カテゴリー「科学・哲学」の6件の記事

2020年2月16日 (日)

新型コロナウイルスは生物兵器なのか?

スティーヴン・W・モッシャー(Steven W. Mosher 米国カリフォルニア州出身・1948~)が新聞・ネットメディアの「大紀元 Epoch Times」に寄稿した記事「新型コロナウイルスは生物兵器なのか? 中国政権による細菌戦争の意図とその可能性を探る」(2月15日付)はとてもショッキング
どこまで信じるかは各自慎重に判断してほしいが、結論は、
『人民解放軍の将軍が、欧米技術の盗用とウイルスサンプルの窃盗が許されている間に強力な生物兵器を開発しようと急いでいたと語っているのである。そしてこの生物兵器開発への圧力によって、武漢ウイルス研究所の安全基準が軽視され、新型コロナウイルスが研究所から流出したと考えるのが、最も合理的な仮定だと言える。』

モッシャーは米国バージニア州にある非営利団体「人口研究所 Population Research Institute(PRI)」の所長
PRIは中国の一人っ子政策に代表される人口管理政策の人権侵害問題を追及するとともに、避妊・妊娠中絶に反対する活動を展開中
モッシャーは人類学・人口統計学などを専門とする社会科学者で、1979年に、文化大革命(1966~1976)後初の米国人として、中国の田舎に人類学の調査・研究に入った 後に中国では一人っ子政策により強制的な人工妊娠中絶も行われていることを暴露し、中国や米国学会で大問題化

大紀元は2000年に米国ニューヨーク市で創業したメディアで、中国共産党政権に批判的な立場を取っており、中国の内部情報・裏情報に関する記事も多く掲載 ただし、本記事は大紀元の見解を反映するものではないとしている

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2008年1月14日 (月)

サイモン・シン著「フェルマーの最終定理」を読んで

 サイモン・シン著作のドキュメンタリー数学小説『フェルマーの最終定理』(青木薫訳)を読みました。実は読み終えたのはおよそ2ヶ月前だったのですが、なかなか感想を書けずにおりました。それは、文庫本で495頁という大作であること、それから数学という題材を扱っていたことと関係があります。誰にでも解りやすく、読後の感動を伝えることがとても難しく感じていたからです。

 まず、本書の背景情報についてご紹介します。本書は、1996年に英国BBCテレビが放送したドキュメンタリー番組『ホライズン──フェルマーの最終定理』に基づいて書き下ろされたものだそうです。著者サイモン・シン氏は1967年に生まれたインド系英国人で、ケンブリッジ大学大学院で素粒子物理学の博士号を取得しております。その後彼はジュネーブの研究センターに勤務し、後にBBCに転職し前述のドキュメンタリー番組制作に係わり、翌1997年に本書をとりまとめたとのことです。数学の中でも高度な手法を使う数論(整数論)という分野の出来事を、これ以上はできないと思う程平易に解りやすく、しかも人間社会の感動的な歴史として創り上げております。何せこのテーマを完全に理解できる人物は、世界でも5、6人しかいないのだそうです。

 さて、フェルマーの最終定理とは何でしょうか。これは紀元前6世紀のギリシャに生きたピュタゴラスの名を冠した幾何学の有名な定理の拡張形といえるでしょう。ピュタゴラスの定理は「直角三角形の斜辺の二乗は他の二辺の二乗の和に等しい」、あるいは「x2+y2=z2」という方程式として書くことができます。フェルマーの最終定理はこれを少し拡張して、2乗を3乗以上に変えるとその方程式の整数解はないというものです。書き換えると「xn+yn=zn、この方程式はnが2より大きい場合には整数解をもたない」となります。17世紀に仏国の役人として生きたフェルマーは、ディオファントス(古代ギリシャの数学者)の著書『算術』の余白にこの最終定理を書き残し、さらに「私はこの命題に真に驚くべき証明をもっているが、余白が狭すぎるのでここに記すことはできない」と続けているとのことです。証明が明らかにされないままに残された、このフェルマーの最終定理がこの後3世紀半余りにわたって世界中の数学者を悩ませることになったのです。

 このフェルマーの最終定理を1994年に完全に証明したのが、プリンストン大学のアンドリュー・ワイルズ教授でした。1963年に10歳であったワイルズ少年はフェルマーの最終定理に出合い、その証明に対する興味を持ち続けることになりました。7年間にも及ぶ孤独な研究の末、1993年に彼は故郷ケンブリッジのニュートン研究所でフェルマーの最終定理の証明を発表したのでした。その後根本的な欠陥が一点発見されたが、翌年証明の修正に成功し、1995年に2篇合わせて130頁にも及ぶ完全な論文として数学誌に掲載されたのでした。彼は、それまでに数論の分野でもたらされた数々の貴重な成果を基に、難解として残っていた最後のミッシングリンクを多数の独自で複雑な論理を導入して解決したのでした。ワイルズの証明の素晴らしいところは、その証明の過程で20世紀の数論の進歩がすべて使われており、そして最終的にフェルマーの最終定理の証明に見事に収斂しているところのようです。これこそ、藤原正彦先生もいうところの「数学の美しさ」なのだろうと思います。

  • 数学の 論理世界の 美しさ

【補足1】フェルマーの最終定理の証明に関しては、余り話題にならなかったそうですがが、1955年に日本の数学者が提示した谷山=志村予想(注)が本質的な役割を果たしているようです。この予想は、一言でいえば、すべての楕円方程式(楕円曲線)が一対一でモジュラー(保型)形式に対応するというものです。もう少し感覚的にいえば、すべての楕円曲線の図形が一対一で四次元の空間の集合に対応しているということらしいのです。筆者も理解できている訳ではありませんが、このように二つの独立な世界に橋渡しができたことでフェルマーの最終定理が証明されることになったようです。

(注)数学の世界では、未だ証明されてはいないが、定理にほぼ近いものを予想と呼んでいるそうです。谷山=志村予想はワイルズ教授らにより証明されたので、現在は谷山=志村定理と呼んでいいものと思います。

【補足2】昨年12月にあるセミナーで北大電子科学研究所津田一郎教授から数学を脳科学に応用して、脳のエピソード記憶の原理を探るというお話を伺いました。その時に短期記憶の機能を司る脳の海馬という部分で、何やら谷山=志村予想に似た変化が起きているらしいことに気が付きました。人間の感覚器官から入力された神経信号が、海馬のCA1という部分では一見無秩序な曲線の連続に見えるものが、CA2という部分に伝わると時間軸も加えた四次元の空間の集合に変換されているように思えたのです。このことを津田先生にお話ししましたら、興味深そうにお聴きになっておりました。

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2007年2月 8日 (木)

映画「不都合な真実」を観て

 先週末、京王線府中駅のすぐ南側にあるモール「くるる」の5階にあるシネマコンプレックス「TOHOシネマズ府中」で、元米国副大統領のアル・ゴア氏が制作した映画「不都合な真実」を観て参りました。
 当然観たい映画から上映している映画館を探した訳ですが、都心ではなくなぜか府中のシネマコンプレックスに目が留まりました。ここは2年程前にできたそうですが、何と9スクリーンもあり頻繁に来ても次々と新しい映画を観られそうです。座席も座り心地がよく、飲物立てと傘立てが各座席にあったのにも注目しました。その上、まだ夫婦50割引を提供してくれており、どちらかが50歳以上であれば通常2人で3,600円のところが何と2,000円になります。さらにいいことに、割と近くの府中ですから当然愛車レクサスIS250で出掛けたい訳ですが、324台収容の大駐車場が付属しており、映画なら3時間まで駐車料金無料となっておりました。家からくるるまでの所要時間もおよそ30分間と至れり尽くせりの条件でした。先に随分映画館の宣伝をしてしまいましたが、多分このせいで今後映画を観る機会が増えそうです。セゾンのポイントカードも作ってしまいましたしね。
 さて、映画そのものの話です。この映画「不都合な真実」は「地球温暖化(Global Warming)」に関するものです。空恐ろしいことに、今年の冬は全国的にとても暖かく、また記録的に少ない降雪量になっていますね。日本各地で、3週間から1ヶ月も早くタンポポや梅や緋寒桜(ひかんざくら)が咲き出しています。気象庁は、暖冬の背景として①北極圏からの寒気の南下が弱いことと②太平洋中東部(いわゆるペルー沖)の海面水温が上昇するエルニーニョ現象を挙げています。ゴア氏はこの映画では、これらは原因ではなく地球温暖化の結果、同時に現れる現象に過ぎないと言っているようです。本当の原因は、人類がわずかここ数10年の間に排出した温暖化ガス、つまりそのほとんどを占める二酸化炭素のせいだと言うのです。現在の二酸化炭素の濃度は過去65万年間のどの時点よりも高く、過去超えたことのなかった300ppmを上回っていると言います。
 さて二酸化炭素濃度が高まると何が起きるのでしょうか。ヒマラヤ氷河の溶解による水不足、熱波、海水の高温化による超巨大ハリケーンの発生、竜巻の多発、洪水の頻発、旱魃と砂漠化、永久凍土の溶解、病害虫の北上、グリーンランドの棚氷の溶解により海流の変化が起き欧州が氷河期に再突入、南極・北極の氷が溶けるために起きる陸地の水没などが帰結だそうです。これは地球環境の崩壊とも言え、我々人類の子孫が生きて行けなくなることを意味します。この不都合な真実を否定せず、見据える必要があります。京都議定書はその大事な一歩だった訳ですが、米国とオーストラリアがまだ批准しておりません。すべての国そして人々が、省エネ、エネルギー効率の改善、自動車の効率改善、公共交通システムの導入、風力やバイオ燃料などのリサイクル可能なエネルギーの使用、炭素の回収・貯蔵などに取り組むことによって、二酸化炭素の濃度を1970年代のレベルまで下げることが可能だと結んでおります。
 今朝いつものように満員電車に乗って通勤し、やや薄ら寒い部屋で勤務し、断熱された家に住む私は、すこしは地球温暖化と闘っているのでしょうか。さらに、余りお湯も使わないように、また風呂にもお湯を溢れる程入れないようにしなければいけないと思いました。他にも個人レベルでいろいろできることがあるのでしょうか。皆さん一緒に研究して、闘いの第一歩を力強く踏み出しましょう。

  • 温暖化 人の叡智で 闘おう

(注)本記事作成には、最後に紹介してある書籍、アル・ゴア著「不都合な真実」(2006年ランダムハウス講談社刊)も参照しました。

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2006年12月25日 (月)

全都道府県訪問#40 鹿児島県

 次は鹿児島県訪問の報告です。ちょうど40番目の県になりました。

  • 第2日目
    • 宮崎県から移動~霧島温泉郷に入ると、昨日降った雪が除雪はされているもの路肩に数10㎝も溜まっていて、冬至前後の真っ暗な夕闇の中、山道を運転するのは少し恐い気がしました。
    • 霧島・林田温泉泊~霧島温泉郷から南側には視界を遮る山等はないため、翌朝ホテルのロビーや露天風呂からは桜島と錦江湾(鹿児島湾)の見事な眺望を楽しむことができました。
  • 第3日目
    • 霧島神宮参詣~霧島神宮参詣の栞によりますと御由緒は次のとおりです。200512241020000 「当神宮は天祖天照大神の御神勅を畏み戴きて三種の神器(皇位の御璽(みしるし))を奉持し、高千穂峯に天降りまして皇基を建て給(たもう)た肇国(ちょうこく)の祖神<天孫瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)>をお祀りしているお社です。旧記によると欽明天皇の御宇(ぎょう)(西暦540年)、はじめ高千穂峯のほど近く脊門丘(せとお)に社殿が建立されたが、その後たびたび噴火炎上し幾星霜を経て今から500年前現在の社地へ御鎮座になりました。いまの御社殿は第21代薩摩藩主島津吉貴公が1715年(正徳5年)に造営寄進されたもので、絢爛たる朱塗りの本殿、拝殿、勅使殿等その配置はまさに輪奐(りんかん)の美をなし、西の日光とも称せられる。特に殿内は漆塗りで二十四考の絵画、龍柱、床には鶯帳りが施されている。1874年(明治7年)2月「霧島神宮」と社号改定、官幣大社に列格仰せ出されました」(1枚目の写真は雪の霧島神宮)
    • 霧島民芸村訪問
    • 知覧観光~知覧は、「母ヶ岳の優美な姿を借景とし、260余年もの歳月を経200512241338000 て、歴史の息吹を今に伝える薩摩の小京都」だそうです。知覧武家屋敷群では、7つの国指定の名勝庭園を鑑賞することができました(2枚目の写真は佐多民子氏邸庭園)。同屋敷群の一角にある、築150年といわれる知覧独特の「二ツ家民家」を活用した食事処で郷土料理を楽しみました。
    • 開聞岳、白露酒造工場確認~霧島温泉で初めて味わった、白露酒造の芋焼酎「匠の華」がとても美味しくファンになりました。東京でも大きな酒屋さんでは売っています。
    • 指宿温泉泊~錦江湾を眺めながら、砂むし風呂を体験いたしました。背中と腿の裏が少し熱すぎるように感じました。
  • 第4日目
    • 城山観光~城山は南北朝時代に城が築かれていた標高107mの小高い丘で200512251202000あり、 西南戦争最後の激戦地です。ここの展望台からは、鹿児島市街地、桜島、錦江湾、そして大隅半島までの見事な眺望を楽しめます(3枚目の写真が城山から眺めた桜島と錦江湾)。
    • 仙巌園(磯庭園)観光~仙巌園(せんがんえん)は、第19代薩摩藩主島津光 久が1658年(万治元年)に別邸として建てたのが始まりだそうです。桜島を築山に錦江湾を池に観立てた雄大な借景を持ちます(4枚目の写真が仙巌園から観た桜島と錦江湾の借景、5枚目の写真が仙巌園内の磯御殿-内部の見学ツアーあり)。
    • 尚古集成館訪問~尚古集成館には、第28代薩摩藩主島津斉Himg0107_1彬により着手された殖産事業・集成館事業の一部が展示されています。本館の建物自体は旧集成館の機械工場でした。集成館事業については、パンフレットに次のように紹介されています。「1840年代、薩摩藩は開国・通商を求めるヨーロッパ諸国の烈しい外圧にさらされ、いち早く近代化に着手しました。 特に、1851年(嘉永4年)薩摩藩主となった島津斉彬は、ヨーロッパの国々のような強く豊か200512251341000 な日本を夢見て、集成館事業という非常にスケールの大きな近代化産業を推進しました。集成館事業は、鹿児島城下郊外の磯に築かれた工場群『集成館』を中核に、製鉄・造船・造砲・紡績・機械・印刷・出版・教育・製薬・精糖・ガラス・ガス・医療などさまざまな分野にわたっています。幕府や他藩の近代化が、軍事力の強化を主体としていたのに対し、集成館事業の場合は産業の育成や社会基盤の整備にまで及んでいました。人々が豊かに暮らせるようになれば自然とまとまる。人の和はどんな軍備よりも勝ると斉彬が考えていたからです。 斉彬は、幕府や藩といった枠を越え、日本人が一丸となって近代国家を築くべきだと主張していました。集成館事業は、薩摩藩だけではなく、日本全体を生まれ変わらせたいという斉彬の思いのこもった大きな事業だったのです。 1858年(安政5年)、斉彬は病死し、斉彬の夢は弟の久光や娘婿の忠義、西郷隆盛・大久保利通ら多くの家臣達に受け継がれました」
    • 薩摩ガラス工芸訪問~薩摩切子が有名です。
    • 鹿児島空港でレンタカー返却、空港出発~薩摩料理は、薩摩揚げ(本場のものは一つひとつが小振りです)、きびなご、黒豚が美味しいです。
  • 島津藩 自治は革命 命懸け

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2006年12月10日 (日)

藤原正彦著「国家の堕落」を読んで

 あの「国家の品格」の著者藤原正彦氏が、明日が書店での発売日である「文藝春秋」2007年1月号(新年特別号)の巻頭に特別寄稿を寄せております。その題目は、「驕れる経済人よ、猛省せよ 国家の堕落 改革の名のもとに国柄を壊し、ついには教育まで」としてあります。

 (注)ところで文藝春秋を年間定期購読していると、発売日の数日前に自宅に配送されますし(今回は5日前の水曜日に配送されました)、表紙の絵を描いている平松礼二氏の絵を使ったカレンダーもいただけます。

 藤原氏は、この論文を次のように始めております。

 近代になって、市場原理主義ほどこの日本を傷つけたものは多くはない。戦前の帝国主義、戦後のGHQと日教組、そして冷戦後の市場原理主義と並べられるほどである。
 日本を傷つけたこれらイデオロギーには二つの共通な特徴がある。一つは、それらイデオロギーが日本を傷つける過程で、一部の狂信的な人々に主唱され利用されただけではなく、大多数の国民にも共有されたということである。そして二つ目は、それらイデオロギーが我が国の古くからの国柄を忘れたものであったということである。

 藤原氏は、国家に対する何の哲学もないまま、市場原理主義という経済の視点で日本改造を行ったため、日本の国柄が破壊され、

  • 企業のリストラにより500万ともいわれるニート、フリーターが出現し
  • 経済上の格差、生命の格差そして教育の格差を広げ
  • 激しい競争社会というより生き馬の目を抜くような社会を現出させた

などと結論付けております。また、市場原理主義を推し進めていけば、日本農業は壊滅に瀕し、現在でも40%に過ぎない食糧自給率はさらに格段に低くなると予測しています。
 確かに我々も日々営利企業で働いていると、金儲けが目的ですから、どうしても金儲け主義になってしまいます。その結果、

  • 競争相手を出し抜く
  • 弱い相手は徹底的に叩く
  • 負けた者には存在価値がない
  • 必要以上に難解で、細かい字の契約書を作る
  • 分からなければいい(通常犯罪までは参りませんが、行き過ぎると談合や賄賂に至ります)

などの発想が、とてもた易く出て来てしまいます。これは、言い換えれば、「自分さえ良ければいい」、「相手などどうなっても構わない」という、藤原氏が著書「国家の品格」で述べている、日本に古来から備わっているという「弱いものいじめをしない」、「惻隠の情をもつ」などという武士道の精神に、全く反する思考が出て参ります。
 これは、日本の現代社会の病理である、自殺といじめにつながっているのではないでしょうか。

  • 存在は善である
  • 生命は尊重すべきものである
  • 弱いものいじめをしない
  • すべての生き物と共生する

などの、いわゆる自明の理、公理的なものをしっかり教育しないとこのようなことになるのではないでしょうか。藤原氏は、市場原理主義による教育改革には最も警鐘を鳴らしており、小学校でパソコンを教え、英語を教えることで、基礎科学、文学、芸術などは切り捨てられると危惧しています。「歴史的視点に立つと、数学とか理論物理学などの基礎科学の弱い国が、長期間繁栄したことは近代になって一つもない」のだそうです。
 私は藤原氏の意見には共感できる部分が多かったのですが、さて皆さんはいかがでしょうか。とにかく国家的な議論を行うことが必要だと思います。

  • 国柄を 偲び草の根 人づくり

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2006年7月 2日 (日)

武内薫著「99.9%は仮説」を読んで

 武内薫氏が執筆した著書「99.9%は仮説――思いこみで判断しないための考え方」を読みました。最近ビジネス・インテリジェンスなるものを勉強していて、「人生は仮説だ」などとほざいている私としては、見逃せない本に見えました。また、「思いこみで判断しないための考え方」という副題がいいですよね。何かと頭が固くなっている輩にとっては、少しでも頭を柔らかくするチャンスと思って飛び付いてしまうようです。
 実はこの本は32万部も売れているそうなのです。道理で書店でも平積みにしてある訳です。さらに、竹内さんの公式サイトのこの本の特設ページにかなり長い解説・補足が公開されております。また、日経BP社のサイトのbp SPECIALにも竹内さんの長いインタビュー記事が掲載されております。随分情報が無料公開されているので、本そのものはさらに売りにくいのではないかというのはやっかみでしょうか。
 本の内容そのものは、「飛行機はなぜ飛ぶのか? 実はよくわかっていない」から始まって、中盤ではカール・ポパーさんによる「科学は、常に反証できるものである」という科学の定義が紹介されます。そして、ついにはアインシュタインの相対性理論からホーキングの理論の紹介にまで達します。中盤の科学の定義は、「科学は、常に否定されるものである」と言っているのと同じだと思います。さらに、相対性理論などは理工系の私にも完全には理解できない世界でした(元々わかっていないのですが)。
 なぜ私が「人生は仮説だ」と言っているかを説明していなかったですね。よく考えてみると、いつも何かの選択をしているのが人生ですよね。どこの学校に通うか、どの会社に勤めるか、誰と結婚するか等々、どの両親の下に生まれてくるか以外は全部選択しています。選択に際しては、無限にある情報を、インテリジェンスという選択に関係のある(と思われる)エッセンスに集約して、それを基にいくつかの仮説を立てどれかを選択するという過程(プロセス)を経るのが普通でしょう。考えてみると、子供の時はこの過程を理解していなかったため、何となく親の意見を鵜呑みにしたことが多かったのではないでしょうか。いずれにしても、仮説を選択したのは自分自身であり、どれか選択された仮説の下で人生を生きているのではないでしょうか。

  • 人生は 夢幻か いや仮説

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