カテゴリー「映画(2021年)」の7件の記事

2021年12月31日 (金)

12月24日~12月30日の週に観た劇場映画

12月24日(金曜)~12月30日(木曜)の週は4本の劇場映画を観た オミクロン株によるコロナ感染が再拡大しつつあるので、しばらくは劇場映画鑑賞はお休みにならざるをえないかもしれない

ヴォイス・オブ・ラブ(126分・仏・加・2020)
キングスマン ファースト・エージェント(131分・英・米・2021)
★★ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(126分・米・2019)
ドント・ルック・アップ(138分・米・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

947496e90db5b16fヴォイス・オブ・ラブ(126分・仏・加・2020) ⇒世界的な歌姫セリーヌ・ディオン(1968~・加国ケベック州シャルルマーニュ出身)の半生をフィクションとして映画化 シャルルマーニュはモントリオール北西郊外の街でセント・ローレンス川の少し下流 セリーヌの歌手としての活躍は、映画「タイタニック」(194分・米・1997)の主題歌「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン(タイタニック愛のテーマ)」とともに知っている人が多いと思う 本作では両親の出会い・婚姻そして彼女の幼少期から始まり、両親と14人兄弟姉妹が音楽を愛しながら一緒に暮らすという超大家族生活、デビューそしてその後の音楽活動、英語と米国カルチャーの勉強、彼女を売り出したマネジャーのルネ・アンジェリル(1942~2016・モントリオール出身)との大恋愛・結婚、喉・声帯の不調と治療、過酷な不妊治療と男子出産そして双子男子誕生、自宅とラスベガス等のショー劇場を往復する生活、彼女の大成功により一族が裕福になること等々が、すべて仮名人物を登場させて語られる 良く出来た音楽エンタメ作品であるとともに、歳の差婚の大恋愛を扱ったものでもある 本作ではヒロインはアリーヌ・デュー、24歳年上のマネージャーをギィ=クロードとして登場させている フランスの有名女優・監督であるヴァレリー・ルメルシェ(1964~・仏国ノルマンディー地方出身)が監督・脚本・主演を務めた 身長177cmの彼女が12歳のアリーヌも演じていることから、映像合成技術を駆使か 筆者もケベック州は2度訪れているが田舎では英語が全く通じなかったので、アリーヌが世界的歌手になるために英語を猛勉強したのは充分理解できる また、アリーナが父親がくれたコインのお守りをずっと大事にしていたこと、母親の言いつけを守りいろいろな場所で砂糖の小袋を集めていたことなどは微笑ましいエピソード 子育てとショー出演を両立させるため14年間街への外出をしなかったことには大いに驚いた 丸く大きな母親が全くのステージ・ママで、長兄がマネージャーの役割もこなし、姉たちがアリーナの家庭を支えるなど家族一丸となった支援と本人の我慢と頑張りにより、一族が成り上がるのはアメリカン・ドリーム(カナディアン・ドリーム)か 撮影は2019年3月~7月にフランス、スペイン、カナダ及び米国ラスベガスで行われたようだが、コロナ禍のため公開が遅れ、日本では2021年12月末に公開となった 原題は本作ヒロイン名の"Aline" 邦題はセリーヌの大ヒット・カバー曲「パワー・オブ・ラブ」(米・1993)のもじりか

キングスマン ファースト・エージェント(131分・英・米・2021) ⇒原作漫画家マーク・ミラー(1969~・英国スコットランド出身) と製作・脚本・監督を兼ねるマシュー・ヴォーン(1971~・英国ロンドン出身)がタッグを組んだ「キングスマン」シリーズの第3作目 1作目は「キングスマン」(129分・英・米・2015)、2作目は「キングスマン:ゴールデン・サークル」(141分・英・米・2017) 過去2作は全くのフィクションであったが、本作はボーア戦争(第二次:1899~1902)から第一次世界大戦(1914~1918)までの史実を踏まえたパロディ作品になっている 前2作同様、紳士たちが変身し華麗でど派手なアクションを展開し、観客を堪能させるところは変わらない 歴史上の人物が多数登場するが、新解釈によりユーモアと皮肉を充分に込めている ロンドンのサヴィル・ロウ街にある高級紳士服仕立店「キングスマン」が世界の戦争を防止するための私設スパイ組織の本拠になぜなったか、そしてどう貢献したかをフィクションとして描く 撮影は2019年1月に英国ロンドンやその郊外のルータム・パーク(公爵邸として利用)で始まり、同年4月からはトリノのヴェナリア宮殿でセルビア王国のシーンの撮影が行われたようだ 派手なアクション・シーンが多いため、VFXやスタントに多数のスタッフが動員されており、15,000人の雇用を生んだとしている コロナ禍に直撃されたため、公開は遅れに遅れ2021年12月下旬になった 原題は、これが最初のストーリーであるためか、単に"The King's Man"

82c3c206d6f8b5f2 ★★ダーク・ウォーターズ 巨大企業が恐れた男(126分・米・2019) ⇒フライパンの焦付き防止のために、現在も広く活用されているテフロン(フッ素樹脂塗布)加工は誰しも知っているだろう テフロンは米国デュポン社(本社:デラウェア州ウィルミントン)が1938年に発見し1941年に特許取得 同社は19世紀に火薬やダイナマイトで巨利を得た会社で、1935年にはナイロンの合成にも成功 テフロンは化学的にはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)と呼ばれ、テトラフルオロエチレン(TFE:炭素原子2個とフッ素原子4個からなる分子)の重合体で、フッ素原子と炭素原子のみからなるフッ素樹脂(フッ化炭素樹脂) TFEはエチレン(炭素原子2個と水素原子4個からなる分子)の水素原子をフッ素原子に置き換えたもの エチレンを重合(炭素原子同士がつながっている2本の手を1本ずつにばらして横に連結させること)させるとポリエチレン(化学繊維、フィルムなど身近に存在)になる PTFEは耐熱性、耐薬品性に優れ、最も摩擦係数が小さい物質として知られており、調理器具のコーティングのほか絶縁材、断熱材、潤滑剤などに広く活用されている PTFEは350℃以上に加熱し揮発させない限り毒性はなく問題ないようだが、問題はデュポンがPTFE製造時に添加するペルフルオロオクタン酸(PFOA:炭素原子8個、フッ素原子15個、酸素原子2個そして水素原子1個からなる分子)の毒性だった デュポンの工場があるウエスト・バージニア州パーカーズバーグ周辺でこのPFOAやC8(炭素原子8個からなるPFOA塩)が大量に廃棄されていた これらの物質は非常に安定しているため、一度動物の体内に入ると排出されず、ゆえに強い毒性を有し、多くの牛などの家畜が奇病で死に、また多くの住民及び従業員にもガンが発生していた 鼻の穴が一つの奇形児も誕生しており、その子供の時の写真や大人になった本人が画面に登場している 1998年に祖母が住んでいるパーカーズバーグの農場主からの訴えを聴いた、オハイオ州シンシナチの法律事務所でデュポンのために働いていた弁護士ロブ・ピロットが主人公 一度は依頼を断った彼が、後に現地の酷さを実際に観て、顧客であったデュポンを相手に闘い始めるというのが、この事実に基づいた物語の始まり 金儲けなら大企業側に付いた方が簡単だが、ロブは住民・被害者側に敢然と立ち、また事務所のボスもそれを許したところにこの話の真骨頂がある 企業の法廷闘争戦術に負けず、すべての資料公開に漕ぎ着け、ついには住民69万人の血液検査実施を実現する デュポン社は地元の大雇用主であり、学校、公共施設など地域社会に多大な貢献をしていたにもかかわらず、ほとんどの住民が血液検査に同意したことにこの問題の深刻さがうかがえる 日本の水俣病と同じ構図だが、それよりも深刻かもしれない 2年間の歳月を経て、C8と67種類の病気の関連がやっと明らかになり、2015年にオハイオ州の州都コロンバスの法廷で完全勝利 デュポン社はPFOA・C8の排出を止めることを表明したが、工場での使用は継続しているらしい 2016年にニューヨーク・タイムズ紙に掲載された本件公害に関する記事に感銘を受けた俳優マーク・ラファロ(1967~・米国ウィスコンシン州出身)が映画化を決意し、トッド・ヘインズ監督(1961~・米国ロサンゼルス出身)を担ぎ出したようだ 当然マークが主人公を演じている ロケ撮影は2019年にシンシナティ、パーカーズバーグなど、事実・事案が発生し進行した場所で行われた模様 米国公開は2019年11月だったが日本公開は2021年12月まで遅れた 原題は地味だが単に"Dark Waters"

d3c32987e3ffe822ドント・ルック・アップ(138分・米・2021) ⇒米国コメディ界で著名なアダム・マッケイ(1968~・ペンシルベニア州フィラデルフィア出身)が脚本・監督・共同製作を担当 彼は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」(130分・米・2015)の脚本・監督を務め、TVコメディ・バラエティ番組「サタデー・ナイト・ライブ」を1995~2001年に担当していただけあって、本作もハチャメチャなブラック・コメディ レオナルド・ディカプリオ(1974~・米国ロサンゼルス出身)、ジェニファー・ローレンス(1990~・米国ケンタッキー州ルイビル出身)、ケイト・ブランシェット(1969~・豪州メルボルン出身)、メリル・ストリープ(1949~・米国ニュージャージー州出身)そしてマーク・ライランス(1960~・英国ケント州出身)の5人のオスカー俳優という豪華キャストを起用しており、物語はグランドホテル方式(群集劇、群像劇、アンサンブル・プレイ:英語ではアンサンブル・キャストというらしい)としている ストーリーは地球に直撃衝突する軌道を進む彗星を発見した天文学者と助手が米国及び世界に危機を知らせようとするが、分断された世界でリーダー的な人物たちがそれぞれの部分的・限定的な関心・利益に拘るため、なかなか思うように進まない様子を描く 再選だけに異常に興味を示す米国大統領、先送りを得意とする行政府の役人たち、偏向した報道をするメディア、技術開発・宇宙開発に邁進する大金持ち等々、どこかで見かけたような人物たちが次々に登場 最後のオチも見物 ロケ撮影は2020年11月~2021年2月に、米国マサチューセッツ州のボストン、ブロックトン、フレイミングハム、ウェストボローなどの各都市で行われたようだ 作品中ではボストンの街並をニューヨークの街並としている 2020年2月にネットフリックスが本作の配給権を買い取ったが、コロナ禍のため撮影が遅れ、2021年12月末に配信開始予定となり、一部劇場では12月上旬に先行して公開 これもネットフリックスのマーケティング戦術と思われる 原題も"Don't Look Up"で、直訳すると「見上げるべからず」か

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2021年12月26日 (日)

12月17日~12月23日の週に観た劇場映画

12月17日(金曜)~12月23日(木曜)の週は4本の劇場映画を観た

モスル あるSWAT部隊の戦い(102分・米・2019)
マトリックス レザレクションズ(148分・米・2021)
偶然と想像(121分・日・2021)
私はいったい、何と闘っているのか(114分・日・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

モスル あるSWAT部隊の戦い(102分・米・2019) ⇒米国の雑誌「ザ・ニューヨーカー」に掲載され、全米で注目された、事実に基づく記事を映画化した作品 2003年米軍によりイラクのフセイン政権が崩壊した後は、イラク国内はいくつもの武装勢力が群雄割拠する状態に イラク第2の都市モスルは2014~2017年の間、イスラム過激派組織ISIS(Islamic State of Iraq and Syria)の支配下に ISISはISIL(Islamic State of Iraq and the Levant)又はアラビア語でダーイッシュとも呼ばれる 本作ではモスル出身の精鋭警察官からなるSWAT(特殊部隊)が、ある目的のためにISISと激しい戦闘を行う姿を描く 全面的にアラブ系のキャストを使い、言語はアラビア語とするなど、リアリティに拘っている 冒頭に、ドローン撮影した、激しい攻防戦で荒れ果てたモスルの街並の実際の映像を流し、またモロッコのマラケシュにモスルの廃墟セットを造りロケ撮影したとのこと 「ザ・ニューヨーカー」の記事を読んだルッソ兄弟が製作に取組み、マシュー・マイケル・カーナハン(米国ミシガン州出身)が脚本と監督を兼ねた ルッソ兄弟とはアンソニー・ルッソ(1970~・米国オハイオ州クリーブランド出身)とジョー・ルッソ(1971~)の兄弟で、マーヴェルの「キャプテン・アメリカ」シリーズや「アヴェンジャーズ」シリーズを監督 原題は単に"Mosul"だが、原語の発音は「モースル」に近いようだ

マトリックス レザレクションズ(148分・米・2021) ⇒マトリックス・シリーズは3部作「マトリックス」(136分・米・1999)「マトリックス リローデッド」(138分・米・2003)そして「マトリックス レボリューションズ(129分・米・2003)で完結したと思っていた これらは新しいカメラ・ワークやアクションを取り入れて、いずれも全世界で数百億円かそれ以上の興行収入を達成している しかしながら、今回20年の歳月を経て本作第4作目が登場 コンピューター・ゲーム世界(AI世界)と人間実世界との関係・交流、そして相互の因果関係については相変らず筆者には分かりにくい 東洋・日本趣味を取り入れ、カンフー・アクションやワイヤー・アクションを活用し、パレットタイムというSFX(Special Effect:特殊効果・特殊撮影)技術も健在 ラナ・ウォシャウスキー(1965~・米国イリノイ州シカゴ出身)が監督し、脚本・製作すべてに係わる 3部作の時はウォシャウスキー兄弟として脚本・監督を担当していたが、現在はウォシャウスキー姉妹 主演のキアヌ・リーブズ(1964~・レバノン・ベイルート生まれ、加国トロント育ち)とキャリー=アン・モス(1967~・加国ブリティシュ・コロンビア州出身)も健在 エンド・クレジットによれば、スタントは100人程度で多めだが、VFX関係は数100人規模とやや少なめ 撮影は2020年2月に米国サンフランシスコで開始され、独国ポツダムにあるバーベルスベルク・スタジオと米国シカゴでも行われたが、3月にCOVID-19パンデミックにより中断 8月に独国ベルリンで再開され11月に終えたようだ 原題も"The Matrix Resurrections"だが、直訳すると「マトリックス復活」か

5e2cb28b44bd77c2偶然と想像(121分・日・2021) ⇒濱口竜介監督(1978~・神奈川県出身)が脚本から製作した、短編3部からなるオムニバス作品 本作で今年(2021年)の第71回ベルリン国際映画祭の銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞 短編3部は、「第一話 魔法(よりもっと不確か)」「第二話 扉は開けたままで」そして「第三話 もう一度」からなる いずれも組合せを変えながらも出演者2人の間の稠密で素早い会話から構成され、まるで舞台演劇を観ているよう 現実にありそうな話題を扱っているが、裏に隠された感情、時には長い間こだわっていた想いがうかがえる オチも秀逸 撮影は2019年8月に第二話、10月に第一話そして2020年6月に第三話を行った模様 2020年3月に撮影開始した「ドライブ・マイ・カー」(179分・日・2021)とロケハンを共用したようだ 濱口監督はコロナ禍の中でも実に忙しく精力的な活動をしていたと思う ロケ地は第一話が東京都渋谷区・港区など、第二話が埼玉県川口市、東京東映撮影所(東京都練馬区)など、そして第三話が仙台市、スタジオモン自由が丘スタジオ(東京都世田谷区)などのようだ

4b2a9706c5d7b0e0私はいったい、何と闘っているのか(114分・日・2021) ⇒つぶやきシロー(1971~・栃木県出身)の同名小説が原作 監督は李闘士男(りとしお:1964~・大阪市西成区出身)で、「家に帰ると妻が必ず死んだふりをしています。」(115分・日・2018)でもタッグを組んだ安田顕(やすだけん:1973~・北海道室蘭市出身)を主役に起用 主役は地元密着型のスーパーマーケットの万年主任 必要とあれば休みを返上して難問解決にあたる お客さん、従業員、家族、そして地域住民みんなの幸せを最優先する そんな超善良な小市民の生活を笑いと悲しみに包みながら描く 鑑賞している観客全員が何となくホッとし癒される作品 ロケ撮影は、埼玉県上尾市、栃木県足利市、静岡県下田市、沖縄などで行われた模様 メインの舞台となるスーパーマーケットは、上尾市にあるスーパー「ヤオヒロ」の小泉店と浅間台店がロケ地として使われたとのこと

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2021年12月19日 (日)

12月10日~12月16日の週に観た劇場映画

12月10日(金曜)~12月16日(木曜)の週は2本の劇場映画を観た

ラストナイト・イン・ソーホー(115分・英・2021)
ローラとふたりの兄(105分・仏・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

351fc20cb85e64f5ラストナイト・イン・ソーホー(115分・英・2021) ⇒1960年代のロンドンの文化・芸術・生活に強烈な郷愁を表現した作品 1960年代の音楽に始まり、ロンドンのソーホー(SOHO)地区での当時のファッション、ダンス、カフェ、バー、クラブ、歌唱・ダンス・ショーなどが走馬灯のように次々と現れる 音楽では冒頭からピーター&ゴードン(英)の「愛なき世界 "A World without Love"」(1964・ポール・マッカートニーが作詞・作曲)が流れ、サーチャーズ(英)の"Don’t Throw Your Love Away"(1964)などが続き、ペトゥラ・クラーク(1932~・英国ロンドン南西郊外のエプソム出身)が歌った「恋のダウンタウン "Downtown"」(1964)をオーディション曲として使う ダンス・シーンではウォーカー・ブラザーズ(米国出身、英国で活躍)の「ダンス天国 "Land Of 1000 Dances"」(1965)に合わてダンス これら楽曲は筆者も中学生時代によく耳にした 物語はファッション・デザイナーを目指す、現代の女学生エロイーズと、1960年代のソーホーでディーバ(歌姫)を目指すサンディが時空を超えて接触する、ファンタジーでサイコロジカルなホラー作品といえよう トーマサイン・マッケンジー(2000~・ニュージーランド・ウェリントン出身)がエロイーズ役を、アニャ・テイラー=ジョイ(1996~・米国フロリダ州マイアミ出身)がサンディ役をそれぞれ演じる 「ベイビー・ドライバー」(113分・英・米・2017)の監督・脚本・製作総指揮を担当したエドガー・ライト(1976~・英国ドーセット出身)が原案・製作・脚本・監督を兼ねる ロケ撮影は2019年5月に実際のソーホーで行われ、現存する建築物にセットなどを組み合わせ、また多数のエキストラを動員したようだ ユー・チューブにはライト監督と共同脚本のクリスティ・ウィルソン=ケアンズ(1987~・英国グラスゴー出身)がソーホーのロケ地巡りをしている動画が掲載されている 原題も"Last Night in Soho"だが、直訳すると「昨夜ソーホーで」か

85d8c9bd665fb829ローラとふたりの兄(105分・仏・2021) ⇒フランス西部の地方都市アングレームに暮らす、中高年の3人兄妹の日常と友情を描いた作品 フランスではごく普通のことであろう離婚・再婚、また失業、父子家庭、不妊治療などについて、シリアスになり過ぎず気楽にややコメディ的に表現 日本とも結構共通な話題が多いと思う 妹がヒロインのようだが、やや仲違いする2人の兄たちの間を取り持ち、さらに自分の悩みにも向き合う リュディヴィーヌ・サニエ(1979~・仏国パリ西方郊外ラ・セル=サン=クルー出身)がヒロイン役を演じ、ジャン=ポール・ルーヴ(1967~・仏国ダンケルク出身)が監督で長兄役も演じている 原題は"Lola et ses frères"(仏)=Lola and her brothers=「ローラと彼女の兄弟」

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2021年12月12日 (日)

12月3日~12月9日の週に観た劇場映画

12月3日(金曜)~12月9日(木曜)の週は4本の劇場映画を観た

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ(98分・米・2021)
パーフェクト・ケア(118分・米・2020)
悪なき殺人(116分・仏・独・2019)
劇場版 きのう何食べた?(120分・日・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ(98分・米・2021) ⇒こう言っては失礼だが、観たい作品が満席だったので時間つなぎで鑑賞 いつもゲームでラスボスと戦っている皆さんにはたまらない作品だろう マーヴェルとソニー(コロンビア)共同製作の「ヴェノム」(2018)の続編 撮影はまず2019年11月~2020年2月に英国ロンドン北西郊外にあるワーナー・ブラザーズのリーヴズデン・スタジオで行われた 続いて2020年2月~3月に本作の舞台である米国サンフランシスコでロケ撮影した模様 サンフランシスコでは12月17日に日本公開の「マトリックス レザレクションズ」(米・2021)とロケ撮影がかぶっていて、「マトリックス」のヘリの映像を借用したという話がある 終盤の激闘シーンの舞台はサンフランシスコのノブ・ヒルにあるグレース大聖堂とのこと 映像創造・合成作業の多いこの手の作品は、ポスプロがとても大がかりで、エンド・クレジットを見るとVFX関係ではざっと1,000人位の名前が登場 さらに音楽関係にも200~300人の名前を列挙 原題は"Venom: Let There Be Carnage"で邦題どおりだが、直訳すると「ヴェノム:さあ皆殺しだ」という感じか "venom"は固有名詞として使われているが、元々「毒液、悪意、蔑視」などの意味があるようだ

0d0dbb8514963bfeパーフェクト・ケア(118分・米・2020) ⇒「ゴーン・ガール」(米・2014)で善悪ないまぜの名演技を見せたロザムンド・パイク(1979~・英国ロンドン出身)がまたやってくれた 前半は悪徳法定後見人(パイク)が医師や介護施設とグルになって、孤独な資産家老人を介護・搾取するというブラック・ビジネス・ライクな展開 しかし、後半は一気に緊張感が増し悪対悪の対決になるが、それでも女だてら一歩も引かないところが、欧米流のウーマン・リブ(ちょっと古いかも)か 全編にブラック・ユーモアが行き届いており、ロシア・マフィアの親分役に小柄なピーター・ディンクレイジ(1969~・米国ニュージャージー州出身)を起用したのも面白い ロケ撮影は、エンド・クレジットを見る限り、米国ボストンとその近郊で行われたようだ また「007」シリーズの撮影で有名な、英国ロンドン西部郊外にあるパインウッド・スタジオでも撮影を実施している模様 原題は"I Care a Lot"=「私は充分に面倒を見ている」 "much"と"a lot"は同じような意味だが、前者は「やや足りない」、後者は「充分な」というニュアンスを含むらしい ここでの"a lot"は「充分すぎる」という意味まで達していて、さらに「充分金儲けに利用している」という感じだろう 邦題もそれなりだが…

b3abc0aa414388cb悪なき殺人(116分・仏・独・2019) ⇒原作はフランスの小説家コラン・ニエル(1976~)の作品"Seules les bêtes"(仏・2017・邦訳なし)="Only the beasts" or "Only the Animals"=「獣ばかり」か フランスのドミニク・モル監督(1962~・西独出身・父が独人、母が仏人)が映画化 舞台はフランス中央高原のコース地方という石灰岩台地が密集する荒涼とした場所 冒頭から登場人物一人ひとりについてパズル状に描写シーンが続く 繰り返しもあるがだんだん裏の裏が解明されていくという構成 ついには最近のインターネット上の様々な活動も登場し、旧仏領のコートジボワール(象牙海岸)・アビジャンに住む黒人青年たちにもつながる 最後にすべての謎が明らかになるが、人生は嘘と誤解でできているような錯覚を覚える 2019年の第32回東京国際映画祭でも上映された ロケは仏コース地方とコートジボワール・アビジャンで行われた模様 原題は原作小説どおりだが、意訳の邦題も悪くはない

劇場版 きのう何食べた?(120分・日・2021) ⇒原作はよしながふみ(1971~・東京都出身)の連載漫画「きのう何食べた?」(2007~) 女優の吉永小百合と檀ふみからペンネームをもらったという漫画家はボーイズラブ(BL)系の作品も得意としているようだ 「嘘を愛する女」(2018)の中江和仁監督(1981~・滋賀県出身)が原作漫画をまずテレビドラマ化(2019@テレビ東京) それが大ヒットとなったので、さらに劇場版として製作したものが本作とのこと ゲイのカップルを西島秀俊(1971~・東京都八王子市出身)と内野聖陽(うちのせいよう・1968~・横浜市出身)がダブル主演で演じた 西島は普通の弁護士役だが、内野は美容師のオネエ役なので、テレビドラマでの役作りには苦労したものと想定される ロケ地は、エンド・クレジットからは、京都市、東京都杉並区・中野区、埼玉県大宮、群馬県前橋市、神奈川県秦野市などと思われる 筆者は京都が大好きなので、特に冒頭に登場する八坂通り、八坂庚申堂、平安神宮、南禅寺、高台寺(竹林、紅葉ライトアップを含む)などの京都の風景・風物には癒された ロケ撮影時期は2020年の暑いシーズンだったようだ

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2021年12月 5日 (日)

11月26日~12月2日の週に観た劇場映画

11月26日(金曜)~12月2日(木曜)の週は3本の劇場映画を観た いずれも感動の大作だった

護られなかった者たちへ(134分・日・2021)
そして、バトンは渡された(137分・日・2021)
MINAMATA ーミナマター(115分・米・2020)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

56359b8269035021護られなかった者たちへ(134分・日・2021) ⇒原作は中山七里(なかやましちり、1961~・岐阜県出身)の同名推理小説(2018) 東日本大震災(2011)後の仙台を舞台に、生活保護制度を巡る軋轢と殺人事件を扱う社会派ミステリー 中山の小説が映画化されるのはこれが3作目 監督は「64-ロクヨン-」(2016)の瀬々敬久(せぜたかひさ、1960~・大分県豊後高田市出身) 佐藤健(さとうたける、1989~・さいたま市岩槻区出身)、阿部寛(1964~・横浜市神奈川区出身)、清原果耶(きよはらかや、2002~・大阪市出身)などが出演 人間愛の崇高さを描くとともに社会制度の全体最適と部分最適との矛盾に迫る、お涙頂戴の作品 撮影は2020年夏に行われたようで、ロケ地は宮城県仙台市、気仙沼市、石巻市、塩竃市など 2020年冬の公開を目指していたが、今年10月1日に延期された 主題歌は桑田佳祐(1956~・神奈川県茅ケ崎市出身)の「月光の聖者達(ミスター・ムーンライト)」(2011)

b710a0d38d158e6fそして、バトンは渡された(137分・日・2021) ⇒2019年の第16回本屋大賞を受賞した、瀬尾まいこ(1974~・大阪市出身)の同名ベストセラー小説(2018)を映画化 2021年10月現在で小説の累計発行部数が110万部以上とのこと 1人の少女がいろいろな、ありそうでなさそうな苦難を乗り越えて成長する姿を描く 実父1人、継母1人、継父2人の下で育てられるのは全くのファンタジーと思われるが、明るく前向きに生きる様子は共感と涙を呼ぶ 観客の大多数は女性で泣いていた模様 監督は同時期に公開された「老後の資金がありません!」(2011)の前田哲(まえだてつ、大阪出身) ヒロインは永野芽郁(ながのめい、1999~・東京都出身)、その小学生時代を稲垣来泉(いながきくるみ、2011~)が演じた 実父は大森南朋(おおもりなお、1972~・東京都出身)、継母は石原さとみ(1986~・東京都出身)、2人の継父は市村正親(1949~・埼玉県川越市出身)と田中圭(1984~・東京都江東区亀戸出身)がそれぞれ起用された 永野と田中そして稲垣と石原の組合せの演技が多く、大部分のシーンはこれら またヒロインと岡田健史(1999~・福岡市東区出身)が扮する同級生⇒恋人のピアノ演奏場面も見所 配給元のワーナー・ブラザースが予告、メイキング、インタビューなど多数の映像をYouTubeに掲載しており、写真は2021年10月5日に行われたジャパンプレミアの一コマ 撮影は2020年10月20日~11月26日に行われ、ロケ地は栃木県、千葉県、東京都、兵庫県など各地にわたっており、ロケハンには一苦労あったと思う
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38e4ebecba94d935MINAMATA ーミナマター(115分・米・2020) ⇒ウィリアム・ユージン・スミス(1918~1978・米国カンザス州ウィチタ出身)とアイリーン・美緒子・スミス(1950~・東京出身・父が米国人)の写真家夫妻が水俣市(熊本県)で撮影活動した様子などをドキュメンタリー風に製作した作品 スミス夫妻は1971年から3年間水俣市に移り住み取材を続け、1975年に米国で念願の写真集「MINAMATA」英語版を出版(日本語版は1980年出版) この写真集は世界中で大反響を呼び、水俣病の悲惨な実情が広く世界に知られることとなった 水俣病が公式に確認されたのは1956年だが、政府がその原因を特定したのが1968年 それまでチッソ水俣工場は有機水銀(メチル水銀等)を含んだ排水を無処理で垂れ流し続けた 背景に原因を知りながらその事実を隠し続けた会社と通産省の隠蔽体質がある 患者家族がチッソを相手に起こし全面勝訴した第1次訴訟が1969~1973年(本作で描かれたもの)、水俣病被害者救済法(特措法)が成立したのは2009年のこと また1976年にはチッソ経営者2人の業務上過失致死罪有罪が確定 こうして被害者補償が進むこととなったが、いまだに被害と補償の問題は続いている 本作ではユージン・スミスを製作も兼ねるジョニー・デップ(1963~・米国ケンタッキー州出身)が、アイリーンを美波(みなみ、1986~・東京都出身・父がフランス人)がそれぞれ演じている 2人の出会い、来日の経緯、チッソ水俣工場への潜入などの描写は、事実と異なるフィクションらしいが、水俣病に苦しむ住民たちの生活に鋭く迫っている 他に真田広之(1960~・東京都品川区出身)、國村隼(くにむらじゅん、1955~・大阪市出身)、加瀬亮(1974~・横浜市出身)、浅野忠信(1973~・横浜市出身)などの国際派俳優陣が出演 音楽もまた世界的に活躍している坂本龍一(1952~・東京都中野区出身)が担当 ユージンの死後アイリーンが写真集の著作権管理をしていたが、遺族の意向もあり水俣病の被害を象徴する代表作「入浴する智子と母」は非公開とされていた 今回本作のメッセージを正しく伝えるためにはこの写真が必要と封印を解いたとのこと 撮影は2019年1月~3月にセルビア・ベオグラードとモンテネグロ・ディヴァト・花の島で行われたという ベオグラードの倉庫内のセットで内装を撮影し、ディヴァトで海岸・外観を撮影したようだ 熊本県芦北町でも若干のロケ撮影は行われたようだが、現在の水俣には1970年代の雰囲気が全く残っておらず、奇蹟的にそれによく似ているディヴァト海岸に辿り着いた模様 最終日近くにディヴァト海岸で撮影した住民が集合するシーンでは、欧州などから大勢の日本人エキストラが集められたそうだ 原題も"Minamata"

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2021年11月28日 (日)

11月19日~11月25日の週に観た劇場映画

11月19日(金曜)~11月25日(木曜)の週は2本の劇場映画を観た

パワー・オブ・ザ・ドッグ(128分・ニュージーランド・豪・2021)
ONODA 一万夜を越えて(174分・仏・独・ベルギー・伊・日・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

752e69ff2c20373fパワー・オブ・ザ・ドッグ(128分・ニュージーランド・豪・2021) ⇒原作はトーマス・サベージ(1915~2003・米国ユタ州ソルトレイクシティ出身)の小説「パワー・オブ・ザ・ドッグ」(1967、邦訳:2021) それに惚れ込んだジェーン・カンピオン監督(1954~・ニュージーランド・ウェリントン出身)が脚本も兼ね製作 同監督は「ピアノ・レッスン」(1993)で第46回カンヌ国際映画祭(1993)の最高賞パルム・ドールを受賞しているが、本作でも第78回ヴェネツィア国際映画祭(2021)の銀獅子賞(監督賞)を獲得 本作の舞台は茫漠な土地が拡がる、1920年代の米国モンタナ州 主人公の兄弟は広大な牧場を所有し、多くの牛を放牧・飼育している 兄弟は性格が全く異なり、兄は無骨骨太で根っからのカウボーイだが、弟は慎重居士で事務作業に明るい 一種の西部劇だが、第一次世界大戦(1914~1918)勝利後に米国が世界最強国となる過程の話であり、田舎とはいえ車が走り街には病院もある 弟がバツイチの女性と結婚することになり、兄と弟の嫁そしてその連れ子との確執が明らかに 兄の性癖など細部について徐々にやや恐怖が増すように描写され、微妙なクライマックスを迎える 兄フィルを「モーリタニアン 黒塗りの記録」(129分・英・2021)にも出演していたベネディクト・カンバーバッチ(1976~・英国ロンドン出身)が熱演 彼はむさ苦しく、臭いカウボーイになりきるため、監督の指示もあって、1週間風呂に入らずに役作りをしたらしい ロケ撮影はコロナ禍による中断もありながら、全編ニュージーランドで行われたとのこと ネットフリックスでも無料配信しているようだ

d58e3c549f73c39bONODA 一万夜を越えて(174分・仏・独・ベルギー・伊・日・2021) ⇒小野田寛郎(おのだひろお:1922~2014・和歌山県亀川村・現海南市出身)は元予備陸軍少尉で、情報将校として太平洋戦争(1941~1945)に従軍したが、戦争終結後もフィリピン・ルパング島に残留しゲリラ戦を続けた 戦争終結29年後の1974年に日本に帰還した時は日本で大ニュースとなった 彼の実話を基にフランスのアルチュール・アラリ監督(1981~・パリ出身)が脚本も担当し、フィクションとして製作したのが本作 いわゆる負け犬だった小野田は陸軍中野学校二俣分校(@静岡県浜松市天竜区)でゲリラ戦(遊撃船)についての教育を受け、それが彼が生き延びる原動力となったようだ 中野学校は当初諜報・スパイの教育を行う機関としてスタートしたが、戦局悪化に伴いゲリラ戦の教育機関に変化 最後まで生き延びて目的を達することが小野田の至上命題となり、米軍からの戦争終結広報や日本からの捜索隊を敵側のプロパガンダと見做したらしい 生き延びる過程で、30人前後のフィリピン現地人を殺害していることは忘れてはいけない 主人公の小野田は青年期を遠藤雄弥(1987~・神奈川県厚木市出身)が、青年期を津田寛治(1965~・福井市出身)がそれぞれ演じた 筆者も生前の小野田寛郎氏本人と2、3度お会いしているが、小柄な好々爺にしか見えなかった 第74回カンヌ国際映画祭(2021)でも上映されたが、3時間近い長編は鑑賞に少々疲れた エンド・クレジットがフランス語だったのでややチンプンカンプン ロケ撮影はカンボジア南部のガンボットにて行われた模様

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2021年11月21日 (日)

11月12日~11月18日の週に観た劇場映画

11月12日(金曜)~11月18日(木曜)の週は7本の劇場映画を観た コロナ禍で長期間中断していた劇場映画鑑賞をついに再開 いつまた中断になるか分からないので精を出すすもり

アイス・ロード(109分・米・2021)
★★モーリタニアン 黒塗りの記録(129分・英・2021)
007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(164分・米・2021)
老後の資金がありません(115分・日・2021)
キャッシュトラック(118分・米・英・2021)

皮膚を売った男(104分・チュニジア・仏・ベルギー・スウェーデン・独・カタール・サウジアラビア・2020)
ドライブ・マイ・カー(179分・日・2021)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

dd3a3dc77e1045e2アイス・ロード(109分・米・2021) ⇒筆者の劇場映画鑑賞再開を記念する第1作は、名優リーアム・ニーソン(1952~・英国北アイルランド出身)が主演する本作 ニーソンにはスティーヴン・スピルバーグ監督(1946~・米国オハイオ州シンシナティ出身)の作品「シンドラーのリスト」(米・1993)で主演して以来注目 筆者より1歳年下だが元気一杯で、このところ本作のようなアクション映画で大活躍 本作では重量30トンのトレーラー・トラックが氷上を疾走し、カーチェイスや殺陣もある CGやVFXは余り使わず、カナダ・マニトバ州のウィニペグ湖でほとんどロケ撮影したらしい 氷の割れ目から水中に入るシーンがあるがノー・スタントで演技したとのこと ストーリーには重大な裏切りなども登場するが、ハラハラしながらも全般的には安心して観られる エンド・クレジットには大道具係、ドライバー、スタントマンなどの名前が多く並ぶ VFX関係は数10人で、この種の作品では少ない 本作もかなり前に完成していたと思われ、ニーソンの次作「マークスマン」(108分・米・2021)も来年早々に公開予定 本作原題も"The Ice Road"

1d67272fe17eacc3★★モーリタニアン 黒塗りの記録(129分・英・2021) ⇒原作はモハメドゥ・ウルド・スラヒ(1981~・モーリタニア出身)著の「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」(2015、英語版は"Guantanamo Diary" 2015) 原作を読んだ「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」(2014・米)主演のベネディクト・カンバーバッチ(1976~・英国ロンドン出身)が映画化を熱望し、事実に基づいたドキュメンタリー風の本作製作が実現 モハメドゥは2001年9月11日に起きた米国同時多発テロの容疑者として母国モーリタニアで米国が拉致・誘拐 ヨルダン⇒アフガニスタン⇒米国アリゾナ州アルバカーキと移送され、最後にキューバにある悪名高いグアンタナモ米軍基地に収容される ここでは今やよく知られているが、尋問に加えて音、光、水、睡眠剥奪、女性による強制性交などの特殊拷問もモハメドゥに対し2003~2005年に平然と行われた 2005年に弁護を担当することになった、名優ジョディ・フォスター(1962~・米国加州ロサンジェルス出身)扮する弁護士の尽力により、ついに2010年に拘束は不当と裁判で勝訴 この陰にカンパーバッチ扮する米軍検察官による良心に基づく辞任があった しかし、モハメドゥがグアンタナモ収容所から解放されたのはさらに6年後の2016年 この収容所はジョージ・W・ブッシュ米国第43代大統領(2001~2009:1946~・米国コネチカット州ニューヘイヴン出身)の時代に、ドナルド・ラムズフェルド国防長官(1932~、米国イリノイ州シカゴ出身)により設置されたもの バラク・オバマ米国第44代大統領(2009~2017:1961~米国ハワイ州ホノルル出身)が閉鎖する方針を表明したものの、いまだに実現していない アメリカは正義の国だと思っていたモハメドゥがそれでも「愛と赦し」を信じ、彼の母国語では「自由」という語は「許す」という意味でもあると語るのは実に感動的 米国が法治で正義の国だと思っていた者にとっては本作は非常にショッキングな作品であり、余りチャイナの実態と変わらないではかとも感じてしまう しかし、このような作品が英国BBCによって製作・上映され物事の裏側の恥部が晒されることが、誤りがあってもすべてを明らかにしようとする民主主義に基づく透明性はチャイナのそれと大きく違うことは明白 たまたま本年6月にラムズフェルドが亡くなったのは何かの因縁か グアンタナモ収容所の撮影は南アフリカにセットを造り行われたようだ 原題は単に"The Mauritanian"

007 ノー・タイム・トゥ・ダイ(164分・米・2021) ⇒MI6(英国秘密情報員)の6代目007号ジェームズ・ボンドを演じていたダニエル・クレイグ(1968~・英国チェスター出身)の5作目で卒業作品 コロナ禍のため完成後公開延期が続き、上映まで2年近くを要した 冒頭からの車やオートバイを使ったアクションから始まり、最後まで各種アクションは派手で魅力的だが、2時間45分という尺はやや長すぎないか 父方日系のキャリー・J・フクナガ(1977~・米国加州オークランド出身)が米国人として初監督を務めた 車・バイク・服・時計などのプロダクト・プレイスメント、また日本の前掛けや畳が登場するなどいろいろな話題に事欠かない かなりの撮影は英国ロンドンの北部郊外にあるいつものパインウッド撮影所で行われた模様 スタントも多いし、VFX担当も数100人と少なくない 原題は単に"No Time to Die"

73e7d1fce9a72ccf老後の資金がありません(115分・日・2021) ⇒垣谷美雨(1959~・兵庫県豊岡市・旧出石町出身)著の同名小説(2015)を映画化 「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」(2018)の前田哲が監督 人生100年時代の老後資金について、全編軽いコメディながらもいろいろな含蓄がある 親の介護、親の葬儀、兄弟姉妹の確執、子供の結婚などについて具体的な課題提示 しかし、最後のオチがこれで本当にいいのかどうかは不明 天海祐希(1967~・東京都台東区出身)が主演で、草笛光子(1933~・横浜市神奈川区出身)が義母の重要な役 区役所委員の役で劇作家・脚本家・演出家・映画監督の三谷幸喜(1961~・東京都世田谷区出身)も登場 ロケ地は東京都世田谷区自由が丘や千葉県大網白里市(九十九里浜沿岸)などらしい 氷川きよし(1977~・福岡市出身)が唄う主題歌「Happy!」も面白い

キャッシュトラック(118分・米・英・2021) ⇒米国LA(加州ロサンジェルス)を舞台にした現金輸送車(キャッシュトラック)を巡るガン・アクション大作 撃合いが大好きな映画ファンにはもってこいか 今やハリウッド・アクション・スターのジェイソン・ステイサム(1967~・英国ダービシャー出身)とガイ・リッチー監督(1968~・英国ハートフォードシャー出身)の黄金コンビが復活 ただ主役が余りにも不死身で無敵のような気もするが 原題は"Wrath of Man"=「男の怒り・憤り」だが、分かりやすくするために現金輸送車を意味する邦題に変更したものか

皮膚を売った男(104分・チュニジア・仏・ベルギー・スウェーデン・独・カタール・サウジアラビア・2020) ⇒カウテール・ベン・ハニア(1977~・チュニジア出身・女性)が監督と脚本を兼ねた 内戦の続くシリアから抜け出して欧州にいる恋人に会いたい男が主人公 彼はとある著名芸術家に出会い、真に奇妙な芸術作品として欧州に脱出することになる 数奇な経験を経て主人公は新しい人生に 原題は"L'Homme qui a vendu sa peau"(仏)="The Man Who Sold His Skin"(英)で邦題どおりか

ドライブ・マイ・カー(179分・日・2021) ⇒月刊「文藝春秋」2013年12月号に掲載された村上春樹(1949~・京都市伏見区出身)著の「ドライブ・マイ・カー」が原作 筆者も当時すぐに読んだが、本映画作品は相当に脚色されているようだ 筆者にはほぼ3時間の尺は少々長すぎるように感じた 多くの話題作品を創り出している濱口竜介(1978~・神奈川県出身)監督が映画化を熱望し脚本も兼ねた スウェーデンの名車サーブの走行とアントン・チェーホフ(1860~1904・露タガンログ出身)作の劇中劇「ワーニャ伯父さん」(1899・1900)公演に係わる部分がキーになる場面 ロケ地は広島県広島市・呉市・東広島市、東京、千葉、北海道赤平市などのようだ 車の自由な走行を撮影するために当初は韓国釜山でのロケを想定したようだが、コロナ禍で広島県に主要ロケ地変更した模様

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