カテゴリー「書評・評論」の24件の記事

2020年7月12日 (日)

中国共産党とその私兵・中国人民解放軍についての書籍3冊を読んで

最近中国共産党とその私兵・中国人民解放軍について勉強している 中国国民が幸せになるのならば、その政治体制については余り関心がない しかし、その影響が外国にも国際的にも悪影響を与えるものならば許しがたい その上、中国国内にも自由、基本的人権や民主主義が存在しないならば…
矢板明夫(1972~・中国天津市生まれ・残留孤児2世)、石平(1962~・中国四川省生まれ・2007日本帰化)、藤井厳喜(1952~・東京都出身)3氏による著書3を冊読んだ 3氏ともガチガチの反中・親台派だから、台湾を高く評価するが中国共産党についてはボロボロに書いている これらの記述すべてが事実・真実とは決して思ってはいない また当面中国や香港を訪れるつもりはない
3冊を通じていろいろなことが書いてあるのだが、今まで余りお目にかからなかった事項を何点か紹介したい
◆今年は60年に1回中国で大事件や大動乱が起きる庚子(かのえね・コウシ)の年(ややこじつけもありそうだが…)
2020年 今年
1960年 中国共産党主席・毛沢東(1893~1976)がソ連からの借金をすべて返済するための大躍進政策(大飢饉が発生し3,000~4,000万人が餓死)
1900年 北清事変(義和団の乱等とも・8ヵ国連合軍に西太后《1835~1908》の清朝が惨敗)
1840年 アヘン(阿片)戦争(英国に清国が負け香港を割譲)
◆1936年の西安事件により蒋介石(1887~1975)の国民党軍による毛沢東の紅軍(共産党軍)の討伐が中止され(第2次)国共合作成立 満州事変(1931~33)により故郷を追い出された張学良(1901~2001・張作霖の息子)の東北軍(国民党側)が西安に駐屯しており、長征により延安まで逃げ延びた紅軍の策略により張学良が西安で蒋介石を拘束 1964年に毛沢東は日本の中国侵略のお陰で生き延びたと語ったという
◆外国人記者として初めて延安に入ったエドガー・スノー(1905~1972・米)が1937年に「中国の赤い星」を上梓 軍紀が厳しく、上下関係なく寝食を共にする紅軍を好意的に書いたため、当時欧米が共産党寄りに これは共産党の宣伝上手に乗せられたもので、実際は軍閥があり上下関係も厳しく略奪もあったらしい 特に幹部たちは長征に付き添った農村出身の妻と離婚し、共産主義に憧れてやってきた若い女性たちと次々と結婚したという 毛沢東は4回、朱徳(1886~1976)は6回、劉少奇(1898~1969)も6回、そして葉剣英(1897~1986)は何と9回も妻を換えているとのこと
◆鄧小平(1904~1997)が1978年に開始した改革開放路線により国防費が削減された それに伴い人民解放軍の特権はだんだん失われ民間との所得格差も広がったため、代わりに軍ビジネスが盛んになった それは闇ビジネスや上から下までの汚職(賄賂)に発展し役職は金で買うものになった 部隊を故意に定員割れとし余剰の物資を転売、部隊の管理牧草地を農牧民に無断転貸、管理牧草地で農牧民に冬虫夏草を採取させピンハネ等々は普通に行われているらしい そう考えると南シナ海の基地建設も空母建造も軍のどこかで金が抜かれているのかもしれない
◆中国では退役軍人が年金などの待遇改善を求めるデモが頻発しており、それに自分たちの将来の姿を投影する現役軍人の士気をとても下げている また自分たちの先輩軍人を取り締まることができないという矛盾を抱える
◆バラク・オバマ前米国大統領(1961~)には中国系カナダ人と結婚した異父妹や中国人と結婚した在中の異母弟がいたので中国共産党は御しやすかったが、ドナルド・トランプ現大統領(1946~)は大統領収入が1ドルなのでビジネスマンのくせに個人的な損得では動かない 娘イヴァンカ(1981~)の夫ジャレッド・クシュナー(1981~)にビジネスを持ちかけたが、クシュナーは機密情報からは遠ざけられた
◆台湾は中国国内で工場等のビジネスを行っているので、武漢ウイルスについては2019年12月から武漢市の病院に問合せ調査をし、31日には武漢市からの直行便の乗客全員への検疫を強化 2020年1月12日に衛生福利部(日本の厚労省)から専門家2人を派遣 中国政府が武漢市を封鎖した前日22日に武漢市と湖北省からの団体旅行受入れを中止し、26日に湖北省からの入境を禁止し、さらに31日には中国からのすべての観光ツアー客を帰国させ、ついには2月6日から中国人の入境を全面禁止とした
◆中国共産党の幹部が異なることを言う時は党内で深刻な権力闘争が起きている可能性が高い 李克強首相(1955~)が5月28日に全国人民代表大会の記者会見で「中国には月収1000元(約1万5000円)の人が6億人もいる」と明かし、中国国民の約半分は貧困状態にあると示し、また6月1日には同首相は国内の雇用問題を解決するために、「露店経済」を推奨(露店経済は現在紛糾中) 中国には現在2憶人の失業者がいるという話もある 中国国防大学教授の戴旭(1964~)や「超限戦」(1999・中・邦訳2001)の著者・喬良(1955~)が習近平(1953~)政権に批判的・抑制的な言説をしている 習近平の属する太子党派と李克強の属する共青団(中国共産主義青年団)との間で相克があるのかもしれない
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2020年5月26日 (火)

1969年にニューヨーク市に駐在している、ソ連の国連職員や外交官の間ではやっていたジョーク

1969年にニューヨーク市に駐在している、ソ連の国連職員や外交官の間ではやっていたジョーク

出典:「China 2049 秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』」マイケル・ピルズベリー著(米・2015)

ソ連の人々は当時貧しいマルクス主義・共産主義の中国の将来について、何かを知っていて、何かを予測していたらしい

==========

 ソ連の指導者レオニード・ブレジネフがニクソン大統領に電話をかけてきた。

 ブレジネフが言う。

「KGBによると、あなたは2000年に何が起きるかを予測できるスーパーコンピューターを持っているそうですね」

「ええ、持っています」

 ニクソンが答える。

「では、その頃、誰がソ連政治局を牛耳っているか、教えていただけますか?」

 ニクソンは沈黙し、一向に答えようとしない。

「はは!」

 ブレジネフは笑った。

「そのコンピューターはそれほど高性能でもないのですね」

「とんでもない、書記長」

 ニクソンが答えた。

「コンピューターはあなたの質問に答えています。ただわたしにはそれが読めないのです」

「なぜですか?」

 ブレジネフが訊いた。

「中国語で書かれているからです」

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2020年5月22日 (金)

「China 2049 秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』」を読み直して

「China 2049 秘密裏に遂行される『世界覇権100年戦略』」を読み直した マイケル・ピルズベリー著(米・2015)で野中香方子邦訳(2015) 米国のCIA、FBI、国防総省などの公開情報と裏話をふんだんに盛り込んでいる
一時は米中蜜月時代到来のように思えていたが、最近特に2017年にドナルド・トランプ第45代米国大統領が就任してから一変 とりわけ今年発生した新型コロナ(武漢)ウイルス・パンデミックでは、トランプ大統領の中国叩きが目立つ 何が起きたのだろうと思ったが、その背景には本書に書いてあるような中国分析の大変化があったようだ(2018年のマイク・ペンス副大統領の演説とも平仄が合う)
400頁近いまるで政府の報告書を読んでいるようでもあるが、とて詳細なので誰もが説得されるだろう 北京語も堪能なピルズベリー博士が40数年にわたって米国政府や諜報機関と係わりながら、中国の共産党政府や人民解放軍の要人たちと直接面会して得た情報は真に貴重
中国共産党は1949年の建国以来ソ連の庇護下で軍事や技術の支援を受けてきた しかし次第に中国はソ連の脅威を感じるようになり米国に接近 1972年にリチャード・ニクソン第37代米国大統領が訪中し毛沢東主席と周恩来首相に会い、両国の政策は急転回 ソ連の脅威がなくなるまで、経済的・軍事的に自立していないひ弱な国を演じた中国は米国の経済、技術、軍事などの支援を受けた
中国国内には胡耀邦や趙紫陽などの改革派(ハト派・民主派)の重鎮も存在したが、タカ派(保守派)との論戦に負け1989年の天安門事件の弾圧・収拾に伴い失脚 ついに鄭小平の時代になり人民解放軍の将校たちが中心のタカ派が唱える政策運営となる 天安門事件の蛮行から国際社会に復帰するために、1992年の平成天皇訪中を利用したことはよく知られている
さらに、いかにも好々爺な外見の鄭は米国に対してはひ弱な中国を演じ続け、米国からの多大な支援を受け続ける 中国はいずれ民主的で、平和的に共存する経済大国となると、米国に勝手に理解させる 中国の米国政界・産業界への工作も成功し、2001年には中国はついにWTO加盟を果たし、一気に経済大国になる しかしながら、公約した民主化、公正・公平・オープンな交易・貿易条件の実現、環境破壊の防止などは遅々として進まず、権威的・独裁的な資本主義のまま現在に至る
ピルズペリー博士は中国には1949年の建国から100年間にわたるマラソンの計画があったという(だから本書のタイトルが「China 2049」) まずソ連の覇(権)を破り、次に世界一の米国の覇(権)を凌ぎ中国中心の世界を築き、300年前の世界を再現するのが目的とのこと そのために米国を懐柔し、たぶらかし続けてきたのだという
2013年に習近平が中国のトップに就任してからは、中国は米国の覇(権)に挑む姿勢を隠さなくなり、特に日本や東南アジアの国々を挑発している とりわけ今年の新型コロナ(武漢)ウイルスについては当初情報隠蔽をし、その間に医療用マスクやガウンを世界中で買いまくったという疑いが浮上 今秋の大統領選挙対策もあってトランプ大統領は中国とWHOを厳しく攻め立てている
このままいくと米中衝突もありえるという観測もあるが、中国は勝てない相手に戦いは挑まないという というのは中国のタカ派は紀元前に群雄割拠した春秋戦国時代の歴史・教訓・戦略(孫武の「孫子」など)をよく勉強しており、それゆえ次の9つの戦略の下で思考・行動しているからだとのこと
①敵の自己満足を引き出して、警戒態勢をとらせない
②敵の助言者をうまく利用する
③勝利を手にするまで、数十年、あるいはそれ以上、忍耐する
④戦略的目的のために敵の考えや技術を盗む
⑤長期的な競争に勝つうえで、軍事力は決定的要因ではない
⑥覇権国はその支配的な地位を維持するためなら、極端で無謀な行動さえとりかねない
⑦勢を見失わない
⑧自国とライバルの相対的な力を測る尺度を確立し、利用する
⑨常に警戒し、他国に包囲されたり、騙されたりしないようにする
中国のタカ派は、米中ソの間で、まるで現代の三国志を演じているようでもある
他の参考書籍としては、「米中もし戦わば 戦争の地政学」(ピーター・ナヴァロ著・米・2015)、「中国4.0 暴発する中華帝国」(エドワード・ルトワック著・日・2016)などがある
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2019年11月28日 (木)

「反日種族主義 日韓危機の根源」を読んで

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350頁程の結構分厚い書籍だが、すみやかに読了
日本と朝鮮半島に係わる歴史について、これ程無知だったと思い知らされることはなかった とても勉強になる本だった
韓国の過激な反日議論に対応するには、すべての日本人はこの本を読んでおくべきだと感じた
日本の朝鮮半島植民地支配、解放(日本敗戦)後の日韓請求権交渉、独島(竹島)の経緯、韓国での親日清算の欺瞞、朝鮮半島での妓生・公娼制・慰安婦の歴史、日本軍慰安婦の実態などについて、歴史的資料に基づき詳細に解説
挺対協(韓国挺身隊問題対策協議会)が、労働力確保のための女子挺身隊動員と慰安婦募集を混同しているという点は、小生には新しい知識だった
日本の戦争犯罪(日本は李氏朝鮮とは戦争してはいないが)を徹底的に追及するなら、なぜ朝鮮戦争を起こした北朝鮮や何度も朝鮮半島を侵略した中国の戦争犯罪を追及しないのか、公平性に問題があるとの指摘には同感で納得
本書籍が韓国内で出版されたことは、1990年代以降の嵐のような反日運動が少しは見直されているということだろうか 今回日本語版が出版されたのだから、是非英語版も出版してほしいと思う
少し気になるのは、著者たちは李承晩韓国初代大統領(1875~1965)の信奉者であることぐらいか ただし、李承晩時代に不法占拠した竹島(独島)についての記述は公平だと思う

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2019年11月 2日 (土)

「潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日」を読んで

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一昨日注文し、昨日到着、一日で読了
今中国を訪れると、空港の入国審査で顔写真を念入りに撮影され、両手10本の指の指紋を採取されるとのこと
その後滞在中は、全土に無数に設置されている監視カメラとAI顔認証システムにより、一挙手一投足をずっと監視・追跡されているそうだ
誰がこのような国に行きたいと思うのだろうか
したがって、中国国内ではもう中国人も外国人も自由な行動はできず、記者による独自の取材も撮影も不可能のようだ
さらに昨年カナダのバンクーバーでファーウェイの女性副会長が逮捕された時には、中国政府は猛反発し、即座に中国に滞在している、事件には無関係のようなカナダ人2人を拘束
中国にいる外国人は理由も分からずにいつ拘束されるかもしれないという危険と隣り合わせ
とかくその実態がよく分からないが故に、批判されたり、嫌われたり、恐れられたり、しかしたまには感謝されたりする大国・中国
本書は中国軍についての分析・報告がメイン
本書を読むと、中国軍も一部張子の虎のような気もするが、とにかく230万人もの軍人を擁する巨大組織は不気味
軍人の腐敗・汚職が横行しているので一般市民がそれに強硬に抗議していることや、全軍人の7割を占めるという一人っ子兵士の脱走・除隊が増えているということを聴くと、少しホッとする

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2010年1月20日 (水)

辻仁成著「サヨナライツカ」を読んで

 お友達からいただいた、辻仁成著の文庫本「サヨナライツカ」を読みました。読み始めたら止まらなくなり、250頁程を深夜までかかって一気に読み切りました。
 辻仁成さんの本は初めて手にしました。恋愛小説を得意にしているようですね。途中で本を置くことができなかったのだから、彼はなかなかのラブストーリー・テラーだと思います。少し現実離れしているところが散見されましたが、恋愛話としては充分に楽しめました。というよりは、泣けましたね。不景気な最近のこの世の中、恋愛に身を焦がすのもいいかもしれません。
 小説の道具建ては、昔大ヒットした米国の小説「マジソン郡の橋」(ロバート・ジェームズ・ウォラー著)に似ているように感じました。偶然の出逢いがあり、短期間の激しい熱愛に巻き込まれます。しかしながら、家族のためにその熱愛を諦めてしまいます。それでも、心の奥ではその熱愛を忘れることができず、一生引きずってしまいます。そして、印象的な終盤の手紙がとても重要な役割を果たしております。
 もちろん登場人物の設定が男女の役割が逆になっており、寒い所と暑い所の舞台設定も違います。もちろんストーリーの展開等細部は完全に異なります。しかし、作者は先に生まれ出た作品を参考にしたのは間違いないのではないかと考えます。
 映画化された「マジソン郡の橋」のヒロインはメリル・ストリープで、ヒーローはクリント・イーストウッドでした。まもなく公開される映画「サヨナライツカ」のヒロインは中山美穂で、ヒーローは西島秀俊です。中山美穂さんは、作者辻さんのご夫人で、お子さんもいらっしゃるそうです。そんな訳で、彼女は12年振りの映画出演だそうです。監督は、韓国の気鋭、イ・ジュハンさんで、彼が脚本も書き、キャストも決定しているようです。細部の映像、演技にこだわるイ監督の作品は、観るのが楽しみです。ひょっとして、ミニ・タイ・ブームが起きるかもしれません。

  • 人は皆 愛したことを 忘れない

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【洋書】Bridges of Madison County

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2008年9月15日 (月)

重村智計著「金正日の正体」を読んで

 今月9月に入ってから、新聞等に「北朝鮮の金正日総書記の重病説」が流れるようになりました。9月9日に行われた、北朝鮮の建国60周年記念行事に初めて出席しなかったことから、急にまたクローズアップされたものです。毎日新聞の最近の記事(9月14日付け)によれば心臓、肝臓、腎臓、糖尿、肥満等の問題を抱え、最近は脳卒中を患ったのではないかとう話が紹介されています。まさに生活習慣病のオンパレードです。

 ちょうど先月8月に講談社現代新書から重村智計(としみつ)早稲田大学教授が著した「金正日の正体」という書籍が出版されました。真にタイムリーな訳ですが、一読して全く訳の分からない北朝鮮の真実らしきものを若干垣間見ることができたような気がしました。まだ読んでいない方のために詳しく述べるのは避けますが、私がなるほどと思ったポイントは次のとおりです。

  • 北朝鮮の政治的決定が、従来と違って後で結構変更されるので、集団指導体制になっているのではないかということ。
  • その理由は、やはり最高指導者の金正日総書記が重病か、あるいはすでに死亡しているのではないかということ。
  • 暗殺やクーデターを恐れ、金正日総書記の影武者(ダブル)が2人あるいは最大4人いるのではないかということ。
  • 影武者は当然ながら、吃音がなかったり、顔面神経麻痺の後遺症がなかったり、背が高かったり、極みは声紋が違ったり等しているのではいかということ。
  • 日朝が関係改善すると役割のなくなる朝鮮総連や、元々工作機関である統一戦線部を仲介として交渉をすると、ウソやデマが多数紛れ込んでくるので、適当な結論に至れないのではないかということ。
  • しかしながら、在外公館に勤務しているような、職業外交官的人材には、信頼できる人間味あふれる人物が少なからずいること。

 いずれにしても北朝鮮は正しい情報が公開されない国ですから、推測や憶測も沢山入った評価になるようです。金正日総書記がたとえ亡くなっても北朝鮮が混乱しないように、中国が毅然とした対応をとることを期待します。

  • 真実を 語れる社会 隣国に

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2008年1月17日 (木)

キッザニア東京を訪ねて内田樹著「下流志向」を考える

 ある勉強会の企画で、キッザニア東京を訪ねて参りました。キッザニア東京は一昨年秋にオープンしましたが、その時にはテレビを中心にメディアが大きく取り上げたので、私も含め名前と内容は相当知っている人が多いものと思います。しかし、今回実際に訪ねることになって、場所が豊洲だったことを発見しとても驚きました。アーバンドックららぽーと豊洲ノースポートの3階にあるのです。この場所は、最近会社業績に関し話題になったIHI(旧社名:石川島播磨重工業)の造船ドックの後です。再開発されているのは知っておりましたが、観るのは今回が初めてで米国のモールをそのまま持って来たような3階建の、中央に巨大な吹抜け空間のある施設にまたビックリしました。

 キッザニア東京はとてもはやっていて、週末は何と4ヶ月先まで予約で一杯なのだそうです。ただし、当日券も若干はあるようです。またまた驚いたのは、このコンセプトの発祥の地がメキシコだったことです。メキシコにはすでに2ヶ所あり、東京が3番目で、インドネシアに4番目の施設があるそうです。来年には西宮にも日本で2つ目のキッザニアがオープンするようです。キッザニア東京のご案内の資料には、そのコンセプトを次のように説明しております。

 キッザニアは、メキシコのKZM社(本社:メキシコシティ CEO:ハビエル・ロペス)によって開発された屋内施設です。実在する起業がスポンサーとなったこどもサイズ(現実社会のほぼ2/3のサイズ)の50以上のパビリオンがリアルな街並みを形成しており、その中で80種類以上のお仕事やサービスを受けるなどのアクティビティを体験することができます。
 こども達はお仕事を体験することでキッザニア内で流通している独自の通貨「キッゾ」を手に入れることができ、このキッゾを使い、キッザニア内で習い事をしたり、買い物等をすることができるほか、銀行に預金したり、ATMで引き出せるなど、リアルな経済活動を体験することができます。

 次の2枚の写真は、携帯で撮影したキッザニア東京の街並みです。

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 子供達が何度もリピーターとしてキッザニア東京を訪れ、通貨「キッゾ」による報酬を受け取れる仕事体験を好んで選び、キッゾを銀行口座に貯めて増やしているというお話を伺って昨年読んだある本のことを思い出しました。その本とは、内田樹(たつる)氏の著書「下流志向:学ばない子どもたち 働かない若者たち」です。実は半年前位に読了していたのですが、正直を言って内容がとても重く、読み終わった後とても複雑な気持になったため、この本だけについての感想文を書けないままになっておりました。

 現代日本では、家庭内のお手伝い(家事労働)などというものがなく、両親が子供に消費活動から始めてそれのみを教えています。消費とは消費主体が価値がわかっていると思い込んでいるモノやサービスとお金を即時的に等価交換することです。ところが教育や労働は、努力してもその成果を得られるのは相当後になってからが普通です。教育では特にお金を払って努力するとも多いのですが、その成果は10年後にならないと分からないことが通常です。労働についても、その短期的な報酬・対価を通常約1ヶ月後に得られるとしても、社会的にも認知されるような本質的な成果は10年後や20年後のずいぶん後になってからでないと獲得できません。現代の子供達や若者達は、すべてを即時的な等価交換による消費活動を唯一の原理・原則として判断するため、長期的な努力の末本当の成果が得られるような教育や労働については理解できず、その結果それらから逃げてしまう。これは言い換えると、分かっている範囲内で自分のことは自分で決める、つまりすべてを自己決定するということです。しかし、同時に昨年流行った「KY」などという言葉にも共通するところがあるように、この自己決定論をみんなのルールのしようというとても矛盾し、ねじれた論理になっています(自分と他人は違うはずです)。私の理解では、内田氏の主張はこのようなものだと受け取りました。

 エデュテイメント(エデュケイション+エンターテイメント)をモットーにしているキッザニア東京に来る子供達が、そこでの労働体験を基にして教育・労働の本質に少しでも近付き、長期的な努力を重視するようになってくれることを切に期待するものです。しかしながら、最近話題になっているねじれ国会でも、この「自己決定するがみんな同じに」という感覚が支配的であるがために、なかなか本質的な議論がなされずに国民のための施策が立案・実行されない情況にあるような気もします。日本人一人ひとりがこの日本的な感覚を捨てて、本質に迫らなけれならないように思います。

  • 教育と 労働を主に 国造り

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2008年1月14日 (月)

サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んで

 サイモン・シン著作のドキュメンタリー数学小説『フェルマーの最終定理』(青木薫訳)を読みました。実は読み終えたのはおよそ2ヶ月前だったのですが、なかなか感想を書けずにおりました。それは、文庫本で495頁という大作であること、それから数学という題材を扱っていたことと関係があります。誰にでも解りやすく、読後の感動を伝えることがとても難しく感じていたからです。

 まず、本書の背景情報についてご紹介します。本書は、1996年に英国BBCテレビが放送したドキュメンタリー番組『ホライズン──フェルマーの最終定理』に基づいて書き下ろされたものだそうです。著者サイモン・シン氏は1967年に生まれたインド系英国人で、ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得しております。その後彼はジュネーブの研究センターに勤務し、後にBBCに転職し前述のドキュメンタリー番組制作に係わり、翌1997年に本書をとりまとめたとのことです。数学の中でも高度な手法を使う数論(整数論)という分野の出来事を、これ以上はできないと思う程平易に解りやすく、しかも人間社会の感動的な歴史として創り上げております。何せこのテーマを完全に理解できる人物は、世界でも5、6人しかいないのだそうです。

 さて、フェルマーの最終定理とは何でしょうか。これは紀元前6世紀のギリシャに生きたピュタゴラスの名を冠した幾何学の有名な定理の拡張形といえるでしょう。ピュタゴラスの定理は「直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」、あるいは「x2+y2=z2」という方程式として書くことができます。フェルマーの最終定理はこれを少し拡張して、2乗を3乗以上に変えるとその方程式の整数解はないというものです。書き換えると「xn+yn=zn、この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない」となります。17世紀に仏国の役人として生きたフェルマーは、ディオファントス(古代ギリシャの数学者)の著書『算術』の余白にこの最終定理を書き残し、さらに「私はこの命題に真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」と続けているとのことです。証明が明らかにされないままに残された、このフェルマーの最終定理がこの後3世紀半余りにわたって世界中の数学者を悩ませることになったのです。

 このフェルマーの最終定理を1994年に完全に証明したのが、プリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ教授でした。1963年に10歳であったワイルズ少年はフェルマーの最終定理に出合い、その証明に対する興味を持ち続けることになりました。7年間にも及ぶ孤独な研究の末、1993年に彼は故郷ケンブリッジのニュートン研究所でフェルマーの最終定理の証明を発表したのでした。その後根本的な欠陥が一点発見されたが、翌年証明の修正に成功し、1995年に2篇合わせて130頁にも及ぶ完全な論文として数学誌に掲載されたのでした。彼は、それまでに数論の分野でもたらされた数々の貴重な成果を基に、難解として残っていた最後のミッシングリンクを多数の独自で複雑な論理を導入して解決したのでした。ワイルズの証明の素晴らしいところは、その証明の過程で20世紀の数論の進歩がすべて使われており、そして最終的にフェルマーの最終定理の証明に見事に収斂しているところのようです。これこそ、藤原正彦先生もいうところの「数学の美しさ」なのだろうと思います。

  • 数学の 論理世界の 美しさ

【補足1】フェルマーの最終定理の証明に関しては、余り話題にならなかったそうですがが、1955年に日本の数学者が提示した谷山=志村予想(注)が本質的な役割を果たしているようです。この予想は、一言でいえば、すべての楕円方程式(楕円曲線)が一対一でモジュラー(保型)形式に対応するというものです。もう少し感覚的にいえば、すべての楕円曲線の図形が一対一で四次元の空間の集合に対応しているということらしいのです。筆者も理解できている訳ではありませんが、このように二つの独立な世界に橋渡しができたことでフェルマーの最終定理が証明されることになったようです。

(注)数学の世界では、未だ証明されてはいないが、定理にほぼ近いものを予想と呼んでいるそうです。谷山=志村予想はワイルズ教授らにより証明されたので、現在は谷山=志村定理と呼んでいいものと思います。

【補足2】昨年12月にあるセミナーで北大電子科学研究所津田一郎教授から数学を脳科学に応用して、脳のエピソード記憶の原理を探るというお話を伺いました。その時に短期記憶の機能を司る脳の海馬という部分で、何やら谷山=志村予想に似た変化が起きているらしいことに気が付きました。人間の感覚器官から入力された神経信号が、海馬のCA1という部分では一見無秩序な曲線の連続に見えるものが、CA2という部分に伝わると時間軸も加えた四次元の空間の集合に変換されているように思えたのです。このことを津田先生にお話ししましたら、興味深そうにお聴きになっておりました。

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2007年3月 4日 (日)

日下公人著「数年後に起きていること」を読んで

 日下公人(くさかきみんど)氏が著述した書籍数年後に起きていること:日本の『反撃力』が世界を変える」を読みました。自信喪失している日本人達にこんなに元気を与える本はないのではないでしょうか。ビジネス書としては昨年大人気の本だったそうですが、それも理解できると思いました。
 日本の文化は世界の最先端を行っていること、自分の趣味に生きる風流な人が増えていること、日本は外交力があること、国際会議はポケモンの理屈を使うようになること、などなど、にわかには信じ難いことが沢山書いてあります。でも、読んで行く内に、そうかなと思ってしまうから不思議です。
 この書は、未来を予言しているようにみえますが、実はともすれば自信喪失している多くの日本人達へのエールではないでしょうか。外交交渉も、日本の文化を背景に誰が考えても正しいことを主張すれば道は拓けるそうです。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。ただし、自信喪失が自信過剰にならないようにしなければいけないし、自信過剰で外国を攻撃するなどというのはもっての外だと考えますが…。

  • 風流も 自信がなくば ただの閑人

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数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える Book 数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える

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