カテゴリー「映画(2023年)」の7件の記事

2023年4月30日 (日)

3月に観た劇場映画

3月は5本の劇場映画を観た やっと3月分を書き上げた

フェイブルマンズ(151分・米・2022)
Winny(127分・日・2023)
メグレと若い女の死(89分・仏・2022)
エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(139分・米・2022)
零落(128分・日・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

fb0168d540c2915bフェイブルマンズ(151分・米・2022) ⇒世界最高のヒット映画作品を次々と生み出すスティーヴン・スピルバーグ監督(1946~・米オハイオ州シンシナティ出身)が製作した自伝的作品 映画に興味を持ち魅入られた少年時代からユニバーサルで映画製作に係われるようになるまでの家族の歴史を描く やや長編だがあきることはない 月刊文藝春秋4月号に掲載されている、ジャーナリストの成田陽子が書いている「スピルバーグが語るスピルバーグ」によれば本作のタイトルには彼のファミリー・ネームと次のような関連があるという スピルバーグは元々のドイツ語では「娯楽山・芝居山」という意味 本作原題"The Fabelmans"は「おとぎ話一家・寓話家族」という意味でこれはスピルバーグ一家を指しているのだという スピルバーグ少年がニュージャージー州在住時代に最初に魅入られた劇場映画はセシル・B・デミル監督(1881~1959・米マサチューセッツ州アシュフィールド出身)の「地上最大のショウ」(152分・米・1952) スピルバーグ少年は、父親の仕事の関係でアリゾナ州に移住した後、17歳の時にカリフォルニア州のユニバーサル・スタジオ・ツアーでうまくもぐり込みジョン・フォード監督(1894~1973・米メイン州ケープ・エリザベス出身)に短時間面会 フォード監督の「リバティ・バランスを射った男」(123分・米・1962)に憧れていたそうだ 家族キャンプの時に撮影された母親の秘密やカリフォルニア州立大学進学後に受けたユダヤ人差別も隠さずに表現されている コロナ禍で外出制限が課された時期に皆が内省的になったようで、映画監督の自伝的あるいは劇場映画に関する作品が連続しているような気がする 撮影は2021年に米国カリフォルニア州ロサンゼルス近郊で行われたものと想定される

846713d29b7eaad0Winny(127分・日・2023) ⇒本作を理解するためにはまずWinnyとはいったい何なのかをある程度分かっていなければならないと思う 筆者の理解はこうだ 今は家庭にあるパソコン(PC)もいつもネットワーク(インターネット)につながっている 何かの情報・データ・コンテンツ(映像やゲーム)を交換あるいは配付したいと考えれば、PCからPCへ直接送り込めるはず(これは普通はコンピュータを介して行われるので、コンピュータにはいつ誰が何を交換・配付したかが記録として残ってしまう) これをできるようにしたのがWinnyだったと思う 映画作品やゲームのファイルを探せるようにすれば、悪意があれば、というかただちに著作権を無視して無料でコンテンツを入手できる訳だ 半分面白半分で始まったのかもしれないが、著作権で収入を得ている者たちにとっては悪夢のような話 しかもすべては暗号化されており、誰が誰にファイルを渡したかが分からないようにしてあったようだ Winnyは当時東大特任助手だった本作の主人公金子勇(1970~2013・栃木県現栃木市出身)=東出昌大(1988~・埼玉県出身)が2003年に公開したところ、急速に広く使われるようになった ネットを使ったサイバー犯罪に先進的に取り組んでいた京都府警が、2001年には著作権法違反でこの種のファイル共有(交換)ソフト利用を摘発し始めた ネット犯罪の場合どこにでも被害が発生する可能性があるので、京都府警は京都府で発生した事件として京都府以外に在住する被疑者にもどんどん手を伸ばし成果を求めたようだ 一方で府警内での裏金作りも行っており、それも本作内で欺瞞として描かれている 金子は2004年に京都府警により逮捕され、著作権法違反ほう助という疑いで京都地方裁判所に検察により起訴された 2006年12月京都地裁は罰金150万円という判決を言い渡すが、検察側・被告側両者とも控訴 2009年10月大阪高裁では逆転無罪となり、2011年12月最高裁も検察の上告を棄却し無罪が確定 本作では金子の逮捕から弁護団の編成、弁護費用の寄附募集、主に地裁の裁判模様、そして彼の死などが描かれる Winny弁護団事務局長として大活躍した壇俊光弁護士(1971~・大阪府池田市出身)はIT分野の案件を得意とするバリバリの現役 壇弁護士役を演じた三浦貴大(1985~・東京都港区生まれ)は実際に壇にも会って彼の話し方や身振り手振りを徹底的に覚えたそうだ 同じピア・ツー・ピアという技術を使っているブロック・チェーン方式の暗号通貨(2009~)やメッセージ・アプリのテレグラム(2014~)がいくら犯罪に応用されたとしても、そのソフト開発者は逮捕も処罰もされていないのでWinny裁判の判決も妥当かとも思う しかし余りにも犯罪に使われることが明らかな場合は国によってはソフトの使用禁止も行われているらしい Winnyは著作権法違反以外の使い方が思い付かないとしてその違法性を問う声もある ちなみに2010年1月1日より改正著作権法が施行され、従来ファイルのダウンロードは「私的使用のための複製」として扱われ違法とはされていなかったが、新たに「違法なファイルと知りながらダウンロードする行為」が違法とされることとなった 撮影は2021年夏から栃木県佐野市、東京都文京区などで行われたようだ 佐野市では廃小学校の体育館に法廷のセットを造り込み、クランク・インの1ヶ月前から模擬裁判で演技練習をしたらしい

64bfc42c615380ccメグレと若い女の死(89分・仏・2022) ⇒フランスの映画監督パトリス・ルコント(1947~・パリ出身)がジョルジュ・シムノン(1903~1989・ベルギー・リエージュ出身)の同名原作小説(1954)を脚本も兼ねて製作 筆者はシムノンのことをほとんど知らなかったが、20世紀で最も人気のある作家の1人で約400冊の小説などを出版し5億部以上を売り上げているとか ルコント監督は主役のメグレ警視に堂々たる体躯のジェラール・ドパルデュー(1948~・仏シャトールー出身)を起用 本作は原作とは物語展開が少し異なるようだが、1950年代のパリ下町の様子をよく再現していて、美術・照明・撮影など秀逸 当時も夢を抱いて田舎から都会に出てきて苦労する若い女性たちが沢山いたようで、彼女たちが上流社会に翻弄され巻き込まれていく犯罪をやや悲しげに描く 原題は単に"Maigret"=「メグレ」 ルコント監督は最後のメグレ作品にするつもりでシンプルなタイトルにしたそうだ

6bdac0b7b883bdb7エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(139分・米・2022) ⇒話の展開がもの凄く速いのと、メタバースではなくマルチバースという多元宇宙を扱っているようなので、正直内容がよく分からなかった B級作品として単純に楽しめばいいという意見もあるが、なぜ本作が第95回アカデミー賞(2023)で作品、監督、脚本、主演女優など計7部門を受賞したのかは、筆者にはよく分からない 米国では本作のユーモアのセンスがとても受けたようだし、また米国における最近のアジア系住民を蔑視・差別する風潮を危惧して、アジア系監督とアジア系俳優陣にハリウッド業界が敬意を表したのかもしれない 監督・脚本はダニエルズという2人組だが、ダニエル・クワン(1988~・マサチューセッツ州ボストン郊外のウエストボロー出身)の父親は香港出身で母親は台湾出身 主演女優賞を獲得したミッシェル・ヨー(1962~・マレーシア・ペラ州イポー出身)は中国系マレーシア人 当初は主演としてジャッキー・チェン(1954~・香港出身)を想定していたようだが、最近は中国共産党寄りを明確にしている彼が主演していたら、多分嫌中感の強い米国ではアカデミー賞受賞はなかったのではないか スタントやVFXもそれぞれ10人以内とスリムなので、結構キャスト本人たちが躍動していたようにも思える 撮影は2020年1月からカリフォルニア州シミ・ヴァレー、サン・フェルナンド、ロサンゼルス・エリジアン・パーク、ボレゴ・スプリングスなどで行われたようだ 特にシミ・ヴァレーにある古いビルをあたかもスタジオのように使い、建物内に自由にセットを組み立てて撮影した模様 原題は"Everything Everywhere All at Once"で邦題どおりだが、日本では「エブエブ」と呼ばれているらしい

33e04121f87f0036零落(128分・日・2022) ⇒漫画家・浅野いにお(1980~・茨城県石岡市出身)の同名原作(2017)を竹中直人監督(1956~・横浜市金沢区出身)が映画化 主演は斎藤工(1981~・東京都港区出身)で監督自身は登場しない 監督が本作原作に出会った時に是非映画化したいと考えたという 他の映画作品の関係でたまたま近くに近くにいた斎藤に話したら彼も原作を読んでいて浅野のファンだったとか 本作は人気作品となった長編漫画を完成させた後スランプに陥り、生きることに悩み放浪する漫画家を描く 主人公につかの間の安息・幻想を与えてくれる女子学生に監督の強い希望で、趣里(1990~・東京都出身)を起用 趣里は水谷豊(1952~・北海道芦別市出身)と伊藤蘭(1955~・東京都武蔵野市出身)夫妻の一人娘 撮影は2021年秋~冬頃に東京都小平市・国分寺市・調布市、横浜市中区、千葉県大多喜町・九十九里町などで行われたようだ 小平市に住む筆者には林の中を歩く主人公の姿を観て、これは玉川上水に違いないと思った 竹中監督はインタビューで答えているが、武蔵野美術大学在学中に通った、西武国分寺線の鷹の台駅(小平市)近くの喫茶店とそば屋をロケ地として使用したようだ

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2023年3月31日 (金)

2月後半に観た劇場映画

2月後半には3本の劇場映画を観た 桜花の時期を迎え頑張ってキャッチアップ中

シャイロックの子供たち(122分・日・2023)
★★BLUE GIANT(134分・日・2023)
エンパイア・オブ・ライト(115分・英・米・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

2daeab5215582f46シャイロックの子供たち(122分・日・2023) ⇒強欲な銀行員たちが暗躍する経済・ミステリー作品 池井戸潤(1963~・岐阜県出身)の同名原作小説(2006)の劇場映画化 原作小説は10編からなる短編連作であり、本作映画では主役となる西木雅博が途中で行方不明になる 池井戸自身が文藝春秋2023年2月号の対談で明かしているが、劇場映画化は無理だと思ったらしい しかし原作者もシナリオ創りに参加して、西木中心の2時間ものに改編したらしい 監督は池井戸原作の「空飛ぶタイヤ」(120分・日・2018)も担当した本木克英(1963~・富山市出身) 主人公・西木は阿部サダオ(1970~・千葉県松戸市出身)が演じ、やや抑えた演技ながら、頼りなさげだが結局は優秀な銀行員を熱演している 原作にはない謎の老人を登場させ、柄本明(1975~・東京都中央区銀座出身)に演じさせている 撮影は2022年8~10月頃に行われた模様 東京第一銀行長原支店のロケ撮影は茨城県古河市にある足利銀行旧古河支店(移転決定後の跡施設)を利用したとのこと 銀行の本店は東京都千代田区大手町にある大手町プレイス・イーストタワーにあるとした模様 その他ロケ地は、東京都・千代田区・丸の内オアゾ、大田区、府中市、神奈川県川崎市などのようだ

bff86251135e238c★★BLUE GIANT(134分・日・2023) ⇒是非劇場に足を運んで、本作で本物で圧倒的な素晴らしいジャズ音楽を大音量で堪能してほしい そういう意味でなるべく前方の座席を選ぶのがいいと思う 世界に通用するミュージシャンを目指す若者たちの成長アニメ物語であり、成長過程での音の変化も鑑賞できる 演奏しているのは3人の一流ミュージシャン ピアノは上原ひろみ(1979~・静岡県出身)、テナーサックスは馬場智章(1992~・北海道札幌市出身)、そしてドラムは石若駿(1992~・北海道清里町出身)がそれぞれ演奏 上原はご存じ世界的に著名なジャズ・ピアニストで、本作中のすべての音楽を作曲し、監修しているとのこと 馬場は本作に応募があった世界中のプレーヤーからオーディションの結果満場一致で選ばれたという 上原も馬場も米国ボストンのバークリー音楽大学に留学しているのは奇縁か 石若は東京藝大卒で上原から直接指名を受けたようだ この3人が本作ではJASSというジャズ音楽トリオとなり、ここでしか聴けない演奏を展開する 漫画家・石塚真一(1971~・茨城県常総市出身)の同名漫画(2013~2016)が原作 監督は立川譲(たちかわゆずる:1981~)だが、原作者やプロデューサーとともに2017年から映画化の企画をあたため実現に至ったらしい 製作はやはり3人のプロ演奏家のプレイを先に録音してからアニメ映像を制作するという順になったようだ サックスの演奏シーンは一部モーション・キャプチャーも使われたという

ca23a23aacd81989エンパイア・オブ・ライト(115分・英・米・2022) ⇒1980年代初頭、英国南部の静かな街の海に面した映画劇場を舞台に、映画愛と当時の社会世相を反映した物語を紡ぐ 「アメリカン・ビューティー」(122分・米・1999)や「1917 命をかけた伝令」(119分・英・米・2019)のサム・メンデス監督(1965~・英バークシャー州レディング出身)が脚本も兼ね製作 映画劇場の主任役のヒロインには「女王陛下のお気に入り」(120分・英・愛・米・2018)のオリヴィア・コールマン(1974~・英ノーフォーク州ノリッジ出身)を起用 大学進学の夢破れてこの劇場で働くことになり、ヒロインと親密な交流をする黒人青年をマイケル・ウォード(1997~・ジャマイカ・スパニッシュ・タウン出身・幼少期に英ロンドン移住)が演じる 映画愛の象徴として「炎のランナー」(124分・英・米・1981)や「チャンス」(130分・米・1979)などが登場する 当時はマーガレット・サッチャー(1925~2013・英リンカシャー州グランサム出身)が首相の頃で、高失業率、人種・移民差別、暴動などの大きな社会問題もあり、それらも本作に反映されている パワハラ、セクハラ、LGBTQなどはまだまだ一般的に認識されていなかっただろう 撮影は恐らく2021~2022年の寒い時季に、主に英国ケント州マーゲイトとその近郊にて行われたと想定される エンパイア劇場としてはマーゲイトの海辺にある元映画館・ダンスホールのドリームランドという施設を利用 1930年代に建設された建物は時代考証に合わせて大規模な改装工事を実施したという 原題は"Empire of Light"で邦題もそのままだが、映画の話でもあるので「上映の光に満ちた夢の世界」的な意味もあると思う

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2023年3月21日 (火)

2月前半に観た劇場映画

2月前半には4本の劇場映画を観た WBCで大忙し

イニシェリン島の精霊(114分・英・2022)
仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023)
茶飲友達(135分・日・2022)
バビロン(189分・米・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

1ae51df14a35cd7cイニシェリン島の精霊(114分・英・2022) ⇒アイルランドの歴史やケルト文化に少し知識がないと、かなり分かりにくい作品のようだ アイルランドの孤島での物語だが、時代設定が1923年というのが話の背景として重要な意味を持つようだ 原題は"The Banshees of Inisherin"で邦題に間違いはないと思うが、"Inisherin"とは実はアイルランド島のことで、"Banshee"=「バンシー」とはアイルランドやスコットランドに伝わる、人の死を叫び声で予告する妖精のことらしい アイルランドでは妖精とはいえ老婆の姿で現れるという 1921年に英国と戦ったアイルランド独立戦争が終わった後、アイルランド国内で英国に残留したい者たちとの間で内戦(1922~1923)が発生 本作はちょうどこの内戦を時代背景としており、ルーツや宗教の違いにより知人・隣人という同じ国の人々が憎み合い争うという悲劇を一つのテーマとしていると考えられる アイルランドからの移民が多い米国ではこの辺の事情はよく理解されているものと思う 監督・脚本は「スリー・ビルボード」(115分・米・英・2017)のマーティン・マクドナー(1970~・ロンドン出身・国籍は英・愛) 2人の主要人物をコリン・ファレル(1976~・愛ダブリン出身)とブレンダン・グリーソン(1955~・愛ダブリン出身)のアイルランド人俳優が演じる 撮影は2021年に行われたと想定される ロケ地はアイルランドの中部大西洋側にあるアラン諸島最大の島・イニシュモア島と、北西部の本土と橋でつながるアキル島で行われたとのこと 主要舞台となる2軒の石造りの家はセットとして建設されたそうだ 世界遺産として指定されており、観光地でもあるイニシュモア島では、持ち込んだ石材はすべて撤去し移動した石なども元の場所に復元されたとのこと

51aba0d9c4983472仕掛人・藤枝梅安(134分・日・2023) ⇒時代小説家・池波正太郎(1923~1900)の生誕100周年を記念して製作された作品 「仕掛人・藤枝梅安」(1973~1990)は「鬼平犯科帳」(1968~1990)「剣客商売」(1973~1989)とともに池波の時代小説3大シリーズといわれているそうだ 本作の監督は河毛俊作(1952~・東京都出身)で、主演梅安を豊川悦司(1962~・大阪府八尾市出身)が、そしてバディ彦次郎を片岡愛之助(1972~・大阪府堺市出身)がそれぞれ演じている 時代劇なので物語展開を安心してフォローできるという利点がある 豊悦の坊主頭はよく似合っているし、梅安の雰囲気・たたずまい・不気味さをよく表現していると思う 撮影は2022年1~3月に主に東映京都撮影所(京都市右京区太秦)で行われたようだ ロケ地は他に滋賀県大津市・近江八幡市そして京都府京丹後市五十河(いかが)の里などか 4月7日からは続編「仕掛人・藤枝梅安2」(119分・日・2023)が公開される

dc901840d3d840ec茶飲友達(135分・日・2022) ⇒単館上映から全国53館へ拡大上映されることになった、今話題の作品 東京のENBUゼミナールが製作したもので、同ゼミナールが2017年に製作し翌年全国的・世界的に大ヒットした「カメラを止めるな」(96分・日・2017)の再来になるかもしれない 本作製作のきっかけとなったのは2013年10月に摘発された高齢者向け売春クラブの一件 茶飲み友達紹介として「茶飲みコース」と「割り切りコース」を提供していたという 筆者はこの事件のことはよく知らなかったが、すぐに思い出したのは1983年12月に摘発された「愛人バンク・夕ぐれ族」の一件 この時はメディアも巻き込み大騒動になったと記憶している 本作では独居男性・女性老人の孤独と絶望、そして現代に生きる若者たちの孤立とやるせなさを同時に描いている 多くのティー・ガールズが登録しており、出張で「煎茶コース」と「玉露コース」を提供する 反社会的なビジネスをしているのだが、ティー・ガールズたちと若者たちには家族的な一体感が醸成されているのが不思議 監督・脚本は外山文治(1980~・福岡県出身)が務め、茶飲友達ビジネス全体を運営管理する責任者の若いヒロインを岡本玲(1991~・和歌山市出身)が演じる 撮影は2022年の冬に行われた模様で、ロケ地は東京都台東区、墨田区、江戸川区、埼玉県戸田市などか

cedd11aae209c34bバビロン(189分・米・2022) ⇒3時間を越える長編だが、話の展開や場面切替がとてもスピーディなので、あきることなく最後まで鑑賞できた 無声映画からトーキー映画に変わる大変革の時代に、ハリウッド映画界の繁栄・退廃・狂乱を描いている したがって、ややエログロのシーンも多い 本当かどうか分からないが、日本でR15+指定にするための修正が間に合わず、日本での上映開始後1週間くらいはR18+の内容が流されたという 米国ハーバード大学の同級生だったジャスティン・ハーウィッツ(1985~・米加州ロサンゼルス郡出身)を音楽担当として映画製作を始めたデイミアン・チャゼル監督(1985~・米ロードアイランド州プロビデンス出身)が15年間も構想を練って本作を製作したそうだ チャゼルは自作の「セッションズ」(106分・米・2014)や「ラ・ラ・ランド」(128分・米・2016)の成功を受けて獲得した資金を本作に一気につぎ込んだようだ 公式サイトのコラムでは「1920年代、テレビもインターネットもなかった時代、ハリウッドが作り出したサイレント映画はエンターテインメントの王様だった まだ、ほとんど荒野だったハリウッドに、世界中から富と夢と野望を求める男女が押し寄せた 当時のロサンジェルスは人口も少なく、警察権力も小さく、映画の内容にも今のような倫理的な規制(コード)は何もなかった ハリウッドは映画の中も外も、完全に野放しだった」という このハリウッドの狂乱を再現するためにケネス・アンガー(1927~・米加州サンタモニカ出身)著の「ハリウッド・バビロン」(米・1959)を参考にしたらしい 主役陣はマーゴット・ロビー(1990・豪クイーンズランド州ゴールドコースト出身)、ディエゴ・カルバ(1992~・墨メキシコシティ出身)、ブラッド・ピット(1969~・米オクラホマ州シャウニー出身)の3人だが、それぞれ実在のモデルがいるという CGを使わない昔風の方法で撮影されており、トーキー映画への移行期のドタバタ撮影現場も現在のパラマウント・ピクチャーズのスタジオで撮影されたようだ ロケ地は加州ロサンゼルス市ダウンタウン、サンタクラリタ、ピルーなどらしい

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2023年2月24日 (金)

1月下旬に観た劇場映画

1月下旬には4本の劇場映画を観た それぞれ特徴のある作品だった

とべない風船(100分・日・2022)
ヒトラーのための虐殺会議(112分・独・2022)
エンドロールのつづき(112分・印・仏・2021)
BAD CITY(117分・日・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

3a6ed4dfb923e54dとべない風船(100分・日・2022) ⇒宮川博至(ひろゆき:1980~・広島県出身)監督が脚本も兼ねて製作した長編作品第一号 地元広島県で2018年7月に発生した西日本豪雨による土砂災害をテーマとしている 広島県内で100人を超える死者・行方不明者が発生したにもかかわらず、映像作品としては余り取り上げられていないことに気付いたそうだ 東出昌大(1988~・埼玉県出身)が主演し、ヒロインに三浦透子(1996~・北海道札幌市出身) 妻子を失う被害を受けてもそこで生き続けるしかない漁師、教師という天職に疲弊して父親が移住した瀬戸内の島に一時帰る娘、この2人を軸として物語は展開 淡々として話は進むが味わいのある作品 また瀬戸内の多島美も見物 東出は私生活のトラブルから再起しつつあるようにも思えた 不思議なことに筆者には三浦は最初から小池栄子(1980~・東京都世田谷区出身)にしか見えなかった 2022年7月に広島市で試写会が行われたことから、撮影は2021年後半に行われたものではないか オール広島県ロケで、呉市下蒲刈島・江田島市・倉橋島などで撮影されたようだ

c01392ce1fe8d038ヒトラーのための虐殺会議(112分・独・2022) ⇒まず何のためにナチスの高官15人が集まってこんな会議を午後延々と行ったのかと感じた どうせ人命にも人権にも無頓着な独裁者アドルフ・ヒトラー(1889~1945・オーストリア・ハンガリー帝国:現墺オーバーエスターライヒ州出身)が決めたことを実行するのだから、側近数人で決めればいいのではないかと思った 独裁専制主義の国家ではあるが民主主義から始まっているので、形式的でもどうしても会議を開いて合議制で物事を決めたかったのかな… ソ連崩壊後のロシアも基本的に民主主義の国家としてスタートしているので、現在の政治は全くの専制主義ではあるがよく大人数の会議や集会をアリバイのように実施しているように見える 本作は1942年1月20日午後ドイツ・ベルリンの郊外にあるヴァンゼー湖畔にある高級別荘で「ユダヤ人問題の最終的解決」について討議した会議の映画化 アドルフ・アイヒマン(1906~1962・独ゾーリンゲン出身)が秘書1名とともに参加しており、彼の残した議事録が1947年に米軍が独外務省の文書中から発見 したがって、本作ではこの議事録に基づき会議の進行模様が忠実に再現されているようだ ただ会議で高官たちが発言する様子を描いた映像なのでやや退屈かもしれない ドイツではTV映画として製作されたが、日本では劇場映画として上映された模様 原題は"Die Wannseekonferenz"="The Wannsee Conference"=「ヴァンゼー会議」 日本ではこの会議のことは余り知られていないので邦題は意訳として適当か

c5a59b69d1c516caエンドロールのつづき(112分・印・仏・2021) ⇒インド発だが、落ち着いた映画愛にあふれる作品 「ニュー・シネマ・パラダイス」(155分・伊・1988)を髣髴とさせる 最近の邦画作品では「今夜、ロマンス劇場で」(109分・日・2018)をどうしても思い出してしまう この作品の主題歌・シェネル(1983~・マレーシア・コタキナバル生まれ・豪出身)の「奇跡」(2017)を一所懸命に練習してカラオケで唄えるようになったことが懐かしい 本作に戻ると、列車駅でチャイ売りを生業とする父親を手伝う少年がふと入場した映画館で映画に魅せられるところから話は急転回 35mmフィルム映画作品の映写機技師と仲良くなり、少年の母親が作る弁当と交換にいつも映画作品を観られるように その後駅の倉庫に保管してある映画フィルムを発見し、自転車などを改造して自作した映写機でゲリラ自主上映 本作を脚本から製作したパン・ナリン監督(印グジャラート州出身)自身の少年時代の実話というから、監督自身本当に映画愛にあふれた、行動的な人物だと思う フィナーレは刺激的で、映画がフィルム上映からデジタル上映に変遷し、映写技師は失業し、映写機とフィルムはそれぞれ無用の長物となりリサイクルに回される 撮影は監督の出身地インドのグジャラート州で行われた模様 原題は"Chhello Sho"(グジャラート語)="The Last Show"=「最後のショー」 原題もピンとこないが、邦題もやや分かりにくい

e77e44f55237a0b6BAD CITY(117分・日・2022) ⇒「顔面凶器」や「Vシネマの帝王」という称号を持つらしい小沢仁志(1962~・東京都中野区出身)が還暦記念として脚本・製作総指揮・主演を兼ねて製作したヴァイオレンス・アクション作品 本作アクションはかなり見応えがあったと思う 小沢は本作撮影のために徹底したトレーニングを行ったとのことで、100人以上を相手にした乱闘アクションをスタントなしCGなしでこなしているそうだ 終盤のクライマックス・シーンではアクション俳優の山口祥行(よしゆき:1971~・東京都出身)とのタイマン死闘を披露 監督はスタントもやりアクション・コーディネーターでもある園村健介(1981~) 加藤雅也(1963~・奈良市出身)、かたせ梨乃(1957~・東京都豊島区出身)、リリー・フランキー(1963~・福岡県北九州市小倉区出身)などのベテラン俳優陣が作品に落着きを与えている 撮影は2021年11月頃に福岡県中間市などで行われたようだ ロケ地は7割が福岡県内でその半分が中間市だったという 中間市長は元アクション俳優であった福田健次(芸名・福田浩:1960~・石川県小松市出身)氏で本作撮影を全面サポートした模様

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2023年2月12日 (日)

1月中旬に観た劇場映画

1月中旬には4本の劇場映画を観た 劇場映画のコメント書きも少々サボってしまった

嘘八百 なにわ夢の陣(112分・日・2023)
映画 イチケイのカラス(119分・日・2023)
SHE SAID シー・セッド その名を暴け(129分・米・2022)
そばかす(104分・日・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

cf16c15eca3a03c2嘘八百 なにわ夢の陣(112分・日・2023) ⇒行事の合間を縫って鑑賞 他にチョイスがほぼなかったが、それなりに楽しめる作品だった 大阪テイストなので関東人には若干しっくりこないかも 「嘘八百」シリーズ(2018・2020)の3作目 いずれも監督が武正晴(1967~・愛知県知多市出身)で脚本が今井雅子(1970~・大阪府堺市出身)と足立紳(1972~・鳥取県倉吉市出身)、そして主演が中井貴一(1961~・東京都世田谷区出身)と佐々木蔵之介(1968~・京都市出身) 古物商と陶芸家が組んで掘出し物を偽造するというメインラインは変わらず 撮影は2022年6・7月の猛暑の時期に行われたようだ ロケ地は大阪府堺市・大阪市・狭山市などか 狭山池博物館(狭山市)が終盤の重要場面で使われている

2d897c78feb60700映画 イチケイのカラス(119分・日・2023) ⇒浅見理都(りと:1990~・埼玉県出身)の同名連載漫画(2018~2019)が原作 全11話のTVドラマ(2021)が人気となり、本作劇場版も製作された 竹野内豊(1971~・埼玉県所沢市出身)と黒木華(はる:1990~・大阪府高槻市出身)がTVドラマで初共演し、そのまま劇場映画でも継続 本作でも竹野内は相変らず型破りな裁判官を好演 黒木は今回は弁護士役 今回の話は最近流行りのみんな犯人的な感じ 脚本はTVドラマから一貫して浜田秀哉(1972~・香川県出身)が担当 監督はTVドラマでも3回演出を担当した田中亮(あきら:1979~) 撮影は2022年7月~8月の真夏に行われたようだ 作中の舞台は岡山県としているが、ロケ地は首都圏一円だったようだ 群馬県前橋市・高崎市、神奈川県横須賀市・寒川町、千葉県市原市・館山市、静岡県沼津市、山梨県甲府市などの地名があがっている

4ab4d0b180c6c795SHE SAID シー・セッド その名を暴け(129分・米・2022) ⇒ジョディ・カンター(1975~・米ニューヨーク市出身)とミーガン・トゥーイー(生年不詳・米イリノイ州エヴァンストン出身)の共著のノンフィクション"She Said: Breaking the Sexual Harassment Story That Helped Ignite a Movement"(米・2019)=「彼女は語った:運動に火を付けたセクハラ騒動の開幕」を映画化 本書の邦訳は「その名を暴け-#MeTooに火をつけたジャーナリストたちの闘いー」(2020)として出版されている この2人のジャーナリストはニューヨーク・タイムズ紙の記者で、事の発端は2人が2017年10月5日にハーヴェイ・ワインスタイン(1952~・ニューヨーク市出身) によるにセクハラ(性的暴行)に関する調査報道暴露記事をニューヨーク・タイムズ紙に掲載したこと ワインスタインは辣腕映画プロデューサーで、「パルプ・フィクション」(154分・米・1994)「イングリシュ・ペイシェント」(162分・米・1996)「恋におちたシェイクスピア」(137分・米・英・1998)「英国王のスピーチ」(118分・英・豪・米・2010)「アーティスト」(100分・仏・米・2011)などの名作を次々と世に出した 本作ではトランプ前米国大統領(1946~・ニューヨーク市出身)のセクハラ疑惑も紹介しているが、いずれも男側が大金を払って口封じ・もみ消しを図ったのではないかという疑惑だった ワインスタインのセクハラ事件もみ消しについては多数の人物から証言を得て調査内容を固めるが、特に女優アシュレイ・ジャッド(1968~・米ロサンゼルス出身)の全面的な証言が鍵だった 本作ではカンター役をゾーイ・カザン(1983~・ロサンゼルス出身)が、トゥーイー役をキャリー・マリガン(1985~・英ロンドン出身)が演じた またジャッド本人も出演している 監督はマリア・シュラーダー(1965~・独ハノーファー出身)で、製作総指揮にブラッド・ピット(1963~・米オクラホマ州出身)が名を連ねる 撮影時期は2021年と思われるが、幸運なことにニューヨーク市にあるニューヨーク・タイムズ本社ビル内でロケ撮影できたようだ コロナ禍のためリモート・ワーク最盛期で、オフィスにはほとんど社員が出勤していなかったためらしい その他ロサンゼルス、米カリフォルニア州シリコン・バレー、ロンドン、英コーンウォール、伊ヴェネツィアなどでも撮影が行われたか ちなみにワインスタインは82人から告訴され、2020年6月にニューヨークの裁判所から禁固23年の刑を言い渡された 原題も"She Said"

71914af320fe4b26そばかす(104分・日・2022) ⇒アセクシャルの女性を主人公にした作品らしい アセクシャルとは他者に対して恋愛感情も性的欲求もない人とのこと エイセクシャルともいうようだ 筆者はアセクシャルのことを余り知らなかったので、こんな人もいるかもなと思って観ていたが、れっきとした性的指向の一つで研究では1%弱いるとのこと 監督は玉田真也(1986~・石川県金沢市出身)で劇作家・脚本家・演出家・俳優でもあるようだ ヒロインを三浦透子(1996~・北海道札幌市出身)が演じる 三浦は長編映画作品単独初主演らしい 三浦は「ドライブ・マイ・カー」(179分・日・2021)への出演で一気に注目を集めた しかし6歳から子役を演じており、また歌手としても実力派であることは知らなかった 終盤に前田敦子(1991~・千葉県市川市出身)が演じる中学の同級生の結婚披露宴で、三浦がチェロを演奏するが本当に弾いているように感じたがどうか タイトルの「そばかす」はヒロインの名前「蘇畑佳純(そばたかすみ)」からきているらしい 撮影は2022年前半に行われたものと想定 ロケ地は埼玉県さいたま市、東京都多摩地区西部などのようだ

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2023年1月30日 (月)

1月上旬に観た劇場映画

1月上旬には3本の劇場映画を観た それぞれ特徴のある作品だった

ケイコ 目を澄ませて(99分・日・2022)
終末の探偵(80分・日・2022)
非常宣言(141分・韓・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

95930266b23f8316ケイコ 目を澄ませて(99分・日・2022) ⇒プロの映画評論家にはとても受けがいい作品のようだ 監督と脚本を兼任した三宅唱(1984~・札幌市出身)は濱口竜介監督(1978~・川崎市出身)に続く期待の星とされている 濱口監督は「偶然と想像」(121分・日・2021)で第71回ベルリン国際映画祭(2021)の銀熊賞を受賞し、また「ドライブ・マイ・カー」(179分・日・2021)で第94回アカデミー賞(2021)の国際長編映画賞を受賞している 本作は聾(聴覚障害)だが女子プロボクサーになった小笠原恵子(1979~・埼玉県川越市出身)の著者「負けないで」(2011)を土台にしている 岸井ゆきの(1992~・神奈川県秦野市出身)が主演を務め熱演している またボクシング・ジムの会長役の三浦友和(1952~・山梨県甲州市出身)がいい味を出している 岸井はクランク・インする前に三宅監督と一緒に3ヶ月間ボクシングの練習をしたようだ そのためか結構様になっていて、小笠原も短期間に上達したことに驚いていたという なお、欧米では聾が主人公なら聾の俳優を起用するものらしく、そういう意味での批判はあるようだ 撮影には16ミリ・フィルムを使用したとのこと 撮影は多分2021年に行われたと想定され、ロケ地は東京都豊島区・台東区・葛飾区などのようだ

5491129502c36c0b終末の探偵(80分・日・2022) ⇒割と上映時間が短めなので、同日2本目として本作を観た とにかく多くの映画作品、TVドラマ、舞台、TV-CFなどに出演している北村有起哉(1974~・東京都出身)が主演 彼の父親・北村和夫(1927~2007・東京都文京区出身)もよく知られた俳優 有起哉の主演作品は少ないが、本作ではやさぐれた風体の私立探偵を好演 裏社会のどぶさらいとして、落ちぶれヤクザと中国系マフィアに絡みながら、移民問題や誘拐事件にも係わる 抗争アクションもあり、ハードボイルドであるが、情もなさけもある展開 ロケ地はほぼすべて東京都町田市内とのこと 探偵事務所のある喫茶店「KENT」はJR横浜線の町田駅前に実在 その他町田市街と鶴川団地や恩田川沿いも使われようだ 撮影時期は恐らく2022年前半と想定される

4af8d63a8c3befea非常宣言(141分・韓・2022) ⇒韓国の2大スター、ソン・ガンホ(1967~・韓国慶尚南道金海市出身)とイ・ビョンホン(1970~・韓国京畿道城南市出身)が共演 ソンはご存じのとおり昨年「ベイビー・ブローカー」(129分・韓・2022)で第75回カンヌ国際映画祭(2022)の男優賞を韓国人俳優として初めて受賞 本作は過去何度も製作された航空旅客機のハイジャック事件をテーマとしたもの これまでのものと違うのは、未知の病原性ウイルスを使った自爆テロであること あまり出口のないような情況でのパニックが本作の映像の特徴 特筆なのは米国から韓国に本物の航空機の部材を持ってきて、ハリウッドの技術者の協力を得て360度回転する旅客機のセットを造り上げたこと したがって映像にはそのリアルな感覚がしっかっり残っている 撮影は2020年に新型コロナによる中断もはさみながらも行われたようだ やや長めの作品なので、鑑賞前に美味しい食事とアルコールを楽しんでしまった筆者は最後までは緊張が続かなかった 原題は"Emergency Declaration"で邦題どおりだと思うが、日本では「緊急事態宣言」や「非常事態宣言」ともいわれているようだ

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2022年12月29日 (木)

12月前半に観た劇場映画

12月前半には4本の劇場映画を観た なかなか理解が難しい作品も多かった

ある男(121分・日・2022)
ビー・ジーズ 栄光の軌跡(111分・米・2020)
MEN 同じ顔の男たち(100分・英・米・2022)
夜、鳥たちが啼く(115分・日・2022)

(注)★★は超お薦め、★はお薦めの作品

cff868e3590a57c8ある男(121分・日・2022) ⇒上質なミステリー作品だと思うが、人と人が複雑に入れ替わっているので、結構分かりにくい 特にアルコールに浸されていた脳には… 人は何をもってその人と判断できるのかという、結構根源的な問いかけをしてくる また物語の裏には、犯罪者の家族への差別や民族・人種差別などの差別問題にへの視点もあるように思える 芥川賞作家・平野啓一郎(1975~・愛知県蒲郡市出身)の同名原作小説(2018)の映画化 「蜜蜂と遠雷」(118分・日・2019)の石川慶監督(1977・愛知県豊橋市出身)が原作に惚れ込み製作 主要な3人の出演者は妻夫木聡(1980~・福岡県柳川市出身)、安藤サクラ(1986~・東京都出身)そして窪田正孝(1988~・神奈川県出身)で、いずれも芸達者 筆者は11月に柳川を訪れて川下りを楽しんだが、内堀脇に柳川高校があり「ここに妻夫木が通っていた」と船頭さんが叫んでいた 本作の撮影は2021年1月~3月に行われた模様 ロケ地は山梨県笛吹市、静岡県富士宮市、北九州市、宮崎市、群馬県渋川市伊香保温泉、横浜市、川崎市などか なお、本作は第79回ヴェネツィア国際映画祭(2022)オリゾンティ・コンペティション部門正式出品作品となった

f5807d5e95fc2852ビー・ジーズ 栄光の軌跡(111分・米・2020) ⇒筆者が高校1年生の時に日本でも大ヒットした、ビージーズの「マサチューセッツ」(英・1967)はよく覚えている 本作はビージーズの生立ちから活躍までを紹介するドキュメンタリー作品 ビージーズの中心メンバーは、英国マン島出身のバリー・ギブ(1946~)、ロビン・ギブ(1949~2012)そしてモーリス・ギブ(1949~2003)の3兄弟 ロビンとモーリスは二卵性双生児 1人生き残り、米国フロリダで生活しているバリーのナレーションで話は進むが、貴重な映像と音源で一杯 3兄弟は1950年に英国マンチェスターに、そして1958年に豪州ブリスベンに移住 早くから音楽活動を始めるが豪州で人気バンドとなった ビートルズのマネジャーであったブライアン・エプスタイン(1934~1967・リヴァプール出身)が目を付け、1967年に英国でワールド・デビュー 1975年からは活躍の舞台を米国に移し、「サタデー・ナイト・フィーバー」(118分・米・1977)に楽曲が多く取り入れられ一大ディスコ・ブームを巻き起こした 原題は"The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart"で、直訳すると「ビージーズ:どう傷ついた心を回復させたか」か

b962401fe751e393MEN 同じ顔の男たち(100分・英・米・2022) ⇒グロテスクで怖い作品を観たい方は是非観てほしい 最初はただの男女の諍いだと思っていたら急転回 ヒロインが癒しのために訪れたカントリーサイドで恐怖の体験を 筆者にはよく分からなかったが、田舎で登場する数人の男たちは一人多役で皆同じ顔をしているらしい 終盤の身勝手な男の再生産のようなシーンは特にグロテスク 全裸の男のイチモツはかなり大きくしてあるようだ 監督と脚本はアレックス・ガーランド(1970~・ロンドン出身) 彼は「ザ・ビーチ」(119分・米・英・2000)の原作小説の著者であり、SFスリラー作品「エクス・マキナ」(108分・英・2015)の監督・脚本を兼ねた 一筋縄ではいかない作品を製作することで知られている ヒロイン役はジェシー・バックリー(1989~・アイルランド・キラーニー出身)が務め、難しい一人多役はロニー・キニア(1978~・ロンドン出身)が熱演 撮影は2021年3月~5月に英国グロスターシャー州ウィジントンにて行られた模様 ロケに使われたカントリーハウス、広い農場、教会などがあるようだ 原題は単に"Men"=「男たち」

e84feffbf0b41298夜、鳥たちが啼く(115分・日・2022) ⇒北海道函館市出身の小説家・佐藤泰志(1949~1990)の同名原作短編小説(1991)の映画化 彼は函館西高校時代から優れた文芸作品を書いており、その後5度も芥川賞候補になったが果たせず 1990年に東京・国分寺市で自死したこともあって、悲劇的な小説家として知られる 一時すべての作品が絶版になっていたが、近年再評価の上再刊されまた本作も含めて6作品が映画化 筆者はそのうち本作を含めて4本の劇場映画作品を観た いずれも身近な出来事を描いており、仕事、人間関係、男女関係などに関する様々な悩みや問題を抱える人物たちが登場 彼らのやり場のなさ、行き場のなさが身につまされる 本作の監督は城定秀夫(じょうじょうひでお:1975~・東京都八王子市出身) 主演は、いずれも出演作の多い山田裕貴(1990~・名古屋市出身)と松本まりか(1984~・東京都出身) 撮影は恐らく2021年のまだ暖かい時季に埼玉県飯能市、東京都杉並区・足立区、神奈川県三浦市などで行われた模様 どうでもいいことかもしれないが、作品内でビールを飲むシーンが結構ある その銘柄はどうもモルツらしいので、サントリーのプロダクト・プレイスメントがあったのかもしれない

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