる、人の死を叫び声で予告する妖精のことらしい アイルランドでは妖精とはいえ老婆の姿で現れるという 1921年に英国と戦ったアイルランド独立戦争が終わった後、アイルランド国内で英国に残留したい者たちとの間で内戦(1922~1923)が発生 本作はちょうどこの内戦を時代背景としており、ルーツや宗教の違いにより知人・隣人という同じ国の人々が憎み合い争うという悲劇を一つのテーマとしていると考えられる アイルランドからの移民が多い米国ではこの辺の事情はよく理解されているものと思う 監督・脚本は「スリー・ビルボード」(115分・米・英・2017)のマーティン・マクドナー(1970~・ロンドン出身・国籍は英・愛) 2人の主要人物をコリン・ファレル(1976~・愛ダブリン出身)とブレンダン・グリーソン(1955~・愛ダブリン出身)のアイルランド人俳優が演じる 撮影は2021年に行われたと想定される ロケ地はアイルランドの中部大西洋側にあるアラン諸島最大の島・イニシュモア島と、北西部の本土と橋でつながるアキル島で行われたとのこと 主要舞台となる2軒の石造りの家はセットとして建設されたそうだ 世界遺産として指定されており、観光地でもあるイニシュモア島では、持ち込んだ石材はすべて撤去し移動した石なども元の場所に復元されたとのこと
・仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023) ⇒時代小説家・池波正太郎(1923~1900)の生誕100周年を記念して製作された作品 「仕掛人・藤枝梅安」(1973~1990)は「鬼平犯科帳」(1968~1990)「剣客商売」(1973~1989)とともに池波の時代小説3大シリーズといわれているそうだ 本作の監督は河毛俊作(1952~・東京都出身)で、主演梅安を豊川悦司(1962~・大阪府八尾市出身)が、そしてバディ彦次郎を片岡愛之助(1972~・大阪府堺市出身)がそれぞれ演じている 時代劇なので物語展開を安心してフォローできるという利点がある 豊悦の坊主頭はよく似合っているし、梅安の雰囲気・たたずまい・不気味さをよく表現していると思う 撮影は2022年1~3月に主に東映京都撮影所(京都市右京区太秦)で行われたようだ ロケ地は他に滋賀県大津市・近江八幡市そして京都府京丹後市五十河(いかが)の里などか 4月7日からは続編「仕掛人・藤枝梅安2」(119分・日・2023)が公開される
・茶飲友達(135分・日・2022) ⇒単館上映から全国53館へ拡大上映されることになった、今話題の作品 東京のENBUゼミナールが製作したもので、同ゼミナールが2017年に製作し翌年全国的・世界的に大ヒットした「カメラを止めるな」(96分・日・2017)の再来になるかもしれない 本作製作のきっかけとなったのは2013年10月に摘発された高齢者向け売春クラブの一件 茶飲み友達紹介として「茶飲みコース」と「割り切りコース」を提供していたという 筆者はこの事件のことはよく知らなかったが、すぐに思い出したのは1983年12月に摘発された「愛人バンク・夕ぐれ族」の一件 この時はメディアも巻き込み大騒動になったと記憶している 本作では独居男性・女性老人の孤独と絶望、そして現代に生きる若者たちの孤立とやるせなさを同時に描いている 多くのティー・ガールズが登録しており、出張で「煎茶コース」と「玉露コース」を提供する 反社会的なビジネスをしているのだが、ティー・ガールズたちと若者たちには家族的な一体感が醸成されているのが不思議 監督・脚本は外山文治(1980~・福岡県出身)が務め、茶飲友達ビジネス全体を運営管理する責任者の若いヒロインを岡本玲(1991~・和歌山市出身)が演じる 撮影は2022年の冬に行われた模様で、ロケ地は東京都台東区、墨田区、江戸川区、埼玉県戸田市などか
・バビロン(189分・米・2022) ⇒3時間を越える長編だが、話の展開や場面切替がとてもスピーディなので、あきることなく最後まで鑑賞できた 無声映画からトーキー映画に変わる大変革の時代に、ハリウッド映画界の繁栄・退廃・狂乱を描いている したがって、ややエログロのシーンも多い 本当かどうか分からないが、日本でR15+指定にするための修正が間に合わず、日本での上映開始後1週間くらいはR18+の内容が流されたという 米国ハーバード大学の同級生だったジャスティン・ハーウィッツ(1985~・米加州ロサンゼルス郡出身)を音楽担当として映画製作を始めたデイミアン・チャゼル監督(1985~・米ロードアイランド州プロビデンス出身)が15年間も構想を練って本作を製作したそうだ チャゼルは自作の「セッションズ」(106分・米・2014)や「ラ・ラ・ランド」(128分・米・2016)の成功を受けて獲得した資金を本作に一気につぎ込んだようだ 公式サイトのコラムでは「1920年代、テレビもインターネットもなかった時代、ハリウッドが作り出したサイレント映画はエンターテインメントの王様だった まだ、ほとんど荒野だったハリウッドに、世界中から富と夢と野望を求める男女が押し寄せた 当時のロサンジェルスは人口も少なく、警察権力も小さく、映画の内容にも今のような倫理的な規制(コード)は何もなかった ハリウッドは映画の中も外も、完全に野放しだった」という このハリウッドの狂乱を再現するためにケネス・アンガー(1927~・米加州サンタモニカ出身)著の「ハリウッド・バビロン」(米・1959)を参考にしたらしい 主役陣はマーゴット・ロビー(1990・豪クイーンズランド州ゴールドコースト出身)、ディエゴ・カルバ(1992~・墨メキシコシティ出身)、ブラッド・ピット(1969~・米オクラホマ州シャウニー出身)の3人だが、それぞれ実在のモデルがいるという CGを使わない昔風の方法で撮影されており、トーキー映画への移行期のドタバタ撮影現場も現在のパラマウント・ピクチャーズのスタジオで撮影されたようだ ロケ地は加州ロサンゼルス市ダウンタウン、サンタクラリタ、ピルーなどらしい
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コメント
「茶飲友達」の終映後、外山監督と若手キャストの一部が登壇 かなりきつい撮影スケジュールだったそうだ その中でキャストは老若男女交流し、仲良く元気がよかったらしい ティーガールズも元気一杯で、ラストシーンの撮影時には若者も含め全員涙したとのこと 会社のロケ撮影は都内のシェアハウスを借り切って行ったようだ
投稿: Kirk | 2023年3月21日 (火) 午後 07時41分