カテゴリー「映画(2020年)」の13件の記事

2020年7月23日 (木)

★劇場映画「劇場」(日・2020・136分)を観て

8fd8aade403f5b437月17日公開の劇場映画「劇場」を観た 残念ながら劇場での鑑賞ではなく、アマゾン・プライム・ビデオでのオンライン・ネット鑑賞となった(追加料金なし) 本作は本来ならば4月17日に松竹系の全国280館での公開予定だった コロナ禍により日本政府が緊急事態宣言を4月7日に発令しれたため公開延期となっていた 公開延期となった大作も目白押しの中、本作については配給辞退の松竹に代わり製作幹事社の吉本興業が自主配給することとし、いろいろと公開方法・時期を探っていたようだ 結果、先週17日に渋谷のユーロスペースなど全国20館のミニシアターで劇場公開されるとともに、アマゾン・プライム・ビデオでの同時世界独占配信が実現した

劇場公開にも拘った行定勲監督(1968~・熊本県出身)など製作側と製作費用をリクープ(recoup・回収)したい製作委員会側、両者の意向を上手く両立させた解決策と考えられる 劇場映画作品を劇場公開と同時にオンライン配信を行うのは日本では初めての試み アマゾン・ジャパン社が独占配信権にいくら支払ったかは分からないが、筆者の想像ではこの種の作品の製作費用を回収するためには5~10億円ではないかと想像する アマゾン・プライムの広告宣伝も兼ねていると考えれば結構イケてるかもしれない また行定監督も、字幕(サブタイトル)を付加すれば、鮮度が高いうちにすぐに世界市場に配信できるというオンライン・ネット配信の利点に気付いたそうだ これは本のネット通販でロング・テール(リアル市場では手が届かない物品・サービスと市場・消費者をつなげるマーケティング)のビジネス・モデルを成功させたアマゾンの手法そのものかもしれない

本作の原作は、吉本興業所属のお笑い芸人で、2015年発表の中編処女小説「火花」で同年の芥川賞を受賞した、ご存じ又吉直樹(1980~・大阪府寝屋川市出身)の第2作目小説「劇場」 「火花」では売れないお笑い芸人をモデルにしたが、本作では売れない演劇人(劇作家・演出家・舞台俳優)をモデルにしている 「火花」ではコンビの男同士の友情がテーマだったが、本作では主人公を無償の愛で支える聖女との恋愛がテーマ 行定監督は主人公に山﨑賢人(1994~・東京都出身)をヒロインに松岡茉優(1995~・東京都出身)を起用 松岡の雰囲気は初主演作「勝手にふるえてろ」(日・2017)のヒロインに似ていると思った どうでもいいことだが、松岡は左利きのようだ

行定監督が助監督として仕えたこともある岩井俊二監督(1963~・仙台市出身)のコメント「創作に取り憑かれた男の〝おろか“と、その男と同棲してしまった不運な女が余すところなく描かれる 当事者の自分には痛みなくして観れない映画であった 創作の道とは魔道であり、〝魅道“である」が、短くして本作の本質を言い当ててると感じる 本作の主舞台である東京・世田谷区下北沢あたりで活動する演劇人たちは、これは自分たちのことを描いた作品だという者たちが多いそうだ コロナ禍に見舞われた今年、彼らの生活はどうなっているのだろうか 本作では東京23区での生活は、まだまだ当然のように密だし、誰もマスクを着けていない

前述したが、本作の舞台は又吉も住んでいたらしい下北沢が中心 ここは多くの売れない舞台俳優が、アルバイトをしながら暮らす街として知られている もう1ヶ所杉並区高円寺が登場するが、ここは売れないミュージシャンが多数アルバイトをしながら暮らす街だ 劇中劇も数回登場するが、学校の演劇以外は下北沢の劇場を実際に使用してロケ撮影したとのこと 筆者も訪れたことのある劇場の映像が登場 最後の「ロケ⇒セット⇒劇場」と撮影場所が移り変わり、主体が客体に変化するような撮影のテクニックには感心した また季節の移り変わりは夏から秋・冬・春を経て1年間となっているようだが、いつどうロケ撮影したのかには興味ある その他のロケ地は、東京都・渋谷区・新宿区・台東区・三鷹市、茨城県など

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品

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2020年3月 1日 (日)

2月23日~2月29日の週に観た劇場映画

2月23日(日曜)~2月29日(土曜)の週は、2本の劇場映画を観ました。コロナ・ウイルス騒動で、25日(火曜)以降は自宅待機としました。しばらくは映画館に近付けません。

4eac67d95584c4621917 命をかけた伝令(英・米・2019) ⇒タイトルから容易に連想できるように第一次世界大戦(1914~1918)中の伝令の話 舞台演出から映画監督に幅を広げたサム・メンデス(英・1965~)監督が実際に伝令であった祖父から聞いたエピソードを織り交ぜて製作(兼脚本) メンデス監督は「007 スカイフォール」(英・米・2012)や「007 スペクター」(英・米・2015)で知られる 1917年4月に西部戦線でドイツ軍が意図的に撤退し独仏国境近くのフランス領内に構築した堅固なヒンデンブルグ線で連合軍を待ち伏せ迎え撃つことを、航空機偵察などで察知した英軍が最前線部隊に総攻撃を中止するよう若い兵士2人の伝令を走らせる 舞台演出を担当した監督らしく全編ワン・カット・ワン・シーンに観えるように、超長回しのワン・シーンをいくつか巧妙につないでいるようだ ロケ撮影は英国の南西部ソールズベリー平原や中部ディーズ川周辺で行われた模様 500人ものエキストラを動員して撮影されたシーンもあるが、多数のスタントやVFXも使われたいる 原題は単に「1917」
29ebae96b6557583スキャンダル(加・米・2019) ⇒異論があるかもしれないが、本作の主人公はロジャー・エイルズ(米国オハイオ州出身・1940~2017)だろう CNBC社長だったエイルズを誘い1996年に米国保守系メディアのFOXニュースを設立しCEOに据えたのは、米国のメディア王・ルパード・マードック(豪州メルボルン出身・1931~) 2005年からFOXニュースとFOX TVの会長&CEOだったエイルズは、2016年7月に23人の女性に対するセクハラ行為が発覚し役職を辞任 2017年5月にエイルズが亡くなった後、この事件の顛末と創作を交えて映画化したものが本作 日本では余り知られていなかもしれないが、エイルズは米国共和党のメディア・コンサルタントとして著名で、リチャード・ニクソン(カリフォルニア州出身・1913~1994)第37代大統領(任期:1969~1974)、ロナルド・レーガン(イリノイ州出身・1911~2004)第40代大統領(任期:1981~1989)、そしてジョージ・H・W・ブッシュ(マサチューセッツ州出身・1924~2018)第41代大統領(任期:1989~1993)の選挙戦に貢献している また、ルドルフ・ジュリアーニ(ニューヨーク市ブルックリン区出身・1944~)ニューヨーク市長(任期:1994~2001)の初回市長選にも係わっており、ジュリアーニがエイルズの弁護士の一人として本作に登場するのはこの関係か エイルズへの反旗を初めて翻したのはグレッチェン・カールソン(ミネソタ州出身・1966~)で、FOXニューズを解雇された直後2016年7月にエイルズをセクハラで告訴 カールソンは1989年のミス・アメリカであり、スタンフォード大学を成績優秀で卒業と才色兼備 多くの女性がカールソンの後に続き、トップ・キャスターだったメーガン・ケリー(ニューヨーク州シラキュース出身・1970~)が輪に加わったことが駄目押しになった マードックはついにエイルズに引導を渡し、カールソンと和解 エイルズには40億円、カールソンには20億円が渡されたという ケリーを製作も担ったシャーリーズ・セロン(南ア出身・1975~)が、カールソンをニコール・キッドマン(ホノルル生まれ・豪州出身・1967~)が演じる セロンはケリーに似せるためにメイクアップ・アーティストのカズ・ヒロ(辻一弘・京都市出身・1969~)に特殊メイクを依頼 カズ・ヒロは本作により第92回アカデミー賞(2020)で2度目のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞 本作舞台はワシントンD.C.、ニューヨーク市、カリフォルニア州マリブなど 原題は"Bombshell"(英)で、「驚天動地の驚き・失望」「とても魅力的な女性」「砲弾」などの意味があるが、今回はこれらすべてをかけた表現だろう

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品

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2020年2月29日 (土)

ドキュメンタリー作品「9/11: 爆破の証拠 - 専門家は語る」を観て

映画館にも近付かないことにしたので、アマゾン・プライム・ビデオをブラウズ
このドキュメンタリー作品「9/11: 爆破の証拠 - 専門家は語る」(米・2012)に遭遇
今頃2001年の9.11テロ事件(米国同時多発テロ事件)かと思ったが、内容はとても挑戦的で、これが正しいとするとテロ事件の半分は米国政府の自作自演で、そしてついにはアフガニスタンそしてイラクに攻め込んだことになる
ワールド・トレード・センター・ビルの崩壊、特に直接の被害を受けなかった#7ビルの崩壊について、テルミットやナノテルミットを使った爆薬による"Controlled Demolition"(制御された解体)ではないかと疑っている
テルミット法ではアルミニウムを使うので、飛行機の材料であるアルミニウムが似たような反応を起こし超高温になったことは想像される

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2020年2月23日 (日)

2月9日~2月22日の2週間に観た劇場映画

2月9日(日曜)~2月22日(土曜)の2週間は、5本の劇場映画(1本はエアバス機内)を観ました。日本で新型コロナ・ウイルスが大騒動になる前、台湾観光旅行の前に観たものです。

母との約束 250通の手紙(仏・ベルギー・2017)
オリ・マキの人生で最も幸せな日(フィンランド・独・スウェーデン・2016)
グリンゴ 最悪の悪運男(米・墨・豪・2018)
ハスラーズ(米・2019)
チャーリーズ・エンジェル(米・2019)

0e9707d308da0160母との約束 250通の手紙(仏・ベルギー・2017) ⇒原題は"La promessa dell'alba"(伊)="La promesse de l'aube"(仏)="The promise of dawn"(英)=「夜明けの約束」 本作の主人公であるフランスの小説家・映画監督・外交官のロマン・ギャリー(ロシア帝国生まれ・1914~1980)の同名原作自伝小説(伊・1960・邦訳:2017)の映画化 米国で1970年に映画化されているので2度目の映画化になる シャルロット・ゲンズブール(パリ出身・1971~)が演じる、母子家庭でいわゆる教育ママの母親ニーナに連れられ、ロマンはロシアからポーランドを経て14歳の時にフランス・ニースに辿り着く ロマンを演じるのはフランスの若手人気俳優ピエール・ニネ(1989~) ロマンは母親からの大いなる期待を受けながら、小説を書き続け、第二次世界大戦中はフランス空軍から英国に亡命した自由フランス軍に入り病に倒れる 母からの手紙は途切れずに届き、彼はついには母の期待どおり小説家になるが… ギャリーはフランス最高の文学賞・ゴンクール賞を唯一2度受賞しており、米国の女優でショート・カットの女王と呼ばれたジーン・セバーグ(アイオワ州出身・1938~1979)の夫としても知られる 残念ながら両人とも自殺している
オリ・マキの人生で最も幸せな日(フィンランド・独・スウェーデン・2016) ⇒原題は"Hymyileva mies"(フィンランド)="Smiling man"(英)=「笑顔の男」 原題どおりの方が分かりやすいかもしれない フィンランドの1962年夏の実話に基づいた作品で、全編16ミリ・モノクロ・フィルムで撮影されているのは当時の雰囲気をよく表すためといわれる 実在のフィンランド人プロ・ボクサー・オリ・マキが、地元で世界フェザー級タイトルをかけて、米国人のデビー・ムーアと戦うチャンスを得る オリ・マキは試合に向けた減量中に恋をしてしまい、夏の陽光の下でのデートもする 世界チャンピオンにはなれなかったが、幸せなまま元々のパン屋の仕事に戻ったのだろう
25601ff3f586fa10グリンゴ 最悪の悪運男(米・墨・豪・2018) ⇒ハチャメチャ・ドタバタ・サスペンス・コメディだが、二転三転観ているだけで面白い 黒人を主人公にしているのも気が利いているのかもしれない デヴィッド・オイェロウォ(英国オックスフォード出身・ナイジェリア系・1976~)が演じる正直者でお人好しの主人公が、解雇されそうになった、友人で上司の製薬会社経営者に罠をかけるが… アマゾン、シカゴやメキシコ・シティが舞台で、スタントが結構多い ハリウッドではすでに大女優となったシャーリーズ・セロン(南ア出身・1975~)が性悪女としての出演に加えて、プロデューサーとしても活躍 原題は単に"gringo"(西) 「グリンゴ」とは、スペイン語で「よそ者」を意味するスラングで、メキシコ人などヒスパニックの人々がアメリカ人を小バカにするニュアンスで使われるとのこと
a8bbe2e975a81c6cハスラーズ(米・2019) ⇒米国のジャーナリスト・ジェシカ・プレスラー(マサチューセッツ州出身・1977/78~)がニューヨーク市のWeb雑誌に寄稿した"The Hustlers at Scores"(2015)が原作 この記事タイトルを意訳すると「荒稼ぎしたストリッパー・売春婦たち」か これを女優でもある米国のローリーン・スカファリア(ニュー・ジャージー州出身・1978~)監督が映画化(兼脚本・製作) 女優で歌手のジェニファー・ロペス(ニューヨーク市ブロンクス区出身・プエルトリコ系・1969~)と「クレイジー・リッチ!」(米・2018)のコンスタンス・ウー(米国バージニア州リッチモンド出身・台湾系・1982~)がダブル主演 女性たちで創られた作品で、特に大都会ニューヨーク市で暮らすマイノリティ女性を意識していると思われる 強欲なニューヨーク市ウォール証券街の男たちは女も大好きで、2007年頃ストリップ・バーで働く女性たちは彼らからの多額のチップで潤っていた しかし、2008年のリーマン・ショック後は急に客が入らないようになり苦境に そこで、騙しやすような男を選んで、搦め手によりクレジットカードを限度額まで… 彼女らはケタミンとMDMAを使ったとされるが、これが事実に触発された話だというから恐れ入る ロペスもウーもポール・ダンスの練習には痣と筋肉痛で苦労したようだ 原題も"Hustlers"(英)=「ストリッパー・売春婦たち」か
チャーリーズ・エンジェル(米・2019) ⇒これは台湾に向かう中華航空のエアバス機内の座席ディスプレイで観たので、劇場鑑賞ではない 当然劇場で観るのとは迫力が全く違うので、サスペンス・アクション映画に分類される本作品のコメントは辛口になる カリストという架空の謎の新発明・発電装置を巡る争い ドイツ・ハンブルグ、ブラジル・リオデジャネイロ、そしてトルコ・イスタンブールを巡ってアクションが展開 特に、競馬場でのアクションは劇場鑑賞では見物と思われる 元々は同名の米国TVドラマ(1976~1981)であるが、2000年と2003年に米国で2度映画化されているので、これは3度目の映画化 2011年には米国TVドラマでのリブートも試みられた 女性スパイが活躍する物語がなぜこんなに人気があるのだろうか 原題も"Charlie's Angels"(英)

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品

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2020年2月 9日 (日)

2月3日~2月8日の週に観た劇場映画

2月3日(日曜)~2月8日(土曜)の週は、7本の劇場映画を観ました。
今回から書式を少し変更しました。5本以上鑑賞した場合は、冒頭に作品名を羅列することにします。それから作品毎に製作国と製作年を明記することにもします。

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(米・2019)
バッドボーイズ フォー・ライフ(米・2020)
続・荒野の用心棒(伊・西・1966)
風の電話(日・2020)
プロジェクト・グーテンベルク 贋作王(香・中・2018)

グッド・ライアー 偽りのゲーム(米・2019)
彼らは生きていた(英・2018)

ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密(米・2019) ⇒「スター・ウォーズ 最後のジェダイ」(2017)を監督(兼脚本)したライアン・ジョンソン(米国メリーランド州シルヴァー・スプリング出身・1973~)が、「ミステリーの女王」と呼ばれた英国の推理小説作家アガサ・クリスティ(デヴォン州出身・1890~1976)へのオマージュとして、100%オリジナル脚本で製作(兼監督・脚本)した作品のようだ オールスター・キャストで、全員が怪しくて、最後に見事な種明かしがあるところがクリスティ風で、古典的 探偵役は現在進行中の「007」(第21作・2006~)のジェームズ・ボンド役でおなじみのダニエル・グレイグ(英国チェスター出身・1968~) 舞台は米国北東部の大都市郊外にある大邸宅で、一部コメディ的でもある 原題は"Knives Out"で、あえて意訳すると「使えない、刃のない短剣・ナイフ」か
バッドボーイズ フォー・ライフ(米・2020) ⇒「バッドボーイズ」シリーズ(米・1995・2003)の第3作目 ウィル・スミス(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア出身・1968~)とマーティン・ローレンス(米・1965~)の、麻薬捜査官ダブル主役コンビは健在 舞台は米国フロリダ州マイアミからメキシコへ飛ぶが、痛快・豪快なコメディ・サスペンス・アクションはただ観ているだけもいい 終盤の廃ホテルにヘリが墜落し炎上するシーンは見事 今回から監督は本シリーズの生みの親マイケル・ベイ(ロサンゼルス出身・1965~)からベルギーの監督コンビのアディル・エル・アルビ(1988~)とビラル・ファラー(1986~)に交替 原題も"Bad Boys for Life"=「ずっとバッドボーイズ」か
efc045c1340e07b7続・荒野の用心棒(伊・西・1966) ⇒イタリアのセルジオ・コルブッチ監督(ローマ出身・1927~1990)が製作(兼脚本)した古典的・伝説的なヴァイオレンス・マカロニ・ウエスタン オリジナル・ネガフィルムから4Kスキャン・レストアされたデジタル・リマスター版 イタリアの俳優フランコ・ネロ(1941~)が、米国南北戦争終了後の北軍の流れ者ジャンゴ(主人公)を熱演 なぜか泥々のシーンが多く、主人公が泥の上を棺桶を引きずりながら登場するシーンは象徴的 原題は"Django"=「ジャンゴ」で、2012年にクエンティン・タランティーノ監督(米国テネシー州ノックスヴィル出身・1963~)が製作した「ジャンゴ 繋がざれざる者」は本作へのオマージュ 観た作品はイタリア語版なので、イタリア語で米国の南北戦争やメキシコ国境が語られるとやや不思議な感じ 欧米では吹替えで外国映画を鑑賞するのが普通のようで、英語圏ならば英語に吹替されたものが上映されているはずだ
風の電話(日・2020) ⇒岩手県大槌町の高台の公園に実在する、死者と話ができるという「風の電話」をモチーフに、諏訪敦彦(すわのぶひろ・広島市出身・1960~)監督が製作した作品 諏訪の出身地広島から大槌まで旅する、悲しみから再生にわずかに向かうロード・ムービー 9歳の時に東日本大震災(2011)により大槌町で家族を失い孤独になり、広島県呉市にある伯母の家で暮らすヒロインを演じるのはモトーラ世里奈(東京都出身・1998~) 伯母の入院を機に広島から大槌に向かうことになり、道中で三浦友和(山梨県塩山市出身・1952~)、西島秀俊(東京都八王子市出身・1971~)、西田敏行(福島県郡山市出身・1947~)らのベテラン俳優陣が演じる人々に出会い、触れ合い、助けられる 広島の原爆被害・水害、東日本大震災による福島原発事故・津波被害などのイメージを織り込みながら大槌の「風の電話」に辿り着く ロケ撮影は、広島県から首都圏、福島県、岩手県とヒロインの移動に応じて行われたようだが、結果的に少し冗長か
プロジェクト・グーテンベルク 贋作王(香・中・2018) ⇒香港のフィルム・ノワール代表作といわれている「インファナル・アフェア」(直訳すると「地獄の事件簿」か)シリーズ3部作(2002~2003)の脚本を一貫して担当したフェリックス・チョン(香・1968~)が監督として本作を製作 今回は米国100ドル札の贋札(偽札)造りの話だが、恋愛・射撃・爆発アクションなどの見所シーンも山盛り 香港の名優2人、チョウ・ユンファ(1955~)とアーロン・クオック(1965~)が共演 話の舞台はタイの刑務所から始まり、カナダ・バンクーバー、メキシコ・スアレス、キューバ・ハバナ、インド・バンガロール、アイルランド・ダブリン、ラオス・パクセー、そしてゴールデン・トライアングルと世界各地を転々とし、内容も結構複雑なので、老化しつつある筆者の頭では付いて行けなくなった 中国・香港では大ヒットしたようだ 原題は「無雙 Project Gutenberg」(中)=「比類なき・無敵 プロジェクト・グーテンベルグ」か

0bf76be6d3dc3c01グッド・ライアー 偽りのゲーム(米・2019) ⇒ディズニー初のアニメ実写化作品「美女と野獣」(米・2017)を監督(兼脚本)したビル・コンドン(ニューヨーク市出身・1955~)が製作 英国出身の2人の名優ヘレン・ミレン(ロンドン出身・1945~)とイアン・マッケラン(ランカシャー出身・1939~)を起用した、とても気の利いた騙し合い・トリック・ミステリー作品 英国の小説家ニコラス・サール著の、本作原題"The Good Liar"=「良い嘘つき(一種の英国流ブラック・ユーモアか)」と同名の原作小説(英・2016・邦訳:「老いたる詐欺師」2017)の映画化 主人公が老人2人のため、若者には余り人気がないかもしれない しかし、彼らの歳に近付いている筆者にとっては、少しロマンチックな雰囲気で始まりながら、だんだんドキドキ・ハラハラになって、最後には見事などんでん返しになるところはとても面白い 舞台は2009年のロンドンなので、市内とロンドン西方30km弱にあり、ヒースロー空港至近のシェパートン・スタジオで撮影されたようだ また、ナチスに絡む話も登場するのでドイツ・ベルリンでもロケ撮影をした模様 "fond of love"を古風な言い方として何度か取り上げている
dabc51f704783d31彼らは生きていた(英・2018) ⇒「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズ3部作(ニュージーランド・米・2001~2003)で一躍著名になったピーター・ジャクソン監督(ニュージーランド・1961~)が第一次世界大戦(1914~1918)終戦後100年目のタイミングで製作した渾身のドキュメンタリー ロンドンにある英国帝国戦争博物館に収蔵されていた2,200時間以上もある記録映像を基に製作 元々の映像は白黒で無声無音であったためカラー化修復し、BBCが保有する退役軍人たちのインタビューを抜粋・同期させ、追加の音声や効果音も加えて、実にリアルで生々しく斬新な映像作品に仕上げている 開戦当時の英国国内は妙に楽天的で、19歳以上の若者が募兵されたがそれ以下の少年たちも偽って志願 約6週間の訓練を経て欧州大陸の西部戦線に投入されるが、ついにはベルギーのエスコー川付近での過酷な塹壕戦に突入 気の抜けない交替勤務の合間の休憩、食事、排泄などのシーンもユーモラスに語られる 最後に菱型戦車も参戦し、ドイツ軍陣地へ向かっての突撃・総攻撃になるが、歩兵はドイツ軍の機関銃に多数倒れながらも敵陣を制圧 この間の終盤30分間のシーンは息付く暇もなく、目が離せない 降伏後のドイツ軍兵士は協力的で、特にバイエルンやザクセン出身の連中は人がいいと語る 100万人の英国人が死亡したが、帰国後の英国国内は無関心で余り感謝されなかったと締めくくる 全くもって戦争は悲惨で無意味だと痛感させる 当時各国兵士にも感染し、第一次世界大戦終結を早めたというスペイン風邪についてのコメントはなかった 原題は"They Shall Not Grow Old"で、直訳すると「彼らは古くならない、古びない」か

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品

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2020年2月 2日 (日)

1月26日~2月1日の週に観た劇場映画

1月26日(日曜)~2月1日(土曜)の週は、4本の劇場映画を観ました。遅めの新年会が結構あり、鑑賞数が伸びませんでした。

マザーレス・ブックリン ⇒米国の小説家ジョナサン・レセム(ニューヨーク市ブルックリン区出身・1964~)の同名原作小説(1999・邦訳:2000)の映画化 チックという頻繁な音声・運動動作を繰り返すトゥレット障害を持つ主人公が、孤児から私立探偵にまで育ててくれたボスが射殺された事件の真相を突き止めようと奮闘する様子を描くフィルム・ノワール 日本滞在の経験もある、米国の俳優エドワード・ノートン(ボストン出身・1969~)が監督・製作・脚本・主演の4役 舞台はニューヨーク市のハーレムやブルックリンそしてロングアイランドなどで、懐かしい映像が登場 場所柄ジャズ音楽に乗って話は進行するが、スタントも多い 原作の時代設定は1999年だが、ノートン監督はよりハードボイルド的にするために1957年の時代設定に変更 原題も"Motherless Brooklyn"だが、直訳すると「母のいない(孤児の)ブルックリン」か
6daadcbd461f9ab9キャッツ(英・米) ⇒世界中で未だに上演されている同名人気ミュージカルの映画化だが、舞台が好きな人たちにはいろいろ不満があるようだ しかし、最初から映画として観れば、猫たちは魅力的だし、歌もダンスも聴き応え・見応えがある 当然舞台との違いはある まず場の転換や幕間(まくあい)ががないこと 舞台では、場や幕が終わる時には通常大合唱などの盛り上る場面が用意されており観客は舞台と一体になりながら拍手する 映画ではそういうタイミングがないので観客が途中で参加するチャンスがない また、舞台のフィナーレでは通常出演俳優全員がそろって大合唱で大団円となり、観客が拍手大喝采となる そして、舞台が暗転した後出演俳優一人ひとりが紹介される 映画ではこういう風にはいかないので、観客が一緒に作品を創り上げたという感覚・気持ちは持ちえない 次に、舞台では生演奏を聴かせるオーケストラ・ピットがあるが、映画では録音でしかないので、やはり音楽の迫力・強弱が全然違うと思う 猫の尻尾の動き、小型のネズミの歌とダンスやゴキブリのダンスなどは映画のVFXならではの表現 エンドクレジットには千数百人のVFX担当者の名前が ミュージカル「キャッツ」(初演@ロンドン・1981)は、英国の作曲家アンドルー・ロイド・ウェバー(ロンドン出身・1948~)が、英国の詩人T・S・エリオット(米国ミズーリー州セントルイス出身・1888~1965・1948年度ノーベル文学賞受賞)の子供向け詩集「キャッツ ポッサムおじさんの猫とつき合う法」(1939・邦訳:1995)に曲を付けたもの 本映画作品は「英国王のスピーチ」(英・豪・米・2010・2011年第83回アカデミー賞作品賞受賞)や「レ・ミゼラブル」(英・米・2012)のトム・フーパー(ロンドン出身・1972~)監督が製作 出演者は全員が猫の扮装なので、誰が誰なのかなかなか分からないが、老雌猫のジュディ・デンチ(英・1934~)は見分けられた 彼女には1981年のミュージカル初演に出演する予定だったがアキレス腱断裂により降板したという因縁があるそうだ 原題も"Cats"=「猫たち」か
AI崩壊 ⇒AIの暴走というか、AIを悪用する、ヒトラーのような独裁者が現れたらどうなるかということがテーマだと思う AIはまだ膨大な情報・データ・知識の集合体であり、本当の意味でのインテリジェンス、つまり倫理・哲学や数学・自然科学などの考え出された英知・叡智を生成・保有はしていないと、筆者は考えるからだ 本作では、妻の死をバネに開発され2027年に実用化された医療AIが、2030年には日本全国民の健康を含めた全個人情報を把握し、医師たちに常に最善な医療情報を提供しているという設定 外国に暮らす開発者が講演のために帰国したら、突然追われる身になる 大沢たかお(東京都武蔵野市出身・1968~)演じる開発者が日本国中を逃げ回るので、ロケ撮影は昨年冬に、名古屋市、大阪市、岡山県、和歌山県、群馬県、栃木県、東京都、千葉県など全国にわたって行われた模様 千葉県では大きなセットを造ったという話もある 監督・脚本は「SR サイタマノラッパー」(2009)の入江悠(横浜市出身・1979~)で、完全オリジナル脚本を創り、昨年(2019年)11月には小説化 主題歌をAI(米国ロサンゼルス生まれ・鹿児島市出身・1981~)が歌っているのはダジャレか 最後に一言 本作には東大の先生なども監修に加わっており出演もしているが、AIが社会の生産性向上に不要な人間を選別するという件は、相模原の事件に似ていないか こういう話題を取り上げるのは、弱肉強食の風がかなり強く吹いているからだろうか
嘘八百 京町ロワイヤル ⇒2018年の正月に公開された「嘘八百」の続編として、2年後の今年(2020年)正月に公開 武正晴(愛知県知多市出身・1967~)監督と脚本の今井雅子(大阪府堺市出身・1970~)・足立紳(鳥取県倉吉市出身・1972~)の再度の組合せ 武と足立は「100円の恋」(2014)でもコンビ 前回は堺での騙し合いだったが、今回は京都での騙し合い・コンゲーム 古物商役の中井貴一(東京都世田谷区出身・1961~)と陶芸家役の佐々木蔵之介(京都市出身・1968~)も再度のコンビ マドンナに広末涼子(高知市出身・1980~)を迎えたが、前作に引き続き出演している俳優が多い ロケ地は、京都市内の太閤山荘、渉成園、本能寺大賓殿宝物館、庵町屋スティ筋屋町町屋などのようだ

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2020年1月26日 (日)

1月19日~1月25日の週に観た劇場映画

1月19日(日曜)~1月25日(土曜)の週は、8本の劇場映画を観ました。年が明けると、今年のアカデミー賞を狙う作品群がどんどん日本公開されます。

fc669e0b211aeefaパラサイト 半地下の家族(韓) ⇒情報化社会、SNS社会においてますます明らかになった格差問題 特に韓国社会では顕著になっているようだが、本作は、その社会格差問題を基調に置きながら、寄生と共生の難しさをファンタジーとして表現 コメディでもあり、ホラー・サスペンスでもあり、すべてを融合するのはとても難しそうだが、微妙なバランスを保っていることに驚く 監督(兼共同脚本)は「スノーピアサー」(韓・米・仏・2013)でも階級闘争を描いたポン・ジュノ(韓国大邱市出身・1969~) 昨年(2019年)のカンヌ国際映画祭では、クエンティン・タランティーノ(米国テネシー州出身・1963~)監督の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」(米・2019)やケン・ローチ(英・1936~)監督の「家族を想うとき」(英・仏・ベルギー・2019)などを抑えて、全会一致で韓国映画初のパルム・ドールを受賞 プールの中に造った半地下の家や高台にある超高級住宅など、道路以外はすべてセットを構築したというポン監督のこだわりが分かる 筆者にはやや違和感を感じた点が2点 一つ目は、豊臣秀吉(1537~1598)が李氏朝鮮(1392~1910)に攻め込んだ、文禄の役(1592~1593)と慶長の役(1597~1598)の時に、朝鮮側水軍の指揮官だったイ・スンシン(李舜臣・1545~1598)将軍がパーティの飾り物で登場したこと イ将軍は日本との海戦で決定的な役割を果たしてはいないようだが、救国の英雄とされている 日本のパーティで日清戦争(1894~1895)や日露戦争(1904~1905)の英雄、東郷平八郎(1948~1934)元帥海軍大将や乃木希典(1949~1912)陸軍大将が登場するだろうか 二つ目はモールス符号(発明:1837・国際規格:1851)も登場し、短音を「トン」、長音を「ツー」と表現しているが、これは日本から導入された表現方法ではないか 英語では、そもそもモールス符号はドット(点)とダッシュにより構成されており、それらは「ディ」と「ダー」と省略して表現されているようだ 英語原題も"Parasite"=「寄生虫、寄生」
ジョジョ・ラビット ⇒米国コネチカット州州都のハートフォード生まれで、ベルギー国籍も有し、2006年からはニュージーランドで暮らす作家クリスティン・ルーネンズ(1964~)の小説"Caging Skies"(2008)(直訳すると「檻・籠に閉じ込められた空」か:未邦訳)が原作 ルーネンズはイタリア人の母とベルギー人の父の娘で、若い時はフランスでファッション・モデルをしていたようだ 1996年頃から小説家を目指し、2000年にはフランス・ノルマンディーにあるカーン平和博物館で本原作小説のヒントを得たようだ それは第二次世界大戦(1939~1945)中のオーストリア・ウィーンでの出来事で、ヒトラー・ユーゲント(ナチス党の地域青少年教化組織)の一員を目指すジョジョ(ヨハネス・ベツラー)が、彼の両親が自宅に匿っていたユダヤ人少女を発見したこと ニュージーランドの映画監督・脚本家・俳優・コメディアンであるタイカ・ワイティティ(首都ウェリントン出身・1975~)が映画化(兼脚本・出演) 原作小説にも強い賛否があるようだが、筆者にも違和感が残った 本作では、ジョジョの空想であるアドルフ・ヒトラー(1889~1945・ワイティティ監督が演技)が登場し、ジョジョを励ますが、同時にそれらがヒトラー及びナチスを揶揄し、皮肉るものなのだろう ジョジョの心境の変化そして独り立ちは充分理解できるが、一歩間違えると扮装ではあるとしてもナチスの恰好をして騒ぐことを助長するのではないか またビートルズの楽曲とともに作品がスタートするので、現代の寓話だと誤解する人もいるのではないか ロケ撮影はチェコの首都プラハで主に行われた模様 原題も"Jojo Rabbit"
ペット・セメタリー ⇒米国メイン州ポートランド出身のモダン・ホラー小説家スティーヴン・キング(1947~)の原作小説"Pet Cematary"(1983)(邦訳:「ペット・セマタリー」1989)の2度目の映画化 1度目は邦訳本も出版された1989年 「ペット霊園」を意味するタイトルの正しい綴りは"Pet Cemetary"であるが、子供たちが可愛い綴りミスをしたいう前提で"Pet Cematary"としているらしい 本作の原題も綴りミスをした方だが、邦題は正しい綴りとしているようだ 原作小説は余りの恐ろしさに出版をしばらく見合わせていたという逸話があるくらいで、ホラー映画に慣れている筆者でも数度はかなりドキッとした 米国バーモント州ラッドロー(Ludlow)という実在の町で起きる、森に魔力があるという不思議な事件が題材 1度目の映画化では弟が事故死するが、2度目の映画化の本作では姉が事故死 観客は最初は男ばかり10数人だったが、開映間際に女性が3人加わった
bdef173ffd93baaeイントゥ・ザ・スカイ 気球で未来を変えたふたり(米・英) ⇒英国の気象学者ジェームス・グレーシャー(1809~1903)が高空の大気の温度と湿度を測定するために気球飛行をした史実に基づく作品で、自然科学に興味があれば実に面白い 1862年9月5日にグレーシャーは、気球操縦士とともに、当時フランス人が持っていた高度7,000mの世界記録突破を目指して飛行し、高度11,277m(約7miles)まで到達 これは酸素ボンベなしでの気球飛行記録として現在まで破られていない記録だそうだ グレーシャーはこの飛行で成層圏内の温湿度測定を行い、気象学の発展に大いに寄与 本作では、男性操縦士を女性と設定変更しフェリシティ・ジョーンズ(英国バーミンガム出身・1983~)が演じ、グレーシャーをエディ・レッドメイン(ロンドン出身・1982~)が演じる この2人は「博士と彼女のセオリー」(2014)でダブル主演しており、息の合ったところを見せている 両者は第87回アカデミー賞(2015)主演男優賞と主演女優賞にノミネートされ、レッドメインが主演男優賞を受賞 本当に飛行できる19世紀型ガス気球の精巧なレプリカを建造したこと、2人は撮影のため実際にその気球で高度900mを飛行したこと、特にフェリシティは高度600mで気球によじ登ったことなどが、撮影秘話として特筆される 原題は"The Aeronauts"=「気球操縦士」
49029a069417656dフォードvsフェラーリ ⇒やはり事実に基づき、実写をフル活用して製作された作品は面白い 本作を製作したジェームズ・マンゴールド(ニューヨーク市出身・1963~)監督(兼製作・脚本)は、本作に約105億円の製作費をかけたそうで、映像は実にリアル 同監督は「LOGAN ローガン」(2017)でやはり約105億円、「ウルバリン:SAMURAI」(2013)では約140億円を費やしたらしく、この金額は不思議ではないのだろう ロケ撮影は2018年夏~初秋に米国カリフォルニア州とジョージア州、そしてフランスのル・マンなどで行われた模様 フォード・モーターの本社・工場、マイルズのワーク・ショップ(ガレージ)、フェラーリ本社、米国内のレース・コースやテスト・コース、そしてル・マン24時間レースのコースまで緻密で膨大なセットを米国内に構築 本作は、1)ル・マン24時間レースでも優勝したことのある優秀なドライバーだが、病気のため引退しレーシング・カーのデザイナーになったキャロル・シェルビー(テキサス州出身・1923~2012)が、英国から移住した優秀な整備工・ドライバーとして活躍していたケン・マイルズ(英国出身・1918~1966)と組むところ、2)フォード社は、大衆車からレーシング・カーまでにラインナップを拡大させようとするリー・アイアコッカ(ペンシルベニア州出身・1924~2019)営業担当役員の主張に沿い、イタリアのフェラーリ社の買収に乗り出すが失敗し、ル・マンでフェラーリに勝利することを目指すところ、3)フォード社はシェルビー・マイルズと組んで、無尽蔵の資金提供をし、フォードGT40を製作・改良し続け、ついに1966年6月のル・マンで、フェラーリに勝利し1~3位を独占するところ、などを描く シェルビーを「オデッセイ」(2015)のマット・デイモン(マサチューセッツ州ケンブリッジ出身・1970~)が、マイルズを「バイス」(2018)のクリスチャン・ベール(英国ウェールズ出身・1974~)がそれぞれ演じている 当然ながらスタント・ドライバーが多数おり、また実写映像が多いがVFXも使われている 原題も"Ford v. Ferrari"で邦題どおり

記憶屋 あなたを忘れない ⇒ロンドン生まれで神戸市在住の弁護士・小説家の織守(おりがみ)きょうや(1980~)のホラー小説「記憶屋」(2015)の映画化 映画作品自体はホラーよりファンタジー的だと思う 誘拐・強盗・強制性交の被害者のトラウマを避けるために、その記憶を消すという意図は分かるが、この場面でどうしてそうなるのかという必然性が少し理解できないところがあった 主役2人の故郷が広島で首都圏の大学に通学中という設定なので、ロケ撮影は昨年の冬に広島県と、東京都、神奈川県、栃木県、山梨県などの首都圏で行われた模様
ナイト・オブ・シャドー 魔法拳(中) ⇒ジャッキー・チェン(香港出身・1954~)主演で、中国・清代の怪異短編小説集「聊斎志異(リアオ・ツァイ・ツィ・イ)」の作者・蒲松齢(プ・ソン・リン・1640~1715)をモデルにした作品 主人公・蒲松齢が陰陽の筆で妖怪を地獄に封じ込める アニメ・VFX大活用で、またボリウッド(インド・ムンバイ)作品のように唄・音楽と踊り・ダンスも織り込まれている エンドクレジットのデザイナー・ポスプロ・VFX担当には千数百人の名が 原題は「神探蒲松齢 "The Knight of Shadows: Between Yin and Yang"」(中・英)=「探偵蒲松齢 影の騎士:陰と陽の間」か
サヨナラまでの30分 ⇒完全オリジナル脚本による、音楽バンド・ファンタジー作品 ゴースト的な話だが、発想は結構面白い 本作のために6曲ものオリジナル楽曲が創られたのも特筆される 北村拓海(東京都出身・1997~)は歌手でデビューし、実際にバンド活動もしており、歌もうまいことは知らなかった ヒロインの久保田紗友(さゆ・2000~)は売出し中だが、筆者の故郷でもある札幌市出身なので言及したい ロケ撮影は昨年(2019年)夏長野県松本市、塩尻市などで行われた模様

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2020年1月19日 (日)

1月12日~1月18日の週に観た劇場映画

1月12日(日曜)~1月18日(土曜)の週は、5本の劇場映画を観ました。今年5月に90歳になるクリント・イーストウッド監督はまだまだ健在のようです。

320bac50d2ba94e9リンドグレーン(スウェーデン・デンマーク) ⇒スウェーデンの児童文学作家アストリッド・リンドグレーン(女性・1907~2002)を知っているだろうか 「長くつ下のピッピ」(1945)で始まる童話シリーズは世界100ヶ国以上で翻訳・出版され、世界中によく知られているはずだ 本作は彼女の16歳から10年間余りの苦難と激動の時代を描く スウェーデン南部のスモーランド地方、田舎の小さな牧場で、自然の中幸福に育ったアストリッド 文才があったために、田舎の新聞社に雇われるが、親友の父親でもある社主と関係が デンマークで出産し、男子をそこに置いたまま、スウェーデンで教師や事務員をするが、なかなか自分の子を引き取れない 常に前向きな彼女は自分で数々の苦境を突破していき、最後には面倒見のいい、最愛の人を見付けたようだ 気が付いたことは、当時はスウェーデンでもまだ姦通罪があったらしいこと、デンマークでは出生後まもない幼児たちを育てる女性たちがいたこと、また馬車を引く馬たちは道産子のように太く短い脚であることか 原題は"Unge Astrid"(デンマーク)="Unga Astrid"(スウェーデン・言語はよく似ている)="Young Astrid"=「若き日のアストリッド」でこの方が分かりやすい
カイジ ファイナルゲーム ⇒「カイジ 人生逆転ゲーム」(2009)、「カイジ2 人生奪回ゲーム」(2011)に続く第3作目で最終編らしい 前2作と同様に、佐藤東弥(東京都西東京市出身・1959~)監督と主演の藤原竜也(埼玉県秩父市出身・1982~)がタッグ 原作漫画作者の福本伸行(神奈川県横須賀市出身・1958~)が脚本に加わり、完全なオリジナル・ストーリーとしたらしい ハイパー・インフレになり、預金封鎖され、新円発行などという極限的な話も盛り込まれている 福士蒼汰(東京都出身・1993~)を悪役として使い、藤原と吉田鋼太郎(東京都出身・1959~)との舞台俳優同士の掛合いも見物 撮影は2018年10~12月に行われ、ロケ地は栃木県(大谷石洞窟、岩船山など)、千葉県、群馬県、東京都、茨城県(鹿島スタジアム)など首都圏各地だった模様 人間秤のセットは日活調布撮影所(東京都調布市)に造ったようだ
ラストレター ⇒岩井俊二(宮城県仙台市出身・1963~)監督の集大成のような作品(兼原作・脚本)にしようとしたらしい 公開当時大評判になった初監督長編作品「Love Letter」(1995)の系譜を継ぐようだ 「四月物語」(1998)で主演した松たか子(東京都出身・1977~)を再度主演に 「Love Letter」で共演した中山美穂(長野県佐久市生まれ・東京都小金井市出身・1970~)と豊川悦司(大阪府八尾市出身・1962~)が本作の終盤にも登場するのが面白い SNS全盛時代に、3組の微妙な文通を軸に話を盛り上げる しかし、少しひねり過ぎの感じもあり、また2人の少女が過去と現在で違った役どころで一人二役を演ずるので頭が少し混乱 ロケ撮影は、2018年7月末~8月末に、岩井監督の故郷・宮城県仙台市、そして白石市、大崎市などで行われた模様 冒頭と結末に登場する滝は宮城県七ヶ宿(しちかしゅく)町にある滑津(なめつ)大滝
127a09e79163754aリチャード・ジュエル ⇒クリント・イーストウッド(カリフォルニア州サンフランシスコ出身・1930~)監督が、高齢にもかかわらずまたまた話題作を製作 「アメリカン・スナイパー」(2014)や「ハドソン川の奇跡」(2016)と並ぶ、史実に基づいた優れた作品 一度は英雄になったが、その後疑問を呈され地に落ちた人物の疑いを晴らすという展開は「ハドソン川の奇跡」と似ている 今回はFBIとメディアに狙われた最悪の情況下での闘いを描く 主人公は実在だった人物リチャード・ジュエル(バージニア州出身・1962~2007) 正義感がやや強すぎな太った男で、法執行官"law enforcer"を目指す また銃器や爆弾に詳しく、銃器も多数所有 1996年夏ジョージア州アトランタでオリンピック実施中に開催されていた協賛コンサートの会場・センテニアル・オリンピック・パーク(百年五輪公園)で事件が起きる 7月27日夜、警備員として働いていたジュエルはベンチ下の不審なバックパックを見付け、手順に沿って州警察の爆弾処理班を呼び、パイプ爆弾であることを確認 警察官とともに観客に避難を呼びかけている途中に爆発し、2人が死亡し100人以上が負傷 出遅れたFBI捜査官が現場を仕切り、一種の焦りからかプロファイリングによりジュエルを犯人と特定 地元新聞の女性記者が色仕掛けで知合いのFBI捜査官からネタを仕入れスクープ(ここは本当なら大問題) とうとうジュエルは全米のあらゆるメディアから攻撃され、FBIからも厳しい捜査・取調べを受ける 結末の記録映像に実在の本人たちが登場するが、よくもこんなに彼らに似た俳優を探し、さらに似せたメークをし喋り方までまねさせたなと思う ジュエルを130キロ以上に太ったポール・ウォルター・ハウザー(ミシガン州出身・1986~)が、ジュエルを助ける奇特な弁護士をサム・ロックウェル(カリフォルニア州出身・1968~)が、そしてジュエルの母親をキャシー・ベイツ(テネシー州出身・1948~)がそれぞれ演じる 本作は作家・ジャーナリストのマリー・ブレンナー(テキサス州出身・1949~)の雑誌記事(1997)に基づいており、推定無罪の原則から逸脱した捜査手法(ゴーン事件を思い出すかもしれないが、ジュエルは逃亡せず正々堂々と無実を証明)やメディアの報道姿勢の問題を提起 真犯人のエリック・ルドルフ(フロリダ州出身・1966~)は事件の6年後の2003年に逮捕され終身刑に処されている その後ジュエルは念願の警察官(法執行官の一種)になったが、持病の心臓病で2007年にジョージア州の自宅で死去 ロケ撮影はほぼアトランタ(米国の映画撮影聖地の一つ)で行われた模様 原題は"Richard Jewell"で邦題どおりだが、「ジュエル」の発音は「ジュウォール」に近い
ダウントンアビー(英・米) ⇒英国で大ヒットし、日米でも放映された、同名TVドラマ・シリーズ(英・2010~2015)の映画化 TVドラマの終了時点の1年半後、1927年の時代設定 原案・脚本はいずれも英国のジュリアン・フェロウズ(エジプト・カイロ生まれ・1949~) 監督はTVシリーズの一部も担当したマイケル・エングラー(米) 本作では、英国王の一行がダウントンアビーに一泊する騒動の顛末を描く 大きな城のような邸宅を構える、当時の英国貴族の暮らし、経済情況が大変であったことが分かる さらに女性が中心になって一家が運営されているのにも驚く 邸宅の主・グローリー家の人々、そのプロフェッショナルな使用人たち、そして王室とその侍従・使用人たちなど、数10人が短時間の間に多数登場し入り乱れるので、筆者の理解力では付いて行けなところも結構あった 邸宅の撮影には、TVも映画も、英国南部のヨークシャー州にあるハイクレア・カースル(カントリー・ハウスだそうだ)を使用 原題は"Downton Abbey"=「ダウントン修道院」か

(注)★はお薦め、▼は特定のマニア向け作品 製作国の表示がないものは米国か日本の作品

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2020年1月13日 (月)

ワープステーション江戸@茨城県つくばみらい市 その3

ワープステーション江戸@茨城県つくばみらい市
2018年に完成した近現代エリア(明治・大正・昭和ゾーン)
路面電車も復元されている
これは撮影用の造り物だが、細部にわたり本物そっくりに製作されており、線路軌道上を走行できるとのこと
NHKの大河ドラマ「いだてん 東京オリンピック噺」(2019)はこのエリアで撮影されたようだ
写真は路面電車とオフィス街

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ワープステーション江戸@茨城県つくばみらい市 その2

ワープステーション江戸@茨城県つくばみらい市
この施設は2000年に茨城県と筑波郡伊奈町(2006年に谷和原村と合併しつくばみらい市に)がテーマパークとして建設(2012年からはNHKエンタープライズが所有)
NHKの大河ドラマ:「いだてん 東京オリンピック噺」(2019)「おんな城主 直虎」(2017)「真田丸」(2016)「花燃ゆ」(2015)「軍師官兵衛」(2014)
NHKの連続テレビ小説(朝ドラ):「なつぞら」(2019)「とと姉ちゃん」(2016)「花子とアン」(2014)
などのロケ撮影地として活用されているようだ
1枚目の写真は江戸城 大手門、2枚目は長屋門から観た大手門、3枚目は戦国時代の砦

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