カテゴリー「書評・評論」の17件の記事

2008年1月17日 (木)

キッザニア東京を訪ねて内田樹著「下流志向」を考える

 ある勉強会の企画で、キッザニア東京を訪ねて参りました。キッザニア東京は一昨年秋にオープンしましたが、その時にはテレビを中心にメディアが大きく取り上げたので、私も含め名前と内容は相当知っている人が多いものと思います。しかし、今回実際に訪ねることになって、場所が豊洲だったことを発見しとても驚きました。アーバンドックららぽーと豊洲ノースポートの3階にあるのです。この場所は、最近会社業績に関し話題になったIHI(旧社名:石川島播磨重工業)の造船ドックの後です。再開発されているのは知っておりましたが、観るのは今回が初めてで米国のモールをそのまま持って来たような3階建の、中央に巨大な吹抜け空間のある施設にまたビックリしました。

 キッザニア東京はとてもはやっていて、週末は何と4ヶ月先まで予約で一杯なのだそうです。ただし、当日券も若干はあるようです。またまた驚いたのは、このコンセプトの発祥の地がメキシコだったことです。メキシコにはすでに2ヶ所あり、東京が3番目で、インドネシアに4番目の施設があるそうです。来年には西宮にも日本で2つ目のキッザニアがオープンするようです。キッザニア東京のご案内の資料には、そのコンセプトを次のように説明しております。

 キッザニアは、メキシコのKZM社(本社:メキシコシティ CEO:ハビエル・ロペス)によって開発された屋内施設です。実在する起業がスポンサーとなったこどもサイズ(現実社会のほぼ2/3のサイズ)の50以上のパビリオンがリアルな街並みを形成しており、その中で80種類以上のお仕事やサービスを受けるなどのアクティビティを体験することができます。
 こども達はお仕事を体験することでキッザニア内で流通している独自の通貨「キッゾ」を手に入れることができ、このキッゾを使い、キッザニア内で習い事をしたり、買い物等をすることができるほか、銀行に預金したり、ATMで引き出せるなど、リアルな経済活動を体験することができます。

 次の2枚の写真は、携帯で撮影したキッザニア東京の街並みです。

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 子供達が何度もリピーターとしてキッザニア東京を訪れ、通貨「キッゾ」による報酬を受け取れる仕事体験を好んで選び、キッゾを銀行口座に貯めて増やしているというお話を伺って昨年読んだある本のことを思い出しました。その本とは、内田樹(たつる)氏の著書「下流志向:学ばない子どもたち 働かない若者たち」です。実は半年前位に読了していたのですが、正直を言って内容がとても重く、読み終わった後とても複雑な気持になったため、この本だけについての感想文を書けないままになっておりました。

 現代日本では、家庭内のお手伝い(家事労働)などというものがなく、両親が子供に消費活動から始めてそれのみを教えています。消費とは消費主体が価値がわかっていると思い込んでいるモノやサービスとお金を即時的に等価交換することです。ところが教育や労働は、努力してもその成果を得られるのは相当後になってからが普通です。教育では特にお金を払って努力するとも多いのですが、その成果は10年後にならないと分からないことが通常です。労働についても、その短期的な報酬・対価を通常約1ヶ月後に得られるとしても、社会的にも認知されるような本質的な成果は10年後や20年後のずいぶん後になってからでないと獲得できません。現代の子供達や若者達は、すべてを即時的な等価交換による消費活動を唯一の原理・原則として判断するため、長期的な努力の末本当の成果が得られるような教育や労働については理解できず、その結果それらから逃げてしまう。これは言い換えると、分かっている範囲内で自分のことは自分で決める、つまりすべてを自己決定するということです。しかし、同時に昨年流行った「KY」などという言葉にも共通するところがあるように、この自己決定論をみんなのルールのしようというとても矛盾し、ねじれた論理になっています(自分と他人は違うはずです)。私の理解では、内田氏の主張はこのようなものだと受け取りました。

 エデュテイメント(エデュケイション+エンターテイメント)をモットーにしているキッザニア東京に来る子供達が、そこでの労働体験を基にして教育・労働の本質に少しでも近付き、長期的な努力を重視するようになってくれることを切に期待するものです。しかしながら、最近話題になっているねじれ国会でも、この「自己決定するがみんな同じに」という感覚が支配的であるがために、なかなか本質的な議論がなされずに国民のための施策が立案・実行されない情況にあるような気もします。日本人一人ひとりがこの日本的な感覚を捨てて、本質に迫らなけれならないように思います。

  • 教育と 労働を主に 国造り

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下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち Book 下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

著者:内田 樹
販売元:講談社
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2008年1月14日 (月)

サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んで

 サイモン・シン著作のドキュメンタリー数学小説『フェルマーの最終定理』(青木薫訳)を読みました。実は読み終えたのはおよそ2ヶ月前だったのですが、なかなか感想を書けずにおりました。それは、文庫本で495頁という大作であること、それから数学という題材を扱っていたことと関係があります。誰にでも解りやすく、読後の感動を伝えることがとても難しく感じていたからです。

 まず、本書の背景情報についてご紹介します。本書は、1996年に英国BBCテレビが放送したドキュメンタリー番組『ホライズン──フェルマーの最終定理』に基づいて書き下ろされたものだそうです。著者サイモン・シン氏は1967年に生まれたインド系英国人で、ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得しております。その後彼はジュネーブの研究センターに勤務し、後にBBCに転職し前述のドキュメンタリー番組制作に係わり、翌1997年に本書をとりまとめたとのことです。数学の中でも高度な手法を使う数論(整数論)という分野の出来事を、これ以上はできないと思う程平易に解りやすく、しかも人間社会の感動的な歴史として創り上げております。何せこのテーマを完全に理解できる人物は、世界でも5、6人しかいないのだそうです。

 さて、フェルマーの最終定理とは何でしょうか。これは紀元前6世紀のギリシャに生きたピュタゴラスの名を冠した幾何学の有名な定理の拡張形といえるでしょう。ピュタゴラスの定理は「直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」、あるいは「x2+y2=z2」という方程式として書くことができます。フェルマーの最終定理はこれを少し拡張して、2乗を3乗以上に変えるとその方程式の整数解はないというものです。書き換えると「xn+yn=zn、この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない」となります。17世紀に仏国の役人として生きたフェルマーは、ディオファントス(古代ギリシャの数学者)の著書『算術』の余白にこの最終定理を書き残し、さらに「私はこの命題に真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」と続けているとのことです。証明が明らかにされないままに残された、このフェルマーの最終定理がこの後3世紀半余りにわたって世界中の数学者を悩ませることになったのです。

 このフェルマーの最終定理を1994年に完全に証明したのが、プリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ教授でした。1963年に10歳であったワイルズ少年はフェルマーの最終定理に出合い、その証明に対する興味を持ち続けることになりました。7年間にも及ぶ孤独な研究の末、1993年に彼は故郷ケンブリッジのニュートン研究所でフェルマーの最終定理の証明を発表したのでした。その後根本的な欠陥が一点発見されたが、翌年証明の修正に成功し、1995年に2篇合わせて130頁にも及ぶ完全な論文として数学誌に掲載されたのでした。彼は、それまでに数論の分野でもたらされた数々の貴重な成果を基に、難解として残っていた最後のミッシングリンクを多数の独自で複雑な論理を導入して解決したのでした。ワイルズの証明の素晴らしいところは、その証明の過程で20世紀の数論の進歩がすべて使われており、そして最終的にフェルマーの最終定理の証明に見事に収斂しているところのようです。これこそ、藤原正彦先生もいうところの「数学の美しさ」なのだろうと思います。

  • 数学の 論理世界の 美しさ

【補足1】フェルマーの最終定理の証明に関しては、余り話題にならなかったそうですがが、1955年に日本の数学者が提示した谷山=志村予想(注)が本質的な役割を果たしているようです。この予想は、一言でいえば、すべての楕円方程式(楕円曲線)が一対一でモジュラー(保型)形式に対応するというものです。もう少し感覚的にいえば、すべての楕円曲線の図形が一対一で四次元の空間の集合に対応しているということらしいのです。筆者も理解できている訳ではありませんが、このように二つの独立な世界に橋渡しができたことでフェルマーの最終定理が証明されることになったようです。

(注)数学の世界では、未だ証明されてはいないが、定理にほぼ近いものを予想と呼んでいるそうです。谷山=志村予想はワイルズ教授らにより証明されたので、現在は谷山=志村定理と呼んでいいものと思います。

【補足2】昨年12月にあるセミナーで北大電子科学研究所津田一郎教授から数学を脳科学に応用して、脳のエピソード記憶の原理を探るというお話を伺いました。その時に短期記憶の機能を司る脳の海馬という部分で、何やら谷山=志村予想に似た変化が起きているらしいことに気が付きました。人間の感覚器官から入力された神経信号が、海馬のCA1という部分では一見無秩序な曲線の連続に見えるものが、CA2という部分に伝わると時間軸も加えた四次元の空間の集合に変換されているように思えたのです。このことを津田先生にお話ししましたら、興味深そうにお聴きになっておりました。

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フェルマーの最終定理 (新潮文庫) Book フェルマーの最終定理 (新潮文庫)

著者:サイモン シン
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暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2) Book 暗号解読 上巻 (1) (新潮文庫 シ 37-2)

著者:サイモン・シン
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暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3) Book 暗号解読 下巻 (新潮文庫 シ 37-3)

著者:サイモン・シン
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ビッグバン宇宙論 (上) Book ビッグバン宇宙論 (上)

著者:サイモン・シン
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ビッグバン宇宙論 (下) Book ビッグバン宇宙論 (下)

著者:サイモン・シン
販売元:新潮社
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2007年3月 4日 (日)

日下公人著「数年後に起きていること」を読んで

 日下公人(くさかきみんど)氏が著述した書籍数年後に起きていること:日本の『反撃力』が世界を変える」を読みました。自信喪失している日本人達にこんなに元気を与える本はないのではないでしょうか。ビジネス書としては昨年大人気の本だったそうですが、それも理解できると思いました。
 日本の文化は世界の最先端を行っていること、自分の趣味に生きる風流な人が増えていること、日本は外交力があること、国際会議はポケモンの理屈を使うようになること、などなど、にわかには信じ難いことが沢山書いてあります。でも、読んで行く内に、そうかなと思ってしまうから不思議です。
 この書は、未来を予言しているようにみえますが、実はともすれば自信喪失している多くの日本人達へのエールではないでしょうか。外交交渉も、日本の文化を背景に誰が考えても正しいことを主張すれば道は拓けるそうです。皆さんも読んでみてはいかがでしょうか。ただし、自信喪失が自信過剰にならないようにしなければいけないし、自信過剰で外国を攻撃するなどというのはもっての外だと考えますが…。

  • 風流も 自信がなくば ただの閑人

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数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える Book 数年後に起きていること―日本の「反撃力」が世界を変える

著者:日下 公人
販売元:PHPソフトウェアグループ
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2007年2月15日 (木)

書籍「ヤバい経済学」を読んで

 スティーヴン・D・レヴィットとスティーヴン・J・ダブナーが共著した書籍「ヤバい経済学 悪ガキ教授が世の裏側を探検する」を読みました。実に久し振りに「目から鱗が落ちる」感じがしました。世の中には同時に起きる2つの現象を、原因は別にあるにもかかわらず、間違って原因と結果にしていることが多いのではないかと改めて思いました。例えば、安易な例ですが、風邪を引いたために熱が出てフラフラする場合を考えてみましょう。本当の原因(病因)は風邪で、熱が出ることとフラフラすることは現象(症状)のはずです。しかし、我々は時として熱が出ているのでフラフラすると考えることがありますね。

 本書では、このような原因と現象を取り違えそうな話が沢山紹介されております。突っ込んだ内容は今後の読者のためにもちろん差し控えますが、次のような話題が出て参ります。いずれも確実な統計データが入手できるものについて、回帰分析を行い相関があると考えられる2つの事項に関して、それらが同時に発生する現象同士(相関関係)なのか原因と結果(因果関係)なのかを面白く分析・推論しております。

  • 学校の先生と相撲の力士は一部インチキをする者がいる
  • ク・クラックス・クランと不動産屋さんは情報の力でもっている
  • ヤクの売人はトップの一部が儲かっているだけ
  • 犯罪の減少に役立ったと言われていることはかなり的外れ
  • 完璧な子育てに役立つと思われていることもかなり的外れ

 私は、4番目の点を日本の交通事故死者数と比較して述べたいと思います。本書では、米国では1990年頃までは犯罪が増加し続けていたが、1990年代初めに犯罪発生率が下がり始め結局40年前の水準に戻ったことを紹介しています。犯罪減少の説明としては、①画期的な取締まり戦略、②懲役の増加、③クラックその他の麻薬市場の変化、④人口の高齢化、⑤銃規制の強化、⑥好景気、⑦警官の増員などいろいろなことが提起されたが、この中で間違いなく関係あるのは②と⑦だそうです。しかし、最も犯罪減少に貢献した事実は1970年代初めに中絶が完全に合法化され、将来の犯罪者予備軍となる不幸な生立ちを持った子供達が生まれなかったことだと言うのです。つまり1990年代初めには、ちょうど10代後半から20歳になる犯罪予備軍の数が大幅に減ったと言うのです。本当にこれは裏をかかれたあっと言う指摘でした。

 ところで、この理屈を日本の交通事故死者数がこのところ減少し続けている事実に適用できないかと考えました。交通事故死者数は、1990年頃がピークらしく11,227人でした。それが、1995年には10,679人になり、2000年には9,066人、そして2005年には6,871にまで減少しました。この理由としては、米国の犯罪減少の場合と同様に、取締まりの強化とか警官の増員とかがあるのだと思います。しかし、本当の理由は交通事故を起こしやすい危険な運転をすると言われている若年層の人口が減少傾向にあることではないのでしょうか。若年層は事故の確率が高く、任意の自動車保険でも保険料が割高になっていると思います。例えば、18歳から22歳までの人口を試算してみると、1990年は961万人、1995年は984万人、2000年は817万人、2005年は736万人となります。1995年は戦後まもなく誕生した第一次ベビーブーマーの子供達(第二次ベビーブーマー)がちょうど成人する頃に当たっておりました。交通事故死者数と18歳から22歳までの人口とは相関がありそうですね。これ以上の分析は私にはできませんが、最近若者の目に余る暴走行為も余り人口に膾炙しなくなった(注)ことも考え合わせると、自分の仮説・推論に何となく納得してしまいました。さて皆さんはどうお考えになりますか。

(注)ここの「最近若者の目に余る暴走行為も余り人口に膾炙しなくなった」という表現は、「最近若者の目に余る暴走行為も余り話題にならなくなった」という意味で使いました。話題にならないからといって暴走行為が減っている証拠にはなりませんが、減っている可能性を示す傍証になるかと考えました。Skywriterさんからのコメントで指摘されておりますが、この元々の表現は適切ではないとのことですので、読者の方には真意を汲み取っていただきたいと思います。

  • 真実への 扉を開く ヤバい理屈

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ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する Book ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

著者:スティーヴン・レヴィット,スティーヴン・ダブナー
販売元:東洋経済新報社
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2007年2月 8日 (木)

映画「不都合な真実」を観て

 先週末、京王線府中駅のすぐ南側にあるモール「くるる」の5階にあるシネマコンプレックス「TOHOシネマズ府中」で、元米国副大統領のアル・ゴア氏が制作した映画「不都合な真実」を観て参りました。
 当然観たい映画から上映している映画館を探した訳ですが、都心ではなくなぜか府中のシネマコンプレックスに目が留まりました。ここは2年程前にできたそうですが、何と9スクリーンもあり頻繁に来ても次々と新しい映画を観られそうです。座席も座り心地がよく、飲物立てと傘立てが各座席にあったのにも注目しました。その上、まだ夫婦50割引を提供してくれており、どちらかが50歳以上であれば通常2人で3,600円のところが何と2,000円になります。さらにいいことに、割と近くの府中ですから当然愛車レクサスIS250で出掛けたい訳ですが、324台収容の大駐車場が付属しており、映画なら3時間まで駐車料金無料となっておりました。家からくるるまでの所要時間もおよそ30分間と至れり尽くせりの条件でした。先に随分映画館の宣伝をしてしまいましたが、多分このせいで今後映画を観る機会が増えそうです。セゾンのポイントカードも作ってしまいましたしね。
 さて、映画そのものの話です。この映画「不都合な真実」は「地球温暖化(Global Warming)」に関するものです。空恐ろしいことに、今年の冬は全国的にとても暖かく、また記録的に少ない降雪量になっていますね。日本各地で、3週間から1ヶ月も早くタンポポや梅や緋寒桜(ひかんざくら)が咲き出しています。気象庁は、暖冬の背景として①北極圏からの寒気の南下が弱いことと②太平洋中東部(いわゆるペルー沖)の海面水温が上昇するエルニーニョ現象を挙げています。ゴア氏はこの映画では、これらは原因ではなく地球温暖化の結果、同時に現れる現象に過ぎないと言っているようです。本当の原因は、人類がわずかここ数10年の間に排出した温暖化ガス、つまりそのほとんどを占める二酸化炭素のせいだと言うのです。現在の二酸化炭素の濃度は過去65万年間のどの時点よりも高く、過去超えたことのなかった300ppmを上回っていると言います。
 さて二酸化炭素濃度が高まると何が起きるのでしょうか。ヒマラヤ氷河の溶解による水不足、熱波、海水の高温化による超巨大ハリケーンの発生、竜巻の多発、洪水の頻発、旱魃と砂漠化、永久凍土の溶解、病害虫の北上、グリーンランドの棚氷の溶解により海流の変化が起き欧州が氷河期に再突入、南極・北極の氷が溶けるために起きる陸地の水没などが帰結だそうです。これは地球環境の崩壊とも言え、我々人類の子孫が生きて行けなくなることを意味します。この不都合な真実を否定せず、見据える必要があります。京都議定書はその大事な一歩だった訳ですが、米国とオーストラリアがまだ批准しておりません。すべての国そして人々が、省エネ、エネルギー効率の改善、自動車の効率改善、公共交通システムの導入、風力やバイオ燃料などのリサイクル可能なエネルギーの使用、炭素の回収・貯蔵などに取り組むことによって、二酸化炭素の濃度を1970年代のレベルまで下げることが可能だと結んでおります。
 今朝いつものように満員電車に乗って通勤し、やや薄ら寒い部屋で勤務し、断熱された家に住む私は、すこしは地球温暖化と闘っているのでしょうか。さらに、余りお湯も使わないように、また風呂にもお湯を溢れる程入れないようにしなければいけないと思いました。他にも個人レベルでいろいろできることがあるのでしょうか。皆さん一緒に研究して、闘いの第一歩を力強く踏み出しましょう。

  • 温暖化 人の叡智で 闘おう

(注)本記事作成には、最後に紹介してある書籍、アル・ゴア著「不都合な真実」(2006年ランダムハウス講談社刊)も参照しました。

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不都合な真実 Book 不都合な真実

著者:アル・ゴア
販売元:ランダムハウス講談社
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2006年12月10日 (日)

藤原正彦著「国家の堕落」を読んで

 あの「国家の品格」の著者藤原正彦氏が、明日が書店での発売日である「文藝春秋」2007年1月号(新年特別号)の巻頭に特別寄稿を寄せております。その題目は、「驕れる経済人よ、猛省せよ 国家の堕落 改革の名のもとに国柄を壊し、ついには教育まで」としてあります。

 (注)ところで文藝春秋を年間定期購読していると、発売日の数日前に自宅に配送されますし(今回は5日前の水曜日に配送されました)、表紙の絵を描いている平松礼二氏の絵を使ったカレンダーもいただけます。

 藤原氏は、この論文を次のように始めております。

 近代になって、市場原理主義ほどこの日本を傷つけたものは多くはない。戦前の帝国主義、戦後のGHQと日教組、そして冷戦後の市場原理主義と並べられるほどである。
 日本を傷つけたこれらイデオロギーには二つの共通な特徴がある。一つは、それらイデオロギーが日本を傷つける過程で、一部の狂信的な人々に主唱され利用されただけではなく、大多数の国民にも共有されたということである。そして二つ目は、それらイデオロギーが我が国の古くからの国柄を忘れたものであったということである。

 藤原氏は、国家に対する何の哲学もないまま、市場原理主義という経済の視点で日本改造を行ったため、日本の国柄が破壊され、

  • 企業のリストラにより500万ともいわれるニート、フリーターが出現し
  • 経済上の格差、生命の格差そして教育の格差を広げ
  • 激しい競争社会というより生き馬の目を抜くような社会を現出させた

などと結論付けております。また、市場原理主義を推し進めていけば、日本農業は壊滅に瀕し、現在でも40%に過ぎない食糧自給率はさらに格段に低くなると予測しています。
 確かに我々も日々営利企業で働いていると、金儲けが目的ですから、どうしても金儲け主義になってしまいます。その結果、

  • 競争相手を出し抜く
  • 弱い相手は徹底的に叩く
  • 負けた者には存在価値がない
  • 必要以上に難解で、細かい字の契約書を作る
  • 分からなければいい(通常犯罪までは参りませんが、行き過ぎると談合や賄賂に至ります)

などの発想が、とてもた易く出て来てしまいます。これは、言い換えれば、「自分さえ良ければいい」、「相手などどうなっても構わない」という、藤原氏が著書「国家の品格」で述べている、日本に古来から備わっているという「弱いものいじめをしない」、「惻隠の情をもつ」などという武士道の精神に、全く反する思考が出て参ります。
 これは、日本の現代社会の病理である、自殺といじめにつながっているのではないでしょうか。

  • 存在は善である
  • 生命は尊重すべきものである
  • 弱いものいじめをしない
  • すべての生き物と共生する

などの、いわゆる自明の理、公理的なものをしっかり教育しないとこのようなことになるのではないでしょうか。藤原氏は、市場原理主義による教育改革には最も警鐘を鳴らしており、小学校でパソコンを教え、英語を教えることで、基礎科学、文学、芸術などは切り捨てられると危惧しています。「歴史的視点に立つと、数学とか理論物理学などの基礎科学の弱い国が、長期間繁栄したことは近代になって一つもない」のだそうです。
 私は藤原氏の意見には共感できる部分が多かったのですが、さて皆さんはいかがでしょうか。とにかく国家的な議論を行うことが必要だと思います。

  • 国柄を 偲び草の根 人づくり

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藤原正彦の人生案内 Book 藤原正彦の人生案内

著者:藤原 正彦
販売元:中央公論新社
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2006年11月 2日 (木)

東野圭吾著「手紙」を読んで

 東野圭吾著作の「手紙」を文春文庫の本で読みました。文庫本になってから話題になっていたので、何となく手に取ってしまいました。しかし、読み始めたら止まらなくなり、あっと言う間に読み上げてしまいました。後で考えると、辞書を引くような漢字もほとんどなく、とても読みやすい本でした。
 東野圭吾の作品は、基本的には推理・探偵小説だと思っていました。というのは、彼が江戸川乱歩賞からスタートしたこと、そして私が最初に読んだのが「悪意」という推理小説だったことからです。でも、テレビで見た映画「秘密」はそれとは少し違っていました。
 今回読んだ「手紙」は確かに強盗殺人事件を扱っていますが、その本質は人情話ではないでしょうか。もちろん、犯罪加害者の家族は差別されるべきという非人情の側面が多く描かれていますが、それは人情の裏返しではないでしょうか。非人情があって人情がある訳です。それも5割を超えた人情は人情ではないでしょう。1割しかないから、あるいは1パーセントしかないから泣かせる人情話になるはずだと思います。
 そう考えれば彼が今年直木賞を「容疑者Xの献身」で受賞したことが理解できます。実は今年の直木賞受賞前に5回も候補作になりながら受賞を逃し、6回目でやっと受賞できたそうです。「秘密」が最初の候補作であり、本件記事の「手紙」が4番目の候補作です。「手紙」を読みながら、ずっと浅田次郎の作品を思い浮かべていましたが、読みやすさや人情等は共通するものがあると思います。
 先程ウィキペディア・フリー百科事典で、東野圭吾浅田次郎を調べました。歳は浅田の方が7歳上ですが、作家としての本格的デビューは東野の方が10年位早いようです。そして、皮肉にも直木賞を受賞したのは、浅田の方が9年早いという関係にあります。二人とも多作で、映画化されてヒットもしております。映画化された浅田の代表作は「鉄道員(ぽっぽや)」で、現在映画「地下鉄に乗って」が公開されております。くしくも明日11月3日から映画「手紙」が公開されます。これからも二人が日本のエンターテイメント界を盛り上げてくれることを望みます。

  • 人情と 非人情の 間に涙
手紙 Book 手紙

著者:東野 圭吾
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容疑者Xの献身 Book 容疑者Xの献身

著者:東野 圭吾
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悪意 Book 悪意

著者:東野 圭吾
販売元:講談社
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秘密 DVD 秘密

販売元:東宝
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鉄道員(ぽっぽや) Book 鉄道員(ぽっぽや)

著者:浅田 次郎
販売元:集英社
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鉄道員(ぽっぽや) DVD 鉄道員(ぽっぽや)

販売元:東映
発売日:2001/12/07
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地下鉄(メトロ)に乗って Book 地下鉄(メトロ)に乗って

著者:浅田 次郎
販売元:講談社
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2006年8月18日 (金)

伊藤たかみ著「八月の路上に捨てる」を読んで

 今年の第135回芥川賞受賞作の伊藤たかみ著「八月の路上に捨てる」を、雑誌文藝春秋9月特別号で読みました。
 簡単に言うと、大久保、新大久保、歌舞伎町、新宿あたりの自動販売機に、缶飲料を補充する仕事を一緒にやっている女性正社員と男性アルバイトが、女性がこの仕事を止める日にそれぞれの結婚、離婚、再婚について、回想も含めて語り合うという話です。30代の男女の話し方、考え方、距離の取り方など、こんなものなのかなと、世代の違う私には参考になりました。
 しかし、この世代の結婚、生活、離婚に関する考え方については、もしここに書いてあることが本当だとしたら、私にはなかなか理解できるものではありませんでした。一緒に生活していながら、お互いを理解しようとしない、つまりお互いに歩み寄らないため、話は通じず、またお互いやや病的であるという情況は一般的なものなのでしょうか。
 ただ、この世代は単に仕事をして、糧を稼ぎ、生きていくことに、こんなに苦労しているのか、ということは理解できました。今日どこかの新聞で、OECD諸国のなかで日本が2番目に所得格差の大きい国になったと書いてありましたが、それが反映されているのかもしれません。
 いずれにしても、世代が異なるとこんなにもお互いを理解しあい、歩み寄るのも難しいのかと、正直感じました。

  • 幸せは ゆとりが第一 人の生

 文藝春秋9月特別号は、他の記事も満載で特別定価760円ですが、「八月の路上に捨てる」の単行本は1,050円であるようなのは不思議です。多分後者には他の何作品かも収録されているはずですが。

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Book 八月の路上に捨てる

著者:伊藤 たかみ
販売元:文藝春秋
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2006年7月20日 (木)

東谷暁著「ビジネス法則は信用できるか」を読んで

 最近「ロングテールの法則」と「Web2.0」が急に脚光を浴びています。こういうような法則は他にもあったなあと思っていたら、文藝春秋の8月号にジャーナリストの東谷 暁(ひがしたに さとし)さんが、「検証ロングテールの法則、Web2.0、80対20・・・・・:ビジネス法則は信用できるか:『法則どおりやれば成功間違いなし』は本当か?」という解説記事を書いておられます。どのようなビジネス法則がこれまでに存在し、各々の法則は何を意味しているのか、そしてその法則は現実社会に照らして妥当であり使えるのか等について、わかりやすく解説してあります。とても参考になりましたので、ご興味のある皆さんは、是非一読されることをお勧めします。
 それにしても、ビジネス法則は私も知らなかったものも含めて沢山あるようです。東谷さんが栄枯盛衰のビジネス法則一覧として掲げているのは、次の18種類もあります。驚きですね。

  1. ロングテールの法則
  2. Web2.0の法則
  3. パレートの法則 (別名:80対20の法則)
  4. パーキンソンの法則
  5. ランチェスターの法則
  6. マタイの法則
  7. ムーアの法則
  8. 正規分布の法則
  9. キャズムの法則
  10. べき乗の法則
  11. ピーターの法則
  12. マーフィーに法則
  13. グレシャムの法則
  14. ホイラーの法則
  15. ゆとりの法則
  16. ディズニーの法則
  17. マーケティングの法則
  18. ネットビジネスの法則
  • ビジネス則 戦術レベルの テクニック

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「IT革命」煽動者に糾す Book 「IT革命」煽動者に糾す

著者:東谷 暁
販売元:小学館
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2006年7月 2日 (日)

武内薫著「99.9%は仮説」を読んで

 武内薫氏が執筆した著書「99.9%は仮説――思いこみで判断しないための考え方」を読みました。最近ビジネス・インテリジェンスなるものを勉強していて、「人生は仮説だ」などどほざいている私としては、見逃せない本に見えました。また、「思いこみで判断しないための考え方」という副題がいいですよね。何かと頭が固くなっている輩にとっては、少しでも頭を柔らかくするチャンスと思って飛び付いてしまうようです。
 実はこの本は32万部も売れているそうなのです。道理で書店でも平積みにしてある訳です。さらに、竹内さんの公式サイトのこの本の特設ページにかなり長い解説・補足が公開されております。また、日経BP社のサイトのbp SPECIALにも竹内さんの長いインタビュー記事が掲載されております。随分情報が無料公開されているので、本そのものはさらに売りにくいのではないかというのはやっかみでしょうか。
 本の内容そのものは、「飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない」から始まって、中盤ではカール・ポパーさんによる「科学は、常に反証できるものである」という科学の定義が紹介されます。そして、ついにはアインシュタインの相対性理論からホーキングの理論の紹介にまで達します。中盤の科学の定義は、「科学は、常に否定されるものである」と言っているのと同じだと思います。さらに、相対性理論などは理工系の私にも完全には理解できない世界でした(元々わかっていないのですが)。
 なぜ私が「人生は仮説だ」と言っているかを説明していなかったですね。よく考えてみると、いつも何かの選択をしているのが人生ですよね。どこの学校に通うか、どの会社に勤めるか、誰と結婚するか等々、どの両親の下に生まれてくるか以外は全部選択しています。選択に際しては、無限にある情報を、インテリジェンスという選択に関係のある(と思われる)エッセンスに集約して、それを基にいくつかの仮説を立てどれかを選択するという過程(プロセス)を経るのが普通でしょう。考えてみると、子供の時はこの過程を理解していなかったため、何となく親の意見を鵜呑みにしたことが多かったのではないでしょうか。いずれにしても、仮説を選択したのは自分自身であり、どれか選択された仮説の下で人生を生きているのではないでしょうか。

  • 人生は 夢幻か いや仮説

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99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 Book 99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方

著者:竹内 薫
販売元:光文社
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脳をめぐる冒険 Book 脳をめぐる冒険

著者:モリナガ ヨウ,竹内 薫,藤井 かおり
販売元:飛鳥新社
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2006年6月23日 (金)

神田秀樹著「会社法入門」を読んで

 東京大学大学院法学政治学研究科教授の神田秀樹さんが書いた「会社法入門」を斜め読みしました。小生も、小さな会社ですが、本日定時株主総会の洗礼を受けたため、その参考にと手に取った訳です。この本は岩波新書(新赤版)ですが、隠れたベストセラーになっているようです。その理由は、次のようなことが考えられます。

  • まず、かなり難しい題材を扱っているのですが、①なぜ、いま新「会社法」か、②株式会社の機関、③株式会社の資金調達、④設立、組織再編、事業再生などについて、わかりやすく解説しております。専門用語は出てくるのですが、うまく言い換えるなり、現実に即した説明を加えるなどの工夫が随所に見られます。
  • 次に、今年4月に出版したというタイミングの良さがあります。昨年来、ライブドアによるニッポン放送の買収、楽天によるTBSの買収、あるいは村上ファンドによる阪神電鉄株の買占めなどが話題になり、買収防衛策が各企業において検討されました。そして、多くの会社は、それら買収防衛策を含め、新会社法に則った会社定款の改正を今月末の定時株主総会に付議する訳です。ここで、企業の経営社、役員、社員などが新会社法の全貌を短時間で理解するために、本書が活用されたのではないかと想像します。
  • 本書の中に記述がありますが、日本では株式会社が何と115万社余りもあり、その内上場している会社が約3,800社あるそうです。これらの会社の経営者、役員、社員などが基本的な読者ですから、非常に購買力のある読者をターゲットにタイミング良く出版したと言えそうです。

 なお、このような本が広く読まれるということは、日本のインテリジェンスも捨てたものではないなと思います。

  • 会社法 会社運営の バイブルか

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会社法入門 Book 会社法入門

著者:神田 秀樹
販売元:岩波書店
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2006年6月17日 (土)

佐藤優著「21世紀最大の発見『ユダの福音書』」を読んで

 文藝春秋7月号に、佐藤優氏が「21世紀最大の発見『ユダの福音書』――事実は『ダ・ヴィンチ・コード』よりも奇なり」を寄稿しております。佐藤優氏といえば、数年前に例の北方領土絡みの外務省スキャンダルで、鈴木宗男氏(現参議院議員)と一緒に逮捕されてしまった方です。現在の肩書は、起訴休職外務事務官・元モスクワ国立大学宗教哲学科客員講師です。彼が同志社大学神学部で勉強しておられたのは意外でした。
 今回発見された「ユダの福音書」は、冊子状のパピルスにコプト語で書かれた1600年以上も前に作られた写本で、放射性炭素年代測定法とインクの成分から本物に間違いないそうです。実際は、崩れたパピルスの断片が千個近く、パンくずのように散乱しており、それをピンセットで拾い上げ、ガラス板にはさんで保存し、コンピュータを駆使して5年がかりで文書の80パーセント以上の復元にこぎつげたそうです。これは、まさに「ダ・ヴィンチ・コード」どころではない暗号解読ですね。
 佐藤氏によれば、福音とは「嬉しいニュース」の意味で、そのニュースについて記したのが福音書だそうです。実際、現在の新約聖書の4福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)には、イエス・キリストの発言と行動が記述されています。今後どうなるかと言えば、「ユダの福音書」の内容確定に10~20年間かかり、さらに10~20年間キリスト教と政治倫理の関係を調整する「組織神学」で議論されるため、教会の現場に影響が及ぶのは今世紀半ばというのが佐藤氏の予測です。
 「ダ・ヴィンチ・コード」にもありますが、本来多元主義であったキリスト教は、歴史的に為政者の意思により一元主義になってしまったようです。今回の「ユダの福音書」の発見・解読の背景には、イエス・キリストは多元主義と寛容を説いていたことを改めて示すため、「見えざる手」を神が働かせていたように思えるという佐藤氏の発言には、共感を覚えます。

  • 福音書 すべての命の 共生へ

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ユダの福音書を追え Book ユダの福音書を追え

著者:ハーバート・クロスニー
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原典 ユダの福音書 Book 原典 ユダの福音書

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2006年6月16日 (金)

書籍「ダ・ヴィンチ・コード」を読んで

 「ダ・ヴィンチ・コード」を読了しました。長かったが、最終的にはとても面白いと思いました。文庫本で読んだので、上中下の3巻もありました。長いので、上巻ではややだれたのですが、中巻から俄然面白みが増して、最後まで一気に読み切った感じです。
 基本的には、本書は推理小説ですから、殺人事件があって、謎解きがあって、どんでん返しがあって、そして男女の恋愛感情も少しあって、という形式を整えております。しかし、この著者のダン・ブラウンさんは、この小説を書くために一体何冊の参考文献を読んだのでしょうね。小説の本筋は殺人事件と聖杯伝説の絡みなのですが、その筋の周囲を飾る話が何と多彩なことでしょうか。少しだけ数え上げても、暗号学、数学、神学、宗教美術、地理・観光学、文学などの知識が、ふんだんにちりばめてあります。ここが、非常に広範囲の読者の関心を引き付け、世界で5,000万部、日本で1,000万部を超えるベストセラー小説になりえた理由だと考えられます。
 これから映画を観ようと思っておりますが、いろいろな人の意見を見聞きすると、映画は時間的に限られているのでストーリー展開がとても速く、なかなか頭がついて行かないそうです。私は先に小説を読んだので、多分映画の観方はあの挿話は映画ではどう表現されているのか、等々というものになると思います。皆さんも映画を観る前に、小説を読んだ方が、多分映画を2倍以上楽しめるのではないでしょうか。頑張って下さい。
 私の印象に残った話は、中巻の終わりにある「聖婚(ヒエロス・ガモス)」に関して、主人公ラングトンがヒロインのソフィーに言った説明です。「古代における性の観念は現代の考え方と対極をなしていたことを忘れちゃいけない。セックスは新しい生命を創り出し――それこそ奇跡の最たるものだ――奇跡をなしうるのは神だけだった。子宮から命を生み落とすその能力ゆえに、女性は神聖視された。まさに神だ。性交とはふたつに分かたれた人間の魂の――すなわち男性と女性の――尊い結合であり、それを通じて男性は無欠の精神を手に入れ、神との交流を果たすことができる。きみが見たのは性の営みではなく、精神の営みだ。聖婚の儀式は性的倒錯じゃない。神聖でおごそかな儀式なんだよ」 私は何となく分かるような気がするのですが、皆さんはいかがですか。

  • 聖杯に たどりつくのも 本三巻

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ダ・ヴィンチ・コード ザ・トゥルース DVD ダ・ヴィンチ・コード ザ・トゥルース

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ダ・ヴィンチ・コードの謎 DVD ダ・ヴィンチ・コードの謎

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決定版!ダ・ヴィンチ・コードの秘密 DVD 決定版!ダ・ヴィンチ・コードの秘密

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天使と悪魔 (上) Book 天使と悪魔 (上)

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ダ・ヴィンチ・コード(上) Book ダ・ヴィンチ・コード(上)

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2006年4月12日 (水)

梅田望夫著「ウェブ進化論」を読んで

 梅田望夫さんの著書「ウェブ進化論」を読みました。いわゆるWeb 2.0なるものが巷間喧伝されていますが、元々明確に定義されて出て来た概念ではないので分かりにくいのですが、本書はそれを別の言葉と実例で説明してくれているように思います。
 梅田さんによると、いわゆるIT企業には、ネットのこちらの側の企業とあちら側の企業があるのだそうです。何だかこの世の世界とあの世の世界を言っているようですが、そうではなくて前回のITバブルの時によく言われたリアルの世界とバーチャルの世界のことに関連しているようです。マイクロソフトやヤフーや楽天は、そのビジネスにいずれもリアルの世界での商取引を伴っているので、ネットのこちら側の企業だということのようです。一方、グーグルは、収入をネット広告で得ている限り、そのビジネスにリアルの世界の商取引は絡んでおらず、すべてバーチャルの世界で完結しているので、ネットのあちら側の企業ということになるようです。
 そもそもネットのあちら側の企業が成立するようなことになったのは、技術革新により「インターネット」、「チープ革命」そして「オープンソース」という三大潮流が大きな流れとなり、相乗効果を起しているからなのだそうです。今後はこの流れに沿って、不特定多数無限大(ソフトバンクの孫正義さんが2000年頃よく「コストは零でリーチが無限大」ということを言っていたのを思い出しました)の良質な部分を力に変えていく企業が次の時代をリードすることになるという予言です。この意味で、グーグルの次にウィキペディアや日本の企業の「はてな」などが注目されるのだそうです。
 ぜひ皆さんもご一読を、

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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる Book ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる

著者:梅田 望夫
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2006年3月31日 (金)

修善寺梅林と富士山

 3月初めに伊豆の修善寺に行って参りました。修善寺温泉は弘法大師こと空海により最初に発見されたと伝えられており、東国ではとても歴史のある場所です。昔は下田方面に陸路向かう場合は、ここから天城を越える起点にもなっていました。川端康成が書いた「伊豆の踊り子」でも、学生が天城越えをしようとしている旅芸人の一座の踊り子と初めて出会ったのが、ここ修善寺にある湯川橋と設定されています。

 また、修善寺は源頼朝が流されていた蛭ヶ小島(韮山)からも近く、鎌倉幕府成立後に源氏の悲劇の一場面ともなっています。頼朝の異母弟・蒲冠者こと範頼は誤解からここに幽閉され、梶原景時(どうも悪役ですが)に攻められ自刃しております。また二代将軍の源頼家は権力闘争に巻き込まれ、やはりここ修善寺に幽閉され、その後刺客により27歳で暗殺されてしまいます。