« 2024年4月 | トップページ | 2024年6月 »

2024年5月の2件の記事

2024年5月23日 (木)

劇場映画「碁盤斬り」を観て

劇場映画「碁盤斬り」を観て

563a43207e7186b3★碁盤斬り(129分・日・2024)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

監督:白石和彌(1974~・北海道旭川市出身) 代表作:「虎狼の血」(2015・125分)

脚本:加藤正人(1954~・秋田県能代市出身) 書き下ろし小説『碁盤斬り 柳田格之進異聞』として2024年3月に刊行

主演:草彅剛(1974~・愛媛県西予市出生・埼玉県春日部市出身):柳田格之進

助演:清原果耶(2002~・大阪市出身):お絹
中川大志(1998~・東京都出生・茨城県出身):弥吉
奥野瑛太(1986~・北海道苫小牧市出身):梶木左門
國村隼(1955~・熊本県八代市出生・大阪市出身):萬屋源兵衛
小泉今日子(1966~・神奈川県厚木市出身):お庚
斉藤工(1981~・東京都港区出身):柴田兵庫
市村正親(1949~・埼玉県川越市出身):長兵衛
音尾琢真(1976~・北海道旭川市出身):徳次郎

草彅剛がいよいよ役者として開花・全盛期を迎えたように思う 古典落語の演目「柳田格之進」をベースに加藤正人が映画脚本化したものを、白石和彌が監督・製作 草彅は江戸の誇り高い武士の生きざまを描いた人情噺に登場する格之進になりきっていた 撮影は2023年2月初旬~4月上旬に主に東映と松竹の京都撮影所(京都市右京区太秦)で行われたようだ 近いとはいえ両撮影所間の往復もあり、時代劇独特の衣装・かつら・メークなどに時間を要するので、主役でも待ち時間がかなりある その間草彅は高倉健(1931~2014・福岡県中間市出身)のことを想い、高倉になろうといていたという

白石監督のオーラのせいか、草彅を囲む助演には豪華俳優陣が揃った ただし、映画とはいえ囲碁の話なので、そこも手抜きをしていない 日本棋院の高尾紳路九段(1976~・千葉市出身)を監修に迎え、江戸時代の棋譜を踏襲し、囲碁のプロが観ても全く違和感がないようにしている その上井山裕太王座(元七冠:1989~・大阪府東大阪市出身)、藤沢里菜女流本因坊(1998~・埼玉県所沢市出身)など5人のプロ棋士もエキストラ出演しているそうだ 筆者には予備知識がなかったので、プロ棋士たちがどのシーンで登場したのかは分からなかった 大体の想像は付くが…

終盤の殺陣のシーンも見所 草彅と仇敵・斎藤工の一騎打ちはなかなか 加藤の脚本により、最後に堅物一辺倒の格之進に片隅に追いやられた人々を思う広い心・惻隠の情を与えた 筆者も若い頃は時代劇を少々馬鹿にしていたが、最近少しずつ日本の美意識・様式を体現した分かりやすい庶民向けの時代劇が復活しつつあるのは頼もしいと思うようになった 彦根藩での出来事は、本物の彦根城(滋賀県彦根市)でロケ撮影されたとのこと また、近くの琵琶湖も撮影に使われたようだ

| | コメント (0)

2024年5月 3日 (金)

劇場映画「悪は存在しない」を観て

劇場映画「悪は存在しない」を観て

b3975cec500dfbfe★悪は存在しない(106分・日・2024)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

監督・脚本:濱口竜介(1978~・神奈川県川崎市出身)

主演:大美賀均(おおみかひとし:1988~・栃木県出身):安村巧

助演:西川玲(にしかわりょう:2014~・大阪府出身):安村花
小坂竜士(1985~・山口県出身):高橋啓介
渋谷采郁(しぶたにあやか:1991~・兵庫県出身):黛ゆう子

音楽:石橋英子(千葉県茂原市出身)

東京都心部での上映館が渋谷文化村1ヶ所だけだったので、鑑賞したのは旧渋谷東映 結構広い劇場だったが満席だった模様 満席の劇場体験は本当にかなり久々 これが続けば他の劇場での上映もあるかもしれない

鑑賞してからしばらくたつが、いまだ内容の理解が一定しない よく考えてみると結構不気味な作品でもあった 観客に物語展開に関する疑問を残し考えさせるという、濱口監督作品の特徴でもあると思う ユーモアもあるのだが、一筋縄ではいかぬという展開が欧州の映画関係者にも受けているのではないか

本作は2023年2~3月に主に長野県富士見町と原村でロケ撮影されたという 八ヶ岳高原などの自然の映像は美しく幻想的 神々しい甲斐駒ヶ岳(2967m)の雄姿も垣間観られた気がする 濱口監督は「ドライブ・マイ・カー」(179分・日・2021)でも音楽を担当した石橋英子のMV(ミュージック・ビデオ)製作のため、石橋の仕事場に近い現地に足を運んだらしい その映像も再利用し副次的に本作が出来上がったという

本作の主題は「自然対人間」という永遠で究極のテーマ 天然の水源により生活している地元住民とグランピング場施設開発により水源汚染を起こしかねない企業との対立である 本作では、まず地元の生活を描き、次に補助金も活用する開発企業との対話・対立に触れ、そして自然の中で人間が生きるという事実・意味を追及しているように思える 未踏の自然に一番先に入った人間が自然環境保護論主義者であり、次に来る人々は自然環境破壊者なのだろうか

主演の大美賀仁は監督の撮影スタッフであったが、監督に白羽の矢を立てられたそうだ 濱口監督は脚本の台詞をそのまま読むという本読み・リハーサルを大事にしているらしいが、大美賀はそのままに演じたという それが大自然の中で自給自足で生きている飾りのない人物を好演しているように思える

本作は第80回ヴェネツィア国際映画祭(2023)で銀獅子賞(審査員大賞)を受賞している

| | コメント (0)

« 2024年4月 | トップページ | 2024年6月 »